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自転車部

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2019.03.11

【連載】『平成30年度卒業記念特集』第49回 孫崎大樹/自転車

自転車に魅せられて

 今春、早大自転車競技部から一人の偉大な男が巣立つ。その名は、孫崎大樹(スポ=京都・北桑田)。入部当初から安定した成績を残し続け、4年時には個人としてRCS年間王者、チームとしては六大学対抗ロード優勝や明治神宮外苑大学クリテリウム大学対抗戦優勝を成し遂げた。卒業後はチームブリヂストンサイクリングでプロとしてのキャリアを歩む。

 「物心ついた時には常に自転車がそばにあった」。孫崎はトライアスロンをやっていた父親の影響を受け、幼少期からBMXやマウンテンバイクなどに触れていた。ただ競技として本格的に始めたのは高校時代。孫崎が入学したのは、国内屈指の強豪校、京都府立北桑田高校である。この高校時代を通じて、孫崎は自身の存在を全国に知らしめることになる。1年時から海外遠征に参加し、全国高校選抜大会や全国高校総合体育大会はもちろん、海外のレースでも素晴らしい結果を残したのだ。

 孫崎には海外チームに行く選択肢もあった。「正直、最後の最後まで大学進学か海外チームに行くか迷い続けました」。彼が大学進学を決めた要因は、恩師の勧めであった。北桑田高には選手として活躍したOBが指導者として戻ってくるという流れがあり、孫崎も教員になることを勧められたのである。その上で早稲田を選んだのは、当時活躍している選手が多かったことと、スポーツ科学という分野に興味を抱いたからであった。

 孫崎は、周囲の期待通り入部当初から安定した成績を残し続けてきた。主将としてチームをけん引した4年時には個人としてだけではなく、チームとしても優秀な成績を収めている。これは孫崎が主将として実施した意識改革の成果であろう。学部などで様々な部活の人と部の状況について話し、それを自転車競技部の状況と比較し、「どうすれば皆が同じ目標に向けて頑張ることができるのか」などを考え続けた。そのような孫崎の意識が伝わり、部員の意識が変わっていった。孫崎自身も主将としての一年間で人として大きく成長することができた。「僕のいた四年間の中では今年のチームの雰囲気が一番よかったです」。孫崎は笑顔でそう語った。

RCS第9戦で宿敵・大前翔(慶大)に競り勝つ孫崎(中央右)

 「日常では味わえない、感覚が研ぎ澄まされていく感じが気持ちいい」。時には100㎞を超えるロードレース。レースの終盤にかけて、誰もが勝利を目指し、互いの駆け引きに神経を尖らせる。集団は張り詰めた空気に包まれる。だが、孫崎は「その時が一番視野が広がり、あらゆる感覚が研ぎ澄まされ、後ろまで見えるような気がする」と話す。そうした極限状況の中での手にした勝利には言葉では言い表せないほどの快感が伴う。「大学卒業後、選手をやめて普通の生活を送ることは考えられませんでした」。実際、孫崎は日本のトップ選手が集まるチームブリヂストンサイクリングの一員として競技を続けていく。ロードレースの魅力を語っている時の孫崎の笑顔からは彼自身が本当にロードレースを楽しんでいることが伝わってきた。子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者(子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)。孫崎が『日本のエース』になる日はそう遠くないかもしれない。

(記事 菅沼恒輝、写真 喜柳純平氏)

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