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ラグビー部

2022.09.14

【特集】夏合宿特別コラム CTB金井奨

最後は笑って終われるように

 夏合宿で行われた早大Cと東洋大の一戦。ピッチ上で声を張り続け、味方を鼓舞する男がいた。この試合のゲームキャプテンを務めた金井奨(人4=群馬・太田)だ。

 父の影響で、幼き頃から楕円球に触れてきた金井。「ラグビー一本ではやりたくない」と文武両道を体現する群馬・太田高校に進学し、勉強と共に再びラグビー人生を歩むことになる。

 太田高校は経験者ばかりが集うというわけではなく、高校から始める選手も多い。「意識の差が出てきたりして、チームをまとめるのは大変なところもありました」。

 3年時にキャプテンを務めた金井には、ラグビーを続けるきっかけとなった重要な一戦がある。2018年、花園群馬県予選で対戦した桐生第一高校との準決勝。太田高校の勝利をそこにいた誰もが確信していたはずだった。しかし、金井の属する太田高校はロスタイムに逆転トライを奪われ、惜しくも花園への夢は途絶えることに――。「すごく悔しかったです。その気持ちがあって、僕はまだラグビーを辞められないと思いました」。

 そうして、金井が次の活動拠点として選んだのは、早稲田大学ラグビー蹴球部だった。「高校の先輩が身長体重もほぼ一緒くらいなのに、Aチームで活躍している姿をみて、そういったところの泥臭さや、ラグビーの強豪校以外でも活躍できる場があるというところが、すごく魅力的に感じて早稲田を選びました」。

相手のタックルをかわす金井

  入部してからは周囲のレベルの高さに圧倒される。それでも金井は、一歩ずつ地道に鍛錬を続ける外なかった。その年早大は、悲願の日本一へ。『荒ぶる』。歓喜の瞬間に、金井は決意を改めた。「しっかり赤黒を着て、あのピッチに立ちたい」。目に焼きつけた優勝の景色を胸に、熱く戦う同期や支えてくれる人の存在を原動力に。

  そこからあっという間に時は過ぎ、迎えたラストイヤー。金井はジュニアチームでゲームキャプテンを多く務めている。「赤黒は遠い存在かもしれない」、脳裏をよぎるジュニアチームの不安を金井は理解していた。だからこそ、キャプテンとして練習から積極的に呼びかけ、チームのモチベーションを崩さないことを常に心がけているという。リーダーシップを取る中で、目標とする選手像は、昨年度の主将である長田智希(令3スポ卒=現埼玉ワイルドナイツ)。「キャプテンとして、チームで1番体を張って1番動いて、ずっとポジティブでいるところをすごく尊敬していました。真似できているかはわからないですけど(笑)」。

  ボールを手にすると、自らチャンスを作りゲームメイクする。足も声も止めずに仲間を鼓舞し、奮闘する。試合後には、チームの収穫と課題を冷静に分析し、いつでもチームのことを第一に考えた。長田前主将と同じ12番を背負って。

東洋大戦でゲームキャプテンを務める金井

 金井にとっての早稲田ラグビーは、「今の自分を表現できる場所」。そして、自分の成長の証を残してきた場所だ。その上で、金井は周囲への感謝も忘れない。中高の同期や後輩、自身を応援してくれる人、そして何よりもラグビー部への入部を後押ししてくれた両親へ。伝えたい。応援に応えたい。自然な笑顔を見せ、金井はそう語った。

 『荒ぶる』まで残された時間は、あと4カ月。迫るタイムリミットを目の前にして、最後に意気込んだ。

「最後は皆で笑って終われるように、一日一日を、一つ一つの練習を大切にしたいです」

 どこまでも仲間思いな金井の言葉が響く。そして、

「赤黒を着て、最後のピッチに立ちたい」。

 入部当初から抱いてきた大きな目標は、今も決して変わることはない。「成長し続けたい」と話す金井の表情は実に勇ましい。あと一歩のところで涙をのんできた過去の悔しさを晴らし、今年こそは頂点へと上り詰める。大好きな仲間と共に。

(記事・写真 谷口花)

◆金井奨(人4=群馬・太田)

2001(平13)年2月8日生まれ。172センチ。83キロ。群馬・太田高出身。人間科学部4年。「あなたにとって早稲田ラグビーとは?」という問いに、「情熱大陸みたい」と笑いながらも、真っ直ぐな思いをぶつけてくださいました。声を出して味方を鼓舞し、ボールを持てばゲインする姿には注目。日々成長を見せる金井選手の活躍に目が離せません!