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2022.08.02
【連載】『44の円陣』WEB版 第2回 同じ氷上、違う表情(小室笑凜/フィギュア部門✕篠原孝尚/スピード部門)
「氷」という共通点から生まれた今対談。長年競技に打ち込む、スケート部フィギュア部門の小室笑凜(スポ4=東京・開智日本橋学園)、スケート部スピード部門の篠原孝尚(人4=長野・佐久長聖)、両主将にとっても、新しく互いの競技の面白さや相違点を発見する機会となった。そして、「早稲田」の名前を背負って個人競技に打ち込む素晴らしさとは。あまり知られていない大学スケートの世界について語ってもらった。
※この取材は6月11日に行われました。
――自己紹介をお願いします
小室 今年度フィギュア部門主将の小室笑凜です。学部はスポーツ科学部(スポ科)に通っていて。キャンパスが所沢と東伏見なんですけど、私はビジネスコースに所属していて、東伏見が拠点のコースです。家も東伏見ですし、学校も、リンクも全部東伏見っていう最高な環境で(笑)。
篠原 今年度スピード部門主将の篠原孝尚と申します。学部は人間科学部です。自分以外の3名の部員はスポ科なんで、さみしくやってます(笑)。専門種目は一応長距離。短距離が遅いので長距離をやってます。
――同じスケート部ですが、部門を超えた交流はありますか
小室 ほとんどなくない?
篠原 ほとんどね。だから、ホッケーの早慶戦の時に一緒にお手伝いやるとかぐらいなのかな。基本。
小室 それぐらいですね。コロナになってから。でもコロナの1年間はほんとに全く交流なくて。ようやく去年の終わりくらいから早慶戦が復活したので、それでちょっとお手伝いで一緒にやるかなって感じ。
篠原 そうそう。コロナになる前、1年生の時とかは、新人パレードとかもみんなでやったし、ここの寮で部員総会とかもやったし。あと、予餞(よせん)会とか。(今は)予餞(よせん)会は一緒だけど対面じゃないから。
小室 うん。あと海合宿とかもあったけど。
篠原 あったけど…って感じだよね(笑)。
小室 1年で終わったっていう。
篠原 今年はどうなんだろうね。よく知らんけど。
小室 でも、うちらがやるってなったら、うちらがお金を払わなきゃいけないから。
篠原 そうそうそう。4年だしね。だから、1年、4年(だけ)って割と損な気がするよね。
小室 確かにね。
篠原 ぜんぜんもと取れないし(笑)1年、2年、3年っておごってもらって、ようやくとんとんかなって感じだけど。だから、めっちゃ損かなって思うかな。
小室 そうだね。任せます、それは。ホッケーに懸かってるんで。私たちは付いていくだけなんで(笑)。
――相手の競技を実際にじっくり見たことはありますか
篠原 じっくり見たことはないかなあ。テレビで見るとかはあるけど。俺スピードのロングだから、外とか、広いところでやるけど、ショートだったら(フィギュアと)リンクが同じだと思うから、ショートだと見たことあるかもしれないけど。俺らの方はあんまり見たことないかもしれない。
小室 おっきいもんね、リンクがね。ないかもしれないなぁ。
篠原 日本学生氷上競技選手権(インカレ)もとなりでやってるけど行っていいのか分からないし、って感じだったから。去年とか。
小室 あんまり見に行くみたいなことはないですね。全然違う選手ですけど、国体でフィギュアのリンクが、屋外の長距離のリンクのとなりにあったので、それで長距離こんな感じなんだ、っていうのは見たことあります。それぐらいです。
――相手に競技を実際に見に来てもらうとして、自分の競技の面白いところや、ポイントだと思うところとかはどこですか
篠原 玄人向けの競技な気がするので、どうしても。自分としては見るの面白いし、レースとかも見ててすごく面白いかもしれないけど、人に伝えるとなると、どう言ったらいいか分からない(笑)。ハマればたぶんハマれる、分かれば分かるみたいな感じだから。伝えにくいかなと思います。
小室 あーなるほどね。言いたいことは分かるわ(笑)。
篠原 分かる(笑)?
小室 自分的には何が面白い?
篠原 ラップタイム、一周ごとのタイムがあって、それをキープしていくのが長距離の基本的なレース展開。キープしていって、先行されてたり、自分より速かった人に追い付いていったりしてる時は歓声とかもすごいし、応援もすごく盛り上がるから、そういったところが面白いですね。
小室 なるほどねー。
篠原 そう、なんか、沸けば沸くほど面白くなる。
小室 えー。
篠原 つまらないやつはとことんつまらない(笑)。
一同 (笑)。
小室 人に懸かってるみたいな。
篠原 怒号しか飛ばないみたいな(笑)。
小室 確かに。ドラマ的な展開があると面白いみたいな感じか。
篠原 そうそうそう。
小室 なるほどね。それは確かに見てて楽しいかもね。
小室 フィギュアは、そうですね。個人的には、滑る人の個性がめっちゃ出るなと思っていて。初めて見る人って、たぶん、「ジャンプ跳んだ!」とか、そういうところの印象があると思います。でも、何回か見てると、この人すごい個性的な動きするなとか、この人落ち着いてるなとかが分かって。大体それって人の特徴と一致してる感じがすごいしてて。内面が出てるなって思います。そうですね、だから内面が出るスポーツだなってやっててすごく思います、いつも。
――相手の部門にはどんなイメージを持っていますか
篠原 フィギュアはすごく学年とか関係なく仲がいいなって見てて思うかな。
小室 そうだね。
篠原 俺らそんなに人数多いわけじゃないし、あんま仲いいわけじゃないかなって。そういうとこがうらやましい。
小室 本当? 逆に少人数だから仲いいと思ってた。
篠原 一緒すぎるから、なんだろう?俺と誠悟(伊藤誠悟、スポ4=長野・屋代)は2年生の頃から同じ部屋だし、2人しかいない同期だから。なんだろうな、仲いい友達っていうよりは、芸能人のコンビみたいな(笑)。スケートに関しては一緒に頑張るけど、それ以外は別に、みたいな。そういう感じなんだよね。
小室 プライベートと普段がきっちり分かれてるみたいな?
篠原 そうそうそう。同じ目的ではあるけど、それぞれのアプローチって感じだし、プライベートとかもあんまり干渉していかないから。そう。あんまり一緒に出かけたりとかもしないし。
小室 えー。そうなの。てっきり普通に2人で仲よくやってるのかと思ってた。あんまり。意外と塩なのね、そこらへんは。
篠原 そうだね、うん。
小室 後輩の2人とかはどんな感じ?
篠原 後輩の2人も、どうなんだろう?
小室 興味ない(笑)?
篠原 どうなんだろうね、俺自身が「自由にやりたい」っていう性格だから、彼女たちも自由にやってほしいっていう思いがあって。練習とかもあんまり時間とか決めないでやってるから。どうしても俺らの競技って自分がどれだけ頑張るかによって成績って変わると思うから、そういったとこで任せきっていて。2人のことは信頼してるし、頑張ってほしいなとは思ってるけど、そういう普段のことまではあんまり気にはしてないみたいな。
小室 なるほどね。でも、個人競技のところはあるから、そこはそうなっちゃうよね。必然的にね。
篠原 そうそうそう。頑張ってもね、人のためにやってあげられないからね。試合だと。
小室 なるほどね。そうなんだ。私が感じるスピード部門は、少人数だから意外とみんな仲良くやってるのかなと思ってたけど。みんな自主的に行動していくみたいなのがちょっと意外だったというか。
篠原 大会のシーズンとか、みんなで動くこともあるけど。それぞれで出る大会とかも違ったりするから。
小室 あ、そうなんだ。
篠原 そうそう。どうしてもこのへんに400メートルのリンクがないから、練習もみんなで遠征に行くとそれなりにお金掛かっちゃうし。そういったところで「自分のやりたいように」って感じだから。みんなまとまってっていうよりは、各自それぞれの目標に向かって、みたいな意識の方が強いかな。
小室 そこはちょっとフィギュアも似てるかもしれないな。もともと、男の子は上下関係があったりするんですけど、女の子はそんなに普段のリンクとかでも上下関係がない世界というか。部で活動する以外にクラブに所属するので、それもあって、あんまり上下関係を気にせずしゃべれるところは、いい意味で部の仲の良さを作ってるのかなと。海外で練習してる人も結構いるので、みんなで一緒に旅行行くとかはちょっと厳しかったりするんですけど、練習後にごはんに行ったりとか。今年はまだ未定なんですけど、合宿をしようっていう話もしていて。海外の子も日本に帰国したタイミングで行けそうかもって感じなので。みんなで1泊2日、ちょっと遊びも交えて練習もしてっていう感じでやろうかなと今考えてます。
――3年生の代の人数が多いですが、拠点がバラバラなのにもかかわらず、仲が良いですよね
小室 そうですね。何なら一番仲いい学年なんじゃないかなと思って。たぶん、みんなほんとにお話が大好きな人が多いんですけど、今主務やってる岡島くん(岡島右京、商3=東京・早大学院)がああいうキャラなので(笑)。すごくいい雰囲気を作ってくれてるっていうのもあると思います。
――スピードの2年生の2人は仲良しだと聞きました
篠原 学部が一緒だといいよね。
小室 確かに。(篠原は)ひとり人間科学部だもんね。
篠原 永遠に所沢に監禁されてる(笑)。
小室 間違いない(笑)。
――スピード・フィギュアは個人競技なので集団の部活と形態が違うと思います。そうした個人競技を大学の部に所属するかたちで行うことの良さや意義などはどのようなところだと思いますか
篠原 今まで続けてくる中で、高校までのスケート部ってチームスポーツと近くて。みんなでいろいろ一緒に行動して、みたいな感じ。ですが、大学生になって、ある程度自由な時間ができる中でやるっていうところだと、「個人競技の方が強みが生かせる」のが大学でやるっていうことだと思っています。なんだろうな、高校までよりは(大学生の今の方が)自分の時間って作りやすいじゃん? だから、そういう時間でいくらでも強くなれるっていうのが自分の中で思ってて。それは、やっぱり団体競技だとチーム全体のレベルを上げるのって時間が掛かるから、そういったところでは、大学スポーツで個人競技やるっていうのはメリットがあるのかなと思う。
小室 確かに。それはあるかもしれない。フィギュアは、早稲田って初心者も居ますが、本当にトップの選手もいて。そういう中でどういうふうにお互いを高め合えるか、その選手からどういう事が学べるかみたいなのが意義なのかなって思ってて。一言で言うと、人間性とか価値観を広げるとか、っていうところかなとは思います。
篠原 初心者からできるっていうのはすごくうらやましいなと思う。俺ら(競技を)今から始めるってなると大会出るまでに2年ぐらい掛かっちゃうから。
小室 そんなにかかるんだ。
篠原 うん。よっぽどセンス良くないとその年の大会には…。一応(大会に出るのに)資格みたいなのが必要で、基本的にそういう大会ばっかだから。どうしても初心者はきびしいのかなって。
小室 確かに、競技の特性上。
篠原 そうそうそう。みんなスポーツ推薦で大学入るし。狭い世界だわ(笑)。
一同 (笑)。
小室 フィギュアは、選手の級が結構バラバラなんですけど、始めたての子がすごい選手と一緒に滑れるっていうのは学びになるなって。私がこの前滑ってて思ったのは、(初心者の選手は)始めたてっていうところもあって、すごく「短い期間でどこまでやれるか」っていうのに、すごい頑張ってるなって。初心に帰れるみたいなところがあるので、そこはうちの部のいいところかなって思います。スピードって、級みたいなのあるんだっけ?
篠原 一応。バッジテストみたいなのがあって、それ持ってたら、基本出れるんだよね、B級っていうすごい小学生の速い子でも取れるぐらいの級を持ってれば、みんな出れる。あと1個だけ、その上の級が必要な大会とかもあるけど、大学生は基本持ってる、みたいな感じかな。
小室 スピードやってみたいな(笑)。
篠原 楽しむぐらいなら楽しいと思うけど
小室 どうなんだろう? 滑れるもんなのかな? たぶんスケートやってるから。
篠原 滑れると思うよ。長いと扱いづらいかな、あと、たぶんエッジの幅も細い。
小室 より細いもんね。
篠原 だから、ちょっと戸惑うかもしれない、最初は。機会があれば。
小室 教えてください(笑)。
――お互いの競技をやってみようとしたことはありますか
小室 なんだろう、そういうふざけたことはあまりしないんですけど(笑)。昔は、練習の途中とか最後に、スケーティングでダッシュみたいなのをやってたんですけど、そういう時はもう、こんな(前のめりで、スピードの選手みたいな滑り)なので(笑)。ちょっとアイスホッケーに近いかも(笑)。エッジ倒すみたいな。そういうのは、結構フィギュアでもきちんとカーブに乗る技術に応用できるので、深いエッジ倒すみたいなのはたまに練習でやったりします。
篠原 僕たちは、普通に遊びとかで、一回転くらいはすることある。
小室 え、できるんだ。(スピードの靴では)踏み切れなくない?
篠原 できない。できないから、地上で両足ジャンプするみたいな感じでただ回るだけみたいな。あとは、止まる時とか僕らの靴には一応ロックあるから。キュって回って止まって、とかはするかな。
――お互いの競技でこれやってみたいなと思う要素はありますか
小室 めっちゃバァーって滑りたいですね。外のリンクで、風切って滑ってみたいです。
篠原 風切るくらいならいいけど、風で止まるみたいなことがあるから(笑)。
小室 あー、追い風とか。
篠原 そうそう。
小室 確かに。天候にも左右されるのか。
篠原 外だとね。
小室 それがちょっと(フィギュアと)違うな。
篠原 そう。室内とかだといいかな。最初の頃とかはすごいスピード感感じられて楽しいかな。慣れてくるともう、違うよね(笑)。俺は普通にジャンプをやりたいな。
小室 ジャンプの種類とか分かる?
篠原 あー分かる分かる。
小室 分かるんだ!
篠原 ちょっとは分かる。けど、正しいかどうかは分からない。
――何回転くらいしてみたいですか
篠原 氷上でしょ? 2回転できればめちゃめちゃうれしいかな(笑)。
靴を並べる小室(左)と篠原
――靴にはどのような違いがありますか
篠原 (持参していただいたスケート靴を机に並べる)これ本職(長距離)の靴じゃないんだよね。これショートのやつだから。
小室 違うんだ、ショートと。(フィギュアの靴と)何が違うんだろう。
篠原 まず、(スピードはフィギュアと比べて)こんなにかかとが高くなくて。(スピードは)ここは高くて。ショートトラックって、小さいから手をついて滑ったりするんだけど、それだけ(エッジを)深く倒すから、その分かかとが高くないと、靴擦っちゃってっていう感じだから。これが、普段履いているアウトの靴。(靴の写真を見せる)かかとが離れるんだよね。
小室 そうなんだ。
篠原 初めて(この靴に)乗るとまじで転ぶ、つま先とか丸いから。
小室 こけそう、めちゃくちゃ。
篠原 初心者がこれを履くと、転ぶし靴壊れるしみたいな。
小室 壊れる(笑)?
篠原 本当、そんなレベルだと思う(笑)。この靴(ショートの靴)だと大丈夫か。かかとすごい高いし。
小室 私のは、スピードと比べたら全然。この靴はそうでもないけど、もっとヒールっぽくなってる。
篠原 ヒールっぽくなってるんだ。
小室 靴の種類によってもだいぶ違うけど。エッジも種類がいっぱいあって。私はマトリックスっていう。こういうタイプじゃなくって、ここ(エッジが)ねじで止まっているんですけど、ただのエッジみたいなタイプもあるんですけど。こういうエッジもあって。最近割と使ってる人が多い印象です。軽いし、滑りやすいみたいな感じで。
篠原 あとは、靴が剥げるのを防止して(黒にしてる)、この黒だと目立たないから。
小室 そうだよね、確かにね。
篠原 この辺とかもめちゃくちゃ擦るんだよね。こうやって、(靴を)引きつけたりするから。これで汚れたりもする。
――靴の交換頻度はどのくらいですか
小室 人や靴の種類によって頻度が変わります。私は大体半年に一回変えてて。割と柔らかい靴なんです。私は硬い靴を本当に受け付けなくて。もう何にも跳べなくなっちゃう。でも人によっては、硬い靴の方が、むしろ硬いから跳ね返されてジャンプ跳べるみたいな人もいます。
――馴染むまでには時間が掛かりますか
小室 うーん。まあ1週間、2週間くらい。そんな気がします。
篠原 俺この靴は、別に試合でないから。
小室 練習用?
篠原 そう、練習用で買ったから。で、もう使わない。
篠原 この靴は、人によるけどワンシーズンは使うかな。靴は、あとは合う合わないとかあるから、作ってもらって、基本オーダーメイドだから。
小室 あ、そうなんだ。足型?
篠原 そうそう。足型を取って作るけど、違和感ある人とかもいるわけで。そういう人はメーカー変えたりとか、それこそ作り直してもらったりとかもあるかな。俺らの場合は、靴よりもエッジとか、まあよく変える人がいるかな。長さとか、硬さとか、若干あるから。まあスピードの方が、エッジを変える頻度も少ないかも。このショートトラック(の靴)の場合は本当人それぞれで、この下のエッジは、何本も持っている人とかもいるし、しょっちゅう変えたりしてるって感じ。
小室 紐も違うね。
篠原 俺らはこれじゃないんだよね。アイスホッケーの紐に近いんだよね、普段使ってるやつは。こだわりとかじゃなくてもう単純に、切れた方を替えるみたいな(笑)。
――フィギュアは基本靴の色は白ですか
小室 男の子は黒で、女性は白が多いんですけど、たまにベージュの靴とか履いてる人がいます。ベージュはアイスダンスとかで履いてる人が多い印象かな。あと最近だとエッジの色がすごい選べるようになって、前までは普通にシルバーが主流だったんですけど、それこそゴールドとか紫とかピンクとかも結構います、最近は。可愛いなって思ってるんですけど。
篠原 俺ら靴の色もめちゃめちゃある。
小室 あ、そうなんだ。
篠原 それこそオーダーメイドだから、自分で色も全部選べるし。
小室 すごいね。
篠原 左右で(靴の色が)違ったりとかするし。
小室 エッジカバーとかも結構みんな、割と個性が出ますね。私はブタにしたんですけど(笑)。どっちかのブタ鼻が取れてるんですよね(笑)。
一同 (笑)。
小室 あ、取れてなかったか。あ、これとかちょっと(笑)。
――リンクの硬さによって違いはありますか
篠原 江戸川(江戸川区スポーツランド)で、ショートの練習とかしてたから滑ったことはあるけど、変な硬さがあるのかな。全体的な硬さじゃないんだけど、表面柔らかくて、下硬いみたいな。それがより顕著に出てる。
小室 江戸川は私あんまり滑ったことないな。
篠原 それぞれのリンクで全然違うでしょ?
小室 うん、違う違う。私、東伏見は比較的滑りやすくて。なんか、野辺山とか…。
篠原 あ、野辺山ね。野辺山、俺も近くにあるけどね。滑ってないんだよね。
小室 あ、あんま滑んない?
篠原 スピード出るところだと思うんだよね。そうでしょ?
小室 うん。そう。すっごいサーって滑ってく。
篠原 そうでしょ。あんな感じ。あれはたぶん、すごくスピードのリンクに(感触が)近い。
小室 野辺山。ジャンプはどうだったっけな。若干硬い気がするけど。
篠原 全部硬いイメージがある。俺は。あと、外リンクだともういろいろ…。雨だったらガタガタするし、寒いとカッチカチで全然エッジかまないとか。
小室 へー。そうなるんだ。
篠原 うん。全然。ほんと外だと天候に左右されまくる。
小室 大変だね。
篠原 室内ですら暑い日けっこうびしょびしょになって。
小室 けっこう試合会場とかってわりと、みんなこけてんなーみたいな時があると、だいたい氷が硬かったりとか。ありがちですね。
――フィギュアは硬すぎない方がいいのでしょうか
小室 うん。硬すぎるとみんな(ジャンプやスピンが)抜けたりとかしてる印象。柔らかすぎても、トウついた時にずこずこ入っちゃうんですけど。硬すぎると、たぶんいろいろ抜ける気がします。
篠原 俺らはほんとに人それぞれで。硬い氷好きな人とか。全然ね、なんか違う、みたいな。水泳部の友達がいたんだけど、水泳部だと、硬水と軟水で違うって言ってて。
一同 えー!
篠原 そういうのもあるから。
小室 ほんとに?
篠原 そう。よく考えれば、氷作ってる水が硬水なのか、みたいな。そういうのでもたぶん、ちゃんと考えれば違ってくるんだと思うけど。そこまではやらない、さすがに(笑)。
――自分の部活の面白いところはどこですか
篠原 どうだろうな。俺らはたぶんめちゃめちゃ遠征多いから、楽しいのかな。いろんな所行ったりするし。あと、頑張れば頑張った分だけ速くなる気がする。体力っていうのがベースにあるから。ちゃんと技術も伴わないと成長っていうのはできないけど、やっぱやればやっただけ自信もついて、結果につながるっていうのが、楽しいとこかな。
小室 陸上でいうと駅伝みたいな感じ?
篠原 そうそう。それに近いね。
小室 なんとなくそんなイメージあるもん。なるほどね。フィギュアは、特に女の子はけっこう波が激しい子が多くて。ほんとに一定でずーっと安定してる子もいるんですけど、それはそれだけすっごい努力をしてて。そこは波をどういう風につかむかっていうのがたぶん難しいところです。あとは、ジャンプとかの感覚を、感覚で跳ぶ子と、理論的に考えて跳ぶパターンがいて。
篠原 それたぶん俺らもあるわ。
小室 あ、ある?そうなんだ。
篠原 感覚派と、理論派みたいな。ぜんぜんそう、俺とかは割と考えてそうで考えてないみたいな。
一同 (笑)。
小室 意外。
篠原 そうそう。イメージでしか滑ってない。そういう人もいるけど、やっぱめちゃめちゃ考えて全部技術で、みたいな人もいるから。
小室 なるほどね。早稲田の子じゃなくて、私が普段一緒に練習してる子がいるんですけど、その子は感覚でバンバンやる子で。でも、私は感覚だと、途中で何やってるか分かんなくなっちゃうんで、こうやってこうやって、みたいな。だいたい、そういうことを考えてから跳ぶと、先生に考えすぎだって言われて(笑)。
篠原 考えすぎだって言われる時あるよね。
小室 そう。で、たぶん試合の時は、わりと感覚の方が上手くいく気がします。
篠原 試合だと、意識してもどうにもならないから、感覚での方がたぶん(いい)。俺もそういうイメージ強いな。練習でできないことってやっぱ試合でもできないから。試合はあんまり気にしないって感じで。
小室 そうね。最後は感覚、みたいな。部活の面白いところでしたよね(笑)。なんだろうな。私が入部した時ってフィギュアはほんとに人数少なくて。私が入部した時、(同期が)私1人だけしかいなくて。覚えてる?
篠原 そうだよね、予餞(よせん)会の時1人だけだった。
小室 そう。で、1個上が2人、で、もう1個上が4人、で4年生が1人みたいな感じで10人もいなかったんですよね。すごい小規模で、「ただ試合やるだけか」って思ってたんですけど、2年生くらいから、今の3年生の世代がいっぱい増えて、こんだけ増えたからなにかやりたいよね、みたいな雰囲気になって。WASEDA ON ICEみたいなのをやり始めました。「みんなでアイススケートショーを作る」みたいなのを、やるとは思ってなくて。でもそういうのって普通の部活ってあんまりやってないのかなと。自分たちでプロデュースして、ちゃんと考えて、自分たちも出るみたいな。いい意味で部活っぽくはないなって思ってて、そこはすごく面白いところかなっていうのと。あと、すごく卒業生の方が代々すごいです。町田樹(平29スポ院卒)さんとか、中野友加里(平11人院卒)さんとか。荒川静香(平16教卒)さんとかも早稲田出身ですし。町田さんとかもこの前一般滑走で、たまたまお会いしたんですけど。「私のこと分かんないかなー」って思ったら、声を掛けて下さって。すごい親身になって「今年はやるの?」とか、WASEDA ON ICEの感想をいろいろ言ってくださってすごく優しい方。本当に。その時はすっぴんで髪ボッサボサでいたんで(笑)。もう恥ずかしかったですけど、すごくいい方で。卒業生はいろんなとこで活躍してるなって感じですね。
篠原 やっぱりOBOGって大きいよね。俺らも、あんまり(有名な選手は)いないけど、連盟の偉い人とかが結構OBだったりするから。そういったところだと、すごいと思う。
――相手の部門に対して、うらやましいなと思うことはありますか
篠原 フィギュアもホッケーもだけど、ちゃんと引退する時にホッケーだったら早慶戦だし、フィギュアだったらWASEDA ON ICEがあるみたいな感じだけど、俺らは普通にただの大会で終わりみたいな。インカレでもないし、普通に地元の大会で終わりみたいな感じだから、そういった意味ではうらやましいなって。
小室 WASEDA ON ICE、ゲストで出る?
一同 (笑)。
篠原 ゲストで出るのもしんどくない(笑)? ホッケーとかも一緒なら良いけどね。
――ホッケー部門の早慶戦のエキシビションはどうですか
篠原 早慶戦、どうなんだろう…。
小室 ショートトラック?
一同 (笑)。
小室 寂しいね、引退の試合がね。
篠原 普通に(引退試合が)地元な分、今までお世話になったコーチとかはいっぱいよく頑張った、みたいな感じで温かい雰囲気でって感じ。それはまあ、良いと思うけど、一般大会だからさ、俺らが主役ってわけではないから。そういうのがあるのが、ちょっとうらやましかったりするかな、個人的には。
――お互いに聞いてみたいことはありますか
小室 今人生戻れるとしたら、スピードスケートやってる? それとも他のやりたかったとか?
篠原 どうだろうな。生まれた場所が同じなら、スピードスケートやってるかもしれないけど、違ったらまた違うのかなって思う。
小室 おー。
篠原 高校とかも寮だったし、そういうところじゃなくて、高校時代から、部活もそんなにきつくなくて、楽しくエンジョイできる高校生活だったり大学生活だったりっていうのはやってみたいなって。やっぱりエンジョイしきれてない感じはあるから、周りの子たちに比べると(笑)。
小室 そうだよねー。めっちゃ分かる、それは。「大学生」っていう感じはしたことないよね、あまり。
篠原 高校の延長、みたいな。
小室 うん。
――プロのスポーツではなく、大学スポーツで競技を行うことにどのような価値があると思いますか
篠原 なんだろうな。スピードではミーティングとかで「大学スポーツ」「早稲田のスポーツ」っていうのを意識してミーティングとかするんだけど。
小室 すごいね。
篠原 OBの人が、いろいろやってくれるんだけど、難しいなって思って終わっちゃうんだよね(笑)。
小室 難しいよね。
篠原 アメリカとかの大学スポーツだったら、全部の競技の学校対抗みたいなのあるから、それだとすごく価値あるのかなって思うけど。早稲田だから言えることだと思うけど、プロじゃなくて大学生だから、ちゃんと学業も頑張って、両立して、結果を残すっていうのが一番価値があることなのかなって個人的には思ってて。やっぱりプロだと結果だけを追求してやってると思うんだけど、(大学スポーツでは)結果だけじゃなくて、人として成長するっていうのが大学スポーツの意義なのかなって思ったりはするかな。
小室 確かにね。それはありますよね。あと結構、学生だからある種思いっきり頑張れるというか。プロはその人の人生が懸かってるから難しい部分もあると思うんですけど。学生ってまだ何にでもなるな、みたいな。思いっきりできるし。あとそれこそ、部活の交流とかも、部活生って授業とかその学部の中でも結構交流があるかなって思っていて。帰属意識じゃないですけど、同級生がいるから早慶戦応援に行こう!みたいな。交流の幅も広がるのかなっていうのはすごくやってて思いました。一緒に(競技に)打ち込んだ仲間って一生の仲間かなって思うので、卒業後もすごく良い関係になるんじゃないかなと思います。
――早稲田スポーツの良さとは
篠原 伝統、誇りみたいなところはあるけど。
小室 あー。
篠原 簡単に言うとそうだし、他の部でも一流のアスリートっていっぱいいるわけだから、そういったところの一員になってるっていうのは一生誇りを持てるところなのかなって思う。
小室 それはあると思う。早稲田の部活っていうだけで結構ブランド価値高くない?
篠原 うん(笑)。
小室 早稲田の人たちって「ナンバーワン目指す」みたいな部活が多いのかなっていう印象で。どこいっても。そこに対しての強い熱量みたいなところはすごいなって思います。
――今回の対談を通して相手の部門への印象の変化はありますか
篠原 印象はそのまま(笑)。
一同 (笑)。
小室 なんとなくイメージはしてた感じかなっていうところはあるけど。でも思ったよりホッケーとスピードは結構繋がってる感じだよね。
篠原 そうだよね、一緒にいるから。
小室 ね、もうちょっとね、3部門で何かできればなって(笑)。
篠原 3部門でできれば一番良いよね。
小室 1年生の時に行った海合宿が結構良い思い出だから(笑)。
篠原 あー、それはね、たしかに(笑)。
小室 そういう交流はね、あった方が良いかもしれない。忙しいけど、なかなか。
篠原 そうだね。
――ありがとうございました!
(取材 吉本朱里、紀洲彩希 写真、吉本朱里)
「競技らしいポーズ」をする篠原(左)と小室
◆篠原孝尚(しのはら・たかひさ)(写真左)
長野・佐久長聖高出身。人間科学部4年。対談中も終始優しい人柄が出ていた主将。自分の軸があり、周りの意見に左右されない方です。そんな人柄ゆえか、チーム内でも主体性を大切にしています
◆小室笑凜(こむろ・えみり)
東京・開智日本橋学園高出身。スポーツ科学部4年。終始丁寧に質問に答えてくださった小室主将。自ら話を振ってくださるなど、主将らしい気配り上手な一面も。スケート靴のエッジカバーはかわいいブタさんです!