野球部
2020.05.02
早川世代 成長の足跡 ~東京六大学リーグ戦 過去6季プレーバック~
4季目の飛躍、主力として戦い続けた軌跡/2018年秋季リーグ戦
高橋広前監督(昭52教卒=現神戸医療福祉大監督)の最後のシーズンとなった、2018年の東京六大学秋季リーグ戦。開幕カードの法大戦は勝ち点を落としたが、以降は高橋前監督が理想とした、『守り勝つ野球』で勝利を積み重ねた。華の早慶戦では、優勝こそ逃したものの、慶大の胴上げを阻止し、勝ち点を奪取。2位に輝き、指揮官の退任に花を添えた。そんなチームにおいて、『早川世代』の面々も大きな飛躍を遂げたのである。
躍進の原動力となったのは、リーグ1位の防御率1.94を記録した投手力だ。そんな強力投手陣を中継ぎとして支えたのが、早川隆久(現主将、スポ4=千葉・木更津総合)と今西拓弥(スポ4=広島・広陵)の2人。とりわけ早川は防御率1.72を記録し、もどかしい結果が続いたこれまでのうっぷんを晴らすかのような活躍を見せた。その要因は夏の間の取り組みだ。「もう後がない」という思いのもと、練習ではひたすら自分を追い込んだ。また、OBの竹内諒(平29スポ卒=現Honda鈴鹿)から教えを受け、カットボールを習得。バットの芯を外す変化球を携え、速いテンポでストライクを投げ込み、打者を圧倒した。中でも法大2回戦と明大2回戦ではロングリリーフとして、『流れを呼び込む投球』を見せ勝利に貢献。早慶戦は2試合連続失点と悔しい結果になったが、未完の大器は再び輝きを放ち始めたのである。
明大2回戦に勝利し、チームメートとハイタッチをする早川
昨年から救援の一角を任されていた今西は、主にクローザーとして腕を振った。シーズンを振り返り、変化球の制球力の向上と、ペース配分の改善を収穫と語った今西。以前から課題としてきたスタミナ面も、立大2回戦では先発として6回無失点に抑えるなど改善の兆しを見せた。それに伴い、連投や長いイニングの登板の際も安定してパフォーマンスを発揮。連投となった慶大3回戦でも「緊張していて、足も震えていた」という状態ながら、見事に試合を締めくくった。これまで以上の充実した内容でシーズンを戦い抜いた。
このシーズン、野手でレギュラーをつかんだのは、瀧澤虎太朗(現副将、スポ4=山梨学院)と金子銀佑(教4=東京・早実)。昨冬、共にリハビリに励んでいた2人は、お互いを奮い立たせるために、こんなことを語り合ったという。「今はこうやってリハビリやってるけど、いつか一緒に神宮でプレーしよう」(瀧澤)。その言葉は遂に現実のものとなる。けがから復帰した東京六大学春季フレッシュリーグから打撃などでアピールに成功した。
瀧澤は、レギュラーの座を勝ち取る。そして迎えた開幕戦、前日は「全く寝れないくらい緊張してしまった」というが、抑え込まれていた法大・三浦銀二から9回にソロ本塁打を放った。その後の試合でも長打を連発し、中軸として打線をけん引。しかし、長丁場のリーグ戦の中で、次第に打撃に迷いが生じ、早慶戦ではスタメン落ちの悔しさも味わう。レギュラーとして活躍し続ける難しさを痛感させられるシーズンとなった。
開幕戦でソロ本塁打を放つ瀧澤
一方の金子は、開幕カードではベンチに入ることすらできなかった。苦しい状況の中でも、「いつ呼ばれてもいいようにしっかり練習していました」と、出番の時を待っていた。すると、内野守備の強化と相手エース・田中誠也の対策を兼ね、立大1回戦で初スタメンを果たす。この試合で、ダメ押しの犠飛を放つなど勝利に貢献。以降はレギュラーとして安定した守備と小技を正確にこなす、いぶし銀の働きを見せる。早慶戦では「本当に良い状態だった」という打撃で3戦5安打を放ち、右肩上がりの成績でシーズンを終えた。
個人として飛躍を遂げた満足感と同時に、強く感じたのは「来季は何としても優勝できるように頑張ります」(今西)、「この秋の悔しさを忘れずに春に向けて頑張っていきたい」(金子)というように、あと一歩で優勝を逃した悔しさ。また、「エースになれるようにしっかり自信もつけてやっていければ」(早川)、「自分がチームを引っ張っていく」(瀧澤)というように、主力としての責任感も芽生えていた。優勝という忘れ物をつかむため、さらなる躍動を誓い、3年目を迎えるのだった。
(記事 杉﨑智哉、写真 中澤紅里氏、江藤華氏)
早大打者成績(早川世代のみ掲載) | ||||||||||
名前 | 試 | 打 | 得 | 安 | 本 | 点 | 振 | 球 | 失 | 率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
今西拓弥 | 6 | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | .000 |
金子銀佑 | 11 | 34 | 2 | 10 | 0 | 2 | 5 | 2 | 2 | .294 |
柴田迅 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1.000 |
瀧澤虎太朗 | 14 | 47 | 3 | 11 | 1 | 2 | 9 | 2 | 1 | .234 |
早川隆久 | 8 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .667 |
真中直樹 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ― |
吉澤一翔 | 2 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | .000 |
早大投手成績(早川世代のみ掲載) | ||||||||||
名前 | 試 | 勝 | 敗 | 回 | 安 | 四 | 振 | 責 | 失 | 率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
今西拓弥 | 6 | 3 | 1 | 16 1/3 | 11 | 7 | 15 | 3 | 3 | 1.65 |
柴田迅 | 2 | 0 | 0 | 3 1/3 | 4 | 2 | 4 | 1 | 1 | 2.70 |
早川隆久 | 8 | 1 | 1 | 15 2/3 | 12 | 7 | 25 | 3 | 5 | 1.72 |
2018年東京六大学秋季リーグ戦星取表 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | チーム | 勝ち点 | 勝 | 負 | 分 | 勝率 | |||||
1 | 法 大 | 4 | 9 | 3 | 1 | .750 | |||||
2 | 早 大 | 4 | 9 | 4 | 1 | .692 | |||||
3 | 慶 大 | 4 | 9 | 5 | 0 | .643 | |||||
4 | 明 大 | 2 | 5 | 6 | 3 | .455 | |||||
5 | 立 大 | 1 | 4 | 8 | 0 | .333 | |||||
6 | 東 大 | 0 | 0 | 10 | 1 | .000 |
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