アーチェリー部
2012.06.24
全日本学生女子王座決定戦 6月24日 静岡・ヤマハリゾートつま恋
日体大を下す大金星を上げ3位
「なにか見えない力みたいなものを感じてしまいました」――。試合後、守屋麻樹監督(平3政経卒=東京・杉並)はそう言って顔をほころばせた。学生アーチェリーの全国大会で、唯一の団体戦である全日本学生女子王座決定戦(王座)。早大は、2009年の初出場時以来となる第3位に輝いた。ただの3位ではない。最大の強敵・日体大を下して勝ち取った3位だ。目標としてきた優勝はならなかったものの、「もしかしたら(日体大に勝つのは)創部史上初のことかもしれない」と池内麻実女子リーダー(スポ4=兵庫・甲南女子)も口にするほどの偉業を、選手たちは成し遂げた。
全国のリーグを勝ち抜いた16校が日本一をかけて挑む王座は、試合形式も雰囲気も普段の試合とは大きく異なる。トーナメント形式の決勝ラウンドで的前に立てるのは各校3選手のみ。1エンド(2分間)にひとり2本ずつ全6本の矢を放ち、4エンド終了時の合計得点で勝負が決まる。池内、鈴木優香(スポ4=秋田南)、野村美加(スポ3=石川・金沢桜丘)という3人の精鋭で臨んだ早大は、1回戦を難なく突破すると、2回戦で今大会の伏兵・長崎国際大と対戦。守屋監督もヤマ場と予想した通り接戦となったが、最終的には1点差という僅差で勝利をおさめた。そして迎えた準決勝。相手は、西の強豪・同志社大だった。優勝するためには勝たなければならなかったが、やはり敵は強かった。エンドを重ねるごとに点差は開いていき、201-209で敗退。「すごく悔しかった」と、池内と鈴木の4年生2人は涙を流した。
だがここで落ち込んではいられない。同じく優勝を目指してやってきたであろう日体大との、3位決定戦が待っていた。「切り替えていこう、絶対賞状もらって帰ろう」という守屋監督の言葉で、選手たちに笑顔が戻る。男子やOB・OGの大きな声援のなか試合は始まった。3位決定戦は両校一斉に矢を放つのではなく、一方が3本放ってから、もう一方が3本放つ。観衆の目が、その1本1本に集中する。日体大先攻の第1エンドは47-47の同点。第2エンド終わって98-94と早大が一歩リードした。しかし日体大がそのままで終わるわけがない。第3エンドで脅威の追い上げを見せ、144-148と逆転された。「みんな負けることが頭をよぎってしまったと思う」と池内は言う。「でもその中で、『いや勝つんだ』と」。早大先攻となった最終エンド。鈴木、池内、野村の順で1本ずつ放たれる矢は見事に的の中心を捉えていき、その日のエンド最高となる54点をたたき出した。後攻の日体大はまさかの44点にとどまり、最終スコアは198-192。早大サイドは歓喜に沸いた。逆転の逆転で勝利。何度となく戦い、いつもいつも一歩及ばず負けてきた相手だった。ひと月前の関東学生リーグ戦でも勝てなかった相手だった。その日体大に、やっと勝った。しかも全国の舞台で勝った。紺碧の空の歌声が、感極まる選手たちをつつみ込んだ。
「いやもう最高。本当に最高のチームですね」(守屋監督)。王座を最後に、4年生は事実上の引退を迎える。この1年間、たくさん話し合っていろんなことに取り組んで作り上げてきたチーム。先頭に立って引っ張ってきた池内は「やれるだけのことはやってきた」と振り返る。その自信と、サポートや応援の力、すべてがひとつになってこの結果を生みだした。日体大からの勝利という、大きな歴史を刻んだ。そして達成できなかった最大の目標は、次世代に受け継がれる。来季こそ、全国の頂点へ。守屋監督が『最強のエース』と評する野村を中心に、新チームの挑戦は始まっている。
★最終ラウンドはエンド最高得点
日体大が4点リードで迎えた3位決定戦最終エンドは、この日最高の54点。アーチェリーの的は中心から10点、9点と点数が決まっており、10点の円の半径はわずか8センチメートルだ。最後まで続いた集中力が、早大に栄冠をもたらした。
◆結果(決勝ラウンド)
早大 3位
1回戦 ○早大198-170日本福祉大
2回戦 ○早大206-205長崎国際大
準決勝 ●早大201-209同志社大
3位決定戦 ○早大198-192日体大
◆コメント
守屋麻樹監督(平3政経卒=東京・杉並)
――初出場時以来の3位、おめでとうございます
いやあ…まあ正直ね、池内も鈴木も日本一を本気で狙ってたので、それはちょっと悔しい部分もあるんですけども、たぶんいまのうちの実力を全て出し切った結果だと思います。準決勝の同志社さんもすごい強かったですし。でも3位決定戦で日体さんに、たぶん女子は初めて勝ったと思うんですよ、私の記憶では。3エンド目にひっくり返されても、最後の最後4エンド目にほとんど真ん中に入れて勝てたというのは、本当にすごいことだなと思います。今回のチームは本当にひとつになっていて、メンバーだけではなくてOBやOGの方たちなどいろんな人の力がすごくあったので、みんなで勝ったという感じがしましたね。なにか見えない力みたいなものを感じてしまいました。
――日体大に勝ったというのは
やはり大きいですね。関東のリーグ戦で毎年負けてましたから、その相手にこの舞台で勝てたということはすごく自信にもなりますし、嬉しいです。
――2回戦でダークホースと言われていた長崎国際大と当たりました
今回の王座であそことの戦いはあるだろうとなんとなく予想はしていて、あそこに勝つのがヤマだろうと思っていたので。本当にあのときもみんなの力がね、外れるわけがないというか、入るしかないという雰囲気だったので、1点という僅差ではあったんですけども、勝つだろうなという試合でした。
――準決勝は同志社大に8点差での敗戦でした
やっぱり強かったですね。まあもっと出せたとは思うんですけども、風が吹いたりとかいろいろある中で、みんなが後悔することなく撃ち切ったと思うので、この結果はしょうがないと思いますね。
――準決勝のあと、選手たちに何と声をかけられましたか
あのときは、4年生の2人は本当に日本一を狙ってたから残念で悔しかったと思いますし、私もすごく悔しかったんですけど、そこでその悔しい気持ちに引っ張られてしまうと、次まだもう1試合あるので。いかにその気持ちを切り替えられるかというところに自分をすぐ持っていくことができて、野村もたぶんそういうふうに考えてたと思うんですね。だから選手たちには、もう1試合あるから切り替えていこう、絶対賞状もらって帰ろうと言って、テンションを戻すようにしていました。
――3位決定戦、2エンド終わって一歩リードしていたところから、3エンド目で逆転されたときは
逆転されたときも、あまり不安はなかったんですよ。みんなちゃんと撃ってるけど、たぶん風に流されたりした射があったので、別に変な射をして当たらなかったわけではなかったから、もうこのままやれば大丈夫と信じてました。今回のチームは『感謝』の気持ちがすごくあるチームだから、いろんな人の力が、みんなの力があるっていうことで、最後もそういうふうに、みんなの力があるから信じてやってこうと声をかけて。ほんとに最後、ポンポンポンポンっといい具合に。1本の8点以外は全部9点か10点でしたね。
――最終エンドを終えた時点でこれはいったなと
そうですね。向こうがたしか、6点とか撃ってたんで、ああいったなと思って。3エンド目で逆転されたから4エンド目で先攻になったんですね。だからもう思い切ってこれだけのことができたので、3エンド目に逆転されたのも、もしかしたら意味があったんじゃないかなと。
――きょう一日全体を振りかえって
準決勝で負けたこと以外は、事前にずっとみんなでやってきたイメージ通りだったので、いろんな大きな力を感じながら全部出し切って、すごくいい一日だったと思います。
――このチームはこれで最後となりますが、どんなチームでしたか
いやもう最高。本当に最高のチームですね。応援も含めてひとつになるためにいろいろ話し合いもしたし、みんなでいろんなことやってきたので、それが最後の最後でぶわーっとひとつに結実したかなと思います。
――ここからまた新チームが始動します
女子に関しては、野村美加という最強のエースがいるので、彼女を中心に。池内とは全然違ったリーダーシップの発揮のしかたをしてくれると思うので、彼女の強みを私はサポートするという形で、ことしとはまた別の、違うタイプのいいチームを作っていきたいなと思います。
池内麻実女子リーダー(スポ4=兵庫・甲南女子)
――3位おめでとうございます
ありがとうございます。やはり目指していたところは優勝だったので、準決勝で負けてしまってすごく悔しかったです。でも日体さんも悔し涙を流していて、チームのみんながここで切り替えるのが大事ですよ、と言って支えてくれたので、きちんと気持ちを切り替えて3位決定戦に臨めて、そこでの勝ちはとても嬉しいです。日体大に勝てたのも初めてで、もしかしたら創部史上初のことかもしれないので、リベンジできたってことは本当に嬉しいです。
――一番印象に残っている場面は
3位決定戦の最終エンドですね。逆転されて、みんな負けることが頭をよぎってしまったと思うんです。でもその中で、「いや勝つんだ」と思って自分たちを信じて最後の一本めであきらめずに射てたというのが大きいですね。
――女子リーダーとしての今季は
つらいこともたくさんあったんですけど、今となってはやってきてよかったと思っています。女子リーダーでいられるのはきょうが最後なのですが、やれるだけのことはやってきたという自信はあります。
――今日で引退となりますが、4年間振り返っていかがですか
チームの目標として絶対に王座で優勝するということを掲げてきたので、やはり王座には思い入れが強いです。今までの王座もそれぞれ思い出があるんですが、最後の最後に3位になれたということはとても大きいです。
――後輩へ
ことし優勝できなかったので、その分のサポートはきっちりするつもりです。それが社会人になっても続けられるかはわからないんですが、4年生の間は下級生のことを全力でサポートしていきたいと思うので、また来年の王座で優勝することを目指して頑張ってほしいです。
鈴木優香(スポ4=秋田南)
――日体大に勝って3位という結果は
準決勝で負けてしまったときは、もう本当に悔しかったですね、優勝を目標としてきたので。でも気持ちを切り替えて3位決定戦に臨んだので、最終的には気持ちよく終われたかなと思います。
――きょうの調子は
本当はもうちょっと、チームを引っ張っていけるくらいの点数を出したかったですけど。すごい悪かったというわけでもないので、まあまあでしたね。
――準決勝が終わったとき、涙されていました
終わった瞬間に流した涙は、悔しくて流した涙でした。それから3位決定戦始まるまでの間も、何度か私泣いてたんですけど、それは周りが声をかけてくれたことに対するありがとうの気持ちとか、これで最後だから頑張ろうっていう気持ちから流した涙もありました。
――そのようにして3位決定戦へ切り替えていけたと
そうですね。3位決定戦の的の前に弓とか全部移動したときには、次の試合いかなきゃって、意外とすぐ切り替えられました。
――1、2回戦とは形式が違う3位決定戦の雰囲気は
ほかの人に見られているというのもあるので、それまでよりも緊張してたんですけど、でもそれ以上に、さらにその緊張を上回る、楽しさがありました。きょねんまでは、足とか震えちゃうくらい緊張してたんですけど、ことしはそれがなくて、すごい強気でいけました。今までチームでイメージ作りとかいっぱいしてきたおかげかなと思いました。
――きょうでチームからは引退ということになりますが、この4年間を振り返って
私は結構、楽しかったこととか嬉しかったことよりも辛いことの方が多くて、思うようにいかなかったりして、辞めたいなと思ったり、休部した時期もあったんですけど、戻ってきて、こうして王座という場に立てたことが、すごい幸せです。
――ことしのこのチームは、どんなチームでしたか
言われたことをこなすだけのチームじゃなくて、一人ひとりがちゃんと考えて、自分のこともしっかり話せる。それによって他の人のことも分かって、じゃあこうしていこうというふうに、よりいい方向に持っていけるような、どんどん変化していくチームでした。
――新チームをつくっていく後輩へ向けて
チームとして悪い方向にいってしまうようなことは全然心配してないです。ただ、現状維持ではなく、よりよいチームになっていけるように、またみんなで頑張ってほしいなと思います。
野村美加(スポ3=石川・金沢桜丘)
――3位おめでとうございます。振り返っていかがですか
優勝を目指し頑張ってきたので、そこは悔しいんですけど、でもやっぱり3位という結果をしっかり残すことができてすごく嬉しいです。
――日体大に勝ったことについては
あまり意識はしていなかったんですけど、終わってみて「日体大についに勝った!」と言われて、あとからとても嬉しかったです。
――4年生の存在は
本当に大きかったです。後ろに信頼できる4年生の方がいらっしゃって、すごく落ち着けるというか、そのおかげで自分が堂々と射てたんだと思います。毎エンド3人のうち私が最後に射っていたんですけど、みなさんが早く射ってくださるので、最後の一本に30秒ぐらい(時間を)もらえました。一回矢をセットして、4年生の方と目を合わせて落ち着いてから、伸び伸び射てました。
――これからは女子チームを引っ張っていく存在になります
今年は4年生の方がいて自分が堂々とやってこれたのが、明日からは自分が女子リーダーでみんなを引っ張っていきながら、さらに自分が戦力として上で走っていかなくてはならないので。きっと大変だろうというのは自覚しているんですが、それでも「やってやるぞ」という気持ちで頑張っていきたいと思います。