メニュー

ERROR

2022.06.30

【特集】早慶戦前対談 黒川美結主務×林駿佑主務

 第80回早慶定期戦(早慶戦)が7月2日、東京・代々木第二体育館で開催される。3年ぶりの有観客開催となる早慶戦で、運営を担う林駿佑主務(慶大)と黒川美結主務(スポ4=大阪・早稲田摂陵)にお話を伺った。

※この取材は6月8日に行われたものです。

主務の仕事とは?

試合中の選手交代をサポートする黒川

――自己紹介をお願いします

 慶應義塾體育會バスケットボール部で主務を務めております林駿佑です。今大学3年生で学部は法学部政治学科に通っています。出身高校は慶應義塾高等学校で、中学から慶應に入ってずっとバスケをやっています。よろしくお願いします。

黒川 早稲田大学バスケットボール男子部の主務を務めております黒川美結と申します。大学4年生で早稲田大学のスポーツ科学部に所属しております。高校は早稲田摂陵高等学校です。よろしくお願い致します。

――普段の活動内容や試合の時にどのようなことをしているか教えてください

 主務の活動内容としてはこれといって答えることはあまりなくて、部員のみんながバスケットボールに集中できる環境をつくることが全てです。慶大のバスケ部のマネージャーのいいところは僕も結構バスケットボールに関われるので、みんなのバスケットボールに集中できる環境をつくりつつ、自分もスタッフの立場から競技の面でもサポートできるように、バスケをプレーする以外のこと全部自分が責任を持ってやるつもりでやっています。

黒川 林くんが言っている通り、バスケに専念できる環境をつくることです。うちの場合はスタッフがすごく多くて、学生コーチやトレーナーもいるので、その人たちのそれぞれの活動に専念できる場所をつくるっていうのも仕事になっていると思います。それ以外、いろんな多分バスケ部において、いろいろ責任が出てくる仕事があるので、その責任を負う仕事といいますか、しっかりと責任を持つ役割だと思ってます。

――多岐にわたって仕事がありそうですね

 イメージ的には書類つくったりとかがあると思うんですけど、それは仕事というほどでもないというか、結局最終的な大会、早慶戦の運営は早慶バスケ部の主務の特徴だと思います。他の学校にはない業務なので、早慶戦の運営はもちろん、早稲田もそうだと思うんですけど、OBの方々に色々な面でサポートしていただいているので、OB会と現役をつなぐ役割もそうですし、一言で表すのは結構難しいかなと思います。

黒川 架け橋みたいなところが多いよね。企業やOB、大人のコーチなどのスタッフ、大学、学連などいろんなところの間に入って、いかにうまく回せるか、部を存続させていけるかっていうところなのかなとは思います。

――そのような役割は得意だったのですか

 僕は正直得意だったというか適正はあったのかなと思います。僕は特殊なんですけど、高校の時に3年生まで選手でやっていて引退してすぐに体育会に入部して、先輩の活動だったりご縁があって高校3年の秋から主務のポジションに就かせていただいて、主務になってちょうど2年半くらいです。それでも主務になってから成長したと思います。2年前のメール見ても何やってるんだろうなと思うことも多いので、いろんな人に鍛えていただいてちょっとずつ色々なことができるようになったと思います。

黒川 主務は今年からなんですけど、入部当時からマネジャーの人数も少なくて、いろいろな業務に携わって育ってきた状態ではあります。1年生の入った当時は、どうやってメール打ったらいいんだろう、文章これで合ってるのかなみたいなところをいちいち調べていろいろな人に聞いて、それでもさらにOBの方からご指摘いただいてみたいなところからスタートしてるので、それから比べると、この数年間でメールの打ち方であったり、電話での受け答えも含めて、状況判断能力っていうところもすごくついたのかなと思います。

――状況判断能力とは

黒川 メールを打つタイミングだったり、試合のときにいつ何をするべきかというところです。何が最優先で、その後に何を持ってくるのかという状況判断能力がついたのかなっていう実感はするようになりました。

――マネジャーと主務は仕事が違うのでしょうか

 慶應でいうと、個人的には2つ意味があると思っています。まずスタッフ全体のリーダーだと思っています。狭義的にいうとマネージャーのリーダー、最高責任者みたいな感じだと思っています。4年生になってマネージャーが一人しかいなければその子が主務になります。

黒川 例えば今はトレーナーの4年生が休部しておりまして、3年生がトレーナーのリーダーをやっています。能力に応じて、3年生がやることもあると思うんですけど、トレーナーにもリーダーの方がいたりとか、学生コーチもリーダーの人がいたりします。それと同じようにマネジャーの中でのリーダっていう一面と、競技面で主将がいるように、スタッフ全体に主務がいるのかなと考えています。

バスケ部に入部したきっかけ

試合中のデータを入力する林

――部活に入られたきっかけを教えてください

 僕は高校3年の夏から大学の体育会に参加していて、きっかけは高校時代に少し病気になって選手ができなくなって高校時代にも主務をやらせていただいたんですけど、高校の教員の方がもともと大学のヘッドコーチをされていた方ですごくお世話になって、慶應の中学から慶應のバスケットに育てられたという感覚がありました。正直チーム状態としてもあまりうまくいっている感じではなかったので、カッコつけて言うと自分が入っていい方向に向けてやるというふうに思ったので、入部しました。

黒川 もともと競技運営をしたくて、将来バスケの競技運営に携わりたいっていうのがありました。それをするために、バスケ部に入って学連に入りたいというのが一番でした。しかし、当時のマネジャー人数の状況もあって、1年間はという話でマネジャーの方をさせていただくことになって。将来競技運営をやっていく上で、チームに入ってマネジャーとしてやることは多分なくて、ただその立場でいることっていうのは知っておくべきことがあります。マネジャーとして普段得られない体験ができることがすごくたくさんあって、魅力を感じてそのまま続けてるっていうかたちになります。

――競技運営に興味を持ったきっかけは

黒川 幼少期の頃にBリーグの大阪エヴェッサのジュニアスクールでバスケをしていまして。その繋がりで高校の頃、大阪エヴェッサのホームゲーム運営のお手伝いをさせていただきました。そこで、今も目標となっている競技運営の方がいまして、その人を超えたいというところから、競技運営に興味を持ちました。

――主務の仕事で辛かったことはありますか

 どれから話せばいいかなという感じなんですけど(笑)、僕は一番辛かったのは1年生のときで、僕の代は入学式もなくて全部オンラインで部活の合流自体も8月だったので、自粛の期間は部活してないのに部の業務だけはなぜかあって、ずっとパソコンと向き合っていて体育館にいくこともなかったので、自分は何部で何をしているんだろうというのをすごく感じました。それが結構しんどかったです。あと、1年生の時の早慶戦が無観客で慶應の日吉記念館でやったんですけど、僕自身初めての早慶戦運営で慶應の幹事校の年で、先輩のマネージャーもいなかったので相当精神的に疲弊していました。本当にきつかったです。本当に1回辞めようと思って、練習に行くのもしんどい時期がありました。辛かった思い出と言われるとそれが1番です。

黒川 私も同じく1年生の時だと思っています。先輩のマネジャーが学業の方を優先というかたちで、なかなか部活に来られない日々の中で、日々の練習がマネジャー1人っていう形になったときに、今となっては選手に申し訳ない話ではあるんですけど、マネジャーとしてのモチベーションってどこにあるのかなっていうのがありました。1人でやっていくところが結構厳しかったのかな。精神的に厳しかったのはもちろんなんですけど、結構肉体的にも厳しくて。例えば練習の時も、早稲田アリーナだとB2階で日々練習してるんですけど、ビデオ撮るのがB1階なんですね。練習ゲームをするときに、試合中はビデオ撮っていて、試合が止まってる間に水を補給しにB2階に降りてまた駆け上ってみたいな、そういう肉体的にも精神的にも削られてるっていう日々でしたね。

――どうやって乗り越えましたか

 本当にきつかったし、早慶戦終わったら辞めようかなと思って、1回休まないときついなと思っていました。その時は周りが見えなくなっていたんですけど、みんな大会に向けて辛いのは一緒で、選手はみんなに見られたりとか歴史だったり伝統というプレッシャーを一身に背負ってそれをコートで表現して、正直早稲田の方が高校の経歴も大学の成績でも強いんですけど、格上相手に勝てると信じて戦っている姿をベンチで観て、その熱気を初めて感じてこれは早慶戦勝つまでは辞められないとその時に強く思いました。もちろん早慶戦勝利が1番の目標で、いつのまにか部活辞めようと思っていたことも忘れていました。

黒川 ずっと2年生になったら学連に入るんだっていうモチベーションの中でやってるところもありました。けれど、その中で学連に行かずにマネジャーで行こうと思ったのが、インカレ(全日本大学選手権)での同期の神田(誠仁、社4=静岡・浜松開誠館)と土家(大輝、スポ4=福岡大大濠)のブザービートが1つの理由です。また、インカレでスカウティングとしてビデオを撮りに行った帰り道にたまたま、卒業された柳川さん(柳川幹也、令2スポ卒)とたまたまお会いして、そのときに「ありがとう」という一言をいただいて、それがすごく嬉しくて。それで、これから先やっていこうって思いました。

――選手にも支えられているのですか

 あまり支えているという認識は個人的にはなくて、自分のことを黒子だと思うと消極的になってしまうんですけど、自分も責任ある立場ですし自分がこのチームを強くする立場だと思ってやっているので支え合っているというのは選手同士で「あいつが頑張っているから俺も頑張ろう」と思うのと同じで、コートでシュートを打つことはないですけど俺も頑張るしあいつも頑張っているというのがいい刺激になっていると思います。特に僕の場合は高校の同期の清水綺介(慶大)とは同じポジションで頑張ってきて、今は大学バスケで活躍していて苦しい思いしているのも見てきているし、学生コーチの山上雄大(慶大)も高校の時から喧嘩したり仲直ししたりという仲だったのが、スタッフは僕と山上が中心になってやっているので、内部生の頑張りをみると奮い立つことがあります。もちろん大学からの同期もそこに差はないですけど、辛い時に高校の同期がふと目に入ると頑張れます。

黒川 林くんと同じように、自分が裏方をやって支えているだけの立場っていうのは絶対なくて。必ず支えあっている部分があるなというのはすごく感じています。チームが1勝もできない状態でリーグ戦(関東大学リーグ戦)を終えたこともありました。その中でマネジャーは何ができるんだろうって思っていました。そんな中で、選手がその後1勝して喜んでる姿だったり、チームとして勝ってもらったりして、自分たちの存在意義を示してもらえるといいますか、本当に選手あっての私たちなのかなっていうのは日々感じております。

――内部生だと長い付き合いですね

 神吉秀一(慶大)というトレーナーは家も近くて小学校もサッカーを一緒にやっていて、そういう繋がりに支えられてやっているなと思います。

――それぞれの同期への印象を教えてください

 僕は同期が今11人いて、僕と同じ高校の内部生が5人で、志木校から2人いて外部から4人なんですけど内部生はみんな知っていたので、どのタイミングかは難しいんですけど、色々な理由があって部を去ってしまった同期も多いんですけど、オンラインでコミュニケーションを取っていたのでぎこちない関係でした。僕は先に部活にも参加していてその時には主務だったので、どういうことみたいな目線を向けられていたような記憶があります。同期は熱い人が多くて、今では同期の勝ちたいという思いが原動力になっています。

黒川 1年生の時から、学年の色的にすごく個性が強くて、いい意味で独立していて、仲が悪いとかではなく、自分のことをきちんと自分で管理できているっていう印象が多い学年です。自分たちの意見をしっかり持っていて、その中でどうしても選手とマネジャーとスタッフっていう立場、お互い大学バスケやチームのことが分かっていない中で、衝突をしていた時期がありました。その中で(仲良くなる)経緯があったのかなという印象です。

――それぞれの主将についての印象は

 山下さん(山下卓馬、慶大)はストイックな方であまり声を出して試合を盛り上げるタイプではないんですけど、黙々と自分のやることをやるタイプの主将です。あまり思っていることを口に出すタイプではないので僕も少し衝突したこともあったんですけど、やっぱり学生スポーツは4年生のものだしキャプテンの言っていることがチームにすごく影響を与えると思うので、みんなで山下さんを支えています。コミュニケーションを取ることでそのストイックさがチームをいい方向に持っていくと思うので、チームの大事な核ですし山下さんがいないとチームは始まらないので、チームのことを引っ張っていって欲しいと思っていますし、今シーズン終わる時には一緒に笑っていたいなと思います。

黒川 自分にストイックなのと同じように人にもストイックで、しっかりしてる人の方が好きっていうところがはっきりしていますね。バスケに本気でいるからこそ、周りが本気でないと許せないっていうところもあって。その中で、これからどんどんチームがつくられてくるんですけど、リーダーシップ能力もすごくある人なので、ストイックも兼ね備えて、チームをまとまめて良い方向に連れて行ってもらえるのではないかなと思ってます。神田の場合は自分の思ってることだったり、感じてることを言葉にすることがうまいタイプなので、下級生のスタッフにもすごく気配りとかもできて。「大丈夫?」っていう声掛けも結構してるので、そこにどう私が取り残されずに、きちんと一緒に二輪でやっていってるかっていうところです(笑)。

早慶戦に向けて

――早慶戦の準備は具体的に何をしているのですか

 今年は慶應が幹事校で、僕にとって初めての有観客の運営で、今年は代々木第二体育館というバスケの聖地と言われている場所で僕自身もすごく思い入れのある場所なんですけど、有観客となると今までと準備が全然違くてわからないなかで過去の先輩方の経験をお聞きしながらやっています。一つの大会を開催するのにこんなにもやることがあるのか、これだけの時間をかけてやっと1試合ができていたんだなと感じながら日々頑張っています。

黒川 昨年も同じような体制で林くんが主となっていて、やっている中すごくコミュニケーションを取りやすいです。昨年までは無観客で、チケットの手配や、応援部の動線が必要なかったのですが、それが必要になってきて。他にも座席の仕切りなど本当に細かい、けど大事なことが多々出てきて、そこを詰めていかないといけないっていう状態になってますね。

――代々木開催になると手続きなど大変ですか

 学連は代々木での開催に慣れているので、学連の知識を借りながらやっています。でも学連の大会ではなく早慶の大会なので、どれだけ部の意思を反映させてOBの方々にもやりたいようにやらせてもらっている側面もあるので当日は本当に最高の舞台を選手たちに提供するために頑張っています。

――黒川主務は1年時に有観客を経験されていますね

黒川 一応経験はしているんですけど。早慶戦はだいたい6月か7月にあるんですけど、(準備を)開始するのが大体12月で、終わるのが今年の10月、11月ぐらいなんですね。1年間やっている状態なので、4月に合流してきた1年生は何もわからない状態で当日を迎えて、当日決められた仕事をやる形になるので、空気感しかわからない状態での一度きりの有観客を経験してるみたいな状態ですね。

――有観客はうれしい反面、大変なことも多そうですね

 そうですね。でも有観客でこその早慶戦、観客席が紺とえんじの2色に分かれて独特の空気は有観客じゃないとなしえないものなので、大変だけど絶対有観客でやりたいと思っていました。昨年も本当は有観客でやりたかったので楽しみなことの方が多いです。

黒川 普通のリーグ戦や、今年なら新人選(関東大学新人戦)1回戦で慶應と当たってるんですけど、それとは全く違う早慶定期戦だからこその独特の空気っていうのがあって。今年で80回というすごく長い伝統があって、それを背負っています。今度は80回目の勝利をどっちが手にするのか、どっちが優勝するのかっていう重いもの、普通の1勝とは全く別物です。有観客である方が絶対に、選手やスタッフの方のモチベーションもですし、OBの方や保護者の喜ぶ顔も見られるので、どんなにしんどくてもやりたいなっていうところはありますね。

――林主務は内部生ということですが、高校の時に早慶戦を見に行ったりしていますか

 中学1年生のときから毎年行ってます。中学の時は行ってただ喜んだり悔しがったりして帰ってくるだけだったんですけど、今行ったらこんなに時間かけて試合つくってるんだとか考えて試合に集中できないと思います。

――有観客に踏みきった理由は

 代々木でやりたいというのはずっと言っていて、昨年が終わる段階でお金も集めないといけないんですけどそれは頑張るから有観客でやりたいと思っていました。

――その中で代々木第二体育館にこだわった理由は

 バスケットボールのコートのラインしか引いていないことがまず独特で、ほんとだったらバレーのコートの線とかもあるんですけど、代々木はバスケのラインしか引いていなくて、フロアもバスケの1面を取ってちょうどいい大きさになっていてぐるっと1周コートの近くに席があるので、もちろん選手同士のエネルギーもそうですけど、観客のエネルギーがフロアの中に集中する、そこにとてつもない熱量が生まれる瞬間を見てきたので、やっぱり早慶戦は代々木だなという先入観がありました。

黒川 例えば大田区総合体育館や駒沢体育館のように四角めの体育館っていうのはすごく多いです。四角くなると一周ぐるっと見たときに、360度お客さんがいるわけではないです。そういった(お客さんの)隙間があるよりも、やっぱり360度いる方が一体感は生まれて、試合としてもどんどん熱くなるって思っています。個人でも早慶戦っていうのは日本一熱い大学のバスケ試合だと思っているので、さらにその勢いを感じられる体育館でやりたいなっていうのはありますね。

――早慶戦への意気込み

 正直僕らは今3部で早稲田は1部、インカレでも結果を残しているチームなので、慶應の勝ちを予想している人は正直いないと思うんですけど、それでも早慶戦は本当に何が起こるかわからないですし、全員が勝てると思ってやっているので下克上して、慶應の関係者や応援してくれている人の心を震わせる試合をしたいです。そのための準備、運営が僕の仕事なのでさっき黒川さんも言ってましたけど、大学バスケで一番熱い瞬間だと思うので今年を早稲田に絶対勝ちたいと思います。

黒川 1年生の時は敗北というかたちでした。3年前の早慶戦では、早稲田のアリーナのこけら落としで絶対負けてはいけない、負けないだろうっていう試合でした。しかし、早慶戦という独特な雰囲気の中で負けを味わいました。今年はラストイヤーだからこそ、勝ちたいっていうのは強いです。早慶戦に勝ったんだと胸を張って言える代にしたいなっていうところはありますね。早慶戦の有観客自体も3年ぶりで、代々木も5年ぶりの開催です。今までどの人たちも経験しなかった無観客っていう2年間を経験して得たものがすごくたくさんあるので、その2年間を上乗せした、さらに迫力のある早慶戦を運営して、最高の舞台をつくった上で早稲田が圧勝します!

――ありがとうございました!

(取材・編集 落合俊)