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バレーボール部

2023.09.08

【特別企画】早大OB特集  V1東京グレートベアーズ・武藤鉄也選手

 この度、V1東京グレートベアーズ(東京GB)のミドルブロッカー、武藤鉄也選手(令4スポM修)の特集が実現した。武藤選手は早大現役時代に副将を務め、2年時からのインカレ連覇記録を3に伸ばした。卒業後は大学院に通いながら、FC東京でプレー。FC東京は2022年をもって休部することが発表されたが、半年後にネイチャーラボに譲渡され、「東京GB」として再始動した。昨年、チームは8位という成績に終わったものの、MAPPAやProductionI.Gといった強力なスポンサーとタッグを組み、声優やアニメ映像を駆使したホームゲームで、バレー界に新たな旋風を巻き起こした。

 そして、プロバレーボールチームとしてさらに上を目指す東京GBが盛り上げるのは、インドアバレーだけではない。武藤選手は夏の間、ビーチバレーにも挑戦。今回は「ビーチバレージャパン」の本選出場に合わせて取材させていただいた。プロバレーボール選手・武藤鉄也の過去、現在、そして未来をお届けする。

※この取材は8月15日に行われたものです。

早大での思い出

冷静にチームを俯瞰する姿勢で勝利を導き続けた武藤副将(2019年インカレ)

――自己紹介をお願いします

2020年スポーツ科学部卒、東京都武蔵村山市出身、東京グレートベアーズの武藤鉄也です。オフの日は、家でゆっくりしたり、サウナに入ったりします。この辺だと錦糸町によく行っています。

――以前お聞きしたことがあるとは思いますが、改めて当時早大を選ばれた理由を教えてください

 僕は、中学3年生の時に東京都の選抜として練習試合をさせてもらったときに、今の上井草の体育館で早実高と練習試合をしました。その時にたまたま松井先生(松井泰二監督、平3人卒=千葉、八千代)がいらっしゃって、アドバイスをいただいて、僕の中ではすごくわかりやすかったのと、良い印象があったので早稲田に行きたいなという思いがありました。高校2年生の時に松井先生が僕の高校に来てくださって、早稲田に決めました。

――他の大学とは全く迷わなかったですか

そうですね。僕の中では硬く決まっていました。

――環境面で驚いたことや、刺激を受けたことなはありますか

練習環境としては、トレーニングが多くて、トレーナーやストレングス、メディカルなどスタッフの数も多くて、環境面で非常に整っていると思っていました。また学部では、日本トップクラスの選手、世界に出ていけるような選手が多かったので、刺激をもらいながら4年間過ごすことができました。

――23卒の方々(岩本選手、大塚選手ら)が1年生の時に、武藤選手が4年生でかぶっていると思いますが、当時のことを思い出してみて印象的な人はいますか

みんな印象に残っていて。一人一人主張が強くて(笑)、ほんとにちゃんと軸がある学生が多かったので、僕達としてはやりやすかったです。

2019年全日本大学選手権特集『結』の武藤選手(左)

――武藤選手の代の同期の印象は

僕らの代は割と個々の役割がはっきりしていました。1年生の時はなかなか大変でしたけど、4年生になるにつれて役割も出てきて、4年生のときにはまとまっていて良い学年でした。

――当時のチームの中での武藤選手の役割、立ち位置を教えてください

主将の堀江友裕選手(令2スポ卒=現堺ブレイザーズ)はアツく、チームをまとめてくれていたので、僕は副将と言う立場で、逆に冷静にするのが僕の役割だと思っていました。

――早稲田には武藤選手を始め、村山豪選手(令3スポ卒=現ジェイテクト)、伊藤吏玖副将(スポ4=東京・駿台学園)のように、「冷静なミドルの副将」のイメージがなんとなくあります

主将に合わせてでは無いですけど、それこそ4年生のカラーとして役割分担をしっかりしていました。下の学年も、受け継いでいるというわけではなくて、同じようなことがあったのではないかなと思います。

――4年間を振り返って印象的な出来事をバレーボールとプライベート両面から教えてください

バレーボールの面でいうと、3年生のインカレです。2年生から4年生までのインカレでずっと優勝していてプレッシャーはありました。特に3年生のときには特にプレッシャーがきつかった印象があります。4年生のときにはある意味プレッシャーに少し慣れてきたのは、その一個前の年で経験できたことが大きかったかなと思います。プライベートで言うと、部の同期もそうですけど、他の部活の同期・先輩も後輩も仲良くなることができ、それこそ今でもスポーツ科学部からスポーツ選手になった人たちや、普通に企業に就職した人たち、いろんな人たちとつながりができたことが印象的でした。

――早大での4年間は武藤選手にとってどういったものですか

 僕の中では根強く残っています。今まで小中高とバレーボールをやってきましたけど。大学の4年間はすごかったので、バレーボールもそうですし、私生活でもプライベートの方でも強く残っているかなと思っています。

――今の早大の試合を見たりをしますか

見ます見ます。結構日常的に見ます。

――今の選手たちの印象を教えてください

今もかなり良い選手たちが集まってきていて、やはり力があるなと思いますね。僕の時にも、力のある選手は何人かいましたけど、多分今の方がもともとのポテンシャルがある高い選手が多いなと言う印象です。

――監督や現役の選手とのかかわりはありますか

大学を卒業して大学院に行ったので、今もコーチとして名前も残っています。オフシーズンしか行けないですが。

――大学院ではどういったことを学ばれたのですか

大学院では、松井先生の研究室にそのまま進んだので、チームスポーツコーチングをメインに、スポーツ科学部の領域の中の他の領域もたくさん勉強させて貰いました。研究事体はバレーボールの戦術についてしました。

Vリーグに入って

対談中の武藤選手

――進路選択をするうえで悩みなどはありましたか

 もともとVリーグでやりたくて、ただいろいろあって進路選択が難しいなかで、先生から大学院を薦めていただきました。先のことを考えたときに大学院に行きたいなと思ったので、まず大学院に行くことに決めました。

――東京GBの前身、FC東京を選んだ理由は

大学院だけにするつもりも少しあったのですが、先生から続けられるなら続けたほうが良いと言われたということもあって、学校に通いながらバレーボールをすることができるチームがFC東京しかなかったので、選びました。

――大学スポーツと企業スポーツ、プロスポーツの違いを教えてください

 今はバレーボールが仕事なので、全てバレーボールに全振りじゃないですけど、プレーなら具体的に言えば戦術面とかフィジカルとか。いろいろな部分で大学よりもよりシビアにバレーボールに注力するのがプロスポーツだと思っています。それから、グレートベアーズになってからビジネス面、単純にバレーボールだけやるのではなくバレーボールを発展させていくためにプロとして何ができるかというところで、自分たちのチームを大きくするためであったり、自分たちの給料を上げるためであったり、スポンサー活動などPR活動も含めてやっていかなければならないので、広く見ることが大切だと感じています。

――企業チームであったFC東京時代は会社の仕事などはされていましたか

 僕はしていなかったのですが、他の選手はどこかの企業に所属して基本的に午前中は仕事をして午後に練習参加するという形でした。僕の場合、午前中は大学でそれから練習という形でした。

――今はスポンサー関係のお仕事はどのようなことをされていますか

 コンスタントに入ってくる訳ではないですが、スポンサーへの挨拶、バレーボール教室やビーチバレーなどバレーボールを通してのイベントに参加することがメインの仕事です。

――廃部が決まってから、東京GBとして復活するまでの武藤選手の心の内を差し支えなければ伺いたいです

 他の選手はわからないですが、僕はわりとポジティブに考えていたのでなんとかなると思っていました。

――それはなぜですか

 バレーボールを続ける場合でもなんとかして移籍先を見つければ良いと思っていて、仮にもし移籍先がなくてバレーボールができないとなっても、次のステップへの一区切りだと思っていたのでそこまでナイーブにはなってなかったですね。

――ホームが東京のチームの存続についてどのように思いますか

 僕は東京出身なので、できればやっぱり東京で選手としてもその先もバレーボールを続けたいという思いがあります。その東京のチームが無くなるってなったときは悲しいじゃないですけど、結果的にネイチャーラボの方々に受け入れてもらって今も続けられることはすごくありがたいことです。できればグレートベアーズだけじゃなくて関東にもっとチーム数が増えるとうれしいと思いますね。

――東京生まれ東京育ちで、東京のチームに所属すると周りからの応援を感じたりしますか

 そうですね。基本的には東京の人に応援してもらうことがベースだと思うので、そういう意味では東京で育った選手が東京のチームで活躍することはとても良いサイクルなのかなと思っています。

――東京GBは東京出身とそのほかの出身の選手の割合はどのくらいでしょうか

 6、7人、半分くらいだと思います。FC東京の時は数人しかいなかったのでどんどん増えてきていてすごくうれしいです。

――練習環境など、バレー面で変わったことがあれば教えてください

 東京GBでは1日練習することができます。FC東京の時は半日しかなかった分ゲーム練習しか時間的にできず、技術練習ができなくてなかなかスキルのレベルが上がっていかないというのが、僕が受けていた印象です。去年から外国人のコーチが来て、半日の複合的な練習はもちろんあって、その残り半分で技術的な練習もかなり質を高く行えているので、結果として順位はあまり変わっていないですが、選手のスキルのレベルは段々上がっているのかなと思います。

――ケアに非常に気を付けていらっしゃると早稲田スポーツの過去の記事で拝見しました。どんなことをされていますか

 ベースは大学時代から変わらないですけど、プロになって一つの怪我が選手生命を最悪終わらせてしまう可能性や長期離脱の可能性もあるので、ケアもそうですけど基本的にはフィジカルトレーニングです。ただ筋力を上げるのではなくて、パフォーマンスにつなげるのと、怪我の予防。それから自分のなかで足りない、弱いと思うことをトレーナーとコミュニケーションをとって、その中で段々それを強くしていってパフォーマンス向上、怪我の予防につなげることは、大学よりもレベルアップしてやれているかなと思います。

――チームとして、ホームゲームを盛り上げる工夫をたくさんしていらっしゃると思いますが、プレーしていていかがですか

 単純にすごいなというのはありますね。FC東京から東京GBになってやっぱり違いますし、それは企業チームとプロチームとの違いでもあると思います。それがベースで今後は会場には満員のお客さんが当たり前のようなバレー界、東京GBだけじゃなくて他のチームも同じように盛り上がっていかないとバレーボールの未来は厳しくなっていくと思うので、その先駆けじゃないですけど今年も先頭を走っていけるようにやっていきたいなと思っています。

ビーチバレージャパンの振り返り

予選は山田選手とペアであったが、本選は直前に変更があり亀山選手と共に出場した。拮抗した展開が続いたが、デュースの末惜しくも敗れた1戦目 VS長山・立谷ペア(埼玉)

――ビーチバレーをすることになった経緯を教えてください

 最初が笠利真吾選手と亀山拓巳選手(いずれも東京GB)でツアーに行っていました。その時から僕はもともとビーチの練習はオフシーズンにちょこちょこやっていて、ちょっとやりたいなという気持ちもありました。ツアーが終わって次に大会に出ようという時に丁度やりたいという選手もいなかったので、それで山田大悟選手と僕でやりますということになったのが始まりです。

――チームとしてビーチバレーの大会に出場することになった理由はありますか

 バレーボールとビーチバレーの垣根を越えてじゃないですけど、グレートベアーズにビーチバレーの選手が所属していたりもしますし、インドアの選手がオフシーズンなのでビーチバレーに出て、ビーチバレーを盛り上げることも先陣を切ってやるということで参加したという感じですね。

――大会の振り返りをお願いします

 結果としては予選通過して、トーナメントで負けてしまったのですが、インドアの選手がビーチの大会にワイルドカードじゃなく予選からでて本戦にいくことがまず初めてだと思うので、初めてそういうことをやれたってことがまず良かったです。実際やってみてビーチバレーがすごく楽しかったですし、最終的に高校の先輩の白鳥勝浩さんという、ビーチバレー界で言うならレジェンドみたいな方と試合することができたのですごく良い経験でした。

――インドアとビーチの違い、楽しさ、難しさなどを教えてください

 インドアであれば僕はミドルブロッカーなので、基本的にサーブレシーブとかトスなど基本的にはやらないプレーを、ビーチバレーでは2人で全部やらなければいけないので、僕のなかではいろいろプレーできることがまず楽しいです。インドアだとある程度身長がないと苦しい部分がビーチバレーだと小さい選手でも技術で補っていけるというところに奥深さを感じます。単純に動きが悪い中でやることもそうですけど、やっぱり僕と亀山や、大悟で50代の2人に普通に負けるんですよ。普通に負けるってことは、もちろんフィジカル的にもバレーのスキル的にも間違いなく僕らの方が上だけど、ビーチバレーをやってみると向こうのレベルが上だったりすることもあるので、そういう意味ではものすごく奥深いスポーツだなって。多分インドアよりも2人でやる分いろんなプレーができなきゃいけなくて、6人制の方がベーシックなバレーだけど、ビーチはベーシックなバレー+トリッキーなプレーがあって、そういう意味ではかなり面白いなという風に感じましたね。

相手の粘り強いバレーに終盤追い上げられたものの、勝ちきった2戦目 VS宮本・谷野ペア(石川)

――やはりインドアにも活かされるのでしょうか

 そうですね。単純にやっぱりビーチは風がある分、レシーブするときの間をつくらなきゃいけなかったりとか、高さを出すと風で揺れちゃうので高さで時間を生み出すのではなく間で引き付けることで時間を生み出したりとか。強打もそうですけど、ボールのコントロールであったり体のコントロールだったりとか、使っている筋肉とかも多分違うと思うのですが、普段使わない筋肉だからこそインドアに活かされる部分は凄く大きいのかなと思います。

これから

笑顔を見せる武藤選手

――チームとしての課題、展望を教えてください

 チームの課題としては、去年までずっと8位で、ここから打開するためにはそもそもの技術を上げていかなければいけないということが一番大きいのかなと思っています。去年までは組織力や戦術を遂行していくというところは他のチームにあまり劣っていないなと個人的に思っているのですが、やっぱり高さが無い分、基礎的なスキルやパワーで補っていかなければいけないです。そういうところを改善していって、アタックの効果率やサーブの効果率を上げていくことができれば闘えると思っていいます。今新しい監督も来て個々の技術、それからチームの戦術、スタイルとして今まで上げ切れなかったところを改善して上げていこうとしているので、もうそんなに時間はないですけど、そこをレベルアップしていければ、10月の開幕から3月までの間で、そこでもまた成長していけると思いますし、改善できれば順位も上がるのかなという風に思います。チームとしての目標はもちろんV1優勝を目指していますけど、まずはしっかり1つでも2つでも順位を上げていってという風に考えています。

――個人としての目標を教えてください

 個人としては、去年はなかなかアタックの部分で苦しんだところがあるので、新しくセッターも加入してくるのでコミュニケーションをとりながらその部分を改善しつつ、他のサーブやブロックはよりレベルアップしていけるように今取り組んでいます。

――今のご自身の持ち味は何ですか

 今も攻撃のスタイルや軸は左利きのミドルということであまりない形なので、そこは一つの武器だと思っているのですが、サイズがVリーグのミドルの中だと小さい方なので攻撃は幅を使っていかなければいけなかったり、ブロックはしつこさがないといけなかったり、サーブも強いサーブと戦術的なサーブを使い分けて、小さいからこそいろいろ工夫してやっていかなければいけないなと思います。

――精神面ではチームの中でどのような存在になりたいですか

 コートの中では若い方なのでチームをまとめるというよりは、そこまで考えているわけではないですけど、コンスタントに試合に出て一定のパフォーマンスを残したいと思っています。波をつくらない、監督から見れば計算できる選手になることが今後生き残っていく上で大事になると思うので、いずれはチームの中心となって精神的な支柱になることはそうですけど、自分の今年の目標、今の目指すところとしてはコンスタントにパフォーマンスを発揮できることが大事かなと思います。

――色紙に書いていただいた「躍進」の意味について伺いたいです

 単純に順位を上げることが一つと、去年かなりインパクトがあることをチームとしてしたのでそれをさらにレベルアップしていけるようにということが一つと、結果としてバレーボールで躍進を遂げたいなという感じですね。

――長期的なご自身の目標、キャリアプランを教えてください

 今考えている中では、選手として続けてその後はコーチとしてやっていきながら、ゆくゆくは大学院に戻って研究したいと思っていて、それも研究だけでなくコーチングと両立しながらやっていきたいと思っています。選手でやれるところまでやってコーチで経験積みながら大学院に戻って、松井先生のように大学で教えながら現場をもつというのが一番理想的かなと思っています。

――10月からのリーグ戦に向けて意気込みをお願いします

 今年はさっきも言いましたけど順位を上げる、結果として目に見える形で成長を遂げたいと思っているので、10月の開幕までの準備期間がもの凄く大事だと思います。新しい監督と新しい選手が来て、今の段階でも必ずいけると僕は思っているので、まず開幕に向けてしっかり準備をして。始まったらいろいろな問題が起きるだろうし苦しいときもあると思うんですけど、それをしっかりチームで解決して、必ず結果として目に見える形で去年よりも成長したということが言えるようにしたいなという風に思っています。

――最後に早稲田の現役の選手たちに一言、アドバイスや激励をお願いします

 常勝というか勝つチームになっていると思うので、去年インカレの優勝を逃しましたけど、基本的にはやっぱりやっていることのスタイルは間違っていないと思うので、それをどれだけ自分たちが信じてやりきれるかが重要だと思います。しっかり自分たちがやっていることに自信を持ちつつ、目先の勝ちとかリーグ戦優勝とかインカレ優勝ということではなくて、自分たちの組織にしっかり目を向けてやりきることができれば、結果に結びつくと思います。そういう風に自分たちのチームを大事にしてもらいたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集・写真 五十嵐香音、井口そら)

◆武藤鉄也(むとう・てつや)

1997(平9)年11月5日生まれ。190センチ。最高到達点335センチ。東京・東亜学園高出身。2020年スポーツ科学部卒業。2022年スポーツ科学研究科修了。現東京グレートベアーズ。背番号18。

 
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