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バレーボール部

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2022.10.28

【第2回】日の丸『5番』を背負って戦った軌跡

 大塚達宣副将(スポ4=京都・洛南)の日本代表活動も3年目となった。ネーションズリーグや世界選手権ではスタメン出場、また途中出場でも活躍を見せるなど、今や日本を代表するアタッカーにまで成長した大塚。日本人トップレベルの選手たちと世界を舞台にしのぎを削る中でどんな成長を遂げたのだろうか。日の丸を背負い戦った日々に迫った――。

 

※この取材は10月10日にオンラインで行われたものです。

 

日本代表での活動を振り返って

ネーションズリーグ第3週・丸善インテックアリーナにてサーブを打つ大塚(提供:日本バレーボール協会)

 

――日本代表活動お疲れさまでした。日本代表も3年目となりますが、代表に選出された際、1年目2年目と意識や気持ちの面での変化はありましたか

 昨シーズンは東京オリンピックをはじめとする国際大会に全部出場させていただきました。そのときのメンバーが今シーズンも堅いということはないと思っていたので、インカレ(全日本学生選手権)やVリーグでの活動を評価していただいて選んでいただけたと思っていて、それはありがたいことだなと感じます。だからこそ今年も自分の良いところを発揮して勝負していこうという気持ちで、今シーズンに臨みました。

 

――日本代表としての今シーズンに挑む中で個人的に掲げたテーマはありましたか

 アウトサイドヒッターにはそれぞれいろんな特徴があると思います。(OHには)守備が得意な選手、攻撃が得意な選手がいるとは思うのですが、今の日本代表チームをみていて(攻守)両方できることが前提で、どちらかといえばこういう特徴があるという選手ばかりだと感じました。そういう選手じゃないとやはり日本代表という舞台では戦っていけないと思ったので、まずは攻守ともに安定させること、そして自分はやはり高さを意識してそれをスパイクに生かすことで(チームに)貢献したいという思いがありました。

 

――今のお話にもあったように、代表活動期間は高いレベルの環境でそういった選手とともに練習をされていたと思います。大塚選手自身は技術を向上させるうえで「参考にしている選手」がいるのか、「選手ごとのいろんなプレーから盗んでいるのか」、どういったタイプなのですか

 「こうなりたい」とか目指している選手が明確に一人いるわけではなくて。それぞれの選手のワンプレーで「これいいな」と思ったプレーを「ちょっとやってみようかな」と思ってやってみたりしています。国際レベルのプレイヤーもそうですが、高校生とかの他のカテゴリーや、男子だけではなく女子の試合などいろいろな試合を見ることで、学べる部分も多いのかなと思っているので、時間があればいろいろな試合を見るようにはしていますね。

 

――「これいいな」って思ったプレーで練習してみたものって何か具体的にあったりしますか

 結構細かい部分になってくるので、具体的にってなると難しいところもあるのですが。点の取り方であったりだとか、声のかけ方であったりだとか見ていて参考になる部分がたくさんあったので、そういうところですかね。

 

――緊張感のあるゲームが続いた中で大塚選手が普段通りの力を発揮するために行っていることなどあるのですか

 ルーティーンは特にないのですが、練習の時からスパイク、サーブ、レシーブとそれぞれにおいて、自分の中でポイントや意識していく部分を決めて、試合になってもそのポイントのことだけを考えて練習と同じようにやるというところです。試合だからといっていつもと違う考えが働くと、いつもと違う動きになったり本来の力が発揮できなかったりすると思っていたので、練習から一貫して同じことを意識して、それで試合に臨んでいました。

 

――それはカテゴリーが大学、Vリーグ、日本代表と変わったとしても、その気持ちの作り方は変わらないのですか

 それはどこのカテゴリーにおいても変わらないですね。

 

――世界が舞台だとしてもいつも通りの気持ちの作り方をしていれば、緊張もあまりしないのですか

 いや緊張は毎試合していましたね。試合には緊張しているのですが無駄な考えをすると、プレーが良くなくなってくるので、プレーをするときはプレーに集中して先ほど言ったポイントのことだけを考えています。精神的な部分からプレーの細かいところに伝わってしまうと思っているので、余計な事は考えないようにするためにも、そういうことを意識しています。

 

――ネーションズリーグでは海外の高いブロックを前にしても、上手くブロックアウトで得点していたのが印象的でした。素人目線の質問にはなってしまうのですが、その打ち分けはブロックを見て瞬時に判断しているのですか、それとも経験から感覚的に打ち抜いている部分もあるのですか

 どっちでもありますね(笑)。はじめからこういうコースに打とうと思っていることもあれば、相手ブロックなどの状況を見て打っていることもあります。逆の視点でいえば、大学生よりも(世界の選手は)ブロックが高いので、相手ブロックが見やすいということはあります。ブロックが自分の目線より上に来るのに対して、トスも自分より上に上がってきて、その延長線上にブロックがある状況でした。半年間は自分の目線より上にブロックがくることに慣れていたのですが、大学に帰ってきてからブロックが自分の目線の位置になって見え方が変わったので、今はまだ少しやりずらい部分はあります。そういうときに(日本代表のとき)と同じようなバレーをしていてもダメだと思うので、そこに対応できるバレーをしていかなければいけないなと思います。

 

――カテゴリーごとにプレースタイルを考えているのですね

 (ブロックの)マークの付き方だとかも代表と大学では変わってくると思います。大学であると、僕に対してブロックが厚い場合もあると思いますし、そういった状況で、どうやって点を取るかというところが一つの課題にはなってきます。同じようにバレーするのではなく、頭を切り替えていかなきゃなとは思っていますね。

 

「バレーボールに人生をかけてやりたい」という思いが強くなった(大塚)

スパイクを打つ大塚(提供:日本バレーボール協会)

 

――ネーションズリーグで日本がイタリアにフルセットで勝利したとき、試合中ベンチからどんな気持ちで試合を見ていましたか

 とにかく「勝て!勝て!」って思っていました(笑)。ここまで来たら、絶対勝とうという気持ちで見ていましたね。

 

――「僕もあのコートに立ちたい」という気持ちはなかったのですか

 それぞれの試合でのメンバーがベストメンバーだったと思っています。もちろん途中で入る準備というのはいつでもしていましたし、それであのメンバーで勝ちそうだったので、とにかく「勝て!」という気持ちでした。

 

――ネーションズリーグの特に第2週、フィリピンでの開催や、日本のホームの開催のときは応援がたくさん送られていたと思います。ファンの方の応援はやはり力になりましたか

 アウェーでプレーするよりかは、ホームの雰囲気でプレーできた方が、僕たちもいつも以上に力を発揮できそうな感じがしました。それこそ東京オリンピックのときは無観客だったので、ホーム試合で、日本で開催されているけれど、あまりそういう雰囲気を感じられない部分があって。直接現地で応援してくれる方々の力はすごいなということは感じました。

 

――途中出場として出場されることが多かった中、特に世界選手権でのキューバ戦では大塚選手の出場から日本に流れがきました。「流れを変える」という点についてどういうことを意識してコートに入っていましたか

 自分らしくプレーすることで、チームの流れやリズムを変えるというのが途中出場の選手の役割だと思っています。そのときに「良いプレーをしよう」と思ってしまうと、なかなか良いプレーが出ないというのは、代表期間に途中出場を重ねるなかで感じたことでした。自分のプレーだけに集中することだけを考えていました。

 

――決勝トーナメントでのフランス戦、フルセットの末の惜敗となりましたが、「フランスを追い詰めた」というところで大塚選手にとって、日本代表にとってどんな意味のある試合になりましたか

 僕たちの目標はベスト8だったので、そこに行けなかったのでまずそこが悔しかったです。5セットでデュースに持ち込めたからこそ、勝ち切りたかったですし、そこを勝てれば目標のベスト8だったので。やはりチームとしても悔しい思いはありました。ですが、ネーションズリーグと世界選手権を通して、(日本チームが)手も足も出ないような負け方というのはなかったですし、どのチームを相手にしても「負けてしまうだろうな」という気持ちは誰も持っていなくて、チーム全員で「勝ちに行く」ということだけを考えていて、今の自分たちのレベルがそこまで来ているなと感じた試合でもありました。あとは勝ち切る力をつけていくことが、オリンピック予選もある来シーズンに向けて大事になってくるのかなと思います。

 

――ネーションズリーグ、世界選手権を通して、一番印象に残っている試合はありますか

 1試合って決めるの難しいですね(笑)。どの試合も自分にとって、成長というか「出てなんぼ」のところがありました。試合に出ることで、自分の自信が1試合ずつ積み重なっていったシーズンだったので、どの試合も全力でやっていましたね。

 

――早稲田で一緒にプレーしていた村山選手や宮浦選手ともプレーされていましたね

 大学のときに一緒にやっていた、メンバーと(日本代表の)舞台で同じコートに立てるということは素直にうれしいです。早稲田(の選手)で代表に絡んでくる選手も増えてきているのだなと感じるので、日本を代表する選手になるというのは、それだけ早稲田のバレーが通用してきているのかなという手応えにもつながります。これからももっと早稲田からの代表が増えていけばいいなと思いますし、そういうチームになれればいいなと思います。

 

――この期間を通して手応えを感じたことや自信になったことは

 国際試合において相手は関係なく、自分が戦う準備ができていたのかということを大事にしていました。今シーズンは、昨シーズンよりもコートに立つ機会が多かったので、自分自身が自信をもってコートに立っているということは感じていました。気持ちやメンタルの部分が細かいプレーに出てくると思うので、自分の戦う準備をしっかりして、自信をもってコートに立てていたということが昨シーズンと比べて大きな変化ですし、良かったことです。

 

――昨年の全カレからVリーグ、日本代表、また大学とずっと試合に出られている印象ですが、休まれていますか

 思い返してみるとここ1年以上ずっとフル稼働で試合に出ていていますね(笑)。すごくタフな日程ではあったのですが、結局バレーボールが楽しくて好きでやっているだけなので、それが代表や大学卒業後にパナソニックさんに行くというところにまでつながっているのが本当にありがたいことだなと感じます。好きでやっているだけで仕事になることは、やりたくてもやれることじゃないし、そういう立場であるということに感謝もしています。だからこそバレーボールをこれからも楽しんでやっていきたいですね。確かにタフな日程ではありますが(笑)、精神的にも肉体的にも疲労はそこまでないです。たくさん試合があるので、気持ちの切り替えをして、とても充実していますし時間の流れも早いですね。でもその中でも不安はあって。この期間ずっとがっつり負荷をかけたウエイトトレーニングができていないので、ケガが怖いです。ケガをしてしまうとせっかく積み上げてきたものが…というところもあるので、ケガをしないように、できるときにしっかり予防もしていきたいです。大学にいるこれからの期間というのは、生活も日常に戻るのでその期間にケガをしないからだ作りもしたいなと。

 

――来年度も日本代表に選出されたとして、何か目標はありますか

 選出されたらの話にはなりますが(笑)。オリンピックの予選があるので、そこの予選でしっかり勝つことと、世界ランキングをもっと高いところでキープするということがチームとしての目標になってくると思います。それに貢献できる一人になりたいと思いますし、貢献できるところにしっかり絡んでいけるように、これからの大学やVリーグで自分の力をもっと大きくしていきたいです。

 

――「日本代表」を一つの目標として掲げる選手も多い中で、それを成し遂げている大塚選手の最終的な目標は何ですか

 僕の最終目標はずっと「自分のできる限界までやる」ということです。その限界というのは、オリンピックで金メダルなのか海外のリーグでMVPを取るとか、40歳まで現役でプレーし続けるだとか、具体的にどうなるかはわからないのですが(笑)。自分自身が挑戦したいところまで挑戦して、「バレーボールに人生をかけてやりたい」という気持ちが強くなってきています。それを目標にはしつつ、通過地点にある小さな目標としてオリンピックや世界選手権などの国際大会でメンバーとして選んでいただいて、課題がでたらそれをまた自分の糧にして成長する、それの繰り返しだと思っています。その結果、「自分の限界まで挑む」ということが僕の最終目標ですね。

 

――ありがとうございました!

 

(取材・編集 山田彩愛、写真提供:日本バレーボール協会)

 

◆大塚達宣(おおつか・たつのり)

2000(平12)年11月5日生まれ。194センチ。最高到達点340センチメートル。京都・洛南高出身。スポーツ科学部4年。日本代表活動期間にたくさんの国を回った日本代表チーム。大塚選手が「一番美味しい!」と感じたのはイタリアで食べたピザとパスタ! チームのメンバーたちと食べに出かけたそうです。世界と戦い、さらにレベルアップした技術力、精神力に注目です!

 

次回【第3回】は早大に合流した今、大学でのバレーボールについて伺いました!

 

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