ハンドボール部
2021.09.06
全日本学生選手権東地区シード権決定戦 9月4日 東京女子体育大学体育館
強豪・日体大とシード権めぐる熱戦 大量リード生かせず惜敗
全日本学生選手権(インカレ)のシード権を懸けて、関東学生リーグ女子1部に属する8チームがトーナメント方式で争う本大会。目標とする『インカレベスト4』に向けて早大にとっては何としても勝利が求められる試合であった。今年、関東学生春季リーグでも敗れている日体大を相手に試合序盤から順調な試合運びを見せ、前半だけで19-11と大量リード。しかし、後半に入ると攻撃が停滞し、同点に追いつかれる。延長では連続失点を喫し万事休す。11月開催予定のインカレのシード権を得ることは叶わなかった。
前半は誰もが予想しなかった早大圧倒的優位の展開が繰り広げられた。試合は早大ボールでスタート。しかし、先制点は日体大に決められてしまう。すぐにLB阿部史歩(スポ2=岩手・不来方)が速攻から得点を決め、取り返す。その後、セットオフェンスからRB阿部美幸(スポ4=東京・佼成学園女)が力強いミドルシュートで2連続得点。今までにない早大の姿を見せ、前半開始7分で日体大が早くもタイムアウトを申請。タイムアウト明けからは点の取り合いの様相を呈する。その中で光ったのは阿部美と阿部史の両45のコンビ。ディフェンスでは3枚目を守る2人はゴールをこじ開けるようなシュートで早大の課題であったオフェンスを引っ張っていく。戸惑う日体大DFの隙をつき効果的にペナルティスローを獲得し、CB村上楓(スポ2=福岡・明光学園)が得点。じりじりと点差を広げていく。しかし、波に乗る早大を止めようと両45に高めで当たる1-2-3ディフェンスを展開してくる日体大。ここで日体大の目論見を打ち破ったのはCPとしては今季公式戦初出場のLW木村百花(スポ1=東京・白梅学園)。陣形を変えたことで広がった日体大の1枚目・2枚目DFを突破し、見事にシュートを決めた。この攻撃の直後に日体大は2度目のタイムアウト。お互いにとって想定外の試合展開であることを象徴するシーンとなった。その後も早大は攻撃の手を緩めず、PV紅林詩乃主将(スポ4=東京・佼成学園女)の速攻からの得点や木村のサイドシュートで点差を広げ、最終的に8点リード。理想的、理想以上の立ち上がりを見せた。
ミドルレンジからシュートを狙う阿部史
後半に入ると、勝つためには後がない日体大はLWのシュートで先制。しかし、前半から目立っていた粗いディフェンスで退場者を出した。大量リードに加え、試合を決めるチャンスとも言える展開を迎えた早大だったが、両サイドからのシュートを好セーブされ、得点の機会を逸してしまう。さらに、数的不利が解消された日体大がRBのカットインからシュートを決めると、早大のタイムアウトを挟み速攻で2得点。日体大に流れが傾き始めたこの場面で立ちふさがったのはGK川村夏希(スポ2=東京・佼成学園女)だ。逆速攻からの1対1やサイドシュートをことごとくビックセーブ。「積極的に前に出るキーピングから止まってするキーピングに切り替えた」(川村)と前後半で変えたキーピングで日体大の攻撃をシャットアウトし、攻撃が停滞している時間を耐え忍ぶ。そして、後半20分を迎えても得点できなかった早大は、ついに阿部史がカットインで後半初得点。さらに、失点後の早大のリスタートを妨害したとして日体大選手が退場に加えて失格処分となり、直後の攻撃で途中出場の桐林香奈(商4=静岡・清水東)がサイドシュートを決め、息を吹き返した。ここで一気に突き放したい早大だったが、数的優位を生かせず無得点。逆に追いつかれてしまい、熱戦の決着は延長戦に持ち越された。
チームを鼓舞する川村
延長戦前のベンチでは、さすがに選手たちの表情から疲労の色が見て取れたが、「ここまでの接戦に持ち込んだのも初めてだったので、楽しんで勝つしかない」(紅林)とポジティブな声掛けでよい雰囲気を保つ。延長が始まると、幸先よく阿部美が先制のゴール。さらに、ここまで好セーブに阻まれ続けたRW青木里奈(スポ2=東京・白梅学園)がサイドシュートでこの試合初得点を挙げた。しかし、ここから日体大の猛反撃が開始。4連続失点を喫してしまい、延長前半を3点ビハインドで終える。延長後半、何としてもシード権獲得を目指し、意地の攻撃を見せる早大。川村のピンポイントパスから青木が体勢を崩しながらもゴールにねじ込み、相手の退場を誘発。勝利へ一縷(いちる)の望みをつないだ。時間がない早大はマンツーマンに近いディフェンスを展開。しかし、エンプティゴールを狙ったシュートを外し、逆転へ残された時間も残りわずかに。決死の速攻から終了間際に紅林が得点を挙げるが、無情にも試合終了のブザー。あと1歩まで迫った強豪・日体大から金星を挙げることは叶わなかった。
得点を決め、拳を突き上げる紅林主将
「悔しいを通り越して情けなかった試合」(紅林)。そう振り返るように、前半の展開を考えると、落としてはいけない試合だったと言える。しかし、「これが全てでこれが終わりではないです」と川村が語るように、まだまだ関東学生秋季リーグ、インカレと試合が続いていく。また、次戦の相手も今回と同じく日体大。これには、「次こそ負けることは許されない」と紅林もその覚悟を語った。この敗戦が創部以来未だ見ぬ『インカレベスト4』という景色を見るための大きな糧になると信じて、ワセダセブンは歩みを止めることなく進み続ける。
(記事 杉原優人、写真 宮島真白、杉原優人)
全日本学生選手権東地区シード権決定戦 | ||||
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早大 | 25 | 19−11 2-10 2-5 2−0 |
26 | 日体大 |
GK 川村夏希(スポ2=東京・佼成学園女) LW 木村百花(スポ1=東京・白梅学園) LB 阿部史歩(スポ2=岩手・不来方) PV 紅林詩乃(スポ4=東京・佼成学園女) CB 村上楓(スポ2=福岡・明光学園) RB 阿部美幸(スポ4=東京・佼成学園女) RW 青木里奈(スポ2=東京・白梅学園) |
コメント
紅林詩乃主将(スポ4=東京・佼成学園女)
――率直な試合の感想は
悔しいですが、悔しいを通り越して情けなかった試合だなと思います。
――日体大に対する事前の対策はありましたか
ディフェンスでは、相手両45(LB、RB)のシュートが強烈だったので、2枚目の運動量を上げて高めに出るというのは徹底しました。オフェンスでは、ボールをもらう前にの動きを徹底しました。安易なドリブルをすると、すぐにカットされて逆速攻という展開になってしまうので、できるだけオフェンスミスを減らすように対策をしていました。
――前半は理想的な試合運びとなりましたが、想定内の展開でしたか
自分たちでも正直あそこまで点差が離れるとは思っていませんでした。もう少し接戦、もしくは点差が離れても2、3点差という想定をしていました。なので、あれだけ点差が離れたことで想定外の展開にはなりました。
――後半は逆に失速してしまいましたが、得点ができなくなった要因は
点差が離れて守りに入った訳ではないと思いますが、自分が行くという気持ちというより、みんながパス(の出し所)を探してしまって、体を張って点を取りに行くシーンがあまりなくなっていました。また、前半に相手は0-6ディフェンスで守っていましたが、後半に入って1-5ディフェンスになったことで攻めきれなくなったことが一番の失速した原因かなと思っています。
――延長戦となり疲れの色も見えましたが、入る前はどんなことを思っていましたか
正直あそこまで点差が離れていた試合を同点まで持ってこられて、延長になったことは自分の中で信じられないという気持ちが大きかったです。延長に入るときに気持ちを切り替えることがあまりできなかったですが、その中でもこのチームでできる試合が少しでも長くなったという声があったり、ここまでの接戦に持ち込んだのも初めてだったので、楽しんで勝つしかないというのはずっと言っていました。
――次戦は関東学生秋季リーグで同じく日体大との対戦になりますが、意気込みをお願いします
このチームでは3度目の正直ですし、私だと大学4年間一度も勝てていないので、4年目の正直と言ってもいい対戦だと思っています。ましてや今回、8点差を逆転されて今まで以上にみんなが悔しい思いはあると思うので、次こそ負けることは許されないと自分では思っています。なので、次こそは点差が開いた状態で最後まで勝ち切れるように、これから切り替えて頑張っていきたいと思います。
川村夏希(スポ2=東京・佼成学園女)
――試合を振り返っていかがですか
この試合はみんなが勝ちたいとずっと思っていたし、必ず勝たなければいけない試合だったと思います。 その中で、前半8点差まで点差がついたものの、そこから巻き返されて結局負けてしまったというのは自分たちの実力不足だったのかなと感じます。
――日体大戦に向けて、チームではどのようなディフェンスの対策をしていましたか
日体大のキーパーソンが両45(LB、RB)だったので、そこにはフリーでシュートを打たせないようにしようということで、2枚目は高めにいくような変則的なディフェンスを取るようにしていました。また、1-5や1-2-3という、早大が高いディフェンスもオプションとして準備していました。それはなかなか発揮できませんでしたが、0-6で2枚目を高くしたディフェンスで、両45(LB、RB)に打たせないというところはできていて良かったと思います。
――後半からはなかなか点が入らず苦しい時間が続きました。ディフェンスの際に、後ろからどのような声かけをしましたか
オフェンスで点が取れなくてもディフェンスで守れば、結局プラスマイナスゼロになると考えていました。オフェンスで点が取れなかったときにディフェンスでどれだけ持ち堪えるかが重要だと思ったので、常にここを守らなければいけないというような声かけを意識して出していました。
――同点に追いつかれて延長に入りましたが、その時チームではどのような話をしましたか
延長戦になったのは自分たちのミスから招いてしまったことだということで、少し雰囲気が落ちた状態で、反省の声も出ました。しかし自分は、延長をするということはこのチームでもっと長く試合をやっていけるということだからもっとプラスに考えて、この雰囲気を崩さないといけないと考えました。プラスの声かけをして、いい入りができるように意識しました。
――速攻を止めるなど、良いキーピングが目立ちましたが、自身のプレーを振り返っていかがですか
前半は勝っていましたが、自分自身はあまりうまくいっていないというのが一番にありました。後半にそれを持ち直さないとこのままいくことはできないと考えたので、もっと落ち着いて自分を俯瞰して見るようにしました。積極的に前に出るキーピングから止まってするキーピングに切り替えたことは自分の中でも良かったのではないかと思います。
――相手のシュートの特徴などは事前に対策をしていましたか、それとも試合の中でつかんでいったのでしょうか
ある程度は事前にビデオを見てこのような癖があるのだと考えていたのですが、両45(LB、RB)に対するディフェンスがうまくいっていたので、その他のシュートが多かったです。そのあたりのシュートに関しては、試合の中でつかんでいくような展開になりました。
――次戦は再び日体大戦ですが、意気込みを聞かせてください
今回は負けてしまったのですが、これが全てでこれが終わりではないです。これからリーグ、インカレと始まっていくので、このチームでもっと長く試合ができるように、自分自身ももっと成長して、チームの最終的なインカレベスト4という目標に進んでいければいいなと思います。