野球部
2018.10.23
【連載】秋季早慶戦直前特集『天王山』 第2回 瀧澤虎太朗
早大に新戦力が台頭している。昨春の早慶戦、代打として東京六大学リーグ戦(リーグ戦)デビューを果たし、今季からスタメンに名を連ねる瀧澤虎太朗(スポ2=山梨学院)だ。ケガから復帰し、熾烈(しれつ)なレギュラー争いを制した瀧澤は、勢いそのままに開幕戦で本塁打を放つ活躍を見せた。しかし、終盤になるにつれて無安打の試合が続くなど思うような結果が残せていない。リーグ戦で活躍する喜びと、結果が出ない悔しさの両方を味わっている瀧澤は、大一番を控えた今何を思うのか。
※この取材は10月19日に行われたものです。
「バッティングは誰にも負けたくない」
開幕戦で右越え本塁打を放ち、鮮烈なスタメンデビューを飾った
――開幕前の対談ではまだ実感が沸かないということでしたが、開幕への実感が沸いたのはいつ頃ですか
リーグ戦開幕の前日になって、全く寝れないくらい緊張してしまって。当日球場に向かっている際に、やっとリーグ戦が始まるんだという実感が沸いてきました。
――開幕戦後のインタビューで、かなり緊張したと話されていましたが、前日からかなり緊張されていたのですね
前日、本当に寝れなくて。寝不足のような感じでした(笑)。
――ここまでのリーグ戦を総括すると
法大戦は本塁打も出てまずまずの滑り出しだったのですが、試合を重ねるごとに結果が出なくなってきてしまいました。試合の数が増えてくると考えるべきことの数も増えてくるので、やはり少し考えすぎな部分があるのかなと思っています。
――開幕戦本塁打は打った瞬間に手応えがありましたか
感覚的には「入ったな」というのは思いました。
――ホームランボールはもらえましたか
持ってます。今はおばあちゃんに渡してあります。
――おばあちゃんと仲がいいのですね
おばあちゃんは毎試合試合を見に来てくれています。いつもお世話になっているので、ホームランボールはおばあちゃんに渡しました。
――ここまで長打がかなり出ていましたが、狙って打った場面はありましたか
それは特にないです。何も考えずに打った結果が長打になっているので、その部分はいい傾向にあると思います。
――打席に入る上で一番意識していることや、大切にしていることは何ですか
意識して、何も考えずに打席に立とうとはしています。ですが欲であったり不安であったり、そういうことを結構考えてしまっているところがあります。早慶戦では、何も考えずに打席に入りたいと思います。
――ご自身にとって良い安打のかたちや印象に残っている安打というのはありますか
やっぱり本塁打かなという風には思うのですが。自分としてはやはり田中誠也投手(立大3年)から打った左翼線への安打はかなり良かったと思います。
――好機で一本が出ないことに対して、考えすぎてしまうと話されていますが、それは普段よりも相手の配球を読みにいってしまうということですか
相手の配球もそうですし、打たなきゃいけないということも考えてしまっています。配球の面では、やはり毎打席毎打席変わってくるので。そういう面も含めて深く考えすぎてしまって手が出ないという場面もあります。
――田中誠也投手から安打を放った場面は、何も考えずに来た球を打ったということですか
そうですね。何も考えずに、来た球に対応して打って良い結果につながりました。
――それが瀧澤選手にとっての理想的な安打ということですか
そうですね。
――明大1回戦では好機で代打を送られる場面がありました
今季は代打を出されたのは初だったので、とても悔しかったです。ですが、チームが勝つためだったら仕方ないかなとも思います。自分も調子が悪いのであの場面で自分が打席に立つより、田口さん(喜将、商3=東京・早実)が立った方が確率は高いのかなとあの時は思いました。ですがやはり悔しいですね。
――交代した後にベンチからよく声を出している姿が印象的でした
悔しい思いはもちろんありました。ですが、交代したから声を出さないというのは嫌で。チームのために何ができるかということを考えた時に、もう自分は出れないので、声を出して先輩方を鼓舞するだとかそういうことに徹しないといけないと思っていました。
――その時の悔しさからは今は切り替えられている状態ですか
切り替えられてはいないですね。ですが、いつまでも引きずっていても仕方がないので。前を向いて、でも悔しい気持ちも忘れずにやっています。
――現在3試合連続で安打が出ていませんがご自身の現状はどう捉えていますか
調子自体は本当に悪くないと思います。あとはメンタル的な面だと思うので、早慶戦では開き直って結果も気にしてしまうのですが結果を気にせずに、思い切ってプレーしたいと思います。
――代打での三塁打や開幕戦本塁打など、メンタルが強い印象がありますが、ご自身ではどう捉えていますか
リーグ戦が始まるまでは、好機で回ってきたら絶対打ってやろうという感じで。結構ここ一番という場面に強いと思っていたのですが、リーグ戦がいざ始まってみると中々好機で打てなくて。その中で色々考えすぎてしまっている部分があると思います。
――今はきっかけを探しているような状況でしょうか
そうですね、何かきっかけをつかめれば変わると思います。
――開幕前はしっくりくるフォームを見つけたので変えずにいきたいということでしたが、フォームに違和感があるということは
それも正直少しあります。レベルの高い投手になると無駄な動きが多いと差し込まれてしまったり、ファウルになってしまうので、最近は無駄な動きを省こうと意識しながらやっています。
――日々試行錯誤を重ねているということですか
空き週などの練習の期間でしっかり考えて、結構試行錯誤はしています。
――そういった練習は一人で行うのですか
ほとんど自分で考えてやってます。
――ご自身のことを調子に波があるタイプだと思いますか
今まで調子に波はないタイプでした。
――高校まではリーグ戦という形式は少ないと思います。リーグ戦という形式への難しさもありますか
大学のリーグ戦は2カ月ということで、期間がとても長いので調子を維持するのは難しいということはかなり実感しています。
――疲労感も感じていますか
疲労感は法大戦の初スタメンの時が一番大きかったです。それからは慣れてきて、楽にはなっています。開幕戦は緊張感もあったので。
――リーグ戦が続く中でのリフレッシュ方法などはありますか
なんですかね・・・。試合後特に何かやっているということはないですね。いつも通りという感じです。
――平日も息抜きなどは
息抜きはあまりないですね。体のケアだったり野球のことばかり考えてます。
――平日にプロ野球なども見たりするのですか
本当にたまにですね。テレビでついてたら見るくらいで、自分から見たりとかはあまりないです。どこファンとかもあまりないですね。
――現在平日はどのような練習を行っていますか
チームとしての練習はいつも通りという感じです。個人としては、その全体練習の後に、結構バットを振り込んだりしています。
――どのくらいの量やるのですか
特に数は決めていないです。満足したら終わりにします。
――そういった練習も一人で行うのですか
一人でやるときもありますし、仲間と投げ合ったりもします。小松(正樹、スポ2=埼玉・早大本庄)という同じ左バッターの選手がいるのですが、彼の投げるティーがすごく打ちやすいので一緒にやっています。
――独自の練習法などはありますか
口で説明するのが難しいのですが・・・。他の人がやっていないような取り組みなどもやっています。
――バットを使った打撃の練習ですか
そうです。
――高校から続けている練習ですか
いや、大学からです。コーチに教えてもらって始めました。体の使い方だったり、バットの軌道の修正をします。大げさにやることで、体に染み付くのでそういうのをやるようにしています。
――2年生になって練習面において変わったことはありますか
仕事の量が減ったので、その分自分の野球にすごく集中して練習できていると思います。
――早大は部員数も多いですが、ここだけは負けたくないという部分はどこですか
自分が自信を持っているのはバッティングなので、それは誰にも負けたくないという思いは強いです。
――ケガでリハビリに費やした時間が今に生きていると感じる場面は
もう半年もリハビリしていたので。一つのことを続ける力だっり我慢強く嫌なことを続ける力だったり。精神的には、リハビリ期間の経験が今の自分を支えているという部分はたくさんあると思います。
――前回の対談で金子選手が瀧澤選手はリハビリも黙々と行っていたと話していましたが、地道な練習は苦にならないタイプですか
それは中学時代に培われたものだと思っています。毎日毎日父が練習に付き合ってくれました。自分がやりたくない日でも無理やりにというわけじゃないですけど、一緒にやってくれていました。雨の日もお正月の1月1日でも、自分にティーを上げてくれて。そういうところから練習が苦じゃなくなっていきました。その頃から練習するのが当たり前になっていきました。
――スパルタ指導だったのですか
小中学校の時はすごい怖かったですけど、高校大学になっていくにつれて、優しくなっていって。今はすごい優しいです(笑)。
――試合後にメッセージなども受け取っていますか
試合後に「こうした方がいいんじゃないか」というメールを送ってきてくれます。それは結構参考にもしています。
――ご家族の方も神宮によく見に来られているのですね
そうですね、結構見に来てくれます。
――野球を始めたのもお父様の影響があったのですか
お父さんが野球をやっていて、草野球を見て自分も始めたいと思って始めました。
――檜村篤史選手(スポ3=千葉・木更津総合)とのエピソードは何かありますか
何だろう・・・。すごく仲良くさせてもらっているので。何だろう・・・。絶対何かあるんですけど・・・。最近だったら、二人とも『パワプロくん』をやっているのですが、ガチャを引いた方がいいか引かない方がいいかをLINEでやりとりしたりしてます。当たった選手をLINEで送りあって、「こいつめっちゃいいじゃん」とか「こいつは使えない」とか、そういうことを言い合ってます。
――お二人ともハマっているのですね
自分よりも全然檜村さんの方が上です(笑)。
――仲がいいのですね
そうですね、なんでも言い合えます。LINEはパワプロくんですが、グラウンドでも結構話したりします。
――明大2回戦で瀧澤選手の2打席目に、加藤雅樹選手(社3=東京・早実)が話しかけている場面もありました
どんな球が来たとか、多分打席のことだったと思います。
――加藤選手とは
加藤さんとは野球の話もよくしています。加藤さんにバッティングのことを聞かれることもありますし、自分も「どういう意識でやっているのですか」と聞きに行ったりもします。
――今季、加藤選手は苦しいシーズンになっていましたが、瀧澤選手からはどのように見えていましたか
調子が悪くても、表に出さずに黙々とやっている姿はすごいなと思っていました。やっぱりワセダの4番だなというふうに自分は見ていました。やはり、加藤さんはいろいろ考えてやっているので、自分はそれを参考にさせてもらってはいます。
――ライバル視している選手はいますか
福岡さん(高輝、スポ3=埼玉・川越東)には負けたくないというのはあります。福岡さんも自分には負けたくないと思っているので。タイプも似ているので、福岡さんには負けたくないというのはあるのですが、今季は全然(福岡さんの成績に)届かないですね。
――触発される存在なのですね
気にしたくないのに気になってしまいますね。
「ワセダやケイオーは雲の上の存在」
雲の上の存在だったワセダで、スタメン出場を続けている
――リーグ戦は重圧が違うと話されていましたが、早大のユニホームの重みも感じているということでしょうか
やっぱり、スタンドを見ると今までワセダのユニホームを着てきた方々もたくさんいます。それを見るとやっぱりワセダってすごいんだなというのは感じますし、そのユニホームを着て試合ができていることは光栄だなと思います。
――入学前のワセダに対する印象は
ワセダは雲の上の存在だったので、本当に自分が行けるのかなというのが最初の印象でした。
――入学当初4年間の大学野球生活に対してどのようなビジョンを持っていましたか
入学前は1年生からベンチに入りたいということは思っていましたが、実際はそんなに甘いものではありませんでした。ケガも経験しましたが、それも今ではケガして良かったのかなという部分もあります。
――ケガをした経験も無駄ではなかったということですね
ケガをして考え方が変わった部分もありますし、野球に対する姿勢も変わったと思います。
――入学前に早慶戦を見に行く機会はありましたか
あまり見てないです。ワセダへの合格が決まってから、その秋のリーグの早慶戦を見に行きました。本当にワセダやケイオーは自分にとって雲の上の存在で、存在すら知らないくらいの遠い存在でした。
――その分早慶戦に出場できることへの感慨深さもありますか
本当に自分が試合に出ていいのかというふうに思ったりもします。ですが出るからには、一生懸命やりたいです。
――ケイオーに意識する選手はいますか
特にはいないですね。強いて言うなら、嶋田(翔)選手は2年生で出ていて、同級生なので、この先あと2年間戦っていくということを考えると負けたくないという思いはあります。
――やはり同級生に対しては負けられないという思いが強いのですね
そうですね、あとは瀬戸西(純、2年)選手とかですね。今後2年間のことを考えると負けたくないです。
――早慶ともに優勝の可能性を残しての早慶戦ということになりました
緊張感もありますし、楽しみな部分もあります。まず第一に自分がレギュラーとして出させてもらう初の早慶戦で、チームが優勝を争える位置にいることは本当にありがたいなと思います。
――早慶戦でこういうプレーがしたいというのはありますか
具体的には特にないですが、少しでもチームの勝ちに貢献できたらいいなと思います。アウトになっても進塁打だったりとか、小さなかたちでもどんな形でもいいのでチームに貢献したいという思いが強いです。
――最後に早慶戦へ向けての意気込みを
優勝が懸かっているので、法政との決定戦に向けて、まずは慶大に2連勝して4年生と一緒にいい思いができたらいいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 杉山睦美)
春に続く活躍で、宿敵撃破を目指します!
◆瀧澤虎太朗(たきざわ・こたろう)
1999(平11)年1月4日生まれ。180センチ、75キロ。山梨学院高出身。スポーツ科学部2年。外野手。右投左打。今季が初のリーグ戦スタメン出場となっている瀧澤選手。開幕前、特にルーティンなどはつくらなかったそうです。普段通り、自然体を意識して試合に臨んでいるようです。今春を上回る活躍に期待です!