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2019.10.28

秋季早慶戦直前特集『闘将』 第1回 田口喜将

 主力級の野手陣が軒並み不振に陥る中、代打の切り札としての地位を確立していた男がレギュラーとして暴れまくっている。その名は田口喜将(商4=東京・早実)。大学ラストシーズンにして、ついに結実の時を迎えた。今季好調の要因から伝統の一戦への思いに至るまで、様々なお話を伺った。

※この取材は10月22日に行われたものです。

「正直びっくり」

取材に応じる田口

――今秋ここまでを振り返っていかがですか

 今季は代打で出ると思っていて、そこで貢献したいと思っていたのですが、自分の思いとは裏腹にレギュラーとして出ることになって、正直びっくりしているんですけど、その中でチームに貢献できているので、良いかなと思っています。

――初めてレギュラーとして出場するまでは自分がそのような立場になることは想像できていなかったのですか

 そうですね。もちろんレギュラーを目指していなかったわけではなかったんですけど、自分の役割は代打だとずっと思っていたので、その中で瀧澤(虎太朗、スポ3=山梨学院)のけがとかがあってレギュラーとして出ることができたので、正直びっくりしています。

――夏季オープン戦では9番指名打者での出場もありましたが、それは打席数を経験させるためということですかね

 そうですね。代打としての起用を見据えて使ってもらっていた感じでしたね。

――ここまでの好調の要因として、「余計な事を考えず集中できていること」だとおっしゃっていましたが、どのようにして集中力を保っているのですか

 ずっと集中はできているんですけど、特に打てているときは本当に何も余計な事を考えずに打席に入れているときだと思っています。それを保つためには、準備が大切だと思っていて、それが少しでも積み切れていないところがあると、気持ち的に後悔が生まれてしまうので、そこをすっきりできるようにして試合に臨めているのが、集中力につながっているのかなと思います。

――レギュラ―になって以降、1、3、6番と様々な打順を経験されていますが、それによる打撃への意識の変化などはありますか

 打順による意識の違いはあまりないんですけど、やはり一番大きな違いは1打席しかないか4,5打席あるかの違いだと思っています。

――ご自身にはどの打順が一番向いていると思われますか

 自分が今までやってきたのは代打で回ってきてチャンスで打つという部分だったので、今までやってきた中では6番が一番合っているかなと思っています。

――ご自身のこれまでのプレーに関して、小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から何かアドバイスはありますか

 自分の中で初めて1試合通してレギュラーで出場して、2試合、3試合と連続で出場して、監督からは疲れ具合などを気にしてくれたりしています。そして、代打でやってきたことを忘れるなということは強調されていて、一打席一打席代打のつもりでやるようにというのは言われています。

――小宮山監督以外の方から何かアドバイスをもらったりというのはありますか

 アドバイスというのはあまり特にはないですけど、仲間からの声掛けだったり、自分が守備からベンチに帰ってきた時に出迎えてくれたりというのは自分の中でとても大きいです。初めてレギュラーとして出るようになって疲れがあるのはもちろんですが、見えない呪縛のようなものがすごく掛かってくる中で、そういうのはすごく助けになっています。

――見えない呪縛というものに関して具体的にお聞かせください

 入学して早慶戦にレギュラーで出られたらいいなとかすごく思っていて、実際に打てない選手とかをスタンドから見ていて、何でこの人たち打てないんだろうとか正直思ったこともありました。でも、いざ打席に立つと足の震えとかが止まらないこととかも結構あって、早稲田という名門でレギュラーとして出ることの重圧をひしひしと感じたんですけど、そのような中でも結果を残したいと強く思いました。

――事前アンケートで守備力の改善がレギュラー獲得につながったと書かれていましたが、具体的にどの点が改善されたのですか

今までは代打専門で、試合前のノックとかにも参加していないくらい守備からは離れていたんですけど、小宮山監督が就任してから、そのようなことは関係ないから守備に就きなさいと強く言われて以降、しっかりと練習をするようになりました。結果的には個人的にそれがすごく良かったと思っていて、捕球に関しては自信があったんですけど投げることに関してはイップスだったりしたこともあって避けてきた部分ではあったので、そこを練習で改善できたのはレギュラーにつながったと思います。</p>

――中堅手との連携に関して意識されているのはどのような点ですか

チームでの決まりことなんですけど、レフトとセンターの中間地点くらいの打球だった場合は、センターが声を出したらセンターに任せるのが鉄則です。なので、フライが上がったときは打球だけではなく、周りの動きもしっかりと確認するようにしています。センターは蛭間(拓哉、スポ1=埼玉・浦和学院)なんですけど、先輩・後輩関係なくここ飛んできますよとかアドバイスをしてくれたり、お客さんの歓声とかで声が聞こえないときにはジェスチャーとかでしっかりアピールしてくれます。

――開幕前に腰を動かすルーティンがあるとおっしゃっていましたが、それをするようになったきっかけは何だったのですか

2年生くらいの時に打撃コーチに腰の動きが大事だということを結構言われていて、それ以来ルーティンみたいな感じでやるようにしています。

――一方、チーム全体で見ると打線が低調気味になっていますが、それに関してチーム内の雰囲気はいかがですか

チームの雰囲気が悪いとは思わないんですけど、やっぱりヒットが出ないとどんよりしてくる部分がどうしてもあって、自分もきのうの立大3回戦でノーヒットに終わってしまったんですけど、ベンチから見た打席と実際の打席には全然違って、ベンチから見るとの球振れそうだなと思ったものが実際には全然振れなかったりします。その中で、大胆にやり方を変えようというふうに今はやっていて、でも今は結果になかなか現れていないので、早慶戦までにしっかりと足りない部分をチーム全体で詰めていきたいと思います。

――事前アンケートでスタメンで出ることと代打で出ることのの大きな違いに関して、前の打席に反省ができるか否かであるとおっしゃっていましたが、次の打席に向けてどのように反省を行っているのですか

スタメンで出ると代打とは違って4~5打席あるので、もちろん一打席一打席大事にするということはもちろんあるんですけど、例えば1打席目にこういう球で三振したら次の打席にはこういう球が来るんじゃないかというふうに考えてそれに張ったりといった配球面で考えることができるようになっています。あと、次があるということで大胆に行けるという部分も大きくて、小さいバッティングにならずに自分のバッティングができるというのがあります。今リーグは結構三振の数も多いんですけど、配球の読みと違う球が来ても当てに行かずしっかりと振り切ることができているので、それも結果的には好成績につながっているのかなと思います。

――ご自身で一番印象に残っている試合はどの試合ですか

 明大2回戦が一番自分の成長を感じることができたという点で印象に残っています。バッティング面では初めて1番打者として出場することができたのと、守備でもレフトからの送球で一塁を刺した場面があったので、その部分が自身にもつながりましたし、大きかったかなと思います。

――ご自身の中で一番理想的な打撃ができたのはどの打席ですか

自分的には立大1回戦で田中誠也投手(副将、4年)からセンター前ヒットを打った打席がかなり自分の理想に近い打撃ができたと思っています。さらにその後の走塁で、相手捕手が少しファンブルした時にとっさに二塁を陥れられたことが、考えてというより体が勝手に動いてくれたという点で自分の中で成長できたかなと思いました。代打ではあまり走塁を意識しなければならない場面がなかったので。

――逆にリーグ戦通して悔しかった打席を挙げるとどこになりますか

 特に立大2回戦が悔しかったです。1番打者としての機能を全く果たせず3三振してしまって、監督さんとかから今まで試合に出ていた分の疲労がたまっているのかと気遣っていただいたんですけど、完全に自分の実力不足によるものだと思っているので、残り期間しっかりと準備して早慶戦には万全の状態で臨めるようにしたいです。

『世界の王さん』に…

――話が大きく変わりますが、そもそも、様々な選択肢が存在する大学という環境でも野球を続けた要因は何だったのですか

 早実で甲子園に出た時に加藤(雅樹主将、社4=東京・早実)や清宮(幸太郎、北海道日本ハムファイターズ)たちとベスト4という華々しい結果を残すことができたんですけど、自分自身はずっとスタメンで使ってもらっていたのに地区予選からなかなか結果を残すことができなかったというのが大きいです。もしあそこでもっといい結果が出ていればもっと違った選択肢があったのかなと思うんですけど、そこでの悔しさを大学でぶつけたかったというのが一つの大きな要因です。もう一つは高校時代から課題としていた送球を大学四年間でそこをみっちり鍛え直して、それでも駄目だったらしょうがないと割り切れるので、これらの二つの思いを日本最高峰の大学リーグでぶつけたかったという思いがありました。

――実際に早大野球部に入られて感じたギャップはありましたか

 元々プロ野球選手をたくさん出していてすごい環境だというのは分かっていたんですけど、実際に入ると自分なんか話にならないという感じでした。入る前から結構バッティングには自信があったんですけど、先輩とかを見てこれはちょっとやばいなというか、すごい人たちばっかりだったのがギャップでした。

――3年春に初めてリーグ戦に出場された時はどのようなお気持ちでしたか

 先ほども言ったように、スタンドから見ているのと実際にプレーするのは大きな違いだし、練習からピッチャーのボールの切れとかも段違いにすごくて、出られたのはいいけどここからやっていけるのかなとは思っていました。

――正直野球部をやめたいと思ったことはありましたか

 1年生のころはたくさんありました(笑)。雑用がきつくて、朝も早いですし、雑用補助とかで練習した気になって疲れちゃうっていうのが多くて、俺って本当に野球部なのかなとか考えちゃいましたね。でもそんな中でも10分でも20分でも友達とかと自主練する時間を積み重ねられたのが良かったのかなと思います。

――事前アンケートで加藤選手から「努力の男」と評されていたり、佐藤純平選手(社4=東京・早実)からも「最後まで残って練習している」との答えをいただきましたが、練習量という部分も今の好調さにつながっているところはあるのでしょうか

 そうですね。自分の中で考え方が変わって、以前までは努力すれば結果でると思っていて、大学2年生くらいまではスイングを思いっきりするとかいろんなもの一生懸命全力で取り組むという考え方をしていました。でも、3年生から例えば試合前で全力出しから試合で結果出せないなとかそういう考え方に変わってそこの部分から結果が出始めてきたというのがあります。もちろん2年生までの期間は自分の中で良かったと思っているんですけど、その中で考え方が変わったのが試合で結果が出るようになった要因かなと思います。結果でなくて駄目だと思ってたくさんバットを振ったりしていたので、そこで立ち止まって考えることができたのが良かったと思っています。

――杉浦啓斗・新人監督補佐(文構3=東京・早実)からも田口選手のプレーから「一球への魂を感じる」とのお答えをいただきました。一つ一つのプレーに力を入れられているというのも好調さにつながる要因となっているのでしょうか

 そうですね。もちろんそれがあるから今があるのかは分からないですけど、自分は送球があまり良くなくて、でもそれも練習して良くなるというものでもないので、じゃあどうすればいいかと言ったら、どういう練習をしたらいいかというのを毎回考えて、無意識の部分でやるんじゃなくて、一球一球大切にやるのが考えてやることが大事なんじゃないかと考えていました。

――上條哲聖選手(商4=東京・早実)からは早実高時代に王貞治さんと自撮りツーショットを撮られたというエピソードをお聞きしましたが、緊張はされなかったのですか

 今考えたらやばいっすよね(笑)。あそこはもう思い切って行っちゃいました。

――富田直希選手(教4=東京・早実)からは「勉強、部活ともに全力を尽くされている」とのお話をいただきましたが、文武両道を実現する秘訣はありますか

 先ほどの話にも通じるんですけど、例えば100球だらだら打つよりも、10球を考えて打った方が自分のためにもなると思うし、残った時間で勉強とかもできたりすると思うので、とにかく無駄にしないというのは強く意識しています。でも正直今年は就活と部活を両立してやっていたのが死ぬほどきつくて、その中でもやるときはやるといいうか、残された時間でしっかりと集中することは考えていて、バス移動の最中とかもみんなでその時間を使ってSPIの問題を出し合ったりしてみんなの力も使ってやるというのもすごく大事にしていました。

――早実高時代からの野球部の仲間たちに対してどのような思いを持っていらっしゃいますか

 もちろん今の部員たちはみんな特別な存在ですけど(笑)、その中でも早実時代の方が正直今よりもハードで、そのどん底を見た時代から一緒に来たという意味で、自分の良い面も悪い面も全部知っている仲間の存在は大きいですね。なので、その人達から言われることは自分の中でも感じ入るものがありますし、より自分に生きる部分があるので、そこは感謝しています。

――どん底というのを具体的に教えてください

 自分は岐阜県出身なんですけど、香港に住んでから岐阜に来て、そのまま一人暮らしで高校に来て、最初、SUICAを改札機の中に入れちゃうくらい何も分からない状態でした。その中で上下関係とかも岐阜、香港とあまりそういうものがないところで暮らしていたこともあって早実に入ったらすごくて。毎日連帯責任でいろいろ言われて、毎日朝早くて夜遅くて授業も受けなきゃで、もう本当に大変でした。今は時代もあってだんだん緩くはなってきているらしいのですが、僕の時は本当にきつかったです

――早実高の同期からのアドバイスで生きた具体例を教えてください

 特に具体的にこれというのはあまりないんですけど、例えば昔から練習を重ねているにもかかわらず送球を苦手にしていて、練習中に悪送球とかをしてしまうと他の人だとなかなか強く言えなかったりすると思うんですけど、「ちゃんと送球しろよ」とか自分に対してしっかりと指摘をしてくれるのがうれしいというか。頑張っているからいいではなくて、しっかりと結果対して指摘してくれるのは早実の人たちで、あと指摘するだけではなくしっかりとアドバイスもしてくれるので、すごく大切な存在です。

「夢」

法大2回戦で今季初安打を放つ田口

――ここからは早慶戦の話に変わりますが、慶大は真っすぐに力のある投手が多いと思いますが、それを打つための取り組みというのは何かなさっていますか

 速い球を打つことだったり、最短距離でバットを出す練習はしているんですけど、やっぱり速い球だけではなくて、キレやコントロールもすごい投手が多い印象があります。それに対してチームで速球プラスアルファのところでどう対応して、いかに得点を生み出すかというのをここからの期間で詰めていきたいなと思っています。

――逆に慶大の野手陣の中で、ライバル視していたり警戒している選手はいますか

 ライバル視ではないんですけど、今見ていて主に2番を打っている下山悠介(1年)はすごいと思います。1年生の時点でもうこの舞台でプレーできていて、しかも結果もすごく出ているというのがすごいなあと思います。

――早慶戦で勝つ上でのキーマンを一人だけ挙げるとすると誰になりますか

 やっぱり自分としては早川だと思います。彼が今のチームの絶対的エースで、1戦目から彼が抑えることによってチームが勢いづくと思うので、もちろん自分たちの援護というのも大切にはなってくるんですけど、そこが鍵になるんじゃないかなと思います。

――早慶戦ではどのようなかたちでチームに貢献したいですか

 スタメンになって、今までのようにベンチで声を出すとかではなく結果でチームに貢献するという立場になったので、そのためにどうするかというのを残り期間で考えて、正直泥臭いヒットでもなんでもいいと思うので、そこはしっかりと全力疾走だったりも含めてチームの士気を上げていって、それで貢献したいなと思います。

――田口選手とって早慶戦とは何ですか

 そうですねー、夢ですね。斎藤佑樹さん(平23教卒=現北海道日本ハムファイターズ)が早実で活躍されているのを見て憧れるようになって、そこから大学でも1年生で優勝されているのを見てすごいなと思っていました。自分もこのような舞台で野球できたらいいなというのが現実になったので、すごく感慨深いというか、緊張するんですけど、夢を実現したいなと思います。

――最後の質問になりますが、早慶戦でこれだけはやり遂げたいというのを上げるとすると何になりますか

 自分の代名詞である全力プレーを全てにおいてやり遂げたいです。全力疾走だったり、声を全力で出したりとかを最後の野球人生を懸けてやり切りたいです。というかやります!

――ありがとうございました!

(取材・編集 篠田雄大)

最後まで『全力プレー』で戦い抜きます!

◆田口喜将(たぐち・よしまさ)
 1997(平9)年11月16日生まれ。177センチ、80キロ。東京・早実高出身。商学部4年。外野手。左投左打。自身最後のシーズンにして、初めてレギュラーとして駆け回っている田口選手。今回はカフェで行われた取材でしたが、終始和やかな雰囲気で、そして丁寧に答えてくださりました。チーム随一の『愛され男』が檜舞台で輝きを放ちます!

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