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2021.12.22

【連載】箱根事前特集『実』 第4回 伊藤大志

 スーパールーキーと期待されて入学した伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)。出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)では不振に終わったものの、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では借りを返す走り。3大駅伝を通して、成長し続けている。人一倍仲間への思いが強く、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では優勝することに強くこだわっている伊藤。彼を動かすものは何か、大学での1年を振り返りながら、話を伺った。

※この取材は12月12日に行われたものです。

大学の練習もほぼ完ぺきにこなす それが自信になっている

質問に答える伊藤

――入学以降、高校と大学での練習はどのように変わりましたか

 一番は競技のステップが変わるというところです。大学生は一般の社会人や実業団に行っている方々と同等のレベル、つまり一番上のクラスになります。ですので、練習の質もそうですし、量も高校とは格が違うなと思うところが多くあります。ポイント練習も高校では考えられないタイムであったり、普段の練習も高校の倍くらいの量をしています。そこのギャップなどで、単純に驚いた部分はありました。

――ここまで大きなけがはありませんでしたが、今季は不調になることはありましたか

 大きなけがは幸運にもなく、(練習を)続けることができたので、そこはすごく大きなアドバンテージだなと思っています。強いて言うなら夏合宿あたり、特に7月終わりくらいの所沢が急に暑くなった時期ですかね。僕は長野県出身で涼しい所で18年間過ごしてきたので、夏の暑さにうまく対応できませんでした。所沢の一次合宿でだいぶへばってしまったので、後れを取ったというよりも、コンディションを整えるのに時間を取られてしまいました。

――気温の差は脱水症状などに現れたのですか

 そうですね。脱水もあったりとか、暑さとなると、科学的なことよりも体がだるくなってしまうことがありました。足の調子というよりも体全体が重いな、だるいなというところが一次合宿で続いた感覚はありました。

――入学以降、Aチームでの練習が主になってきましたが、手応えはありますか

 先ほど高校と大学の練習のギャップが大きいという話をしたのですが、高校から大学に入る際にビビっていたのですが、割とうまくこなせたのかというか。練習自体は完璧に近いくらいにこなすことができていて、それはかなり自信につながったなと思っています。

――春から合宿までを通して、収穫と課題は何ですか

 特に涼しくなってきた9月入ってから駅伝シーズンまで、自分が想像していた以上に調子を上げることができました。そしてその流れにうまく乗れるように、練習をかなり積むことができたので、そこからは自分に自信が持てる練習ができるようになったと思います。

初の大学駅伝での悔しさ その後の取り組み

――初めての大学駅伝である出雲駅伝はどのような場になりましたか

 ぶっちゃけ緊張しました。元々緊張とかプレッシャーを意識する方ではないのですが、無意識のうちに緊張していたと、今振り返ればすごく思っています。初めての大学駅伝ということもありますし、優勝を狙っている中で状況的に僕が詰めれば優勝、詰めないと優勝はない中で、キーマンというか、大事な区間になっていました。そこが知らず知らずのうちにプレッシャーになっていました。ですが環境、コンディションにうまく対応することができず、結果的に走ることができなかったので、選手としての強さにまだまだ鍛えるべきところがあると痛感したレースです。

――途中で抜かされた高校時代のライバルである石田洸介選手(東洋大)に対して、意識したところはありましたか

 一番は負けたくないなというのが大きかったです。石田は僕が中学校で長距離を本格的に始めたころからトップで突っ走っている格上の選手と思っていたので、高校3年間を通して、追い付けるところまで来れたなという感じです。その分負けた悔しさは大きく、レースが終わってから、このままじゃだめだなと、石田との差を感じて考えました。

――(出雲の)レース全体でプレッシャーを感じる部分はありましたか

 1年生で走るというのは少なからずありましたし、前の区間で石塚(陽士、教1=東京・早実)が区間賞をとっていたので、今思うと感じます。その時は「大丈夫だ」と自分に言い聞かせていたので、(プレッシャーは)感じていませんでした。ですが、後々に映像を見て試合前を振り返ると、動きが固く、やはり緊張していた、場の雰囲気にのまれていたかなと思います。大学駅伝はすごく特別な雰囲気というか、日本選手権とかのトラックレースも独特な雰囲気なんですがそれとは違った大学駅伝の雰囲気がありました。そこにのまれてしまったというのが今の感想です。

――単独走のどのような難しさを感じられましたか

 一番は自分でペースを作り、自分で追う、もしくは後ろを離さなければいけないということが一番難しいかなと感じています。出雲の5区の状況であれば、自分でペースをつかみ、前の東京国際大との差を埋めることを全てやらなければいけませんでした。そこに真の選手の強さが必要になってきます。それにプラスして、向かい風がどうしても抵抗になるので、一人よりも二人で代わる代わる走っていた方が楽です。しかしそれを一人でやるとなると技能的な面以上に体力的な面、根本的な面でやはりきついなと感じました。

――出雲の挫折からはどのように乗り越えましたか

 チームで優勝を狙う中で、自分がブレーキをかけてしまった事実は残っているので、すごく悔しかったです。相楽さん(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)から、走り終わった後に「駅伝での借りは駅伝でしか返せない」という言葉をいただき、「全日本と箱根ではチームの足を引っ張らない、むしろチームを優勝に持っていく走りをするぞ」と意気込んでいました。ですので、気持ちの面としても絶対に巻き返してやるという気持ちがありました。

 技術面としても、出雲での反省を生かして向かい風や暑さへの対策も考えました。例えばポイント練習であえて横に出て、前に風よけがいない状況で一人で走る練習をしたり。少し動きが固かったり、ストライドがうまく広がってなかったので、普段のジョグやポイント練習で可能な限りストライドを広げるようにして、他の人とはプラスアルファで自分でストライドを広げる特殊な練習をしていました。

――単独走と集団走における練習で、ご自身で感じられた違いはありましたか

 集団走では、一人でペースを作っていくというよりも集団の流れにうまく身を任せて、動くところでは動き、それまではできるだけ体力を温存するという、客観的に見ると少しずる賢いレースになります。ですがそういったところは僕は得意であるのに加えて、全日本は出雲よりも緊張しませんでした。なので、考えずに身を任せて、誰かが動いたら動こうという感じでやっていて、練習での精神的な負担はすごく少なかったです。そういった面で、練習の精神的なアドバンテージ、余裕があったかなと思います。

――全日本での起用に対する驚きはありましたか

 正直ありました。1区は菖蒲さん(敦司、スポ2=山口・西京)が行く感じで、僕も菖蒲さんで行くんだろうなと勝手に思っていました。出雲の後に単独走の練習をずっとしていた中での1区起用だったので、とても驚きました。

――全日本では出雲の借りを返す走りをしましたが

 全体で見ると良い流れで渡したとは思うんですが、やはりもう一歩だったと。欲を言えば区間賞争いに関わりたかったというのが本音です。そこで区間賞争いに絡んでいたら、後半のレースは違ったのかなと、今振り返るとすごく思います。

 全体に対しては、相楽さんからは各区間の目標タイムが設定されているのですが、ちょっとだけ更新できずに、惜しかった区間がほとんどでした。一人一人が各区間で数秒を削り出すだけで、後続の区間に有利な状況を作り出すことができたのかなと思うとやはり詰めが甘かったのかなと、僕が1区を走った中だとかなり感じます。

――一方で、全日本で課題は感じられましたか

 レースの展開的にはうまく立ち回ることができたのではないかと思います。ですが、スタミナの面が大学駅伝の1区を戦う上では課題かなと思っていて。テレビでは映っていなかったのですが、実は1区の仕掛けが2回ありました。集団に前で走っていた第一工科大学の留学生の選手が(集団に)吸収されて1回ペースが上がったんです。そこで集団がばらけ、大和さん(吉居大和、中大)が(ペースを)上げて、そこには対応できました。

 しかし、残り1キロでの2回目の仕掛けには対応できませんでした。そこはテレビで映っていたんですが、1区を戦う上ではそこが一番大事かなと思います。そこに対応するためには、スピードというよりはスタミナなので、そのスタミナが、1区を走る上でも単独走でも他の区間を走る上でもやはり必要だと思いました。

「一番は、チームの優勝に貢献できる走りを」

練習の一環として出場した激坂最速王決定戦での伊藤

――全日本以降の体の調子はいかがですか

 全日本を走って1週間以降ぐらい、激坂王(激坂最速王決定戦)に出た時はだいぶ調子が悪かったです。疲労が相まって、練習の一環で激坂王に出たのですが、練習にしては遅かったなと。体の調子が悪く、予想外にペースを落とさなければいけない状況で、予想通りではあったんですがやはり負担が来るんだなという感じでした。予想通りではありましたけど、もうちょっと積みたかったですね。そこからはだいぶ調子よく上げてこられて、完璧にここまで集中練習はこなしています。

――激坂王はいかがでしたか

 そもそも激坂王に出走する目的として、上りの感覚を掴むということもなのですが、上りを今どれだけ走れないかの感覚をつかむということも一つの目的としてありました。やはり上りの区間、箱根の5区もそうですが2区や8区であったり、上りがあるところでの練習をそれまであまりしていませんでした。箱根に向けて、上る感覚や上れない感覚をつかむことで、これからの練習のめど、出走する区間のめどを立たせるためにも、練習の一環として激坂王に出るという立場でした。

――集中練習ではどのような部分に力を入れていますか

 一番は距離を積む。練習量を多くすることを意識していています。夏合宿では暑さが相まり思った以上に練習を積むことができなかったので、もうちょっと積みたかったなというのが正直な感想です。寒くなって走りやすくなり、箱根となると全ての区間で20キロ以上になるので、20キロ以上の距離への不安を払拭するためにできるだけ積める時に積んでおこう精神で走っています。

 普段のジョグをノルマの30キロ以上にして、1日絶対に30キロ以上走ると決めたり、距離走で全体が30キロだったら加えて5キロ走ろうとか、プラスアルファでどんどん積んでいる状態です。そうやって練習を積んでいる状態にしては、だいぶうまく走れているので、集中練習自体は完璧にこなしているかなと思います。

――続きまして、箱根での目標を教えてください

 やはりチームとしても総合優勝というのを掲げていて、一番はそこに貢献できる走りだと思っているので、自分の区間順位というのもそうですが、まずは優勝に貢献できる走りですかね。先頭で渡されたら後ろを突き放す、後ろで渡されたら先頭に追い付き、追い越す走りをすれば、自ずと区間順位はついてくると思います。ですので、一番はチームの優勝に貢献できる走りを考えています。

――出雲と全日本を終えて、改めて3冠という目標についてどう思いますか

 このチームで3冠をするという目標を立てていた中で、出雲と全日本で不完全な走りで終えてしまって。このチームで勝ちたいという気持ちが、出雲と全日本でもありはしたのですが、出雲と全日本の負けを通してすごく感じています。(箱根は)ラスト一戦ですし、当たり前ですが2021年度のチームは2021年度でしか戦えません。やはり残り1戦はチームとして勝ちたいなという気持ちが出雲、全日本を通して強くなったかなと思います。

――公式レースではハーフマラソンを経験していませんが、ハーフ相当の距離を経験したことはありますか。また、どう見ていますか

 レースペースで走ったことは実は1回もなくて、20キロ超えやハーフの距離を、走ったことがほぼない、ゼロですかね。ペース走で3分10秒とかレースよりも遅いペースで20キロ、25キロ、30キロまでいったことがあるのですが、やはり箱根はレースペースとか見ても別物なので。そこにおける距離への不安は集中練習に入る前からずっとありました。集中練習ではその不安をぬぐえるように練習を積んでいるのは一つあります。

――ライバルである石塚選手の活躍をどう見ていますか

 出雲で区間賞を獲って、全日本も1位に押し上げる走りといったことが、はたからみると大活躍の走りですし、チームの状況から見てもさすがだなという感じです。その反面、悔しい気持ちはやはり大きいので、試合の場面だけでなく練習量や走行距離、ポイントの内容でもできるだけ勝ちたいという気持ちは強いです。

――箱根では、自分のどのような強みが生きると思いますか

 一番はある意味でのクレバーさというのが僕の強みです。特に全日本の1区だと集団走の中で、誰かが仕掛けるかということを常に意識して走ったりとか、逆に序盤で留学生が飛び出した場面でも惑わされずに、どんなことがあっても割と冷静に走ることができると思っています。そこはハーフという長丁場になってくると、どの区間でも大事になってくるというか。ある意味でのクレバーさが良くも悪くも出るので、良い場面で生かしていければなと思います。

――ご自身にとって、箱根はどのような大会ですか

 やはり大学に入ったからには一番大きな、大学3大駅伝は関東にくるとおのずと比重が大きくなります。メディアを抜きにしても、箱根となると距離が長かったりとか、そのシーズンの集大成の期間になり、練習の期間というものも長くなります。懸けてきたものが大きい分、頑張らなければいけないなという気持ちもすごく大きいですね。そこにプラスにして、応援してくださる方とかメディアに取り上げていただくことを考えると、やはり頑張りたいなという気持ちよりも、「頑張らなければ」という気持ちがすごく強くなるという印象です。

――チームへの期待、思いはどのようなものでしょうか

 このチームで戦えるのは残り3週間、箱根での(1月)2日と3日だけです。やはりこのチームで勝ちたいという気持ちが出雲と全日本を通してとても大きくなったので、勝てるように自分の100パーセントの走り、優勝に貢献できる走りをしたいと強く感じています。その分チームへの熱い思いというか、皆で勝ちたいという気持ちが大きいです。

――箱根に向けて、意気込みをお願いします

 1年目ということで、箱根駅伝は初の経験ですが、初めてというものを逆にうまく生かしながら、チームの優勝に向けて、できるかぎり貢献できる走りといったものをしていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 湯口賢人)

◆伊藤大志(いとう・たいし)

2003(平15)年2月2日生まれ。171センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部1年。5000メートル13分36秒57。1万メートル29分42秒24。特技は『雑談』。取材でもいつもとても沢山お話ししてくださいます。箱根路もその勢いで駆け抜けてほしいです!

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