競走部

2018.08.21

【特集】長距離夏合宿特集『挑戦』相楽駅伝監督インタビュー

 戦前の評判を覆し、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)で2年連続の総合3位の好成績を残した早大。今年は強力なルーキーが入学して活躍を見せたものの、まだチーム全体では満足な結果を残すことができていない。『学生三大駅伝3位以内』の目標に向けて、このままではいられない。チームの指揮を執る相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)に前半シーズンを振り返りながら、合宿を踏まえた秋以降の展望について伺った。

※この取材は8月17日に行われたものです。

「なかなかチームの足取りがそろわないまま過ぎてしまった」

丁寧に質問に答えていただいた相楽駅伝監督

――前半シーズンを振り返るとどのようなシーズンでしたか

 昨年のチームがとても人数が少ないチームで、そこから4年生が抜けましたので3月までは相変わらず少人数のチームでした。昨年度と同じようなスケジュールでやっていったんですけど、どうしても箱根が終わってからインフルエンザなどの体調不良者がチームで短距離を含めて相次いでしまいました。1月、2月になかなかいいスタートを切れないまま、3月の立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン)を迎えてしまったという感じだったので、1月、2月、3月についてはめぼしい成果があまり見られなかったかなと思います。ただ、3月に入って徐々に体調不良者も復帰してきて、鴨川合宿あたりが非常に充実してきていたので、トラックシーズンの入りについてはそこそこいいスタートを切れたメンバーが多かったんです。しかし、関東インカレ(関東学生対校選手権)が近づいてくると、やはり主力の中で何人かケガや大会に間に合わない子が出てきてしまいました。関東インカレについては、出た選手についてはよくがんばってくれましたが、そもそもチームのベストなメンバーがスタートに立つところまで行ききれなかったという感じですね。一方では4月から入ってきた1年生を含めて下級生が非常に力を発揮してくれました。インカレもそうですけど、アジアジュニア、世界ジュニア(U20世界選手権)などの国際大会を経験して、成果もそれなりに出してくれたというところでは、下級生はよく頑張ってくれたと思います。全体的に振り返るとなかなかチームの足取りがそろわないまま半年間ずるずると過ぎてしまったような印象ですね。

――その中でも前半シーズンで最もよかった選手、MVPの選手を選ぶとすればどなたでしょうか

 やはり吉田(匠、スポ2=京都・洛南)ですかね。種目が3000メートル障害と限定されてしまいますが、箱根をケガで出られなかったところから非常に充実したトレーニングを続けてきたので、その成果がアジアジュニアでメダルを取って、世界ジュニアでも入賞というところまで行きました。ですのでトラックシーズンについては吉田が一番目立った活躍をしてくれたと思います。

――関カレでは3種目で入賞者を輩出しました。関カレを振り返るといかがでしたか

 春から好調をキープしていた太田(智樹、スポ3=静岡・浜松日体)がトラックの一番花形種目だと思う5000メートルでしっかり入賞したということは、エースとして力もついてきたのかなと確認できました。あとはワセダらしいというところで、ハーフマラソンで真柄(光佑、スポ3=埼玉・西武文理)が間に合わせのようなかたちで出ましたが、暑くてコースもきつくてシビアだった中で入賞したというのもチームにとっては大きな一歩だったと思います。二人が目立ちましたし、吉田なども頑張りましたけど、過去と比べた時に、もっと力を出せば入賞に届くようなポテンシャルを持った選手がたくさんいると思うので、活躍した選手がいるからこそ、穴を埋められなかったことについては、課題というか、悔しさを感じましたね。

――監督は今年で就任4年目になりますが、何か変えられたことはありますか

 今年はあえて何も変えていないです。特に、昨年は出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)と全日本(全日本大学駅伝対校選手権)で失敗して、箱根前に基礎基本をもう一度見直そうということで、派手なポイント練習や試合ではなくてそこに至るまでの毎日の何気ない基礎トレーニングや日々の生活など、そういったところを見直してやって、箱根の成果につながったようなところがありました。年が明けたときに新チームが動き始めましたけども、目立たない地味なことを徹底してやろうということでやってきました。逆に昨年と同じ練習メニューで同じ流れで来た中で、基礎を徹底して昨年の成果を上回ろうという形で来てますので、何か目立った変化は私の方からは起こしていないです。

――現時点でエース候補の選手はいらっしゃるのでしょうか

 チームが始動した時に、核となる選手は永山(博基、スポ4=鹿児島実)、太田智樹、新迫(志希、スポ3=広島・世羅)の三人というふうに私は考えています。この三人が3、4年生の中で核になって、そこに他の2、3、4年生だったり、力のあるルーキーが周りを固めていくようなかたちが今のチームの理想だと思っています。まずは太田(智樹)が活躍していますけど、出遅れている永山、新迫あたりが体調も徐々に戻りつつあるので、秋には彼らがしっかりスタートに立つことがチームにとっては重要かと思います。

――チーム内での入れ替わりの激しさは見られますか

 それがなかったので、これが春に停滞した要因だと思っています。例えば先ほど話した関東インカレについて、主力選手が出られなかった時に穴を埋める選手が出てこなかったこともこのチームの課題だったかなと思っております。それが夏合宿にきてBチーム、Cチームの練習が充実してきて、昨年よりはチーム内の競争が高まってきつつありますので、これから臆することなくAチームに絡む、あるいはAチームにとどまらないで「この学校の選手と戦うんだ」という高い意識を持った選手が一人でも多く出てくればいいかなと期待しています。

――Aチームに対する目標や理想はありますか

 私の方からは一次合宿の時も毎日言ってましたけど、モチベーションを高めるために、「自分の目標をしっかり見直しなさい」と言っています。僕から「こういう選手になれ」や「こうなってほしい」とか、もっと言うと、三大駅伝は重要ですけど、彼らの中には自分の陸上競技の天井ではない選手がたくさんいると思います。今回はジュニアでしたけど、日の丸をつけた選手が何人かいましたので、ワセダに来たという時に駅伝のみにとどまらず、その先に日の丸をつけて世界に行きたいとか、マラソンにチャレンジしたいという高い目標を持ってやってきているはずです。Aチームのメンバーには僕から出す練習メニューや僕からの要求やリクエストは最低限です。自分の目標と照らし合わせて、足りないところは自分でプラスアルファするなど、そういったものを自分で考えて、設定してチャレンジできる選手というのを基準にしているので、それは毎日一次合宿で言っていました。

――では、BチームやCチームで監督が注目されている選手はいますか

 注目というところでは昨年のチームが出雲や全日本でうまくいかなかった要因の一つに、人数が少なくて体調不良者が出た時、穴を埋める選手がいないとか、そもそもチーム内に競争が起きなかったことが最大の敗因だと思っています。そういう意味では、今までAチームにいて、Bチームで基礎をつくっている大木(皓太、スポ3=千葉・成田)、真柄、宍倉(健浩、スポ2=東京・早実)、渕田(拓臣、スポ2=京都・桂)とかですね。三大駅伝経験者はもちろんですし、今だと4年生ですね。小澤(直人、スポ4=滋賀・草津東)、車田(颯、スポ4=福島・学法石川)、西田(稜、政経4=東京・早大学院)などが、ここに来てようやく自覚もできて、Bチームの練習を引っ張ってトレーニングできています。そういった選手たちのこれからの伸びに期待していますね。

――今年の長距離ブロック全体の雰囲気についてはいかがでしょうか

 まだ昨年のチームよりチームビルディングについては少しのんびりしている感じがあります。キャプテンの清水(歓太駅伝主将、スポ4=群馬・中央中教校)はよくまとめようとやっているんですけど、彼自身もまだ方向性が定まっていなかったような気がするんですね。ただ二次合宿に来て、清水の方からもキャプテン像のようなものを確立してきているので、なんとなくチームの方向性が出てきています。ただ非常に若いチームで、四学年の中でも1、2年生が3分の2近くを占めるようなチームなので、若い子たちのフレッシュさや勢いがありながらも、少ない上級生がどうやって下級生をまとめていくかというところで、新しいチーム像が出来てくるのかなと思います。

――昨年は4年生がチームをまとめていた印象が見受けられましたが、今年はいかがでしょうか

 みんな個性が強いですからね……。でも、それがここにきて、非常に4年生の色ができつつあるかな。今まで永山や車田、小澤だったり、どうしても故障していて。故障していると気持ちの方も落ち込んで、なかなか積極的に動けないところがあるんですけど、彼ら自身の練習が充実してきて、Bチームの宿の雰囲気がすごくいい感じで4年生が引っ張っていると聞いています。4年生のエンジンがかかってきてチームがまとまっていくところで、4年生らしい色が出てくると、昨年や一昨年のような最後の4年生の踏ん張りというものが出てくると思います。

――今年のルーキー選手についてはどのように見ていますか

 実績に見合ったというか、非常に高いポテンシャルを持った選手が集まってくれたなと感じています。練習も従来の選手がやっているようなレベルに今は設定していますけど、どちらかというとそれでいっぱいいっぱいというよりは余裕を持ってこなしています。優勝した年にちょうど柱になっていた八木(勇樹、平24スポ卒=現YAGI・RUNNING・TEAM)、三田(裕介、平24スポ卒=愛知・豊川工)、矢澤(曜、平24教卒=神奈川・多摩)、中山(卓也、平24スポ卒=兵庫・須磨学園)などの世代がいましたけど、彼らに近いような非常に高い能力を持った学年になっていると思います。

――その中で特に注目している選手はいますか

 やはりチャンピオンだった中谷ですね。春は体調を崩したところもあったので、トラックシーズンの後半が特に苦しいレースが続いていましたけども、今は体調が戻って練習も充実してきていて、1年生らしくないなという力を持っています。あとはここにきて千明(龍之佑、スポ1=群馬・東農大二)、半澤(黎斗、スポ1=福島・学法石川)、太田直希(スポ1=静岡・浜松日体)の三人がすごく切磋琢磨して力をつけてきていますので、1年生ですけど、頼もしいなという印象を持って練習を見ています。

「これまでの早大とは違うかたちのチャレンジになる」

相楽駅伝監督が注目しているという中谷。関カレでは苦しい結果に終わった

――合宿の進み具合はいかがですか

 もう終わりましたけど1次合宿で身体の基礎をつくって、2次合宿で走り込みをして、スタミナをつけるところです。やはり1次合宿に入った時に、6月、7月にケガをしていたり、体調が間に合わなかった選手たちは1次合宿で狙った練習ができなくて、ここに来て基礎を作り始めている状態です。チーム全体としては狙っているところからすると50パーセント、60パーセントぐらいの出来だと思います。ただ、ここに来てものすごい重度の故障を持っているとか、右肩下がりの選手はいなくて、みんな復調の気配があったりとか、多くの選手がAチームに戻って来ています。出遅れている選手に関しては非常に危機感を持っているところではあります。3次合宿が終わるまでには、昨年並みの所に到達できればいいかなと思っています。

――これから徐々に強度を上げていくということですか

 そうですね。3次合宿は岩手で実践的な練習を入れていきますので、そこについては今、多少体調を落としてでも、壊れない限りは練習量の方にウエイトを置いてやっていきたいなと考えています。

――後期のシーズンはどのようなプランで進めていきたいと考えていますか

 三大駅伝でのチームの目標がいずれも3位以内という目標を立てています。一方でチームの特徴として先ほど言ったように若いチーム。1、2年生が多くて大事な選手が1年生にいます。特に全日本については距離が変更になりまして、短い区間が増えましたので、そういう部分で言うと、出雲と全日本は若いメンバーの勢いを利用して戦うような駅伝になると思います。これまでの早大とは違うかたちのチャレンジになると思います。ただ箱根については上級生の方が非常にカギになってきますし、特に4年生の永山、清水、主力でないところで車田、小澤、西田あたりが非常に力をつけてきていますので、最後は早大らしく上級生の走りを見て下級生たちがそこについていくようなかたちに持っていければ、昨年を上回るような成果が出せるんじゃないかなと思います。

――全日本の区間変更についてもポジティブにとらえていますか

 タイミング的にはちょうどよかったなと思っています。昨年までの区間構成ですと、どうしても長い距離を走る選手が四人ぐらい必要でしたので、今年のうちのチーム構成からすると、ケガ人もいて苦しくなる可能性もあったかなと思います。短いところが増えたので下級生でも、思い切って起用しやすい変更になったかなと思います。

――学生三大駅伝のそれぞれの位置づけはどのようなものですか

 出雲より全日本、全日本より箱根と、長い距離が得意なチームですのでビルドアップしていけるところですが、特に今回は全日本の距離が変わって、従来の昨年までの三大駅伝のアプローチとは変えようと考えています。従来、出雲については直前まで合宿をしていてどうしても体調が間に合わないことが多かったのですが、今年は3次合宿の中でも出雲に向けて例年よりは調整を入れて、出雲から100パーセントではありませんが、全日本に向けての出雲ということを重視してアプローチしたいなと思います。

――出雲で自信がつけば次にもつながりますね

 結果もそうですけど、内容も重視して、疲れていたから走れなくてしょうがないという駅伝にはしたくないなと思っています。

――早大競走部の学生三大駅伝全て3位以内というのはチーム内で話し合って決められたのですか

 そうですね。いつも学生が決めてきますので、それを聞いて、昨年の9位、7位、3位という成果がありましたので、それと照らし合わせて、本当にいけるのか、達成できるのか、やるのであれば腹をくくってやる必要があると、4年生にはしっかり考えて決めなさいということで話をしましたけど、そういう設定をしてきました。今はチームの状態としてそこまで届いていないですけどポテンシャル的には充分達成できる可能性のあるチームなので、私自身もそれを受けて自分たちが変わるという意識を持ってこの合宿に臨んでいます。

――監督としてその目標に具体的にどうアプローチしていきますか

 例年出雲で私としては想定の範囲内ではあるのですが、なかなか成果が出なくて、どちらかというと落ち込み気味といいますか、出雲で苦しんでスタートから勢いに乗れないことがありました。今年は出雲から勝負をして、手応えをつかんでから全日本、箱根といけば、昨年とはまた違った戦い方ができるんじゃないかなと考えています。

――今の時点で気になっている他大学はありますか

 春のトラックシーズンを見て、箱根で上位にいた青山学院さん、東洋大学さん、昨年出雲、全日本と力のあった東海大学さんあたりは今年も選手層が厚いので、そういうチームは誰かの不調をカバーできるだけの人員がそろっていますので、間違いなく上位にくるだろうと思っています。昨年並みに出雲、全日本、箱根と混戦で3つの駅伝の成績がリンクしないようなシーズンになるんじゃないかなと思っています。

――監督がチーム内で後期に注目している選手はいますか

 全員と言いたいのですが、やはり1年生ですね。上級生に関してはある程度駅伝の中で実績や力が見えてきていますので、力のある1年生たちが従来の1年生とは違う起用の仕方もあり得るかなと思っています。他の大学と駅伝の中でどの程度通用するかは期待もしてるし、楽しみでもあります。

――最後に秋シーズンに向けて、展望や目標を教えてください

 昨年よりはチーム内での競争が激しくなってきていますので、まずは自分達のチームの準備としては昨年のチームを超えるような、できれば一昨年のチームを超えるような練習を積んでいって準備をしたいなと考えています。そこに向けて、今チームとしてスロースタート気味でありますので非常に危機感を抱いてやりたいと思います。若さのあるフレッシュなチームがどこまで通用するかというのは伸びしろがあると思うので、あと1ヶ月少し合宿が続くので、できるだけ彼らのポテンシャルを引き出してのびのびとしたフレッシュな駅伝をみなさんに見せられたらいいかなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 岡部稜・喜柳純平)