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2020.05.10

東京六大学秋季リーグ戦 1960年11月11日 神宮球場

早慶戦史に刻まれた奇跡 窮地を救った『一世一代のバックホーム』/早慶6連戦 優勝決定戦再試合

TEAM 10 11
早 大
慶 大
(早)安藤―野村

 0-0で迎えた11回裏、慶大の攻撃。強力打線が早大エース安藤元博(教3=香川・坂出商)に襲い掛かり、気づけば無死満塁に。三塁走者は俊足のリードオフマン安藤統夫、打者は4番・渡海昇二。絶体絶命の場面で、渡海の放った飛球は『弱肩』の右翼手・伊田保夫(政経3=大阪・明星)の元に飛んだ。「終わったな」(徳武定之主将、商4=東京・早実)――。誰もが慶大の優勝を確信した次の瞬間、早慶戦史に残る奇跡のプレーが早大の窮地を救う。

 球場の都合で1日休養日が設けられ、11月11日に行われた優勝決定戦再試合。学生やファンを熱狂の渦に巻き込む早慶決戦は5試合目に突入した。早大の先発は安藤元。ここまで3試合、29回を投げて2失点という破格の快投を続けている背番号『11』だったが、さすがに疲労が蓄積してきたのか被安打や四死球が増え始める。初回から1死三塁の先制機をつくられると、4回1死一、三塁、5回1死二塁など次々にピンチを迎えてしまう。しかし、安藤元は崩れない。初回は相手中軸をあっさり打ち取ると、4回も後続を断って無失点。5回は安藤統に右前打を打たれたが、本塁を狙った二塁走者を所正美(4=県岐阜商)が好返球で捕殺した。バックにも助けられた安藤元はその後も好投を続け、スコアボードに0を並べていく。

 一方の打線はこのカード好調の相手先発・角谷隆の前に『あと一本』を出すことができない。2~4回には先頭打者の出塁から2死三塁、無死一、二塁、2死一、二塁と立て続けに好機を迎たものの、主砲・徳武をはじめ後続が振るわなかった。最も得点に近づいたのは6回。四球と犠打で2死二塁の好機を迎え、打席には前の試合の9回に殊勲の三塁打を放った代打・鈴木悳夫(教2=静岡・清水東)。この場面から救援した2番手・清澤忠彦に対して2ボール0ストライクと打者有利のカウントをつくると、3球目をきれいに右前に運んだ。しかし、二塁走者の村瀬栄治(4=県岐阜商)は相手右翼手の好返球によって本塁で憤死。直前に早大が見せた好守備をやり返されるかたちとなった。その後も打線は走者を出しながら得点を奪うことができず、試合は2試合連続の延長戦に突入する。

 延長10回も清澤と安藤元が得点を許さず。そして伝説の11回がやってきた。早大は2死から途中から右翼の守備に入っている鈴木勝夫(商3=福岡・戸畑)が出塁するが、盗塁失敗でスリーアウト。するとその裏、安藤元は先頭の1番・安藤統を四球で出塁させてしまう。さらに2番・榎本博明に右前打を許すと、俊足の安藤統は一気に三塁へ。無死一、三塁で中軸を迎える、絶体絶命の状況に追い込まれた。ここでバッテリーは次打者を敬遠して無死満塁とし、4番・主将の渡海との対決を選択。さらに早大・石井連藏監督(昭30商卒=茨城・水戸一)は渡海が右打者である点などを考慮し、タッチアップに備えて守備に定評のある鈴木勝を右翼から左翼に、逆に『弱肩』の伊田を左翼から右翼に回した。しかし初球、安藤の投じたシンカーを渡海は右方向に打ち上げた。浅い飛球だったが、三塁走者は安藤統で、右翼手は伊田。「終わったな」――。しかし、伊田は落下点のやや後方から打球に走り込み、その勢いのままバックホーム。理想的な打球への入りから投じられた送球はワンバウンドして捕手・野村徹(政経4=大阪・北野)のミットに吸い込まれ、滑り込んできた安藤統とクロスプレーに。アウトかセーフか――。宇野秀幸球審の右手が上がった。アウトだった。

 『一世一代のバックホーム』を称される劇的な好返球で瞬く間に2死となると、安藤元はその後のピンチを切り抜けた。宇野球審は日没のため、2試合連続となる引き分け再試合を宣告。これにより、賜杯の行方はついに6戦目へ持ち込まれることとなった。

優勝決定戦再々試合の記事に続く(5/17更新予定)

(記事 池田有輝)

※学部は判明者のみ記載、名前と学年は当時

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