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2018.02.02

【連載】箱根事後特集『臙脂』の意地 第3回 太田智樹

 昨年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)の悔しさを糧に成長を遂げてきたこの1年。ついに借りを返す時がやってきた——。任されたのは『花の2区』。タスキを受け取ると各校のエースに食らいつき積極的に前を追う。区間6位の走りで5つ順位を押し上げ、チームに勢いをもたらした。大役を果たした太田智樹(スポ2=静岡・浜松日体)は今、何を思うのか。そこには結果に満足せず、さらに上のレベルを見据える彼の姿があった。

※この取材は1月10日に行われたものです。

「やらないで後悔するよりはやって後悔した方がいい」

終始和やかな雰囲気で取材が行われた

――箱根が終わってからはどのように過ごされていますか

 4日からすぐ帰省して、成人式とかもあってリラックスしてきました。

――たくさん声を掛けられたのではないでしょうか

 まあでも普通くらいです。そんな特別多いわけでもなく(笑)。

――箱根の疲れはありますか

 治療とかに行けてないので残っている部分はあるんですけど、終わった直後よりはまあいいかなという感じです。

――事前対談では「1区に行きたい」とおっしゃっていましたが、2区を走ることはいつ決定したのでしょうか

 1週間くらい前に相楽さん(豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)に言われて。その時に腹くくってやるしかないなと思いました。

――2区を走る上で、設定タイムやレースプランなどは決めていたのでしょうか

 とにかく自分よりレベルの高い選手がいっぱいいる区間だったので、周りに使える選手がいたら使ってうまく前に行こうというのは考えていたんですけど、特別具体的に何かというのはあまり決めていなくて。とにかくラスト3キロが一番キツいからそこは頑張ろうというのは決めていました。

――試合前の調子はいかがでしたか

 良くもなく悪くもなく、いつも通りでした。

――集中練習の消化具合などは

 ほぼ完璧にこなせたので、去年よりは戦えるかなとは思っていました。

――去年はレース前、すごく緊張されていたとお聞きしましたが、ことしはいかがでしたか

 ことしは逆に全然緊張しなくて、もうなんか試合をする感覚でもなく(笑)。いい感じにいつも通りリラックスしてできたかなと思います。

――藤原滋記選手(スポ4=兵庫・西脇工)から先頭と36秒差でタスキを受け取りましたが、どのような気持ちでスタートされたのでしょうか

 先頭と何秒差とか、もらった位置が何位とかは全然分からない状況でした。もらう直前に順大が近くにいたのが見えたので、「とにかくもう塩尻さん(和也、順大)に着いていくしかないな」というのはそこで決めて、スタートした瞬間からとにかく何も考えずに着いていくことだけ意識していました。

――往路終了後に相楽駅伝監督が事前に『(太田選手には)「塩尻君や山梨学院大のニャイロ(ドミニク)あたりは、厳しそうだったらチャレンジしなくていいよ」という話もしていた』とおっしゃっていましたが

 パッて周りをみたときに、前にどんどん行ける選手が塩尻さんくらいしかいなかったので。自分の中でも前々から「やらないで後悔するよりはやって後悔した方がいいな」というのがあるので、「付いていってダメだったらそれはそれでしょうがないからとにかく付いていけるところまで付いていこう」と思って最初から付いていくことを決めました。

――13キロあたりで後ろから2人の留学生に追いつかれた時、塩尻選手ではなくこの2人について行きました。余裕があったのでしょうか

 そうですね。塩尻さんのペースが途中から上がらないのは感じていて、そこでいい意味で自分も足が休めたし、だいぶ余裕も持てて。登りも留学生が速いペースとはいえ、付いていけないペースではなかったので余裕もあって付いていきました。

――監督車から何か言葉は掛けられましたか

 掛けられましたが、覚えてないです(笑)。

――結果的に区間6位で順位を5つ押し上げ、チームに勢いをもたらしましたが、ご自身ではどのように評価されていますか

 現時点の力は出せたのかなとは思うんですけど、それでもいざゴールしてみれば、自分の感覚では「そこそこかな」と思った中で同じ学年の東洋大の相澤(晃)だったり、来年も戦わなきゃいけない青学大の森田さん(歩希)だったりというところと50秒近く離されてしまって。そういったところでまだまだ力不足を感じました。また、周りからも「快走」だったり、「よくやった」という言葉を掛けられている時点で「自分はそれくらいの力で見られているんだな」というのを感じたのでさらにレベルアップしないと戦っていけないのかなと思いました。

――点数をつけるならば何点でしょうか

 7、80点ぐらいですかね。

――エース区間、『花の2区』というのはいかがでしたか

 終わってみてからも注目されている区間だなとは思うし、それなりにキツいコースだなと思いました。

――やはり最後の坂は

 あれはヤバいです(笑)。

――事前対談では、箱根の意気込みとして「借りを返す」という言葉をいただきましたが、昨年の借りは返せましたか

 去年の借りは返せたかなとは思うんですけど、ことしもさっき言った相澤や森田さんにこてんぱにやられちゃったので、また来年どこかで勝たないとなと思っています。

――部員日記には「この走りを『凡走』と呼ばれるようにしたい」と書かれていました

 「あれぐらいじゃまだまだだな」と言われるくらいの力を付けないと。やっぱり(1時間)7分前半とか6分台を出して「快走」とかって言われるぐらいの力じゃないと他大のエースとは戦えないのかなと思います。

――往路は太田選手以外、全員4年生が出走しました。4年生の走りはどうご覧になっていましたか

 滋記さんの走りはほとんど見れなかったんですけど、4年生が4人いるなかで1人だけ2年生で走らせてもらったのは光栄な事だし、その4年生と最後のタスキが繋げたことも良かったなと思います。

――往路を3位で終えた時のチームの雰囲気はいかがでしたか

 悪くはないけど、今回のチームが目指したところは総合優勝で、その総合優勝する為には往路優勝というのが絶対条件だと思っていたので、それができなくて「ちょっとヤバいな」というのも少し感じました。

――復路はどのようにレースをご覧になっていましたか

 もう自分たちは応援することしかできないからとにかく応援して、「頑張ってもらいたいな」という気持ちで。自分が走るよりもなんかちょっと緊張して見ていました(笑)。

――どこかの区間に応援に行かれたのですか

 7区と8区と9区は行って、あとそのままゴールに行きました。

――2日目の大手町で、谷口耕一郎選手(スポ4=福岡大大濠)を待つみなさんには笑顔が見られました。その時の心境は

 あの時はもう全然携帯も見ていなくて。でも4位か5位だなとは思っていたので「ヤバい」と思ったんですけど、急に3位と言われて。その場にいた早稲田の選手はもう全員状況がつかめなかったし、東海大の選手も日体大の選手も全員何が何を言ってるか分からなくて。その中の3位で、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)のシードとかも懸かっていたのでちょっとうれしかったですね。

――総合3位というチームの結果に関してはいかがですか

 あくまで目指していたところは総合優勝で、それに遠く及ばなかったというのは悔しさを持たないといけないし実際悔しかったんですけど、全日本終わってシードを落としちゃったというところで今回3位に入って、(全日本の)シードを獲得できたというのはチームとして最低限だったのかなと思います。

「自分らしく」

『花の2区』でも果敢に攻める走りをした太田

――箱根が終わり、4年生が引退されましたがいなくなっていかがですか

 なんかめちゃめちゃ変な感じです(笑)。一緒にいる時間が長い学年だったので、きょうの練習もいなくてなんかまだ慣れないですね。

――特に石田康幸選手(商4=静岡・浜松日体)とは高校時代から一緒だったと思いますが

 弟のように可愛がってもらったので、まあそんなに可愛がってくれたかはわかんないですけど、僕からしたらめちゃめちゃ可愛がってもらったし、めちゃめちゃ仲良くさせてもらって。最後、直接タスキはつなげなかったんですけど、往路というところでつなげたし、2人とも去年失敗しちゃった分、ことし1年特に康幸さんは活躍してくれて。お互い成長を感じたというのもありますし、やっと2人で1つ結果を出せたのかなと思います。

――今後の試合の予定は

 1月20日ぐらいに都道府県対抗駅伝があって、走るかわからないんですけど選ばれているのでそこに向けて調整して。あとは唐津(唐津10マイルロードレース)とか福岡クロカン(日本選手権クロスカントリー)とかそっちの方ですね。ハーフとかはあんまり出る予定はないです。

――来春は弟の太田直希選手(浜松日体高)が入部予定ですが、そちらに関してはいかがでしょうか

 なんか大人になったというか、年を重ねるごとにやっぱり仲良くなるもんですね。昔はそんなに仲良くなかったんですけど、最近は今帰っても普通に喋ります(笑)。

――直希選手は全国高等学校駅伝、智樹選手は箱根と、大きな駅伝に出場されましたがレースの前後に連絡を取ったりしたのですか

 都大路(全国高等学校駅伝)の前は「何か変にプレッシャーを与えても」と思って連絡しなかったんですけど、終わってから「そこそこだったね」みたいな(笑)。箱根前は弟から「箱根頑張れ」みたいなのが来たんですけど、僕も「ちょっと頑張るわ」みたいな(笑)。

――来季からは上級生になります。チームにおけるご自身の役割はどのように考えていらっしゃいますか

 今回それなりに走れたからこそ周りからの注目もあるだろうし、来年は新入生が強い子ばっかり入ってきていろんな意味でワセダは注目されると思うのでそれに見合った結果を残さないといけないと思います。新入生もまた育てていかないといけないし、最上級生の4年生の1個下ということでまたそれも支えないといけないし、役割が増えてくると思うんですけど、それでも自分らしくというところは貫いていこうかなとは思っています。

――最後に来季の目標を教えてください

 箱根が終わったばかりでまだ具体的に先のことは考えていないんですけど、一番最初の対校戦は関カレ(関東学生対校選手権)とかになると思います。前回は(1万メートルが)9位で入賞できなかったですし、ことしも去年入賞した選手がいっぱいいるのでその選手に勝って、最低限入賞であわよくば表彰台くらいまでいけたらなと思ってます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 宅森咲子)

◆太田智樹(おおた・ともき)

1997(平9)年10月17日生まれ。175センチ、60キロ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル14分05秒92。1万メートル29分09秒06。ハーフマラソン1時間02分48秒。2017年箱根駅伝8区1時間8分32秒(区間14位)。2018年箱根駅伝2区1時間8分4秒(区間6位)。

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