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米式蹴球部

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2018.02.20

【連載】『平成29年度卒業記念特集』第23回 坂梨陽木/米式蹴球

妥協せず突き進む

 「覚悟を持ってプレーする、感謝の気持ちを忘れない」。オフェンスの司令塔であるQBとして坂梨陽木(政経=東京・早大学院)が心得としていたことだ。パフォーマンス次第で試合が決まると言っても過言ではない重責なポジションでありながら、200を超える部員を主将としてまとめ上げた男。その目には、何が映っていたのだろうか。

 兄の影響を受け、早稲田大学高等学院で米式蹴球部への入部を決意。アメフト漬けの高校生活を送った坂梨は、高校3年時に主将を務め、全国高校アメリカンフットボール選手権(クリスマスボウル)を制覇。チームを日本一へと導いた。大学でも日本一を目指し、BIG BEARSの門を叩いた坂梨は、大学1年時の春季オープン戦で新人離れしたプレーを連発し、華々しいデビューを飾る。しかし、大学2年時にQBの生命線である肩を負傷。戦線からの離脱を余儀なくされた。その一方で、快進撃を続けた早大は関東制覇を果たし、甲子園ボウルへの切符をつかんだ。「出場することが夢だった」と、リハビリを乗り越え坂梨もなんとか甲子園の地に立ったが、出場機会はわずか1シリーズ。チームに全く貢献できず、悔しさがこみ上げた。

冷静なクオーターバッキングでチームを率いた坂梨

  「さらに強い気持ちでプレーしなければ」と、決意を胸に更なるレベルアップを誓った坂梨。地道なトレーニングを重ねフィジカル面を強化。タレント揃いのスキル陣を擁し、2年連続で甲子園ボウルの出場を果たした。しかし、歴代最多の優勝回数を誇る関学大を相手に力負け。悲願の日本一へまたしても手が届かなかった。

 主将として迎えたラストイヤー。高校時代の恩師でもある濱部昇前監督(昭62教卒=東京・早大学院)から、高岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)が新たにチームの指揮を執ることに。大きな環境の変化がありながらも「全員の気持ちをいかにモチベートするか、妥協せずにやった」と、選手とのコミュニケーションを絶やさず、懸命にチームをけん引した。その中で、春に立命大と対戦。これまでは持ち味の脚力を武器に、走ってオフェンスのリズムをつくるプレースタイルであったが、この日は違った。過去の反省から「ロングパスを決める必要がある」と、アグレッシブな攻撃を展開し逆転で勝利をつかんだ。坂梨が原動力となり、BIG BEARSは関西の強豪校とも引けを取らないチームへと成長させた。そして、迎えた勝負の秋。関東3連覇へ視界良好かに思われたが「勝負所で決めきる力が足りなかった」と、林大希を擁する日大に敗戦。甲子園ボウル出場はかなわなかった。それでも坂梨は下を向かず「自分たちのやっていることに自信を持って」と、夢を後輩に託し背番号『1』のユニフォームを脱いだ。

 アメフトとは「自分を成長させてくれた、かけがえのないもの」と、笑みを浮かべそう語った坂梨。学生生活の大半をアメフトに捧げた男にとって、ワセダでの経験は大きな財産になったに違いない。「夢は、兄と同じチームでプレーすること」と、アメフトの世界へ導いてくれた兄の背を追い、これからも坂梨は夢を追い続ける。

(記事 成瀬允、写真 新津利征氏)

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