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2018.11.21

ジャパンランキング1位古谷純平×トライアスロン部部長佐久間による緊急報告!

 今年、24時間テレビでみやぞん(浅井企画)が挑戦したことにより、注目が集まったトライアスロン。スイム、バイク、ランの3種目混合競技であり、「鉄人レース」だと言われている。この過酷な競技に取り組む古谷純平(平26政経卒=現三井住友海上株式会社)は、2018年NTTジャパンランキングにおいて、年間チャンピオンに輝いた。2014年に早大を卒業し、現在、三井住友海上火災保険株式会社 トライアスロン部に所属。トライアスロン部長を務める佐久間美奈子氏(平3商卒=現三井住友海上火災保険株式会社)は昨年、人事部に異動し、トライアスロン部長に就任する。2018年10月29日、早稲田大学オリンピック・パラリンピック事業推進室(オリパラ推進室)主催のもと、名残の地である早大にて、仕事と同様、競技にも全力を注ぐ古谷、そしてそれを支える佐久間氏の2人の姿に迫る。

※この取材は10月29日に行われたものです。

古谷純平(平26政経卒=現三井住友海上火災保険株式会社トライアスロン部)

トライアスロンへの思いを語る古谷

――トライアスロンの出会いやきっかけは何ですか

古谷 小3で初めてトライアスロンのレースに出場しました。年中から小6までは、ずっと競泳を行い、父親に勧められてマラソン大会にもたくさん出場しました。それから、競技として陸上も行いましたが、高2の3月、父親にトライアスロンの記録会を勧められて出場しました。その記録会は、日本トライアスロン連合(JTU)の強化指定選手を決める極めて重要な大会でした。タイムを聞いた時、これは狙えるのかもしれないと思っていましたが、結果はスイムが0.1秒足りず、タイムを切ることができませんでした。しかし、本気で努力すれば上位を狙えるのではないかと考え、高3から本格的にトライアスロンを始めました。

――洛南高校出身ですが、陸上競技の選択肢はありましたか

古谷 中学生の時に競泳を辞めて、小学生の時から続けていたサッカーを今後もやろうとしていましたが、通っていた中学校の陸上部の長距離が強く、自分が入学する前に2年連続で全国駅伝に出場していました。そのこともあり、サッカー部に入るより陸上部長距離に入った方が、全国大会に行けるチャンスがあると思い、考え方を変え、中学3年間陸上部として活動しました。高校では、またサッカーをやりたいと考えていましたが、中3の時に都道府県対抗駅伝の代表に選ばれたので、陸上をやめるのは勿体ないと思い、進路を変更して陸上をやろうと決めました。そこで、関西圏で文武両道の学校を探していて洛南高校を受験・無事合格し、入学しました。

――早大を志望した理由については

古谷 父親が早大出身だったこともあり、幼少期から箱根駅伝をずっと観ていました。自分が陸上競技をやっている時はもちろん、陸上を始める前からも早大にはとても興味があり、競走部に入って箱根駅伝を走りたい思いは強かったです。トライアスロンを始めてからも早大に行きたい思いは強く、合格することができて良かったです。

――念願の早大に入り、競技続行への迷いはありましたか

古谷 大学4年間は、これまで続けてきたトライアスロンの道を選択しました。高3の時に兵庫県のトライアスロンのクラブチームに所属をしていたので、東京では1人で練習をする状況でしたが、継続すると決めたことなので、迷うことなく全力で取り組みました。

――早大にトライアスロンチームノースウエストのサークルがありますが、入部のご検討はされましたか

古谷 当時は入部も考えていました。直接勧誘をされたわけではないのですが、2個上の先輩からサークルのお話を聞いてどうしようか検討していました。結局、サークルには入らず、自分でやる道を選択しました。

――学生時代は、トライアスロンに熱心に打ち込んでいたという感じですか

古谷 そうですね。部活動でもなく、サークルでもなく、クラブチームに籍を置いていました。それに加えて、アルバイトも掛け持ちしていました。トライアスロンはお金もかかるスポーツなので、アルバイトもしながら練習も欠かさないといった忙しい日々を過ごしました。

――学生選手権でも制覇をされていましたが、競技の区切りは考えたことはありますか

古谷 幼少期からオリンピックに出場したい気持ちはありましたが、大学4年で辞める時期かなとも考えていました。両親も今のように続けさせてくれるとは思ってもいませんでした。早大を卒業して、少しでも良い企業に就職して欲しいという思いもあり、実際にも言われました。それなので、大4で競技は引退しようと思っていました。

――実際、三井住友海上火災保険株式会社に入社されましたが、沸々とトライアスロンをやりたい思いはありましたか

古谷 はい。入社前にトライアスロン部を創って頂けることが決定しました。大学4年生で最後と決めていたので、1年間本気で競技に取り組んだところ、競技の成績が右肩上がりで伸びました。それと同時期に東京オリンピックの開催も決まり続けたいと思いました。既に三井住友海上火災保険会社に内定をもらっていたので、普通に働くつもりではいましたが、トライアスロンをやめたくない、でも内定は辞退したくないと思い、会社にトライアスロン部を創って下さいとお願いし、創部してもらえることになりました。その年に、ジャパンランキング4位になり、オリンピックを目指せる可能性とリンピックでメダルを獲得するという思いを駄目元ですが、伝えました。まさか本当に創って頂けるとは思っていなかったので、良い回答が来た時にはとても驚きました。

――トライアスロンを継続していて、辛いこと等あれば教えて頂きたいです

古谷 辛いことは常にあります。練習中やレース中はいつも苦しいです。しかし、自分は妥協しないタイプなので、自分に負けることは基本的にはありません。それは、自分がこうなりたいという思いが強いからだと思います。自分が描く理想像と現時点での辛さを天秤にかけた時、自分に負けてしまうくらいならそれは弱い方に値すると思ったので、そうならないように辛さを乗り越えています。その苦しさを乗り越えれる理由は、自分が目標を達成した時に必ず喜びがあるからだと思います。その達成感を得るためにも日頃の苦しい思いは常々感じています。

日本選手権でランをする古谷

――入社してからも数々のレースで入賞し、順風満帆に見えましたが、2016年のリオオリンピックにおいてはいかがでしたか

古谷 2016年の最大目標は、リオオリンピックに出場することでした。それなので、出場できなくてとても悔しいですが、オリンピックに帯同させて頂いたことは、自分にとってプラスでした。オリンピックは、どれだけ強い国でも最大3人しか出場することができませんが、世界選手権では5人まで出場できます。比較すると、世界選手権の方がレベルが高く、迫力もあり、例年レベルもより高いものになってきています。出場する際に一番大事なことは、平常心を保つことです。4年に1度のオリンピックだからという思いをもって、取り組むことです。仮に東京オリンピックに出場できた場合いつも通り平常心で戦えれば、絶対に良い結果がついてくると思っています。

――その一方で、列強の現地のオリンピックゆえの雰囲気は感じられましたか

古谷 トライアスロンの会場自体が少し離れていたので、そこまで人が集まるところではありませんでした。しかし、東京オリンピックはお台場で開催されるので、そこの熱狂的な声援というのも間違いなく感じられると思います。自国の皆さんがよく応援して下さるので、力に変えることができたら嬉しいです。

――古谷選手にとって、トライアスロンの魅力とは

古谷 過去に陸上も競泳もやってきて、陸上だけ又は競泳だけとか一種目限定になってしまうと、(周りの選手が)才能に恵まれすぎて、努力ではどうすることもできませんでした。私自身、駅伝は全国大会に出場させて頂きましたが、個人種目では行くことができず、競泳においても全国大会に一度も行くことができずといったレベルでした。その点、トライアスロンは3種目もあるので、全部が超一流でなくても戦うことができます。また、3種目そろえれば戦える競技だと思っています。超一流になるには、才能がないとどうしても行ききれないところがあり、それは本当に競技をやってきたからこそ分かることです。ある程度一流であれば、才能があまり恵まれていなくても努力次第でそこまで到達することはできると思っています。トライアスロンは、努力が才能を上回ることができるスポーツだと思います。

――スイム1.5キロ泳いだ後にトランジションに行って、バイク競技へ移りますが、その際に戦略は立てていますか

古谷 ある程度は立てています。第一集団に入ることが大前提です。スイムで上がってきた順位によって、バイクが集団に分かれますが、その時に先頭集団にいるのが勝つための条件なので、最初に重要視するのがスイムで第一集団に入るということです。そして、その後のトランジションに関しては、第四種目と呼ばれるくらい極めて重要なところです。スイムが終わってからのトランジションまでのダッシュ、ヘルメットを被る速度、自転車に飛び乗った後にいかにして早く漕ぎ出すかといったところを重要としています。1秒、2秒で先頭集団に入れる選手と入れない選手が分かれるので、スイムを上がってきてから周りを見ながらトランジションをいかに素早くできるかがとてもポイントになってきます。自転車は所定の位置に置かれているので、すぐに取りに行くことができ、自分の自転車をセットする段階で全体を見回して、自転車の場所をしっかり確認して、それに向かってダッシュするといったかたちで行います。

――2018年も多くのレースに出場されましたが、一番思い出に残ったレースは何ですか

古谷 今年は間違いなくアジア競技大会で金メダルを獲得したことです。今まで、JOC派遣の試合に出場したことがなく、日の丸をつけて臨む試合は初めてでした。そういった意味で、JOC派遣の試合で勝つというのは、東京オリンピックでメダルを獲得するためには絶対に達成しなければいけない目標だったので、そこでしっかりと決めることができて良かったです。日本代表で出場させて頂くことは、メディアの方々の注目度も高くなっていきます。また、選手村での滞在を通して、選手同士で触れ合うこともあり、その経験ができたのは、東京オリンピックにもつながるのではないかと思われます。JOC派遣の試合は、普段のレースとは異なり、勝つことが大前提であるので、日本を背負うといった面でのプレッシャーはとても大きいです。しかし、それをできるだけ避けて、平常心を保とうと心がけました。結果としては優勝し、最高の結果を残すことができて良かったです。

――NTTジャパンランキング1位ということですが、現時点での今後の意気込みを教えて下さい

古谷 東京オリンピックを目指すと決めたときから自分の中では、東京でメダルを獲得することが目標なので、そこは揺らぐことはありません。

――三井住友海上火災保険株式会社トライアスロン部は現在3名で活動していますが、来年以降の願望等はあったりしますか

古谷 自分が入社した年にお願いをして創って頂いた部なので、来年、再来年だけではなく未来にも続くような部になって欲しいです。日本のトライアスロンといえば、三井住友海上だと言われるくらい大きな部にしたいと思っています。それに関しては、誰よりも思いが強いです。日本選手権のトップ10が三井住友海上一色になったら最高ですね(笑)

――トライアスロンは全体として、まだまだ認知度が低い競技ですが、それについて何か考えていることはありますか

古谷 私は競技をやらせていただく環境が限りなくパーフェクトに近い状態でさせて頂いています。しかし、トライアスロンの認知度というと、まだまだマイナー競技です。メジャー競技にするには、今の現役トライアスリートがオリンピックや世界選手権に出場して、結果を残すことだと思っています。それに関しては、私自身の1つの使命だと思っています。

――学生に向けてメッセージをお願いします

古谷 自分の目標を持って、その目標に向かって全力で努力して欲しいなと思っています。今、私は社会人になってからもやりたいトライアスロンを続けさせて頂いて、自分は本当に恵まれた人間なんだなと実感しています。学生時代は、自分のやりたいことやその目標に向かって、何のしがらみもなく全力で努力できる本当に唯一な期間だと思います。この有限な時間の中で、自分の目標に向かって精一杯努力をして下さい。

――現役学生トライアスリートにメッセージをお願いします

古谷 サークルに所属して、トライアスロンをされている方々のモチベーションは人それぞれだと思います。トライアスロンを楽しみたいから所属している人もいれば、トライアスロンの体育会系の部活がなくて所属している人もいます。中には、上位を目指したくて活動している人等、理由はたくさんあります。皆に共通して言えることは、何か目的や目標に向かって全力で努力をすることは大事だということです。楽しみたいなら思いっきり楽しんで欲しいし、できるだけ上を目指したいなら覚悟を持って本気で努力をしてもらいたいなと思っています。

――東京オリンピックに向けて、現段階で何か取り組んでいることがあれば教えて下さい

古谷 やらないといけないことは、根本的な実力をつけることです。スイム、バイク、ラン、フィジカルとともに自分の実力やパフォーマンスを上げないといけないのは絶対です。その中で、より重要なのは、私にとってはずっと課題であるランです。ランで競り勝てないことには、スイムとバイクがどれだけ強くてもメダルは獲得することができません。それなので、今一番フォーカスしているのはランの強化といったところです。レース展開としては、スイム、バイクは先頭集団にいて、最後のランで勝負といったところですね。

――具体的なランの取り組みはどういったことでしょうか

古谷 根本的な走力を上げようということで、トライアスロンにおいて大事なのは、バイク後のラン10キロをどれだけ速く走れるかということです。いかにバイクで足を残すか、またバイクで疲弊している中でも速く走れるかというところも大事ですが、それより今は根本的な走力を上げることに重きを置いています。その根本的な走力の部分で劣っていたらどれだけ疲弊した状態で走れる能力があったとしても世界のトップには勝てません。今は自分の持ちタイムを上げることを強化しています。

――世界のトップとおっしゃっていましたが、目標とする選手はいらっしゃいますか

古谷 この選手を目指しているというのはありません。それぞれがそれぞれの個性があるでしょうし、それと同じで私にも私なりの考えがあるので、特にこれといった選手はいないですね。

――2020年の東京オリンピックに向けた目標などあれば教えて下さい

古谷 幼少期からの夢を自国で実現することができるのはとても嬉しいです。私自身の人生を変えてくれた理由の1つでもあります。自国でオリンピックが開催され、私自身が出場できるというのは本当に嬉しいので、出場できるよう全力で頑張らせて頂きます。今まで、オリンピックはさまざまな国で開催されましたが、自国開催は貴重であり、今の世代しかできないことだと思います。そこで、メダル獲得したい思いはとても強いです。

――ありがとうございました!

佐久間美奈子氏(平3商卒=現三井住友海上火災保険株式会社トライアスロン部長・人事部能力開発担当部長)

記念撮影に応じる佐久間氏

――現在、トライアスロン部部長を務めていますが、それまではトライアスロンに興味はありましたか

佐久間 トライアスロンは、スイム、バイク、ランの3種目を行う競技であることは分かっていましたが、それ以上のことは何も知りませんでした。それなので、競技について教えてもらうことからスタートしました。最初は、それほど知らない競技でも、観ていくうちに段々と魅力にはまっていきます。それくらい素晴らしさがあるものだと思っています。

――実際に生でレースを観たことはありますか

佐久間 もちろんあります。トライアスロンは距離が長い競技ですが、バイクとランがほぼ同じコースを使用するので、観戦する人は、長い距離を移動をしなくても効率的に応援することが可能です。その際、いつも良いポイントを探して見つけては、レースを見させて貰っています。トライアスロンは駆け引きの要素も強い競技なので、応援を通してそういった心理戦も観ることができるのが醍醐味です。

――現在、三井住友海上火災保険株式会社トライアスロン部で活動している3名の選手にメッセージをお願いします

佐久間 皆、世界のトップを目指して頑張っているので、しっかり夢を実現させて欲しいです。トライアスロンは、努力次第で結果を残すことができるスポーツなので、夢に向かって頑張って欲しいなと思っています。応援に関しては、海外のナショナルスタッフや全国各地の当社代理店や社員等が会場に足を運んでくれています。特に海外のナショナルスタッフは、普段なかなか選手と触れ合う機会がないのですが、、メダリストの同僚であるということをとても誇りに思ってくれています。今後も応援してくれる世界中のサポーターの存在を忘れずに、全力でレースに取り組んで欲しいと思っています。

――大学生に向けてメッセージをお願いします

佐久間 学生時代、「今」しかできないことは絶対にあるはずなので、まずはそれを大事にして、学生生活を全力でやり切って欲しいです。そこで、しっかり区切りをつけてから、また新たな気持ちで、社会人として学び、仕事を始めるのが良いと思います。学生の皆さんにも「なりたい自分」を目指して夢を実現して欲しいと思っています。目標に向かって自分を磨き、幸せになって下さい。

――ありがとうございました!