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2022.08.17
【連載】『44の円陣』WEB版 第17回 やっぱり、水が好きだ!(浅羽栞/水泳部競泳部門✕鶴岡由梨奈/ヨット部)
競泳部とヨット部。初対面の浅羽栞女子主将(スポ4=東京・八王子学園八王子)と鶴岡由梨奈主将(社4=東京・立教女学院)がオンラインで画面越しに語らい合う。両者は互いに水を舞台に戦う競技をしているが、屋内と屋外、水中と水上と違いもあるーー。それぞれが水に対して抱く思いとはいかに。
※この取材は5月30日に行われました。
――はじめに自己紹介をお願いします
浅羽 私から行きますね。水泳部の女子主将をしております、スポーツ科学部4年の浅羽です。よろしくお願いします!
鶴岡 ヨット部の主将をしております、社会科学部4年の鶴岡由梨奈です。よろしくお願いします!
――部活紹介をお願いします
浅羽 私は女子主将ということで、男子主将もいます。女子は現在20人いない…10何人くらい(笑)。大学で練習する選手とクラブチームで練習する選手の2パターンがあり、基本的にクラブチームで練習する選手が多いので、月に1回、合同練習というかたちで男子女子合わせてみんなで練習をする機会を設けています。そこでチームレクや練習をします。日本学生選手権のインカレでシード権を死守しようというのを目標に活動しています。
鶴岡 ヨットは海で、帆を使って風を推進力にして進むスポーツをやっています。部員はだいたい32名なのですが、そのうち女子は9名程度です。ヨットなんですが、男子枠、女子枠というものがまずなく、インカレでは男女混合競技として一緒にプレーする競技です。活動拠点に関しては、葉山の方で活動しておりまして、合宿所で金、土、日曜日に合宿をしています。平日はトレーニングとかミーティングをしています。なんかちょっと謎が多い部活だと思うのですが、よろしくお願いします。
――対談の相手が決まった時にはどのような印象でしたか
浅羽 ヨット部の方は知り合いがおらず、ヨットも分からないので大丈夫かなと思っていました(笑)。でも、接したことがなかったので、こういう機会でお話をさせていただけるのはすごく私自身にとっても貴重な機会だなと思って、ありがたく思っています。
鶴岡 ありがとうございます(笑)。まず水関連で面白そうだなと思ったのが最初に感じた印象です。私自身、小さい頃にはなるのですが、水泳を少しやっていたので、それこそ水泳の道で極められた方とお話をできるのを非常に楽しみにしていました。
――鶴岡さんは専門種目などはありましたか
鶴岡 スタイルワンはバタフライをずっとやっていました。
――何歳くらいまでやられていたのですか
鶴岡 本格的にやっていたのは中1までで、それからはダンスや他の競技に移ったので、そこでいったん水泳は辞めたかたちになっています。
浅羽 でも、スタイルワンと言っていたということはかなりやっていたんだろうなと思いました!
鶴岡 小学校まではある程度頑張っていました(笑)。JOCとかに行っていて。
浅羽 JOCは小学生の全国大会です。すごいですよ、かなり! たぶん4種目泳げて、そこからタイムも速く泳げるようにどうしたらいいんだろうって、かなりやっていたと思います。週何回か練習していたんじゃないかな。
鶴岡 そうですね。小学校の時は週6でやっていました。
浅羽 めちゃめちゃやられていますね(笑)。でもなんだか水泳やられてたんじゃないかなっていうのは思っていました。水球もそうですし、アーティスティックとかも、水関連の方は結構水泳やられてたという方が多いので。
鶴岡 実はシンクロ(アーティスティックスイミング)もやっていました(笑)。
一同 えー!
鶴岡 注力具合は変わってくるのですが、ヨットを始めるまでは競泳とシンクロとダンスをやっていました。
――3つ同時ですか
鶴岡 3つ同時というわけではなく、2つ重なっている時期はありました。中学の時は競泳とダンス、高校の時はシンクロの時とダンスというかたちでやっていました。
――水が苦手な子どもだったという人も多いですが、お二方はそのようなことはなかったですか
浅羽 水が好きだったから始めたっていう感じで。結構好きでした。
鶴岡 私はむしろ真逆でした。親が水泳をやっていたのですが、0歳の時は水に触れるのが嫌な赤ちゃんだったらしく、親がこれはまずいと思い、0歳から水に漬けられたみたいな感じです(笑)。半強制というか、最初は嫌々やっていました。「進級したらこれ買ってあげるよ」と言われて頑張っていました。
浅羽 分かります(笑)。
――では、今はどちらの部活動も水と深く関わっていると思いますが、水への印象はどのようなものですか
浅羽 水に対しては、難しいというのが一番大きいかな。陸上でいくら力をつけたりウエイトトレーニングでこう強くなったと思ったりしても、水中という液体の中で力を発揮するのは難しいです。水って難しいなと、ヨットも天候だったり水の読めない予測があると思うのですが…。
鶴岡 そうですね。私も難しいというのもありますね。実際に2つの競技をやっていた身からすると、水泳の方が水に対する考え方がシビアなのかなと思っています。水の中で戦うわけなので、抵抗を最小化するということにも考えが及ぶと思います。ヨットは水だけではなくて水が変化する要因である風とか潮とかの自然も含めて、総合的に水を捉える…ちょっと小難しいですけど(笑)。接水面積だけでなく、いかに波が変化するかを予測するので、水の範囲が広くなったなとは思います。
浅羽 かっこいい(笑)。
――お互いに聞いていて、すごいなと思うところはありますか
鶴岡 水泳は朝もあって、おそらく午後練とかもあるのかなと思うのですが、1日どのくらい練習するのですか
浅羽 今もまさに朝練をやってきて、この後午後練という感じです(笑)。今日は5000メートル泳ぎました。
鶴岡 すごい…
浅羽 ただ泳いでいるだけなので(笑)。競泳は環境が変わることもなく、自分のレーンで接触があるということもないので、ただ速く泳ぐということに注力すれば良くて…。ヨットも、他のスポーツもそうですけど、天候に左右されたりその日のコンディションを読み取ったり、自分の能力だけじゃなくて、運もちょっとあったりするんじゃないかなと思いました。
鶴岡 おっしゃる通りで、毎日コンディションが変わるので、4年生になった今でも新しい気づきの連続です。難しい競技ではあるのですが、水泳もやはり難しいなと思います。変化要因が多く複雑で、ヨットのように難しいスポーツもあると思うのですが、陸上の100メートル走や競泳などは、シンプルだからこそ、そこを突き詰めないとというか、コンマ0・01とかの世界だと思います。そこで第一線で活躍されている方が難しいんじゃないかなと思いました。
浅羽 コンディションが変わる中で、自分ついてないな、もっとこうだったらなと思ってしまうこともあるんじゃないかなと思ったのですが、ないですか
鶴岡 正直、運で片づけてしまえばそれで終わります。ただヨットの面白いところが、コースが決められていて、イメージとしては50メートル走というよりは200メートル走という感じなんです。最初の50メートルで失敗したとしても、残りの150メートルで挽回できるチャンスがあります。失敗したのをいかに修正していくかという能力が問われたりします。たしかに最初の50メートルは運というか、こっちの方が風が強かったのような何かがあると思うのですが、残りの150メートルでいかに自分の勝率を上げていくかというのは日々の練習とか、知識経験の積み重ねでできると思います。いかに良い準備をして、その上で、もし失敗や何かあった時にすぐに軌道修正して最適解を積み重ねていくかとなります。そこは準備に尽きるかなと思います。
浅羽 へえ…。
鶴岡 変なスポーツですよね(笑)。
――早大に入ったきっかけを教えてください
浅羽 私が早稲田大学を選んだのは、すごく環境が整っていて、自分の中で五輪だったり世界水泳に出場する選手やチームメートと切磋琢磨(せっさたくま)して、自分も第一線で活躍したいと思ったのが大きいです。それは私自身入学して本当に良かったなと思っています。私のクラブは小規模でこれまで1人で頑張るような感じだったのですが、一緒にトップを目指して頑張れる仲間がいると、もっともっと頑張らなきゃなと思えるので、早稲田大学を選んで良かったなと思いますね。
――そもそも競泳を始めたきっかけとは
浅羽 競泳というか水泳を始めたのは、幼稚園生くらいです。兄がもともと水泳をやっていて、そこの送り迎えについていって「私も泳ぎたい」と言ったのが経緯ですね。
鶴岡 泳ぎたいとなったのがすごいですね!
浅羽 習い事をさせてもらっているのがうらやましかったんだと思います。
鶴岡 私の方はまず、早稲田大学に入った理由が大きく2つあります。1つが学問サイドになっちゃうのですが、学びたいことが早稲田大学ならできると思ったからです。もう一つが、早慶戦というかあの早稲田スポーツの雰囲気がすごく好きで、実際に早大と慶大どちらに行くかとなった時に、早稲田大学の雰囲気が好きだなと思いました。オープンキャンパスに行った時も応援部がいたりだとか、いい意味でガヤガヤ感があって、あれがすごく好きでした。かつ、早稲田大学はスポーツもいろいろなプロフェッショナルが全国から集まってくるということで、そういった場でやりたいなと思ったのがきっかけです。
――その中でもヨット部に入部したきっかけはなんでしたか
鶴岡 それこそ高校までのスポーツを続けるかとも悩んだのですが、ヨットよく分からないからいったん体験入部してみようと思いました(笑)。葉山で体験入部に訪れたら、こんなに難しいスポーツがあるのかと痛感しました。ちょっとこのスポーツ攻略してみたいなというか、このスポーツの世界を知りたいなと思って扉を叩いたのがきっかけです。
――大学に入ったら部活動をしようというのは決めていたのですか
鶴岡 正直なところ、必ず部活動をやろうとも思っていませんでした。例えばサークルなりで競泳やシンクロやダンスをやったり留学をしたりというのも考えていました。ただ、自分自身が高校までで全国1位を取ったことがなかったので、全国1位の景色を見てみたいなと思って、もう一度スポーツに打ち込もうと思いました。実際に体験入部してみたら「これやってみたい!」と思ってチャレンジしようと決意したのがきっかけになっています。
――全国2位などは獲ったことがあるのですね!
鶴岡 ダンスとシンクロで2位を獲ったことがあります。競泳は4位が最高で、1位というのはどの競技でも獲れたことがありません。ヨット部は未経験者から始めて日本一になった方もいらっしゃるというのを聞いて、実際に体験入部に行ってみたら難しくて、なんでこんなに難しいスポーツを4年間でできるようになるんだろうと思って、やってみたいなと思いました。
――ここまで聞いていて、お互いに質問などありますか
鶴岡 いまさらにはなってしまうのですが、浅羽さんのスタイルワンはなんですか
浅羽 私は平泳ぎをやっていて、特に200メートル平泳ぎが得意かなって感じです。
鶴岡 えー! 私、平泳ぎが一番苦手でした(笑)。
浅羽 いやいや…(笑)。
鶴岡 平泳ぎって足首柔らかい方が多くないですか。すごくニッチですけど(笑)。
浅羽 確かに反るのは結構得意ですね。
鶴岡 すごいですね。私どうしても足首が硬くて、しゃがみ込むのができないレベルです(笑)。平泳ぎの友人はみんなそれができていたので、平泳ぎすごいなと思っていました。
浅羽 (笑)。私は今お話を聞いていて本当にヨットって難しいんだろうなと思いましたし、やる機会はやっぱりこれまでなかったし今もないので。今すごく思ったのは、他部活をいろいろ体験できる日とかがあれば、自分の競技にも生かせる点があったりだとかありそうです。水の共通点じゃないですけど、こういう筋肉こうやって使うんだという刺激のトレーニングにつながるんだろうなと思いました。
鶴岡 やりたいですね!
浅羽 私も攻略したいというふうになってみたいなと思いました(笑)。
鶴岡 まだ全然攻略の域には達してないです。
浅羽 でもそんなふうになれたらかっこいいなとかっこいいなと思います。
鶴岡 たしかに他の部活を見てみたいなと思いますし、他の主将さんがどうやってチームをまとめているのかをぜひ知りたいですね。
浅羽 確かにそれめっちゃ思いますね! なんだかんだいろいろあるじゃないですか(笑)。たぶんここで言えないようなこともあると思うし…。
「早稲田ポーズ」をする浅羽
――これまでの2年間で印象に残っている試合や人がいれば教えてください
鶴岡 2年前の主将の松尾虎太郎(令2スポ卒=山口・光)さんという方です。私が2年生の時の主将で、一緒に乗らせていただいていた方です。私は、その方からいわゆるプロフェッショナルのあり方みたいなものを学んだなと思っています。その方は日本を代表するセーラーなのですが、その中でも常に誰よりも貪欲に吸収されていました。例えば学生だけでなく、時間があったら港へ社会人にアドバイスを聞きに行ったり、他の情報を自分ですぐにつかみにいこうとする姿勢だったりがありました。他にも、海の上で、水に濡れてもいい耐水紙のノートに、ひたすらその日の学びや海の状況などをメモされていたりだとか、本当に自己研鑽(けんさん)にあくなき向上心がある方だなと思ったのが印象的でした。また、すごく明るい方でして、自己研鑽(けんさん)するのはもちろんなのですが、いかにチームがより良い結果を残せるかということで、自分が得たことをチームにも還元されていました。私自身も自分が自己研鑽するだけではなく、チームに何か知見や経験を還元できる選手になりたいなと、非常に背中を追いかけさせていただいています。
浅羽 私はそうですね、前年度の女子主将を務めていた牧野さん(牧野紘子、令3教卒=東京・東大付中教校)という選手がいらっしゃるのですけども…
鶴岡 牧野紘子さんですか!
浅羽 そうです。すごく実績を残されている選手なのですが、そんな方でも主将としてもみんなとコミュニケーションを取っていたり、その中でも威張ることなく自分からアクションを取っていたりというのが私自身憧れています。それまで友人としてであったり、競技者としての面が大きかったりしたのですが、昨年チームを引っ張られている姿を見て、こんなにすごい人が自分よりレベルが下の人に対してもアドバイスをしていたり親身に相談に乗っていたりするというのは、競技者としてだけではなく人としてもすごい立派な方だなというのが自分の中でも印象的です。今も悩み事があったらアドバイスを頂いたりと、私の中で大きな存在になっています。
――それぞれの部活の年間のスケジュールや遠征先について教えていただけますか
浅羽 年間のスケジュールは、4月に日本選手権という日本で一番大きい試合があって、8月か9月に日本学生選手権という試合があって、また夏には国際大会があります。また都道府県の試合に出たりします。試合は主に東京辰巳水泳場というところでやっています。
鶴岡 遠征先は毎年異なるのですが、今年は春先から11月がレースシーズンとなっていて、5月に関東インカレ、その後に社会人も交えた大会がありまして、6月に関東個人戦があり、これで結果を残した船は9月の全日本に出場権を得ることになっています。7月から8月にかけての時期に早慶戦を行って、その頃には毎週のようにレースがありまして、その後に全日本の女子レースがありまして、10月に秋の関東インカレがありまして、最終的に11月の頭に全日本インカレを控えています。全日本インカレは毎回開催地が違い、今年は琵琶湖でやることになっています。私が1年生の頃は兵庫県の西宮、2年生の頃は和歌山、3年生の時は愛知の蒲郡です。レースは基本的に江ノ島や葉山で行われていて、毎回遠征といえば遠征なのですが、合宿所からすれば遠征は全日本だけですね。
――浅羽さんは所沢キャンパスを拠点にしていますが、所沢キャンパスはどういう雰囲気ですか
浅羽 本キャン生からすれば、こんなにジャージの人がいる?というぐらい、スポ科の人はジャージの人が多いです。緑に囲まれていて、こんなところに校舎あるんだというぐらい田舎にありますね(笑)。自転車だったり車がないとどこにもいけないなと思います。
鶴岡 実は、私所沢キャンパスに行ってみたさすぎて、友達に案内してもらってなんの用事もないのに所沢キャンパスに行きました。コートが大きかったり、緑に囲まれていたり、いい意味で体育会系の雰囲気で感動して、写真撮りまくっちゃいました(笑)。
浅羽 そんなことないですよね(笑)?
――そんなことないですね(笑)。
鶴岡 興奮しましたね(笑)。
――鶴岡さんにとって、練習拠点である葉山はどんな場所ですか
鶴岡 一般の人にとっていい場所だと思っていて、葉山女子旅きっぷがあって、女子力高めの人が楽しそうに夏の海を謳歌する場所だと思うのですが、そこを私たちはジャージでいるので、私たちの視点で言うと、エンジョイ組はすごく楽しそうなのですが、その横で練習をしているのでキラキラしているように思えます。
――私が大会でお邪魔する時も、ハイテンションでいますね(笑)。ちなみに、浅羽さんはプライベートで逗子葉山に訪れたことがあるのですか
浅羽 ないですね。
鶴岡 江ノ島はありますか
浅羽 1回だけ。一度行ってみたいなと思っていますね。
――ヨットは屋外の海で競技しているのに対し、水泳は屋内のプールで競技をしてますが、それについて互いに思うことはありますか
鶴岡 水泳をやっていたので、寒いのがすごく苦手で、今年の冬は雪降りながらも練習するので、温室プールいいなと思いますね。豪雨でも視界不良でなければ、安全であればどんな天候でもやるスポーツなので、温度が保たれているっていいなと思いますね。
浅羽 私は逆に室内で便利だと、練習できない時はないので。ただ、海ってとても日焼けしませんか。
鶴岡 本当にそうなんですよ。日焼け止めを塗っても一回の波ですぐ落ちてしまうので、すごい頑張っていますがすぐ焼けますね。
浅羽 海では日焼けするんだろうなーって思いますね。
鶴岡 今年はいかに日焼けしないかを目標にしていたのですが、もう焼けましたね(笑)。
――競技を辞めたいと思ったことはありますか
鶴岡 なかったと言うと嘘になりますが、辞めたいなと思ったことはないですね。部活しんどいと思ったのは1年生の時で、女子の未経験者がほとんどいなくて、周りは日本代表でやってきた方だったり男子部員だったりと、経験・知識・身体面全てで一番劣っていたので、そこからいかに男子と戦えるかを中心にやってきたので、その時は辛かったですね。
浅羽 男子と競い合えるってすごい環境ですね。
鶴岡 そうですね。
浅羽 競技を辞めたいと思ったことは競技人生で一度もないですね。本当に辛いことや目標を達成できない時って本当に辛いですし、なんでできないんだろうとか才能ないなと思うことはあるのですが、やはり速くなりたい、上を目指して頑張りたいと思えば消えるので、辞めたいと思ったことはないですね。
鶴岡 しんどかった時期も課題は伸び代だと思って、いつか男子よりも強くなりたいと思って、それをモチベーションに練習をやってきました。
――3年間でいちばんの思い出はありますか
鶴岡 いちばん忘れられない景色は、2年生の時に全日本インカレで優勝した時で、コロナ禍でイレギュラーな試合であったのですが、松尾主将と乗せていただいて、日本一の景色を見られたのは今までの人生で一番ですね。
浅羽 競技者としては、去年の学生選手権で初めて自己ベストを出した時です。独特な雰囲気があるので自分の実力を出せないなと思ったのですが、3年生で初めて自己ベストを大幅に上回ることができたので、その時に自分の力だけではなくチームに救われた、インカレの醍醐味を感じられたなと思います。
鶴岡 インカレならではの団体戦の良さがありますよね
「早稲田ポーズ」をする鶴岡
――ここからは主将としての話を伺います。主将はどうやって決まったのですか
鶴岡 ヨット部はは同期、監督、スタッフというOBで話した後に同期で話して、主将を決定した形となっていて、一個上の先輩にアドバイスを受けた上で決定しました。
浅羽 水泳部はスタッフや監督の方、その時の4年生、下級生同期の投票で決まって、話し合いとか全くなくて投票日に決まります。
――拒否はできるのですか
浅羽 拒否はできて辞退もできるのですがあまりないですね。
鶴岡 まさか私がということも…
浅羽 あります。まさか私がと思ってました。
――主将として苦労していることはありますか
鶴岡 山ほどあります(笑)。
浅羽 難しいですよね。主将になってから半年が経ち、難しい中で一つ選ぶなら、目標に対してどういう取り組みが必要かを考えて行動することが大事だと思っていて、今までは選手として自分が速ければ、自分がポイントを取れればという目線から、皆でこの点数を取るにはどうしたら、その大会を目標にしていることを下級生に理解してもらうにはどうしたらいいんだろうとか、立場が変わって皆に周知するにはどうしたらいいんだろう、皆の向上心を高めることが大変だなと思います。目標を定めて行動させることに苦労しています。
鶴岡 すごく分かります。ヨット部も変化要因が多く、不確実なスポーツになるので、隙のないチーム、日本インカレを10回やれば10回勝てるチームを作ることが最大の課題です。そのために、チームの総合力をいかに上げれるかだと思っていて、点数を最終的に動かすのはプレイヤーですが、会場でサポートする人の連携や陸上での下級生の点数計算やトラブルシューティングをしてくれたりとか、選手だけではなく総合力で戦うので、どんな場合でも勝ち切れるチームを作る上で一人一人の持つ力を最大限に活かした上で一人一人の持つ力を最大化して、それをチームとして結果に繋げられるように、一人一人が能力を把握して、チーム最優先で動けるようなチームづくりが課題です。
――主将としてどうなりたいかというのはありますか
浅羽 信頼される主将になりたいと思いますね。この人が言っているから頑張ってみよう、この人についていこうと思えるのが信頼関係だと思うので、そういう面で競技という面でも人としても引っ張っていけるような主将になりたいと思っています。
鶴岡 それこそ初心を忘れずというか、仲間から学び続ける主将でありたいと思っています。チームとして貫きたい行動として「相互研鑽」を掲げていて、学年に問わず部内でも学び合うというのもそうですし、部外からも学ぶということで、探究心を忘れずにどんな人からも学んで、それをチームに還元できるような主将になっていきたいと思います。
――今後の目標は
浅羽 部としては男子は日本インカレで準優勝するのと、女子はシード権を死守しようというのがあります。
鶴岡 私は全日本選手権3連覇というのがありまして、個人戦での優勝にはこだわっておらず、全日本の総合優勝を第一に掲げているので、それを全員でつかんで全員で喜びを分かち合いたいと思います。
――大学での体育会でスポーツをやることの価値は何だと思いますか
浅羽 大学生というある程度自分で選べる人生の中で、水泳をやりたいという人が集まって一緒に暮らしているように、青春を一緒に過ごす仲間に出会えて4年間過ごせることが魅力だと思いますし、実際に大学に入ったからこのメンバーでいろいろなことを話せたり思い出を作れたり、一人では味わえずに大学生だからこそ面白くなったのではないかと思えます。
鶴岡 3つあります。一つは何か目標を立ててチームに挑むこと、仕事もそうだと思うのですが、自分達で何かを目標達成を目指すことは学生の本分だと思っていまして、何かに死に物狂いで取り組んで泣いたり笑ったり思い出を共有できることは非常に魅力ではないかと思います。二つ目は多様なバックグラウンドの選手と競技ができることです。ヨット部に限るかもしれませんが、私のように未経験で始めた人もいれば日本代表になったことがある人もいれば、全然違うスポーツをやってきた人もいて、全然違う価値観を持つ人たちが同じ目標に向かって一つのスポーツに取り組むことは普通のクラブスポーツではできないことだと思うので、いろいろな人の強みを活かし合いながら勝てるチームを作っていく、多様性の醍醐味というか、普通では味わえない経験をできるのではないかと思います。最後はチームが毎年変わるのが面白味かなと。その代によってカラーが出ると思っていて、その時の4年生がどうだったか、チームの雰囲気がどうだったかが同じ大学であろうと年毎に違うことも魅力的だと思っていて、学生が1からチームを作ることも魅力的な経験だと思うので、それも醍醐味(だいごみ)だと思います。
――プロだと同じメンバーということも多いですからね
鶴岡 会社だと同じ経験ができないので、面白いですね。
――ありがとうございました!
(取材・編集 芦沢拓海、宮島真白)
◆浅羽栞(あさば・しおり)(写真左)
東京・八王子学園八王子高出身。スポーツ科学部4年。兄に続くように競泳を始めた浅羽選手。辛いこともありますが、上を目指して頑張りたいと思えば消えるそうです!
◆鶴岡由梨奈(つるおか・ゆりな)
東京・立教女学院高出身。社会科学部4年。水泳をはじめ、さまざまなスポーツ経験を経て大学からヨットを始めた鶴岡主将。対談後には「インスタとか交換しませんか」と打ち解けた様子も見られました!