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競走部

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2020.12.25

【連載】箱根事前特集『臙脂の誇りを取り戻す』第11回 太田直希

 今年の早大の注目株を挙げるとするなら、太田直希(スポ3=静岡・浜松日体)は外せない。7月の早大競技会の5000メートルで自己ベストを更新すると、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では区間新記録の走りを見せ、流れを加速させる。さらに初出場となった日本選手権で1万メートル27分台をたたき出すなど、今季大きな飛躍を遂げ、早大のエースへと駆け上がった。そうした大躍進の裏では、太田にどのような変化があったのだろうか。成長を続けるエースの今に迫った。

※この取材は11月28日に行われたものです。

「(コロナでの自粛期間は)決して無駄ではなかった」

11月28日の練習後に撮影

――まずは今季の振り返りとして、2月の唐津10マイルロードレースについて伺います。実業団選手に交じって2位に入りましたが、振り返っていかがでしたか

 あの時はとにかく先頭についていくということしか考えていなかったので、タイムや順位を狙っていたわけではなかったのですが、結果としていいタイムや順位がついてきたので、そこは自信になりました。

――それまでの練習の調子はいかがでしたか

 そこまで調子が良かったわけではなくて、練習はできていたんですがいい感覚という感じではなかったので、あそこまでいけるとは思っていなかったです。

――その後、解散期間になる前の今季の目標はどのようなものでしたか

 今シーズンは関カレ(関東学生対校選手権)やインカレ(日本学生対校選手権)で入賞を狙っていたので、そこに向けて練習していたのですが、コロナで全部なくなってしまったので一度取っ払ってしまいました。

――解散期間は実家に帰って練習されていましたか

 はい。4月1日から6月15日くらいまで家にいました。

――どのような練習をされていたのですか

 ずっと一人でジョグしたり、ポイントをやったり、一人で走り込んでました。ランニングコースがあったわけではなかったので、信号で止まりながら走っていました。

――スピード強化や距離を踏むなどテーマはありましたか

 とにかく体づくりしようと思っていたので、スピードじゃなくて距離をたくさん踏んで足づくりに目的を置いてやっていました。

――例年と比較して練習量は多かったのでしょうか

 多かったですね。関カレとかがあってこの時期は走らないので、やっぱり距離が落ちてしまうんですが、大会とかがない分走り込めたという感じでした。

――筋トレなどは取り組んでいましたか

 五味さん(五味宏生氏、平19スポ卒)から全体にトレーニングメニューを出していただいていたので、それを週4くらいでやってました。

――やはり練習が積めているという感覚はありましたか

 5月はけっこう自分一人でもやれているなという感覚はありました。

――4月はいかがでしたか

 4月の初めくらいに膝を痛めて故障していたのであまり走らなかったです。(治るのに)少し時間がかかって、走れるには走れるんですが満足に走れない期間が1カ月くらい続いたので、本格的に走れたのは5月に入ってからくらいですね。

――次の月にかなりの距離を踏んだのですね

 膝を痛めていた時も最初の方は焦ってしまっていたんですが、大会もないし治すことに専念しようと監督(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)からも言われていたので、そこで一度走る量や回数を減らしました。逆に補強トレーニングとかに重きを置いてやっていて、5月にやっと走れるようになってそこで距離も走りました。

――1人で走ることになって目標など立てづらかったのではないですか

 大会もなかったので難しかったんですが、とにかく体をつくることを目的にして走っていました。

――モチベーションにしていたことはありますか

 特になかったんですが、嫌でも1歩目走り出したら走れたので、そこはほぼ無理やり走っていました。

――コロナでの解散期間が今に生きているなと思う部分はありますか

 その期間に補強トレーニングなどで体が作れたのがけっこう今に生きているなと思うので、あの期間は決して無駄ではなかったかなと思います。

――前の自分と比べて強くなったと感じる部分は

 体とかは分からないんですが、スピードはけっこう出しやすくなったなと感じています。自粛前よりはトラックで走ってもスピードが出る感覚はありました。

躍進を重ねた秋シーズン

――6月に大学に戻ってからはどのような練習をされていましたか

 こっち(所沢)に来てから7月に記録会が開催されるとわかったので、それに向けてスピード練習とかをメインにやっていました。調子もいい感じで走れていました。

――そして早大競技会では5000メートル13分56秒の自己ベストを更新しました。タイムが出そうだという感覚はありましたか

 けっこういい練習ができていたので、少なくとも13分台は出そうという感覚ではありました。

――タイムについてご自身で納得はされていますか

 もう少しいけたかなという感じはあります。特に目標タイムとかは定めてなかったんですが、あの時の感覚だったらもう少しいけたかなという感じでしたね。

――夏は所沢での集中練習でした。例年と異なり、大変だったことはありますか

 やっぱり暑かったので、普段の夏合宿なら三部練をやるんですが、午前中が暑くて走れなくて補強になったりしたので、走行距離としては落ちてしまったなというのはありました。でも良かったこととしては、自分の過ごしやすい場所で過ごせたのでストレスがかかりにくい状況だったのかなと思います。

――消化具合はいかがでしたか

 7月に少しけがをしてしまって夏合宿に出遅れたんですが、合流してからは普通に練習できていたので、消化率としてはそこそこだったなと思います。

――どのあたりをけがされていたのですか

 足の甲が少し炎症を起こしていました。その時は走ることもできなかったので、まるまる1カ月くらいは休みましたね。

――では今年は補強の期間が長かったのですね

 そうですね。なので五味さんとも相談しながらやれることをやったという感じでした。

――秋シーズンに入り、最初におっしゃっていた目標に変化はありましたか

 トラックの大会がなくなったので、やっぱり秋の駅伝シーズンで区間賞を取ることを夏以降の目標として走っていました。トラックから駅伝の目標にシフトした感じです。

――そして10月のトラックゲームズ in TOKOROZAWA(トラックゲームズ)、10000メートルで28分19秒でした。このタイムは出せると思っていましたか

 目標にはしていましたが、確証はなくて、絶対出るという感覚はなかったですね。

――タイムが出たこととしてどんな要因が考えられるでしょうか

 やっぱり前に中谷(雄飛、スポ3=長野・佐久長聖)がいたことと、あとは2月の唐津みたいにとにかく前についていくことをした結果かなというふうには思います。

――日本選手権の切符も獲得しました。どんな気持ちでしたか

 あの時は実感がわかなかったです。自分が入学した時には日本選手権に出られると思っていなかったので、本当にうれしかったですね。

――そして全日本大学駅伝対校選手権(全日本)の話に移ります。区間新記録を更新されました。狙っていたと話していましたが、調子は良かったのですか

 そこそこという感じでした。

――単独走となりました。どんな気持ちで走っていましたか

 先頭で来ることは予想がついていたので、後半の人たちに1秒でも楽させようという気持ちでとにかく自分で押していくということと、後ろを離すということしか考えてなかったです。そうしたら結果的にいい走りができました。

「2月の唐津は大きな転機だった」

――今シーズン、とても調子が良いように見えますが、ご自身でどう評価しますか

 今年は本当に全部自信持って走れましたし、自分でも力がついたなという感覚はあるので、上の人たちとも戦えるという気持ちをもって走れたことが好調につながっているのかなというふうに思います。

――自信というのはどのようなものですか

 主に走る前の自信ですね。入学した時とかだと距離に対する不安とか、周りの強い選手と戦えるとかいろいろなことを考えていたんですが、やっぱり今年はいけるんじゃないかというふうに思いながらスタートラインに立てたので、それが一番大きかったと思います。

――自分のことに集中できるようになったということでしょうか

 そうですね。周りが気にならなくなったという感じですね。

――今シーズン、自信を持って走れる要因というのは練習が積めていたからというのもありますか

 練習が積めていたのもあるんですが、やっぱり一番は大会の結果が出るようになったという部分が一番大きいです。2月の唐津でいい感じに走れたのがけっこう自信になったので、今も力ついたなと思いますし、スタートラインに自信もって立てますし、2月の唐津は大きな転機だったかなと思います。

――大会の結果として、ご自身で振り返ってこれは良かったなという試合はありますか

 唐津とトラックゲームズはよく走れました。

――ご自身でここまで成長すると思っていましたか

 いや思ってなかったです。去年からここまで走れるようになるとは思ってなかったので、練習とか走ってた結果がいい方向に流れたのかなと思います。

――どの時期の走り込みやトレーニングなどが好調につながったと考えますか

 やっぱりけがしているときの補強もそうですが、自粛期間の走り込みとかは今にけっこうつながっているところはあるのかなと思います。そこでゆっくり自分のペースで走り込みができたというのはすごく大きかったなと思っています。

――今、自分の強みや自信としていることはどこだと考えていますか

 ずっと言っているんですが、きつくなってから粘れる走りかなと思います。

――今年はその点がかなり成長したという感覚があるのではないですか

 そうですね、昔よりも速いペースで粘れる感覚はあります。

――その一方で、今課題としている点はどんなところでしょうか

 僕のレースはほとんどなんですが、ずっとラストスパートで負けてしまうことが多くて、2番とかになることが本当に多いんですよ。だから自分の勝ちパターンを見つけたり、ラストスパートのキレをもっと増やしたいということをやらないと勝てる選手にはなれないのかなと思います。

――勝てる選手になるために、練習の中で意識していることはありますか

 単発的なスピード練習とかだと、自分はスピードがあまりなくて負けてしまうことが多いので、レースの時は相手がきつそうだなと思ったら自分が前に出るなどは今シーズンけっこうやってきました。

――チームの話に移りますが、太田選手から見て今のチーム状況はどう感じていますか

 みんなけっこう結果も出始めたので、チームの勢いも乗ってきているのかなと思います。

――今年度から上級生になりました。意識が変化した部分はありましたか

 僕らの学年が核になると思っているので、練習とかでもきつい場面で僕らの学年が引っ張ったりということはするようにしています。

――チーム内で意識している選手などはいますか

 やっぱり中谷ですかね。けっこう追いつけてきたかなという感覚はあるんですが、まだまだ勝てない部分や力の差を感じる部分もあります。でもやっぱり中谷には勝ちたいなと思います。

――練習でも意識されていますか

 最近(※取材は11月28日)は中谷と練習することもあるんですが、やっぱり中谷の方が強いので僕が離されてしまうこともあって、そこはやっぱり力の差だなというのは感じます。

「ゲームチェンジャー的な役割があると自覚している」

取材後の12月4日、日本選手権で27分台に突入し笑顔を見せた

――続いて今後に向けての話になりますが、今はどのような練習をされていますか

 全日本が終わってから一度距離を踏んでスタミナを作って、ここ2週間くらいは強度の高いスピード練習とか入れて、日本選手権とかのレースに対応できるような練習をしています。

――日本選手権に向けて、今の心境や目標などお聞かせください

 初めて出るのでまだ実感があまりないんですが、他に出るのは絶対に強い選手ばかりなので、日本選手権はチャレンジすることを目標にして走りたいなと思います。

――順位やタイムなどは狙っていますか

 タイムは自己ベストをとりあえず出すことを目標にやっています。2組あるので速い方の組に入れたら順位も狙おうかなと思ったんですが、直接速い方の組に関与することはできなかったので、まずは自分のできる限りの力を出そうかなと思います。

――今の調子はいかがですか

 調子は上がりつつという感じですね。最近は徐々に走れてきました。

――走りでもメンタルでも、今の自分で去年と違うなと思う部分は

 走りの部分でも、何度も言っているんですが自信を持って力がついた感覚はあるので、自分でもいけるんじゃないかというふうには去年よりも強く思っています。去年だったら流れを作ってもらったところに自分が継続させるというようなつなぎの部分で走っていたと思うんですが、今年はゲームチェンジャー的な役割があるとは自覚しているので、そこは去年とは全然違うと思いますね。

――ここからは東京箱根間往復大学駅伝(箱根)の話に移ります。箱根での希望区間などはありますか

 希望区間は特にないんですが、チームに貢献できるように、流れを作ったり変えたり、状況を変えたりといったインパクトのある走りができたらなと思います。

――今年の箱根事後対談では往路を走りたいとおっしゃっていましたがいかがですか

 往路は走ることになるとは思うので、そこは覚悟はしています。2区はちょっときつそうなのでやめておきます(笑)。

――意識している選手や大学はありますか

 やっぱり全日本を終えて結果として5番で、前に4つ大学があるので、そこには勝ちたいなと思います。

――チーム全体としては、3位以内の目標達成のために今何が必要だと思いますか

 やっぱりチーム力ですね。人数が少ない分一人一人の力は大きなものになると思うので、チーム全員が3位以内を狙って練習したり、チームの雰囲気を盛り上げたりということができないと、なかなか3番というのには届かないと思うので、そこは絶対に一人一人に自覚を持ってやらないといけないなと思います。

――全日本では1人で押す力が必要な区間でしたが、箱根では他の選手との駆け引きも必要になる可能性もあります。その点についてはいかがですか

 高校の時はけっこう1人で走ることも多くて、でも全国高校駅伝(都大路)では1区を走っていて、両方経験はできているので、そこに関しての不安は特にないですね。

――今年はエースといわれる存在になっていると思います。そうした期待をされることに関してどう感じていますか

 期待は去年よりは高いと思うので、そういう期待にはできるだけ応えたいなと思います。

――ここから日本選手権、箱根とどのように過ごしていきたいですか

 まずは日本選手権、高いレベルでいい環境で走らせてもらえるのでそこに集中して、終わったらチームと一緒に練習して、チームの雰囲気を良くしたり、そういってチーム一丸となって箱根に向かって戦えるように練習していきたいと思います。

――最後に、今の箱根に向けての目標、意気込みをお願いします

 箱根はチームで総合3位以内を狙っているので、自分自身全日本で取り逃した区間賞を目標に、そこまであと1カ月間詰めの甘さが出ないように練習していきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 朝岡里奈)

◆太田直希(おおた・なおき)

1999(平11)年10月13日生まれ。170センチ、53キロ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分56秒48。10000メートル27分55秒59。ハーフマラソン65分24秒。解散期間中は月750キロも走り込んだという太田選手。チームでは5番目の距離だそう。豊富な練習量で培った力を、箱根では存分に発揮します!

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