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2018.04.01

【不定期連載】『早稲田からWASEDAへ』第4回 今井慎太郎

 プロテニスプレーヤー・今井慎太郎(平28スポ卒=現東通産業)。学生時代は1年からレギュラーとして全日本大学対抗王座決定試合(王座)連覇に貢献し、主将を務めた4年時には全日本学生選手権シングルスで優勝するなど、早大庭球部が誇る名プレーヤーの一人だ。学生テニス界のトップを走ってきた今井は卒業後プロに転向し、世界を舞台に戦ってきた。プロ転向から2年で世界ランキングは急上昇中。日本テニス界でも注目度が高まってきている選手だ。「早稲田からWASEDAへ」――早大から世界へ羽ばたこうとしているテニスプレーヤーが、今思うこととは。

※この取材は3月17日に行われたものです。

「自分に足りなかったものを思い切り鍛えられた四年間」(今井)

学生時代を振り返る今井選手

――まずは三菱電機・早稲田大学フューチャーズ国際トーナメント(早稲田フューチャーズ)ダブルス優勝おめでとうございます!在学中から挑戦してきて初めての優勝だと思いますが、今のお気持ちは

 ありがとうございます!シングルスは残念な結果になっちゃったんですけど、ダブルスで優勝できたというのはすごくうれしいことですね。単複共に準優勝までしか経験がなくて、それがちょうど在学中、3年生の時だったんですけど、それ以来この大会ではあまり結果を残せていなかったんですが、今回この4年間の思い出がつまったコートで優勝することができたというのは率直にうれしいなと思います。

――在学中から当会の取材を受けてきたと思いますが、早スポにはどんな印象を持っていますか

 そうですね・・・なんかこう・・・たくさん質問してもらったんですけど、ずっとあんまり言うことは変わっていなくて。それは悪い意味じゃなくて、学生時代は自分が意識することはあんまり曲げることなく、貫けたら結果につながるということが分かっていたので、つまらない答えを常にしちゃってたなと思います。申し訳ないです(笑)。

――こちらは今井選手が在学中の庭球部王座優勝号外全4枚(2012~2015年、王座アベック7~10連覇)になります

 (号外を手に取って)うわ~懐かしいな~。やばいね、コレ(笑)。

――学生時代からお世話になっておりました

 いえいえ、こちらこそありがとうございます(笑)。

――今井選手は現在プロテニスプレーヤーとして活動されていますが、プロになりたいと思ったのはいつ頃なのですか

 大学3年生になるときくらいかな。きっかけはこの早稲田フューチャーズなんです。たいした結果は出せていなかったんですけど、シングルスはベスト8くらい、ダブルスは決勝に絡むこともできるようになってきていて、このような機会を与えてくださって外人選手とかと戦ってみた中で、自分が世界に通用するのかっていうチャレンジをしてみたいなって思ったんですよね。自分がプロになろうと思ったきっかけが早稲田フューチャーズを含め大学フューチャーズシリーズなのは間違いないです。

――ジュニア時代はプロへの意識はなかったのでしょうか

 そうですね、全くなかったです。大学に入るときはプロなんて考えてもなかったですし、本当にプロになろうと思うようになったのは在学中です。

――その中で早大への進学を決めた理由は

 テニスは本気でやりたいと思っていたので、早大がそれに一番ふさわしい学校だというのは分かっていました。高校時代の監督が早大出身で、とりあえずテニスをするなら早大に行くべきだとずっとおっしゃっていて、すごく尊敬していましたし、やっぱりその通りだと自分も思っていたので、それが早大に進学すると決めた大きな理由ですね。

――大学四年間を振り返って、改めてどんな四年間でしたか

 いやー、そうですね・・・。キツいというか、ためになる。テニスをやっていく上で自分に足りなかったものを思い切り鍛えられた四年間でしたね。

――ラストイヤーは主将も務めましたが、振り返っていかがですか

 ラストイヤーは、先輩がいないというのもあり、それから土橋さん(登志久監督、平元教卒=福岡・柳川)がフランスにコーチ留学されていてチームにいなかったので、自分たちで王座に向けてやっていかなきゃいけないというこれまで誰も経験したことのない環境だったので、いろいろ大変でしたね。自分の練習だけじゃなくてチームのことも考えないといけないですし、自分はユニバーシアードがあったり教育自習にも行ったりでなかなかチームと一緒にいる時間が普通よりも少なかったので、主将でありながらそういう状況だったのですごくチームに迷惑をかけたなと思っています。でも、僕の同期は5人しかいなかったんですけど、みんなが本当に頑張ってくれて、すごくいいチームになったかな。新しい環境で挑んだチームとして、すごくまとまっていた、一丸となっていた一年間だったかなと思いますね。

――大学四年間で一番印象に残っている試合を挙げるとしたら

 (ある一枚の号外を指差しながら)これですね。

――3年時の王座でしょうか

 そうですね、3年の王座です。他大もすごく強くなっていて、このときの決勝は慶應でした。僕はシングルス2で入っていたんですけど、どうやらシングルス1の岡村さんの流れがよろしくないらしいと。でも通路挟んで隣のコートに入っていたので、お客さんがめっちゃ多くて全く見えなかったんですよ。ファーストセットは取れたんですけど、セカンドセットは2-5で負けていて。その時に土橋さんがベンチに入ってくださって、そこから7-5までまくって優勝を決めたっていうのは、やっぱり一番印象に残った瞬間でしたね。その時にとにかく土橋さんという存在が大きいものだというのも感じましたし、自分もあそこから逆転できたというのはすごく自信につながる試合になりました。これまでどの大学もやっていない王座10連覇にチャレンジし続けていて、それを自分の手で決められたのはやっぱり忘れられないものですね。

プロテニスプレーヤーとしての苦悩

「大学四年間で一番印象に残っている試合」と語る2014年の王座決勝で、10連覇を決めた今井選手(当時3年)

――プロ転向からもうすぐで3年になりますが、ここまでを振り返ってご自身ではどう感じていますか

 次の4月から3年目になるんですけど・・・うーん・・・そんなに順調だとは思わないですね。1年目は順調に行っていたと思うんですけど、それはまあディフェンドがないので、勝てばその分ポイントが増えてランキングが上がってっていう感じなので。2年目はディフェンドも意識し始めて、あとはケガもありました。あばら骨を骨折しちゃって2カ月くらい試合に出れないときもあって、そういう苦しい思いもしました。学生の時は「プロになったらチームのことを考える必要もないし、自分の練習だけにもっと集中できて、よりテニスレベルを上げていけるんじゃないか」と思っていたんですけど、そんな簡単なもんじゃなかったですね。自分だけで練習やらトレーニングやらを追い込んで、テニスの状態を維持するのがどれだけ大変なことなのか。国際大会に出ている選手はどれだけ強いのか全然分かっていなくて、実際なかなか勝たせてくれないですし、そういったいろいろな苦しい経験をさせられて、プロって本当に大変な活動なんだなと改めて、というか初めて、痛感しましたね。2年目になってより感じさせられたかなと思います。

――フューチャーズを中心に海外の試合も転戦していますが、大変なことはありますか

 たくさんあります。日本がどれだけ良い環境か思い知りますよね(笑)。アジアは基本暑いですし、それに対してしっかり対応しないといけないというのはすごく勉強させられています。2年やってみて海外を回るのは本当に大変なことだと感じさせられますね。

――これまでフューチャーズトーナメントでシングルス3勝、ダブルス11勝を挙げていますが、一番印象に残っているタイトルを挙げるとしたらどれになりますか

 よく調べてるね(笑)。うーん・・・シングルス3勝目(2017年香港F3フューチャーズ)ですね、香港の。シングルス1、2勝目(2016年インドF2フューチャーズ、インドネシアF4フューチャーズ)はとにかく思いっきりやって、そしたら優勝できたって感じだったんですけど、香港の3勝目は意識的に優勝しなきゃっていうプレッシャーを感じながらというか、狙っての優勝だったので、それが一番印象に残ってますね。

――昨年はユニバーシアードではダブルスで銅メダルを獲得しましたが、振り返っていかがですか

 あばら骨をケガしてしまったのがユニバーシアードの前で。でもユニバーシアードはせっかく選んでもらったから出場しなきゃと思って、痛み止めを飲んで出場したんですけど、結果的にもっと悪化させてしまって、本当に日本チームに迷惑をかけてしまったなという気持ちです。でも素晴らしいサポートをしていただいたおかげもあってダブルスでメダルが獲れて、それはよかったんですけど、やっぱりシングルスでメダルを取りたかったという思いが強くて、悔しいという印象しかないですね。

――今井選手は現在JTAランキング(日本テニス協会が定める国内ランキング、2018年3月27日付)ダブルス3位ですが、国内で注目されてきているという実感はありますか

 海外回ってるとあんまり国内のランキングって気にならないんですよ。だからそこで注目されてるなとかはあんまり感じないですね。自分がどれだけ海外で通用するかっていうのに精いっぱいというか、とりあえず世界ランキングを上げていきたいというのを意識しています。

――プロに転向してから成長を感じる点はありますか

 やっぱり一人で戦うということですかね。学生時代はみんなに支えられていたおかげで自分がいいプレーを出せていたと思うんですけど、プロの世界は自分だけで戦っていかなきゃいけないですし、そこではやっぱり一人で戦う孤独さもあります。その中で勝つためにどうすればいいかを考えていかなきゃいけないので、そこがやっぱり一番成長している部分かなと思いますね。

――プレースタイルで変わったところはありますか

 ベースとなるプレースタイルは変わっていないんですけど、できるプレーは増えてきているなと思いますね。学生時代はバックハンドが本当に打てなくて、全部スライスでやってたときもあったんですけど、今はしっかり打つようにしていて、実際打てるようになってきています。なぜかって言うと、それだけでは勝てないと感じたからです。海外の試合などでそれを感じて、それを意識して練習してきたので、技術的な面というかプレーの質、一球一球の質も含めて全体的に成長しているかなと思います。

――プロでは単複共に結果を残してきていますが、単複どちらを重視していきたいですか

 やっぱりシングルスは重視していますね。シングルスがうまくなればダブルスの能力も上がりますし、逆にダブルスの能力が上がればシングルスにもつながると思うので、どっちもやっていくことが大事だと思います。自分の中でも二刀流っていうのは目指していますし、どっちも頑張っていきたいんですけど、やっぱりシングルスで勝つっていうのが大前提というか大切なことなので、シングルスをメインにしてやっていますね。

――目標にしている選手などはいますか

 僕はジュニアの頃からずっと杉田さん(祐一、平23スポ卒=現三菱電機、ATP世界ランキング(2018年3月19日付)シングルス43位)を追いかけていて・・・。

――高校、大学と同じルートですよね

 そうなんですよね(笑)。小学生の頃、杉田さんを湘南工大付高に見に行ったんですよ。その頃からずっと杉田さんが憧れです。プレースタイルは変わってきてはいるんですけど、それでもまだまだ見習う部分はいっぱいありますし、彼はどんどん上に行っている人なので、今でも杉田さんを目標にしているっていうのは間違いないですね。

「グランドスラムで活躍する選手を目指したい」(今井)

今井選手(左)は仁木拓人選手(三菱電機)とのペアで早稲田フューチャーズ初優勝。早くもことしダブルス2勝目を挙げた

――プロ生活の中で大学四年間の経験が生きていると感じることはありますか

 もちろん生きてますよ。なにが一番生きてるかなって考えると、やっぱり精神的な部分ですね。大事なところでの積極性とかは、大学時代のきつい練習とプレッシャーのかかる中での試合で身についたものだと思いますし、やっぱりそこですね。

――プロの世界では『大卒では遅い』と言われることも多いと思いますが、それについてはどうお考えですか

 やっぱり言われますよね。でも大卒でもやっていけるんだというのを証明したいですし、それが一つの目標というか、自分のモチベーションの一つにしていますね。

――現役の部員たちも、「OBの方々がプロで活躍しているのは励みになる」とよく言っていますが

 そういう風に言ってくれるのはうれしいですね。きょうも部員の前で優勝することができて、自分のプレーが彼らがなにか一つレベルアップするためのヒントになればいいかなと思いますし、みんなのお手本になれるように自分も頑張っていきたいと思います。

――現役の部員で注目している選手などはいますか

 個人的に誰に注目、とかはないんですけど、若い選手たち、新2、3年はやっぱり注目ですよね。とにかく強いですし、王座優勝のキーになってくるっていうのもあるので、彼らの活躍は今後も楽しみですね。

――早稲田フューチャーズでもダブルス2回戦で古賀大貴(スポ3=大分舞鶴)・安上昂志(スポ3=福岡・柳川)組と顔を合わせましたが、実際に対戦してみていかがですか

 やっぱり勢いがあって、学生らしいプレーというか、なんか思い出されるものがありましたね。学生らしいプレーは受け継がれてるなって感じた瞬間でした。

――近年、早大庭球部は在学中から海外遠征を実施するなど世界に挑戦する環境が整ってきていると思いますが、今井選手から見ていかがですか

 いやー、うらやましい。その一言ですね。自分も(海外遠征)したかったですし、前まではそういう考えすら浮かばなかったので、うらやましいなと思います。現役の部員たちにはそういった経験を生かして、もっと成長してほしいなと思います。

――今井選手にとって、ここ1、2年での短期的な目標はどんなものでしょうか

 年齢を考えてもここ2、3年が勝負だと思っているので、1、2年でグランドスラムに引っかかるようなところまでランキングを上げていくのが短期的な目標ですね。

――2年後には東京五輪もありますよね

 やっぱりそこも視野に入れたいですよね。ランキングとか実力が上がってくればそこも視野に入ってくると思いますし、まずは自分のランキングを上げて、そこからもっと上の方にチャレンジしていきたいです。

――長期的に見た、テニスプレーヤーとしての目標をお聞かせください

 グランドスラムで活躍する選手を目指したいですし、現に杉田さんのような遅咲きのプレーヤーもいらっしゃるので、ああいった選手を見習って、自分もそこにできるだけ近づけるように、そして自分も同じ舞台で戦えるように頑張っていきたいなと思います。

――最後に、今後の選手生活への意気込みをお願いします

 まずはこのフューチャーズを抜け出して、チャレンジャーとかATPツアーといったもっと上のレベルで戦えるようにどんどんステップアップしていきたいと思います。時間もそんなにないと思うんですけど、それで焦っても意味はないと思うので、一戦一戦目の前の試合を地道に勝っていって、その中でも目標は大きく持って、もっと上のレベルにチャレンジしていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 松澤勇人)

「常に成長」し、グランドスラム出場を目指します!

◆今井慎太郎(いまい・しんたろう)

1993年(平5)9月7日生まれのA型。身長179センチ、体重75キロ。神奈川・湘南工大付高出身。平成28年度スポーツ科学部卒業。昨年の主な戦績は、かしわ国際オープンテニストーナメントダブルス優勝、中国F7フューチャーズダブルス優勝、台湾F1フューチャーズダブルス優勝、香港F3フューチャーズシングルス優勝、ダブルス優勝。ことしの主な戦績は、亜細亜大学フューチャーズ国際トーナメントダブルス優勝、三菱電機・早稲田大学フューチャーズ国際トーナメントダブルス優勝。ATP世界ランキング(2018年3月19日付)シングルス403位、ダブルス257位。早稲田フューチャーズダブルスの表彰式後、お疲れにもかかわらず快く取材を受けていただいた今井選手。周りで片付けをしていた庭球部員に気兼ねなく声を掛けている姿からも、人柄の良さが伺えました!

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