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2021.02.28

【連載】『令和2年度卒業記念特集』第32回 鷹尾一成 / 自動車

主将でエース

 『常勝早稲田』、2019年度の全日本学生自動車連盟年間総合杯(全日本総合杯)の実績を筆頭とし、近年早大自動車部の強さにさらに磨きがかかっている。この強さを最前線で常に支え、牽引し続けたのが鷹尾一成(先進=神奈川・桐蔭学園中教校)であった。2年生で公式戦初優勝を勝ち取り、3年時には総合杯個人優勝、引退レースとなった関東学生ジムカーナ記念大会個人優勝など数々のタイトルを獲得。またこうした輝かしい功績の裏では幾度の逆境があり、それらを乗り越えたことで人間として一回りも二回りも大きくなったと語る鷹尾は、自動車部の存在を『育ての親』と表現した。あるときは“エース”として自らの結果で、あるときは“主将”として自らの背中で、早大自動車部を引っ張ってきたその男の4年間を振り返る。

 数万人の観客の中を奏でる官能的なエンジンサウンド。家のテレビで流れていたF1のレースをきっかけに、鷹尾は物心つく前からクルマの魅力に虜になっていた。大学入学以前は水泳部に所属していたが、高校の先生から大学自動車部の存在を教えてもらい、自分のやりたいことができる早大自動車部への入部を決意。入部をするとさらに部のアットホームな雰囲気に惹かれ、「吸い込まれるように部に入っていた」と当時を振り返る。1年生のころは自動車の整備に精を出した。その年は当時15年ぶりに全日本学生ダートトライアル選手権(全日ダート)で個人・団体ダブル優勝をし、総合杯準優勝を収めた年。その時4年生だった森田真(平30政経卒)は鷹尾の憧れの存在であり、彼の走りは今でも鷹尾の目に焼きついているという。そして最後に森田の横に乗せてもらった瞬間が「自動車部人生の原点で1番の衝撃だった」と語り、大会で結果を収めたいという意欲の原動力となる。2年時には、ダートとフィギュアの2種の選手となり、シーズン最後の公式戦である全日本学生運転競技選手権(全日フィギュア)で初タイトルを獲得。鷹尾の華麗なドライビングテクニックは輝きを増すようになっていく。

ステアリングを握る鷹尾

 「勝ってくることが仕事」。その心意気を胸に3年時、鷹尾は早大自動車部のエースを任されることになる。「自分が個人で優勝すれば、団体優勝も自ずと付いてくると考えていた」。チームをまとめるのは当時の主将であった川上優(令2商卒)が行ってくれていたため、自分の走りに全力で集中することができた。そして早大自動車部は全戦で早大は安定的な好成績を残し、鷹尾は総合杯個人優勝、そして団体では11年ぶりの男子団体優勝を果たす。 またその裏では、主将補佐として主将をサポートする役に就いたことで事実上次期主将にも任命され、自身の自動車部に対する考えでより良い部活にし、部員を引っ張っていく自覚を確立することができた。チーム一丸となって戦い抜き、本当に上手くいった一年だったと振り返る。しかし、鷹尾はこれまでの結果に傲慢になることなく、主将の決意を胸に更なる高みを目指した。

 3年時までの経験を糧に、全日本総合の2連覇を目指して迎えた最上級生だったが、突然新型コロナウイルスの影響が自動車部を襲う。「集大成の最後の最後がなくなってしまう」。予定されていた試合のほとんどが中止。それでも鷹尾は、3年時に優勝できたことの幸せを噛み締めて合理化すると同時に、「落ち込むのではなく、納得させ前へ進む」と自らに言い聞かせた。そして「コロナ明けにすぐ大会があっても勝てるチーム」を目標に鷹尾は部員に寄り添い、常に何が最善かを部員みんなと知恵を絞った。12月、ついに結実。4年生最後の引退レースとなった関東学生ジムカーナ記念大会で個人・団体ともに優勝を飾った。そして鷹尾は、今まで成し遂げられず心残りであったジムカーナでの表彰台位入りを達成し、個人優勝。圧巻の走りだった。個人の目標が達成できたと同時に後輩のレベルの高さも確認することができたと振り返り、頼もしい後輩にバトンを繋ぐ。有終の美を飾り、鷹尾は自動車部人生のチェッカーフラッグを受けた。

関東学生ジムカーナ記念大会で有終の美を飾った

 主将でエース。この2つの責任を背負い、果たすことは並大抵なことではない。この大役を見事務め上げ、そして輝かしい実績を手にした背景には、自身の成長と仲間の存在があった。自動車部の部則には『心身の鍛練及び人格の陶冶』という言葉がある。部活動での努力の先には、人間としての確固たる筋が形成されるという意だ。自動車部での活動では常に逆境や試練を与えられる場面があるといい、鷹尾は一人の部員として、そしてエース兼主将として、全力で考え行動し続けた。そういった経験は精神面の成長に繋がり、人間として一回りも二回りも大きく成長させてくれたと語る。また常に隣には以心伝心しあえる同期、力のつけてきている下級生がおり、皆一人一人熱い思いを持っている。そして鷹尾は、あるときは“エース”として自らの結果で、あるときは“主将”として自らの背中で、自動車部を牽引し続けた。その姿を目にしっかりと焼きつけた頼もしい後輩たちが、常勝早稲田の伝統を引き継いでいくことだろう。

 自動車部に捧げた4年間、きらきらした大学生活は犠牲にしてきた。しかし、それ以上のものを得て、これ以上のない4年間を仲間とともに築くことができたという。鷹尾にとって、早大自動車部は人生の『育ての親』。「人生について考える上でも4年間は根となっている」と締めくくった。今後は更なる勉学に励むため大学院に進学する。そして部からは離れるものの自動車レースは個人で続けていく。まだまだ鷹尾のエンジンは新天地に向けて回り続ける。

(記事 風間元樹、写真 部提供)

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