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2023.11.28

【連載】全日本大学選手権直前特集『GIVE IT YOUR ALL』最終回 松井泰二監督

 最終回は、1年間チームに寄り添い、早大を率いてきた松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)。秋季リーグ戦、全早慶明戦を終え、集大成である全日本大学選手権(全日本インカレ)を控えたチームは、どのような様子かお話を伺った。

※この取材は11月15日に行われたものです。

「勝ちにこだわると、小さくなる」

対談中の松井監督

――監督の目から見て、今のチームの状態はいかがですか

 春季リーグ戦、東日本大学選手権、秋季リーグ戦(秋リーグ)と4年生が頑張ってくれました。やはり水町(泰杜主将、スポ4=熊本・鎮西)は、今までで3本の指に入るようなキャプテンですね。その中で、他の4年生が水町ことをリスペクトしているのだけれども、それだけじゃなくて水町に頼らないチームを自分たちで作るということが大分できてきたので、期待をしています。1人に頼ると水町もこわれてしまうし、みんなの持っているもの、4年生らしさを出してほしいと思って。そこができてきたので、秋よりも良い状態になっていると思います。

――4年生はどのような代ですか

 人が良いですよね。私が見ていても、こう優しい子たちだけがいる学年は珍しいなと思います。一方では強さを前面に出せず、変に空気を読みすぎてしまって、ダメなものはダメとなかなか言いづらいようです。

――秋リーグの筑波大戦や全早慶明の時点では、まだ4年生の状態が良くないとおっしゃっていました。それから今まででまとまってきましたか

 秋リーグの最終週も向かっていけなくて、満足いってないんですよね。結果にこだわるのがよくないと私は思っています。負けたらダメじゃなくて、負けたとしても自分たちの全部やってきたことを全部出せば、それで良いと思います。相手を少し上回ったら勝てるわけですから、全部出してなくても相手がダメでも勝ててしまうんです。それで本当にいいのかって話ですよね。 

 勝ちにこだわると、小さくなるんですよ。「~しなければいけない」というのは、必ずプランを小さくするので、良いことではありません。全部出せば、良い結果になるような練習はしているのですが、そこを理解してないというのが今のチームに伝わっている気がします。向かっていってないというのはそういう意味です。日本一って、こんなに広い世界の中で、ちっぽけな日本の、全日本インカレに出場しているチームの中の64の1なんです。自分を成長させること、プロセスが1番大事だという教育は、ずっとしているはずです。

――4年生のリーダーシップについて、1年間を通して懸念を示されること多かったと思います。高校生の時からチームの核だった方、大学でも下級生からずっとコートに入ってきた方とかも多い印象だったので、意外ではなかったですか

 私も期待していましたが、引っ張るという感じではないですね。プレーで見せるのか、口で言って引っ張るのか。リーダーとはなんですかと聞かれて答えられるかなって。それをここで鍛えているはずです。大学で完成するとも思ってないです。とはいえ、ちょっと大人しすぎるというか、主張がなさすぎる学年かなと思います。

――今週に4年生とミーティングをなさると伺ったのですが、全カレ直前という難しい時期において、どういった声がけをするのですか

 全部出すということです。やってきたことを出すことが難しいんですよ。もう1人の弱い自分、自分を疑う自分がいて、それにどう打ち勝っていくかという自分たちの問題なんですよね。相手ではなくて、自分たちがやってきたことを出すことができればいいと思います。 調子が悪いとしても、笑顔でいるとか、できることがあります。リーダーだったら、1つミスをしても俺に持って来いと言うとかね。

――今までのお話ですと、メンタルの部分が結構多かったと思うのですが、技術的な部分で秋リーグの課題はありましたか

 全てを通して、やはり精度はまだもう少しですね。このプレーは、普通にできなければいけないという基本的なことが、少し疎かになっています。状況判断もそうだし、プレーの仕方も迷いがあるというか、覚悟が決まってないです。チーム全体で準備をもっともっと丁寧にしていかなければいけないかな。

――例えばフロアとブロックの関係など、システムの部分の状態はいかがですか

 良くはなってきましたね。今はブロックを頑張れという話をしています。ブロックが揃ってくれば、抜けるところが自然と決まってくるので。今ずっとやっているのでだいぶ良くはなってきているかと思います。

――攻撃の面でセッターとスパイカーの関係性という部分では

 前田(凌吾、スポ2=大阪・清風)が去年と比べて本当に違います。非常に成長してきたので、大分良いかなと思いますが、ラリー中ですよね。ラリー中にスパイカーが慌てるという珍しいパターンです。スパイカーはでんと構えて「持ってこい」と言うものですが、バタバタしている。

――前田選手は落ち着いているタイプですか

 落ち着いてきました。まだ落ち着いているとは言い切れないですけどね。ただ、下級生なので。やはり2年生と4年生というのは違います。4年生がこれだけ入っていて打っているので、もっと落ち着いたプレーができればいいですね。私が試合で「落ち着け」と言うのは、チームを見てから初めてですからね。日体大戦の4セット目なんか、「落ち着け」と2回言いました(笑)。全カレの6試合、ちゃんと落ち着いてやれるかというのは、ほんとに難しいことです。

――前田選手、今年に入って安定感出てきたなって思っていて。 ただ、秋リーグの筑波戦では、終盤結構水町選手に偏っていました

 もう他が決まんなくなっちゃったんですね。僕も元セッターなのですが、もうそれしかないなって感じでした。セットアップは要するに信頼ですから、ここ1、2週間でそれを勝ち取ってもらいたいですね。

――昨年と変わったところだと、下級生の存在かなと思っていて。下級生の存在はどのようにチームに影響を与えていますか

 1年生が11人いるんですよね。そうすると、3分の1ぐらいが1年生っていう状況なのですが、1年生は意外としっかりしていると思います。数が多いと2年生のマネジメントが大変だろうと思うけど、1年生が頑張ってくれているので、その部分は非常に助かっています。布台聖(スポ1=東京・駿台学園)が雰囲気の面で普段リーダーシップをとってくれているし、プレーの面で言えば麻野(堅斗、スポ1=京都・東山)がそうなので、2人を中心に。佐藤(遥斗、スポ1=東京・駿台学園)、安食(浩士、スポ1=宮城・東北)あたりもプレー中頑張ってくれているし、菅原(啓、教1=山形南)はピンチブロックで出てきますけども、落ち着いて全体を見られる選手なので、非常に楽しみですね。

――監督なりに、 この人というようなキーマンは

 キーマンは山田(大貴、スポ4=静岡・清水桜が丘)です。理由は良いものを持っているからですね。ちょっと自信がなくなっちゃうと、少し受け身に回っちゃうことがあります。彼はダイナミックにやってくれれば、水町よりも高さがありますし、水町と山田の2人の看板で戦ってもらいたいです。彼はミスしても、堂々とやってくれれば良いです。

――オポジットは2人を使い分けられていると思うのですが、まだムラがありますよね。ただ、彼らが乗るとチームも乗るなと感じます

 チームルールでやるべきことすぐ忘れちゃうんですよね。データというのは必ず覚えるものなので、この場面ではこれが多いとか、このコースだとかあるんだけど、もう一生懸命だけになっちゃって、大事なこと忘れちゃう。しっかりと丁寧な準備をしてないんですよね。ただ、上がってきたボールに対して、しっかりと得点を取るってことをしっかりやってもらいたいと思います。

――今まで厳しいお話も結構伺ったと思うのですが、今年を通しての成長はどのようなところですか

 やはり2年生かな。前田、板垣(慧、政経2=京都・洛南)、畑(虎太郎、スポ2=福井工大福井)あたりの2年生というのは、非常に覚悟を持ってやっているというか、意外に度胸があります。板垣がいなかったら、秋は大変でした。彼がいてくれて、全勝というのは、ものすごく苦しかっただろうけど頑張ったと思います。あとは3年生の翼(浅野、スポ3=宮城・東北)もですね。(セッターの)控えがいないっていうことで、彼がやってくれる。その存在も大きいですね。

――全カレがピークだとしたら、今チームの完成度はどの程度のところまで来ていますか

 例年、100点中85点までいっているのですが、今年は80点ぐらいですね。 声を出すこと、頼むとかアウトとか、基礎的なことをもっとやれていれば85点ぐらいにはなっているんだけど、大事にしなきゃいけないところをちょっとまだ大事にできてないところがちょっと不安ですね。その点が例年よりは5点低いかな。

――秋始まった段階でおっしゃっていた、ディグ局面での切り返しなどの部分に関しては良いですか

 そうですね、ミスが減ってきてだいぶ良くなってきました。秋リーグの日体大戦でも悪くはなかったです。ただ、その前の筑波戦が悪かった。どう総括していいのかわかんないっていう(笑)。安定しないですね。

――大学最後の試合になるような4年生たちに向けても、改めてメッセージをお願いします

 とにかく最後なので、相手じゃなくて自分と戦ってほしいというか、やってきたことを全部出してほしい。全部出しきることっていうのは、自分たちの中の最大の勲章だと思います。だから小さいことを言っているのではなくて、将来生きるような大きなスケールでバレーをしてほしいです。そのスケール感を持っている選手たちですから。

――全日本インカレに向けての意気込みをお願いします

 4年生が最後、負ければ終わりということであるので、選手たちの良いところを出すように指揮を執らなければいけませんし、苦しくなった時に私の役割がいよいよ出てくると思います。その時にしっかりといい決断できるような準備をしたいです。4年生やチーム全体に対しては、しっかり覚悟を持って全部出してほしいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 五十嵐香音 写真 井口瞳)

◆松井泰二(まつい・たいじ)

千葉・八千代高出身。1991(平3)年人間科学部卒。一昨年と同じく、『全部出せ!!』を色紙に書いていただきました。バレー部のほかにスポーツ科学部や研究科の授業でご多忙な監督ですが、絵やミュージカルを鑑賞するのが休日の過ごし方だそうです。最近は27年ぶりにあったデイヴィット・ホックニーの展覧会に奥様と行かれたとか。意外な趣味を発見しました!

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