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競走部

2020.01.05

『番記者の目』 井川龍人

初めての箱根で受けた洗礼 この経験を飛躍のステップに/井川龍人

 「『ニッポンのお正月』といえば――」。そう言われて真っ先に挙げられるのが東京箱根間往復大学駅伝(箱根)だ。テレビ画面の向こう側で、沿道に立って目の前で、新春の陽光を浴びながら熱戦を繰り広げる選手の姿を見て憧れを抱く人は少なくないだろう。熊本・九州学院高で数々の実績を残して早大に入学したルーキー・井川龍人(スポ1)もその一人だ。そして井川は今回の箱根で3区に出走した。

 1、2区の奮闘もあり、井川がタスキを受け取ったのはトップからわずか1秒差の2位。すぐに先頭を走る鈴木塁人(青学大)についてレースを進めた。ただ、鈴木の3キロの通過が8分13秒。想像以上に速いペースで進む展開で井川はある判断をする。「わざと離れて自分のペースで行った方がいい」。5キロを前に、鈴木から距離を置いた。

 しかし、ここからが正念場だった。その後東海大と国学院大に捕らえられるとついて行けず、ずるずると後退してしまう。「耐えて耐えて」。ラップタイムを落とさないように心掛けたが、序盤のハイペースの影響で脚が動かない。18キロ付近ではライバルの田澤廉(駒大)にも抜かされた。結局4区の千明龍之佑(スポ2=群馬・東農大二)に8位でタスキリレー。「小さい頃から目標にしていた大会に出られたことにうれしさもありますが、自分の区間ですごく順位を落としてしまった悔しさもあります。今は悔しさの方が強いです」。初めての箱根路は洗礼を受けるかたちとなった。

初めての箱根で3区に出走した井川

 実は、11月下旬から始まる早大伝統の集中練習では脚の状態を考えてメニューをコントロールしながら箱根に調整してきた井川。その面での不安はなかったというが、では調子は良かったか?と質問すると遮るようにこう言った。「一年間の積み重ねがここで出たと思います」。そして、「入学してずっと自分に甘んじていたところが多くあったように感じています」と続けた。基本的な流しやジョグのペースが高校時代に比べておろそかになっており、そう気付いたのは1区16位に終わった11月の全日本大学駅伝対校選手権(全日本)でのこと。その後はスパートを意識した流しやジョグでのペースアップを取り入れたが、「(気付くのが)すごく遅くなってしまった」と今回の箱根には間に合わず。その成果を発揮することはできなかった。

一気に世代トップクラスの座に駆け上がった高校2年時。全国高校駅伝(写真、左が井川)ではエース区間の1区を2年生最高記録(当時)の29分16秒で走破した。早大でも2年目の飛躍に注目だ

 この悔しさを力に変えてみせる。他の選手と同じメニューを消化するだけでは、さらなる強さを獲得できないと実感した井川。「設定された練習プラスアルファのことを1年間継続してできたら」と、その目はすでに前を見据えていた。

 思えば、高校1年時の全国高校駅伝(都大路)では3区18位で順位を4つ落としてしまった井川。しかし翌年には全国高校総体5000メートルで2年生ながら日本人2番手の6位に食い込むと、都大路では1区10キロを当時の2年生最高タイム(29分16秒)で走破し区間2位と、一気に世代トップクラスの選手へと駆け上がっている。このように、これまでも敗戦を経験して力をつけてきた。「ここから挑戦者の気持ちで、田澤などを狙ってやっていきたい」。この箱根をステップに、井川はきっと、もっと強くなる。

(記事 岡部稜)

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