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2022.08.06
【連載】『44の円陣』WEB版 第6回 高みを目指して(田中樹・鎌形祐花/山岳部✕大佐古直輝・中島璃音/ワンダーフォーゲル部)
似ているようでそれぞれ違うカラーを持った両部活。今回は、主将に加え、男子部員とともに自然に挑む女子部員2人を迎えて対談を行った。共通点が多いからこそ、お互いに共感の多い内容に。女子部員による座談会の話も挙がるなど、両部の交流のきっかけにもなる対談となった。
※この取材は6月7日に行われました。
――自己紹介をお願いします。
大佐古 早稲田ワンダーフォーゲル部(ワンゲル)の大佐古直輝と申します。主将です。学部は政治経済学部で、専門は、ワンゲルに入って数カ月くらいで、これは自分はクライミングがやりたかったんだなっていうことに気付いてしまって、それからいろいろと葛藤もありつつ4年間続けているという感じです。沢登とかは結構好きだし、個人でもずっとクライミングはやっています。よろしくお願いします。
中島 早稲田ワンゲル4年の中島璃音です。私は最初は山をやりたいという気持ちがあったんですけど、サークルくらいでいいかなと思っていて。でもワンゲルに行ってみて雰囲気が良かったというのと、あとは自転車にも興味があって、自転車で1カ月合宿するのとかもいいなと思って入った感じですね。なので私は山をすごくやりたいというより、アウトドアを広くやりたいなというところで、今思えば山岳部もすごい楽しそうだなとは思うんですけど、その時はワンゲルがいいなと思って入部したという感じです。
田中 山岳部4年の田中樹です。教育学部教育学科4年です。山岳部入ったのは、まず最初は探検部というサークルに入ってまして、そこで山に興味を持ってさらに海外の山にも行きたいなと思った時に、山岳部が一番適した部活かなと思って、転部しまして、現在主将として活動しています。よろしくお願いします。
鎌形 山岳部2年の鎌形です。今年3年生がいないので主務をやっています。そうですね、理由としては中高で山岳部に入ってまして、それで大学も登山をやりたいなということで、登山系の部活を見学して結果的に山岳部に決めたという感じですね。
――お互い面識はありますか
田中 一度だけ…。
大佐古 ありますね(笑)。
田中 山でたまたま会った時に話したことはあります。
中島 鎌形さんは去年体験に来てくれたので、私は一緒に山に。
鎌形 はい、体験に行かせてもらったことがあります。(ワンゲル部と山岳部の体験に行って)ワンゲルの雰囲気もすごくよくて、どっちにしようかすごい迷ったんですけど、やりたいことが登山で、あとクライミングとかそういうのもやってみたいなと思っていて。結局自分がやりたいのは山登り系だったので山岳を選んだ感じですかね。
――中高時代は何の部活をしていたのですか
大佐古 僕は中高ずっと野球をやっていました。
中島 私は放送部で、番組制作とかアナウンス、朗読といったことをやっていました。
田中 中学はバスケットボール部で、高校はラグビー部です。
――始めに、競技の中で一番好きな瞬間を教えてください
大佐古 自分は登っている時は帰りたいなとしか思わないんですけど、下界に戻ってきて林道から出る時に登っていた山がちらっと見えるといいなと思いますね。
田中 めちゃくちゃ分かります。登っている時に帰りたいなと思うのは本当に分かります(笑)。毎回10分くらい歩いたら後悔します。
鎌形 行動開始からどんよりした気持ちではあるんですけど、下山してきた瞬間もそうですし、登頂した時は「ああ、ここを歩いてきたんだな」という達成感がありますね。
――登頂した時よりも下山した時の方が好きなのですか
田中 僕は圧倒的にそうですね。
中島 登頂より下山した瞬間かもしれないです。
鎌形 同じくらいですね。
大佐古 登頂しても下山がまた長いので。
中島 容易に気は抜けないですからね。
――競技病みたいなものはありますか
中島 下界とか言っちゃうところですかね(笑)。
一同 ああ〜確かに(笑)。
中島 下界ってなに? みたいな
田中 知らない人に言うと、説明すればうける。
鎌形 日焼けとか。ちょうどこことか、ビレイしてたところだけ日焼けしてしまっていて。日焼け止めはめちゃくちゃ塗るんですけど、通過しますよね。春とか、12月、1月とか絶対下界じゃ日焼けしないだろうっていう時に、日焼けしちゃうので私たち。だから下界だと異様に映るというか。
――登山中はお風呂に入れないと分かった時、最初はどんな思いでしたか
田中 いやもう考えられなかったです。耐えられるのかなというのもあったんですけど、やっぱり鼻も麻痺してくるんですよね。下界帰ってきて温泉入ったあとに出て、自分の着ていた服とかを嗅ぐともん絶しますね。本当に。
中島 同じですね。まあテントの中も臭いんですけど。お風呂上がりは本当に…。
田中 酸っぱい匂いがしますね。
――テントは普段から洗ったりするのですか、それともそのまま次の登山に持っていくのですか
大佐古 使っていたテントは干すだけのことが多いです。年に1回は洗ってるのかな。
中島 うん、1回くらいは洗ってるかな。でも(匂いは)こびりついてるから(笑)。
田中 山岳部は洗ったことないです。干しているだけなので、悲惨ですね。
鎌形 染みついちゃってます。
――お互いの部活の話に移ります。相手の部にはどういう印象を持っていますか
大佐古 山岳部入ればよかったなあって思います(笑)。記録とかも結構読ませていただいていて。
田中 本当ですか、ありがとうございます。
大佐古 いやー、本当に素晴らしいなと思いますね。尊敬しかないです。
中島 私も、山に関しては、ワンゲルはそんなに山に行く回数が多くないというところもあるので…。山も、普通に登山道を歩くのとバリエーションルート歩くのは全然やっていることが違うのですごいなと思います。自分だったらできるのかという不安もあるから、鎌形さんは本当にすごいなと思います。
田中 ワンダーフォーゲル部は、山限定じゃなくてアウトドアでたくさんの活動をしていると思うんですけど、特に自転車とかボートっていうのは僕も興味があって、憧れるというかうらやましいというか。あと今僕たちよりも人数も多くて、女子部員の方もいらっしゃって、そのにぎやかさというか、本当に楽しそうにしているところは、私たちからしたらうらやましくてしょうがないという感じです。
鎌形 私もワンゲルの記録は読ませていただいていて、登山もそうですし、ボートや沢など工夫に富んだ計画というか、いろいろなところに行かれていて、それですごい楽しそうでうらやましいです。
――では実際のそれぞれの部の雰囲気を教えてください
大佐古 正直、楽しいことは楽しいですけど、ボートやっている人はそんなに沢のことに興味ないし、沢(沢登)をやっている人はチャリに興味なかったりするので、お互いそんなに干渉していないというか(笑)。それを監督やコーチからは、いろいろちゃんと見ろというふうに言われてますね。
中島 もっと上の先輩たちの中には、学年に1人くらいはいろんな活動をしている人がいたんですけど、私の学年とかは完全に1年生の頃から分かれちゃって、そのまま各々の道を進んできたところはありますね。だからバラバラ感が…。
大佐古 バラバラ感はあるね(笑)。
――この間対談させていただいた時、「江森さん(大希、法4=埼玉・開智)世界大会出るらしいよ」みたいな様子だったので、あまり干渉していないのかなとは思っていました(笑)。
大佐古 昨日久しぶりに顔見ました。あ、帰ってきてたんだ、って(笑)。
一同 (笑)。
――山岳部はどうですか
田中 雰囲気で言うと…。え、ちょっとパスしていい?
鎌形 いやいやいや。部活の雰囲気って、総じてってことですよね…ここで答え詰まるってやばいですよね(笑)。
田中 そうですね、仲はいいんですけど、やっぱりそんなにめちゃくちゃ明るく楽しんでいるかと言われたらそうではないというか。辛いな、という雰囲気がまん延しているのは否めなくて。まあでと山が好きな人が多いというか…でもワンゲルさんの活動記録やSNSを見ていると、ギャップがありますね。輝いていて、キラキラしているなというふうに映りますね。
中島 そんな変わらないと思いますよ(笑)。
田中 いやいやとんでもない(笑)。
鎌形 人数が多いので…。
――ですが、山岳部はYouTubeが充実していますよね
鎌形 去年の卒業生の方が作ってくれたんですけど。
田中 今年はちょっとどうなるかは分からないですね…
――継承はされているのですか
鎌形 されてほしいと思っています。
――鎌形さんからみて山岳部の雰囲気はどうですか
鎌形 上下関係は…そうですね、これはあるって言った方が良いんですかね?
田中 合宿中は…。
鎌形 合宿中は、あの、愛のあるご指導を頂いているって感じですね。
田中 (笑)。
鎌形 普通に怒鳴られ…あ、なんていうんですか、早くしろよ、みたいな感じです。これ、言わない方がいいですか。
田中 全然いいよ。
鎌形 まあ合宿中はすごい厳しくて(上下の)差はありますね。普段は…和やか…ですかね(先輩に確認)
田中 普通に正直に言っていいよ(笑)。
鎌形 いや、和やかです。
――ワンゲルの方は上下関係はどんな感じですか
中島 他の部活よりはないとは思うんですけど、1年生2年生の間に「付き」っていう制度があって、2年生が1年生の責任を持って指導します。それに関しては合宿中は上下関係がはっきりしているけど、他は結構緩い人もいますね(笑)。
大佐古 そうですね。
――他大にもワンゲル部、山岳部があると思うのですが、比較した時に感じる早稲田の雰囲気はありますか
大佐古 ワンゲルっていう概念は大学によってバラバラなので何とも言えないんですけど、自分たちほど、かっちりじゃないですけど、めちゃくちゃ規則に縛られながら活動しているのは早稲田ワンゲルなのかなっていう印象は受けますね。計画書の提出だったり、全員で活動しているという部分で、活動の幅がある程度制限される中でどれだけできるのかって。純粋に山を楽しむことはもちろんなんですけど、それよりもその縛られた規則の中でどう頑張れるかというのをやっているのは早稲田ワンゲルの良さであり、悪いところでもあるみたいな感じです。
――山岳部はどうですか
田中 早稲田の山岳部の歴史から見ても、海外遠征を最終目標にしていて。そういうところで、他大学の山岳部もそれを目指しているかと言われたらそうではないっていうところはあると思うので、そのサポート体制であったり、継承されてきた技術や知識という面では恵まれた部活なんじゃないかなと認識しています。
部について語る大佐古(左)と中島
――次に部の面白いところを教えてください
大佐古 夏合宿と、新入生が入ってきた時にやる合宿、冬合宿では、「集結」って言ってOBさんが集まる機会があるんですけど、その時に新人は一発芸をやります。そういう文化はありますね。学生注目をしたあとに…それでウケなかった場合は「付き」が責任を持って、どんどん上までいくという。
一同 (笑)。
大佐古 でも最近はコロナで集結できていないんで、途切れがちですね。自分は入部が遅かったので、何もやってないです。
中島 でも夏合宿の時やってない?
大佐古 あ、夏合宿でやったか。モノマネをした気がするんですけど…そんなことをやりました(笑)。
中島 ウケた?
大佐古 いや、ウケてないから(先輩が)責任取らされてた。
一同 (笑)。
大佐古 でも先輩がものすごく滑ったっていうのは覚えていますね。
中島 私は流れ星のちゅうえいさんの、「位置について、よーい、スフィンクス」っていうネタをやったんですけど全然ウケなくて。一個上の先輩も滑って、二個上の先輩がめっちゃ爆笑をかっさらっていきました。誰か先輩のモノマネだったと思います。
田中 そういう類でいくと山岳部はまったくなくて、面白いことですよね…。
鎌形 変わってる人は多いけど。
田中 変わってる人が多くて、特に去年主将をされていた真道さん(虎太郎、政経=神奈川・湘南)という、今は5年生でしっかり活動もしてくれている方がいて。本当に、ゴキブリのような生命力がありまして。下界でもそうなんですけど、山に行って朝ごはん食べる時、ワンゲルさんも分かると思うんですけど朝早いじゃないですか、それで食欲がないんですよ。けど栄養だから取らないといけないという場面で詰め込みすぎて戻しちゃって。それでももう1回それを食べたり、本当に変わっているというか人として生命力が強い、そんな面白い人はいますね。
鎌形 真道さんもそうなんですけど、田中さんもなかなかの…。
田中 え、それ大丈夫?
鎌形 ちょっと言えないかな…
田中 言えないのはやめておこう。
鎌形 そうですね、まあテントの中で結構面白い話をしてくれるというのと、ワンゲルさんのような面白いのはないですけど、変わってる人が多いのでそれで楽しませてもらってますね。
田中 (鎌形は)思春期真っ只中みたいな。
一同 (笑)。
田中 これは例えば写真撮影の時とか、みんなでポーズ取ろうよっていっても「いや私はいいです…」みたいなすかした感じがあって、僕たちはそこを課題意識持ってちゃんとさせようというふうにはやっていて、実際心開いてきてくれたんですけど、最初の方はなんか全然笑わないし目も合わせてくれなかったです。ようやく最近抜けてきたかな思春期、って感じですね。反抗期っす。
中島 (ワンゲルには)そんなにアクの強い人はいないかもしれないんですけど、OBさんとかは結構言えないような話を聞きます(笑)。
大佐古 ワンゲルは女子部員が多いので、女性関係ぐちゃぐちゃが多かったりするんですよね。
一同 えー!
鎌形 部内恋愛的な?
大佐古 うーん、結婚もめっちゃ多い。
中島 そうですね、結婚は多いですね。
大佐古 多いですね。付き合ってから結婚する割合がめっちゃ高い。最近はないですけど、コーチやられていて結婚されたとかは多いですね。
中島 ちょっと気になったんですけど、山岳部さんって寮はあるんですか?
田中 ありますね。
中島 寮にはみなさん住んでいるんですか?
田中 今はそのゴキブリのような真道さんが住んでいまして、野生のゴキブリ200匹くらいと共存しています。僕も実は入ろうと思ったんですけど、もともとWISHっていう中野にある寮(早稲田大学国際学生寮WISH)に住んでいまして…
中島 そうなんですか! 私もWISH入ってて。
田中 あ、聞いたことあります。ワンゲルの女子部員がいるよっていうのを聞きました。そうなんですね。WISHを出たあと家をどうしようかっていう時に、一旦その合宿所(寮)に行ったんですね。荷物置いて見学していく中で、お風呂場に行った時に壁が真っ黒で、要するにカビですね。もうこれは無理だと思ってその日に一旦実家に帰りました。それでまた家を探して、戻ってきました。そこに真道さんは住んでますね。
鎌形 ゴキブリと一緒に住んでます。
――ワンゲルの寮はありますか
中島 ないですね。山小屋のお風呂場とかはそれなりにきれいなのでびっくりしました(笑)。山小屋はきれいなんですか?
田中 そうですね、白馬岳、白馬の方に山小屋がありまして、かなり中は広くて新しくて全然合宿所よりも(きれいです)。
鎌形 ロッジみたいな感じですね。
中島 逆になりそうなのに。
田中 本当、そうなんですよ。普通は。
大佐古 横を通るたびに悲しくなります。
中島 あ、そっか、最近通るのか。
大佐古 よく通ります。
田中 そうなんですね!
大佐古 外観もすごいきれいですよね。早稲田ってちゃんと書いてあって。
中島 どれくらいの築年数なんですか?
田中 築年数で言うと、十何年とかそんなレベルだと思いますね。確か建て替えられたんです。
大佐古 ワンゲルは30年くらい…なんか1回焼けてまた建て直して、みたいな。結構前なんですけど、行ったら焼けてたという話です。
中島 なんでだっけ、忘れちゃった。
大佐古 原因分かってなくて、たぶんタバコだろうみたいな。
――普段から手入れはされているのですか
大佐古 山小屋係がいて、その人たちが修繕などもろもろ手続きだったり掃除に行ったり、OB会といろいろやったりしていますね。
田中 山岳部の方はOBの方が完全に管理してくださっているんですけど、今年はちょっと学生も管理に、掃除とかに参加しようかなと考えています。
ワンダーフォーゲル部の話を聞く田中(左)と鎌形
――主将として大切にしていることはなんですか
大佐古 大事にしているのは、自分が何をやりたいかっていうところをちゃんと伝えるように、自分はブレないようにしています。それをしすぎて、事務的な部分を完全に他の人に任せてしまっているところがあるんですけど。旗を立てるじゃないですけど、そういうところは大事にしています。
田中 僕はコミュニケーションを大事にしていて、部員全員と、もちろん人数も少ないので全員とコミュニケーション取って、どういうことを考えているのかとか、何をしたいのかっていうのは必ず吸い上げて、活動につなげていって、というのは意識しています。
――部活や登山以外での関わりはありますか
田中 ほとんどなくて、やっぱり山で1週間とか一緒にいたら、下界ではもう十分というか。ご飯とかは普段の部活のあとに行ったりとかはありますけど、それくらいですね。
中島 全く同じ感じですね。どうせ遊びに行くなら山行こうよ、活動しようよ、みたいになるので、遊びに行ったりは全くないわけじゃないですけど、あまりないですね。
――女子部員同士で共有したいことはありますか
中島 何年ぶりくらいですか、山岳部の女子部員は…
田中 30年ぶりくらいですね。
中島 そんなに!
田中 いや20年か。
鎌形 私が生まれた時に卒業された方がいるって。なので20年くらいですね。
中島 ワンゲルは少ないとはいえ女子部員がいるので、なんとなくこういう感じでいけばうまくいくよねというのはあると思うんですけど、明文化されていないところで。でも山岳部はそういうのがたぶん受け継がれていないと思うので、1年間大変だったんじゃないかなと思って。私とか大佐古は山岳部のSNSで、鎌形さんが頑張って続けてるか見守ってたりしています(笑)。なのでどうだったんだろうな、というのは聞きたくて。
鎌形 そうですね。確かに大変なことは多かったですね。やっぱり体格が違う、歩幅も違う、荷物を持てる量も圧倒的に違うというのは課題としてあるかなと思っています。普段の山行で、荷物の差とかどれくらいあるのかな、とは気になります。
中島 ワンゲルは1、2年生にたくさん荷物を持たせるというのがまずあって、なので1年生の間は同期の男の子とかはめちゃめちゃ私よりも持っているけど、私はちょっと少なめというのはあったり。あとは上級生になってからも、積雪期ってなると荷物はめっちゃ重いので、個人の装備だけで、他のテントとか全体で持つものは私はほとんど持ってなかったり、という感じですかね。それでもやっぱり付いていくのは大変だなと思います。
――主将同士で聞きたいことはありますか
大佐古 ヒマラヤっていつ行かれるんですか?
田中 9月なんですけど、行くメンバーが2人だけで、さっき話した真道さんと、僕の同期の小池が。その2人が9月に卒業なので、OBというかたちでヒマラヤに行きますね。学生は今、海外行けないんですよね、コロナの関係で。確か競スポ(早稲田大学競技スポーツセンター)から止められて、体育会は制限があるみたいで。なのでその2人が(行きます)。
中島 海外に全員で行っている年とかあるんですか?
田中 かなり昔からの歴史でいうと、全員参加が多かったですね。ただ今年は1学年抜けているというのもあって、実力差があったり、コロナとかあって。本当は全員でしたかったというのか部員の本音なんですけど、まあ仕方なく、という感じですね。
大佐古 小池さんも9月で卒業なんですね。
田中 そうなんですよ。
中島 2年生入部とかだったんですか?
田中 そうですね、学部2年で入部しました。ワンゲルは、今年何か最後目標の山とか、これやりたいみたいなのはありますか?
大佐古 そうですね、あんまり自分はよくない主将なんですけど、正直部としてやりたいことはなくて、とりあえずこれからも続いていくこの登山人生が8月で一区切りつくな、くらいのイメージなので、本当に個人的な目標しかなくて。クライミングが強くなりたいな、くらいしかないですね。クラックとかに力入れたいと思ってます。
田中 8月に卒部なんですか?
大佐古 はい。
田中 そうなんですね。
――先ほどから少しOBの話も出ていますが、普段からどのような関わり方をしているのですか
田中 山岳部も監督、コーチがいらっしゃって全員OBという中で、今だと週1回合宿の準備、それこそ計画の審議だったり、リモートや対面で顔合わせをしていたり。あと年の中での節目、新年といったところではかなり上のOBの方々とも実際にお話したりということはありますね。
中島 ワンゲルも同じ感じで、週1くらいのペースで監督・コーチと計画を見る、というかたちで、結構最近は対面が多いですけど、オンラインとかで見る機会があって。その他のOBさんとは新歓合宿、夏合宿、冬合宿で来てくださるというのが…最近はできてないんですけど、前はあって。合宿の計画発表と合宿の総括の時に部員会というのを行って、だから年に7、8回とかOBさんが来てくださってます。活動はたぶん山岳部さんほどは一緒にやってないと思います。
大佐古 そうですね。OBで山をやってるという人はあまりいないので、技術的に何かしてもらったりということはあまりないですね。
田中 僕たちもコーチとかが一緒に山に行かれるというのは正直あまりなくて、最近は特に多くなくて、って感じですね。
――普段のトレーニングを一緒にやられたりとかはないのですか
田中 ないですね、考えたことなかったです。
大佐古 ジムに一緒に行きたいなとは思いますね。クライミングジムとか。
田中 (普段は)週3は必須で長距離走とかダッシュ系のメニューを組み合わせたものをやっていて、プラスで個人個人でクライミングジムに行くとか、そういった感じですね。
大佐古 ワンゲルは週4回ですね、そのうち2回は戸山公園に7時くらいに集まって、ランニングメインという感じですね。長距離走と、20分くらいの中距離みたいな感じのものと。あとの2日はトレーニングジムでウエートトレーニングとかを空きコマに各自でやっています。
――男女間でメニューに差はありますか
田中 山岳部は同じですね。
中島 ワンゲルも同じで、男女というよりも各人の適性タイムみたいなものを設定してもらって、それでできるように頑張ってます。
――大学の部活として活動することの価値についてどうお考えですか
田中 時間というのが大学スポーツの醍醐味(だいごみ)かなと思っていて。というのも大学って学生の中でも最も時間に余裕のある時期だと思っていて、だからこそ1週間、2週間という長い期間山に入る登山ができるというのがいいところかなと思っています。
鎌形 そうですね、田中さんが言った通り長い時間取るというのは社会人になるとなかなか難しいので、やっている間は辛いんですけど、1週間山に行ったりとか、そういう経験は今しかできないかなと思います。
中島 私も、時間というのもそうなんですけど、社会人になっても職種によっては頑張れば1週間とか休みは取れると思うんですけど、その期間を大人数でっていうのは絶対にできないので、その期間に気心知れた仲間と活動できるというのは大学ならではなのかなと思います。
大佐古 登山って数年くらいの経験者ってまだ経験者と呼べないというか、本当に初級者レベルなんですけど、その初級者が入ってきたばかりの新人を連れて、1週間とか使ってそういうレベルの高いところを目指さないといけないというところは特殊なのかなとは思いますね。上も別に実力があるわけじゃないけど、多少無理していろいろ頑張っているというところは、普通の大学以外のところから登山を始めるという人には経験できないことなのかなと思います。
――卒業されてからアウトドアスポーツは続けますか
田中 僕はおそらく大学で一区切りというか、燃え尽きて、社会人からは一旦離れようかなと思っています。
大佐古 自分はやっていない登山のジャンルが多すぎるので、そこを一通りやってから考えようかなという感じですね。自分が本当に登山好きなのかはまだよく分かっていないんですけど、とりあえずは一通りやってみようかなと思いますね。
中島 私は時間が合えばですけど、ワンゲルの中で、山スキーとか、沢登とか、もっとやってみたかったけどやり足りなかったところは、それこそ大佐古とかに連れてってもらえたらいいなーと勝手に思っていたり。あとは職種的にがっつり山をやるのは厳しいので、自転車の方にもシフトしてトライアスロンとかそっちをやってるかもしれないです。
鎌形 トレッキングとか、どういうかたちであれ大学生卒業してからも生涯楽しめたらなと思っています。
――部活をしていて、早稲田スポーツの良さを感じることはありますか
鎌形 山で早稲田出身の人と会ったりはありますね。
――親近感はありますか
田中 たまに、ですね(笑)。
中島 ちょっと違うかもしれないんですけど、山頂で校歌を歌ったりとかはあります(笑)。部員の中であまり好きではないという人もいるんですけど、私は結構好きで。そういう時に、部活入ってなかったら校歌覚えてなかったなって。まさかこんなに愛校心が自分に芽生えるとは、って(笑)。早稲田ならではなのかなと思います。
田中 (山岳部は歌ったりは)しないですね。鎌形が一番嫌がると思うので(笑)。
鎌形 校歌めっちゃ好きなので。
田中 嘘やん! 絶対嘘やそれは。じゃあ今度歌う?
鎌形 歌いましょう。
田中 ちょっと試してみたいと思います。
大佐古 自分たちはエールからやってるので。やる時は(笑)。自分は嫌い派なので。
一同 (笑)。
――部で一番ノリノリな方は誰ですか
大佐古 主務(小林葵、文構4=埼玉・早大本庄)ですかね。
中島 主務の小林ですね。
大佐古 いや、あれはやるべきだと自分で認識したらやっちゃうタイプなので。
――最後に、今季の目標とエール交換をお願いします
大佐古 今季の夏は谷川だったり北アルプスの方で沢登をやる予定なので、レベルの高さとかはアレなんですけど、新人が楽しんでくれたら、安全にできたらいいかなと思っています。エールはそうですね、クライミングにちゃんと力を入れている部活は山岳部だけだなと思って、プラスその海外を見据えている、自分たちの全然知らない世界なので、そういったところを記録とかで楽しませてもらえたらいいなと思っているので本当に応援しています。頑張ってください。
中島 私のワンゲルの最終目標っていうのが、夏合宿で私は自転車隊のリーダーとして合宿を考えていて、その計画自体もハードだったり、あとはヒルクライムとかもあるんですけど、活動そのものが今1カ月くらいの長い時間を一緒に過ごす予定で、その間を通して自分がワンゲルで大切にしてきたこととか考えてきたことをもっと後輩に伝えたいなというところですね。山岳部さんへのエールは、大佐古と同じ気持ちはあるんですけど、あとは本当に鎌形さん女子部員が入っているのはすごいなと思いますし、もっと女子部員が増えてくれたらいいなと。ワンゲルに入ってくれる女子の後輩は、女子の先輩がいるからじゃあ入ろうかな、という子がいたので、これが続くといいなって応援しています。
鎌形 ありがとうございます。
田中 今季の目標としては、最後の3月に剱岳の早月尾根からの登頂を目標にしています。これは2代前からずっと最終目標にはしていたんですけれども、その年の実力不足というところで2年間行けていなくて。ただ僕の代から上の3人は、5月の残雪期と言われる時期に1度行って偵察しているので、最後の最後にやり残した課題をやり切って山岳部生活を終えたいなと思っています。ワンゲルさんへのエールとしては、僕たちは沢登などといった活動もかなり精力的にしていて、僕たちも記録を参考にさせていただいているので、今年は沢登も夏にたくさんしたいと思っているので、ぜひまたご指導いただくことがあるかもしれないのでよろしくお願いします。お互い1年間、安全にやり切りましょう。
鎌形 部活としては春山を目標にして、個人的には、重い荷物を持って歩く力を歩荷力というんですけど、30キロ持って余裕で歩けるようにしたいなというのが1年間を通しての目標ですね。あとはクライミングでは恐怖心に打ち勝てないというシーンがよくあるので、それを克服できるようにして、もっと登攀(とうはん)の力を上げられるようにしたいです。エールではないんですけど、私は女子部員1人なのでワンゲルさんの女子部員の方のお話をまた伺えたらなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・写真 槌田花)
◆大佐古直輝(おおさこ・なおき)(写真左)
ワンダーフォーゲル部。埼玉・開智高出身。もともと野球をやっており、大学でも初めは準硬式野球部に所属していた大佐古主将。それでもワンゲル愛、技術は部内ナンバーワンを誇ります。「本当に登山が好きなのか分からない 」と言いつつ、今日もまた山へ向かいます!
◆田中樹(たなか・いつき)(写真中央左)
山岳部。兵庫・夢野台高出身。教育学部4年。少数精鋭の山岳部の統率者。登山前は早稲田駅付近にあるつけめん高木やの辛子みそつけめんを食べ、その辛さが原因で入山初日にお腹を痛め、食べたことを後悔するまでがルーティンです!
◆鎌形祐花(かまがた・ゆうか)(写真中央右)
山岳部。千葉・市川高出身。山岳部唯一の女子部員。部としても約20年ぶり。田中主将との掛け合いがまるでコントのようで、信頼関係と仲の良さがうかがえました。性別の垣根を超えた登攀(とうはん)力に今後も期待です!
◆中島璃音(なかしま・りお)
ワンダーフォーゲル部。福岡・田川高出身。文化構想学部4年。ワンダーフォーゲル部の女子部員をまとめる頼もしい存在。山頂で校歌を歌うほどの愛校心の持ち主でもあります。とても優しく、対談中もたくさん話を広げてくださってありがたかったです!