野球部

2017.10.27

番記者の目 第4回 檜村篤史

走攻守そろった選手へ――『守備の男』の試練、そして成長/檜村篤史

 当会野球班では『番記者制度』が存在する。一年間の取材活動を通して担当選手を追いかけるのだ。この秋は春から担当選手を見続けてきた番記者が選手個人に焦点を当てた記事を執筆。各カード終了後に掲載していく。題して『番記者の目』。第4回は檜村篤史(スポ2=千葉・木更津総合)。

 檜村篤史(スポ2=千葉・木更津総合)――打撃もさることながら、高校時代から守備力、中でも地肩の強さと送球の正確さに定評がある『守備の男』だ。早大でもそのレベルの高さを買われ、ことしの春から正遊撃手を務めている。

堅実な守備力を買われ2年生ながら早大のショートストップを務める

 「派手さはないけど堅実」(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)。檜村の基本に忠実なプレーは首脳陣から信頼を得た。ことしの東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)で初めてベンチ入りすると、全試合でフルイニング出場。犠打や進塁打でチームに貢献し、立大3回戦ではリーグ戦初本塁打を記録するなど、開幕前に不安視していた打撃面で上々のスタートを切った。

 一方、守備に悔いが残った。春季リーグ戦での失策は2。いずれも、足の速い打者に焦ったことによる送球の乱れが原因だった。神宮特有の雰囲気や、早大の遊撃手を担うというプレッシャー。元々緊張するタイプの檜村にとって、これらはプレーの足かせとなっていた。「プレッシャーは試合中ずっと感じています。自分、本当にメンタルが弱いんですよ」。苦笑しながら口にした言葉には、弱点を把握していながらも克服できないでいるもどかしさが込められていた。

痛恨の一塁悪送球。「やってしまった」

 真価が問われる2度目のシーズン。試練が檜村を待ち受けていた。秋季リーグ開幕戦である明大1回戦、3回無死一塁の場面で送りバントを試みるが失敗。苦手意識のある犠打で併殺に倒れる。さらに立大1回戦、2-1と早大優勢で迎えた8回の守備だった。先頭打者が放った打球は檜村の前へ転がっていく。平凡な遊撃への当たり。しかし、捕球時にすでに一塁に到達しようとしている打者の姿が目に入り、慌てて投げた球は低くなった。これを一塁手が取れず、試合の終盤に同点の走者を許すことに。流れは立大のものとなってしまった。結局、この回に逆転され3-4で敗戦。自身のミスをきっかけにピンチを招き、1点を守り切ることができなかった。
 試合後、檜村は「自分がやってしまった。責任を感じている」と声を詰まらせた。勝敗を左右する大事な場面で出た送球ミス。失策を恐れるあまり動きが固くなり、捕球に慎重になるあまり送球に余裕がなくなる。この負の連鎖を断ち切れずにいた。

 しかし、この失策で檜村は変わる。キャッチボールでは相手の胸めがけて投げるということを一層意識するようになり、守備練習ではスローイングを徹底的に見直した。「思い切り投げようと決めた」。そこには、マイナス思考に陥りがちだった檜村はもういない。失策への恐怖心を捨てて臨んだ東大戦では、かつての安定感を取り戻していた。
 打撃面でも調子を上げている。東大1回戦で犠打を2度成功させ、9回には右越え適時三塁打でダメ押しの1点を奪った。2回戦では得点圏に置いた走者を確実に返し3打点。続く法大戦でも勢いは止まらない。2回戦の第1打席で先制点につながる右前打を放つと、同点で迎えた第2打席では一時勝ち越しとなるアーチが飛び出した。勝負強さと、春から心掛けてきた『逆方向への意識』の結実。二つの相乗効果が檜村の好調を裏付けている。
 規定打席数には満たないが、第6週を終えて打率は3割。秋季リーグ戦開幕前に目標として掲げていた数字を達成しようとしている。強豪・木更津総合高で4番を任されていた檜村は、打順も8番で落ち着く気はないだろう。

逆方向を意識することで打撃も上り調子だ

 抜てきの春と、試練の秋。酸いも甘いもかみ分けた神宮デビューの一年間で、檜村はぶれない信念を確立した。「怖がってプレーしていたらミスしてしまう。ポジティブに、思い切って」。その結果、やりづらさを感じていた守備に加え、打撃でも好調ぶりを示すようになった。目指すは走攻守三拍子そろった選手。とくとご覧あれ、次世代を担う逸材の成長の軌跡を。

(記事 大浦帆乃佳)