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2022.08.15

【連載】『44の円陣』WEB版 第15回 水をつかみ前へ進め(平河楓/水泳部競泳部門✕中尾咲月/漕艇部)

 プールの中と川の上。同じ水というフィールドでも戦う場所は違う、水泳部競泳部門主将・平河楓(スポ4=福岡・筑陽学園)と漕艇(そうてい)部主将・中尾咲月女子主将(スポ4=三重・津)。メジャースポーツとマイナースポーツという違いもあり、競技歴も異なるが、早大の看板を背負い戦う意思は同じだった。ハイレベルな環境で切磋琢磨(せっさたくま)している両部活に話を伺った。
 ※この取材は6月7日に行われました。

――まずは、自己紹介をお願いします

平河 水泳部の男子主将、平河楓と申します。僕自身、5歳の時から水泳をやっていて、今年で16年目です。部員が競泳部門は40人程度です。今日はよろしくお願いします。

中尾 漕艇(そうてい)部の女子主将、中尾咲月と言います。私は高校の頃からボートを始めました。ボート部は男女合わせて60人ぐらいの部員がいます。本日はよろしくお願いします。

――お互いに面識はありますか

平河 いや、ないです。

中尾 ないですね。

――相手の競技を見たことがありますか

平河 すいません、僕はボートを見たことがないです。

中尾 水泳はテレビで結構見たことがあります

――ボートのイメージってありますか

平河 いや、どんな競技で、何人でやって、どのくらいでやるのかを全く想像できないのですが…どんな感じなんですか。

中尾 種目は1人乗り、2人乗り、4人乗り、8人乗りというふうにいろいろあり、その中でもスカル種目という2本のオールを使って漕(こ)ぐ種目と、1本のオールを使って漕(こ)ぐスイープ種目というのがあります。種目の数は結構あるので、大会によって何で出るのか毎回違います。種目によっても異なるのですが、距離は2000メートルで、後ろ向きで漕(こ)いで進む競技です。

平河 その中で専門種目はあるんですか。

中尾 女子は比較的スカル種目もスイープ種目もやっています。私はどっちでも大会に出ているのですが、どっちも出る人もいればどっちかに絞る人もいます。

――大会によってメンバーも違ったりしますよね

中尾 そうですね、大会のたびに組み直して、クルーを一から作ったりします。

平河 なるほど、2000メートルって意外と長いと思いました。水泳は長くて1500メートルですね。

――どのくらいの時間を泳ぐのですか。

平河 競泳には長水路と短水路というのがあり、長水路だと、日本記録では14分50秒台、大体15分ぐらいですね。

――平河選手は何の競技をなさっているのですか

平河 平泳ぎで、主に100メートルと200メートルをやっています。

――相手に自分の競技を見てもらいたい時に、自分の競技の面白いところはありますか

平河 競泳は一番短いので50メートルで10秒くらいもある一方、1500メートルで15分くらいのもあるのですが、どれもゴールタッチまで競っていて、0・01秒を競うスポーツなので、タッチするまで結果が分からないというのが魅力かなと思います。

中尾 ボートは2000メートルの中で、最初に出られていても最後の500メートルぐらいで一気に抜かしてゴールするなど、最後まで何があるか分からないという点では競泳と似ていると思います。すごく離されていたのに、最後では僅差(きんさ)で勝つというのもありますね。

平河 前半型、後半型みたいな戦略とかはあるんですか。

中尾 前半に飛ばして逃げ切るパターンと、最初に飛ばさずに中盤から伸ばして最後に差していくみたいな戦略は大学によっても違うかなと。

平河 競泳に似ているなと思いました。前半型後半型みたいなのがあるので、そういったところの面白みは競泳にもあるかなと思います。

平河 ボートはどこで練習しているんですか。

中尾 戸田というところにボートコースがあって、他の大学もそこで練習しています。そこのコース沿いにいろいろな大学の船が置かれている場所がいっぱいあります。

平河 毎日練習しているんですか。

中尾 月曜日丸一日と金曜日の午後以外は毎日練習しています。

――水泳部は大学の中で練習していますか

平河 大学から自転車で1分掛からないところに寮があるので、とても近いです。練習場所も所沢キャンパスなので。

――寮のおすすめポイントはありますか

平河 2年生の10月に新しい寮に変わったので、すごく綺麗なところと、一人部屋なところです。

中尾 私は住んではいないのですが、1人部屋がなく2人部屋か8人部屋に住んでいて、一緒にいる時間が長いと思います。寮の中でビデオを見られる空間があって、テレビの前で交流できます。

――自分の部活の特徴的な点はありますか

中尾 変な部員は多いと思います。そこがいいところだと思うのですが…。

平河 競泳にも学年に2、3人はいると思います。面白いです。

部について話す平河

――部員の競技歴は何年くらいですか

平河 水泳部は入部条件も高いので、みんな昔からやっていて昔から速かったという人が多いですね。

中尾 漕艇(そうてい)部は今、男子が特に多く未経験の人が入ってくれていて、漕艇(そうてい)部の歴史では未経験の人が多い時期だと思います。

――ボートは転覆したりしますか

中尾 しますね。特に1人乗りだとバランスがすごく悪いので落ちてしまったり、特に未経験だと何回も落ちる話を聞きますね。他の大学もそこで漕(こ)いでいて、落ちたら周りの大学が助けてくれたり、逆に自分達が助けたりします。

――コンディションによって違いはあるのですか

平河 硬水と軟水で感覚が変わって泳ぎやすさが変わるという話を聞きます。僕は分からないですけど(笑)。

――(ボートコースの)川の水は軟水でしょうか

中尾 どうなんでしょう…でもボートも水が変わると重さが変わる、などあるので、そこも競泳と似ているかもしれませんね。

平河 ボートって真冬でも練習するんですか。

中尾 真冬は水上の練習もするのですが、寒いのでエルゴメーターという、陸上でボートの動きを再現した機械でトレーニングすることも多いです。雨が降っている日や寒い日は体調を悪くするので、陸上でトレーニングする日も結構多いかなと思います。

平河 真冬に転覆したことはありますか。

中尾 私はないですね。真夏に転覆するとむしろ気持ちいいのですが、冬に落ちる部員もたまにいて、上がったらすぐにお風呂に行きますね。

平河 寒いですもんね(笑)。

――水泳は、年中泳いでいるのですか

平河 そうですね。基本的に年中泳いでいます。

――大会のシーズンは夏頃ですか

平河 そうですね、夏がメインです。

中尾 大会のメインは9月ごろですかね。

――きつい練習メニューはありますか

平河 ほぼ毎日きついメニューはやっているのですが、いざ言われると難しい(笑)。 苦手な練習や、持久力を高めるために長い距離を何本も泳いだり、スピードを付けるためにハードを何回も泳いだり、はきついですね。

――ボートも長い距離を漕(こ)いだり、短い距離を全力で漕(こ)いだりするのですか

中尾 そうですね。練習のルーティンは大会前だと長い距離をゆっくり漕(こ)いだり、速く漕(こ)ぐメニューを3本と、短距離を早く漕(こ)ぐ練習と3種類を繰り返してトレーニングしていますね。

――競泳も形式としては似ていますか

平河 そうですね。

――中尾選手は嫌なメニューはありますか

中尾 2000メートルをエルゴメーターで測定する機会が定期的にあるのですが、それは部員が嫌がっていますね。大会前は水上で練習するのであまりないですが、冬に月に1回ペースで測定するので多いですかね。

――競泳もタイムを測ってもらう機会はあるのですか

平河 そうですね。どの練習もマネージャーさんに測ってもらって、普段の調子を見ていますね。また、火曜日は(毎週)同じメニューがあって、先週より早くなったか遅くなったかを4年間やり続けたので、今思えばきつかったですね。

――それぞれの早慶戦の特徴はありますか

平河 水泳は競泳、水球、アーティスティックスイミング、飛び込み、日本泳法の5種類全部楽しめる早慶戦となっています。

――日本泳法とは何でしょうか

平河 僕もよく分からないのですが、日本の伝統的な泳法をやるらしく、それをエキシビションでやっています。

中尾 ボートでは、女子の種目1つと、男子の8人乗りを2種類やっています。学部対抗のレースや、これは慶大だけなのですがカヌーのエキシビション。男子は3750メートルとボートでも長い距離なので、見応えがあると思います。

――ここまでの対談で、お互いへの疑問はありますか

平河 部活動の時間はどれだけですか

中尾 基本的に午前中はボートに乗っています。メニューによって変わるのですが、15キロぐらいを目安にやっています。大体時間は1時間から2時間ぐらい水の上にいますね。

平河 ボートの用具は自前ですか。

中尾 基本的に大学がお金を出してくれて買った船を持っています。船は100万円ぐらいなので持っている人は少ないです。

部について話す中尾

――中尾選手からは質問はありますか

中尾 ボート部は火曜と木曜にウェイトを午後にやっているのですが、水泳はウエートトレーニングをする人はいますか。

平河 やっている人はいますね。ただ人によっては体が重くなるからやりたくないという人もいれば、パワーが欲しいからやる人もいて、人それぞれですね。

中尾 練習のオフは同じですか。

平河 日曜日がオフですね。

――水泳は1日どれくらい泳ぐのですか

平河 スプリントチームとロングチームで分かれるのですが、早稲田は泳がない方なので、午前練習と午後練習トータルで10キロとか12キロとかですね。ロングチームは泳ぎ込みの時は1日20キロやりますね。

平河 ボートを始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

中尾 高校の部活の見学の時に、たまたま声を掛けてくださって。その時に「体験したら魅力が分かるからぜひ乗ってもらいたい」と言われました。何も知らない中で、後ろ向きに進む感じとか風を感じるのが自分の中で新鮮だったので、入部しました。(平河選手は)他のスポーツをやってみたいことはあったのですか。

平河 全くないですね。自分は球技とかが全くできないので、ずっと水にいたら陸上が全くダメになったので、水で生きていこうかなと思います(笑)。

――ここまでの対談で印象は変わりましたか

平河 僕は今まで漕艇(そうてい)をよく知らなかったので、少しでも知れてよかったと思います。

中尾 水泳はイメージが元々あったのですが、競技の特性などで似ている部分があったなと思います。

――大学スポーツの価値は何ですか

平河 高校とかプロとは違って、団体としてやっていると思うので、普段の練習からここが切磋琢磨(せっさたくま)(せっさたくま)している様子とか、試合の時とかは個人競技ではあるけど団体っぽくやることが部活の良さだと思います。

中尾 大学では早大として戦っているイメージがあって。大学対抗戦もあってチーム一丸となって戦っている感じがあると思うので、そこがいいところだと思います。

――自分達の部が「早稲田らしい」と思う時は、どんな姿の時ですか

平河 水泳部は他大に比べて少数精鋭でやっていて、リレーでも他大のチームは予選と決勝でメンバーを変えて体力を温存させているのですが、早稲田は予選から決勝までガチメンバーでやっていて、それも結構高いレベルでやれているので、そこが早稲田らしいと思います。

中尾 早稲女(わせじょ)という言葉が使われますが、競る場面とかでは早稲女を表しているなと思っています。インカレでも最後の花形のレースで、離されていたところから諦めずに最後まで戦った結果僅差(きんさ)で勝つという戦い方が早稲女だなと思っていて、早稲田らしいと思います。

――最後に、早稲田スポーツ全体の良さは何だと思いますか

平河 1年生の時の授業で一緒になった人が北京五輪で活躍しているところを見たことがあって、競技力が高い人と同じ環境にいることで他のスポーツから刺激をもらえるところが早大の良さかなと思います。

中尾 早大としてどの部活も早慶戦があったら応援しあったりして、他の部と切磋琢磨(せっさたくま)しあっている印象があって、早稲田のスポーツのスピリッツなのかなと思います。

――ありがとうございました! 

(取材 冷水睦実 編集 芦沢拓海)

◆平河楓(ひらかわ・かえで)
 福岡・筑陽学園高出身。スポーツ科学部4年。水泳部競泳部門男子主将。ボートは見たことがないという平河主将。ボート競技について積極的に質問し、対談を盛り上げてくれました!

◆中尾咲月(なかお・さつき)
 三重・津高出身。スポーツ科学部4年。漕艇部女子主将。落ち着いた雰囲気の中尾主将。マイナースポーツであまり見る機会のないボート競技の魅力をたくさん語ってくれました!

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