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2017.09.07

【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『pride』第5回 柳澤一輝×脇健太朗投手コーチ

 東京六大学秋季リーグが、もう目前まで迫ってきている。夏季オープン戦では、春にほころびを感じさせた投手陣が復調を見せた。 そんな投手陣の中心となっている柳澤一輝(スポ4=広島・広陵)と脇健太郎投手コーチ(社4=早稲田佐賀)。柳澤は上級生投手として、プレー面だけでなく精神的にも柱となっており、脇は裏方として厚い信頼を受けている。4年生にとって、秋は最後の学生野球。二人の思いに耳を傾ける。

※この取材は8月31日に行われたものです。

投手陣の中心を担う二人

――お二人の出身校の広陵高と早稲田佐賀高がどちらも夏の甲子園に出場されましたね

 自分たち(早稲田佐賀高)は初出場だったので、すごくうれしかったです。

柳澤 後輩たち(広陵高)すごいです(笑)。

 準優勝やもんな。

柳澤 それだけですね(笑)。

――柳澤選手の代はセンバツで初戦敗退でしたね

柳澤 はい、そうです。力不足でした(笑)。

――その中で話したことがある後輩や、指導したことのある後輩はいらっしゃるのですか

柳澤 エースの平元くん(銀次郎、3年)は一応教えたというか、ピッチングは見たことありますけど、そのぐらいですかね。野手は全然別なので関わってはないんですけど。すごいです、準優勝は。優勝してほしかったですけど。

――練習や試合などがあり、なかなかリアルタイムでは見られなかったのではないですか

柳澤 はい、そうですね。速報なり、見られる時は途中からでも見ていました。

 早稲田佐賀は4試合目だったので、ちょうど試合が終わった後に見ました。

――お二人の高校時代と同じ監督さんだと思うのですが、その監督の方々の教えなどを伺ってもよろしいですか

 自分たちは特に練習時間がすごく短いので、一球の精度などということを言われました。

柳澤 自分は野球というよりは人間形成とか、社会人とか、上にいっても通用する人間になれるような指導であったり、感謝の気持ちだったり、というのをよく言われていたので。野球というよりは、そっちの方をよく言われていました。

  広陵の人って絶対グラブに『ありがとう』って書いてあるじゃん。

柳澤  うん。感謝するのは一番大事ですし、それを常日頃から言われていたので、忘れないようにというか。『ありがとう』という言葉は常に感じながら、野球だけでなく、全てにおいて意識しているつもりです。

――投手コーチとチームの中心投手として、お互いをどのような存在だと思っていますか

 柳澤はもちろんチームのピッチャーの主軸ということで、プレーとしての活躍はもちろんなのですが、それに加えてチームのこと、特に雰囲気をつくるのがすごくうまくて。きつい練習も当然あるし、そういう時は雰囲気が悪くなりがちですが、そこで声を出したり、誰よりも頑張っている姿勢を見せたりして、それが周りの人たちにいい影響が出ているので。プレーの面と違う面ということで、チームのために貢献するというところが・・・。まとまらんな(笑)。チームをプレー以外のところで引っ張っていく存在。よし、それでまとめよう(笑)。

――そのように言われていかがですか

柳澤 自分はそこまでは意識しているつもりはないですけど、それが自然にできているのであれば、それがベストなのかなというのは感じます。

――柳澤選手から見た脇コーチはどうですか

柳澤 自分たちが脇を一番信頼してそういう立場というか、学生コーチをやってくれと頼んでいるので。脇もいろんな思いがあって、最終的には受けてくれているんですけど。そういうの(学生コーチ)は高校とかでもやったことがないとは思うので、やったことがない中で、選手一人一人とか、ピッチャーを良くするためにいろんな面でコーチとして見てくれているので、それは選手からしたらありがたいですし。そういう裏方に回ってくれた人のためにも優勝したいという思いがあるので、頑張ってくれているというのは、自分たちにとっては大きい存在かな、と。

「春よりは各投手つくれている」(脇)

投手コーチとして投手を管理する脇

――春季リーグ戦をどのように振り返りますか

 試合を振り返ってみて、結構打者が点取ってくれたんですよ。それ以上に点を取られて負けているので、できるだけ最小に抑えようということで。加えて、最低限これだけは取り組もう、という課題として、高さというのはすごく重視しました。甘く入って長打が出るというのがあったので。その2つですかね、特に。3点以内と高さというところは。

柳澤 先発も春は小島(和哉、スポ3=埼玉・浦和学院)と自分でしたけど、先発が入りからリズムをつくれている試合は、しっかり自分たちのペースで試合を運べて、野手陣も点を取ってくれて、というかたちにはなっていたので。それが自分たちのチームのスタイルだとは思いますが、負けている試合とか大量に点を取られている試合は、『守備からリズムをつくる』というようなことができていなかった。昨年自分は後ろ(抑え)ですけど、小藤(翼、スポ2=東京・日大三)とバッテリーとして出てもらって、春は岸本(朋也、スポ3=大阪・関大北陽)に代わって。(岸本とは)練習でコミュニケーションを取っていたりとかはありましたけど、試合でバッテリーを組んでみるということはそんなになかったので、お互いにコミュニケーションがしっかり取れてなかった上でのバッテリーでした。そういった意味ではしっかり意思疎通とかいうのはそこまでできてなかったのかな。そういうのもあって、細かいズレとかいうのはあったので、配球もそうですけど、意図として投げているボールが中に入るということはあったので、今はコミュニケーションというのは一番意識してやっている課題ではあります。秋(のリーグ戦が)始まるまでにはそれがしっかりできて、キャッチャーと意思疎通ができれば試合の運び方も変わってくるとは思っているので、それはリーグ戦までにはなんとかしたいな、というのはありますね。

――失点の中にも防げる点はあったという評価をされる方がいるのですが、それについて投手陣のどういうところがもったいなかったと感じましたか

 個人的には、ピッチャーや監督とも相談した中で、引っ張りすぎたなというのがあって。代えるべきところは代えなきゃいけなかったな、という点と、ピッチャーの練習の中で、さっき言ったようなところはまだ少しぼんやりしていたというのはありました。コースだったり高さだったり、どう攻めていくのかをバッテリー間(のコミュニケーション)だったり、というのはあったかと思います。自分を含めてではありますけど。

――課題として多く挙げられたものの中に、四死球、被本塁打の多さというのがありますが、それについてはどう思われますか

 四球と死球については「出しちゃ駄目」というのはむしろしていなくて、勝負していく中での四球や死球はむしろオッケーということで、そこはまずみんなで確認を取りました。その代わり、逃げての四球や、中途半端に抜けたような死球はなしにしようという線引きはしっかりして、オープン戦を戦っています。長打に関しては、ピッチャーの投げる球もそうなのですが、やはりキャッチャーとのこともすごく大きくて。そこに関してはOBの道端さん(俊輔、平28スポ卒=現明治安田生命)に色々アドバイスを頂いたりして、バッテリー間のコミュニケーションに加え、キャッチャーの要求やピッチャーの投げたい通りに投げるために、ピッチングの精度を高めるということはやってきました。

――早慶戦の1回戦や立大戦など、印象として絶対打たれてはいけないというところで打たれていたと思うのですが、甘く入っていたのは高さが問題であるとお考えですか

 全部が全部高さとかではないと思うんですけど、バッテリー間の意思疎通といいますか、同じインコースでも見せる球なのか、ボールでいいのか、ファウルを打たせたいのか、カウントを取りたいのか、というのを練習の中からやっていなかったですし。試合でもピッチャーはこう思っているけど、キャッチャーはこう思っている、などの意思疎通の違いで、「甘く入ってる」「いや、俺はインコースに投げたぞ」「キャッチャー的にはもっと違う球要求したのに」みたいに、いい関係ではなかったですね。

――柳澤選手は岸本選手とのコミュニケーションが不足したとのことですが、具体的にこの試合のこの場面が悔やまれる、というのは思い出せますか

柳澤 明大戦に関しては早い回で代えられて、というかたちにはなったんですけど、法大とか東大はまた違うかな。法大戦に関しては雨も降っていましたし、グラウンド状況も悪い中で、悪いなりにしっかり投げられました。自分のタイプとしては真っすぐで押すタイプですけど、変化球でしっかりストライクが取れて、コンビネーションで抑えて。東大戦の時は真っすぐで押せていた部分はあるんですけど、明大戦に関しては真っすぐの精度がそこまで上がらず変化球でカウントやストライクが取れなくて、結局真っすぐが甘く入ったところを痛打されていたので、そういった意味では自分のコントロール不足もそうですし、意図としてそこに投げる、というキャッチャーとのコミュニケーションが取れていなかったので、甘く入ったりとか、ボール球になったりとか、というのが重なって、失点につながるという形がありました。それは無くさないといけないな、ということでこの秋、夏のオープン戦期間中に取り組みながらやっています。自分の中ではそれが印象として残っているので、それをなくすためにオープン戦でしっかりやっているつもりです。

――開幕前の話になりますが、多くの投手がリーグ戦での勝利を経験しており、そういった視点では、早大は有利であったと思っていました。しかしふたを開けると、自信を持っていた投手陣で勝てなかったというのはどのようにお考えですか

 経験というよりもケガだったり、状態の良しあしという面での不安点は、はたから見ているよりはあったと思いますね。

――柳澤選手は自信を持ってリーグ戦に臨まれましたか

柳澤 始まる前までは調子は良かったのですが、ケガとかもありましたし、チーム状態的にピッチャー陣のケガが現時点でもまだ多いというのはあるので、おのおのがリーグ戦に、一番調子のいい状態に持っていくというのが根本的にできてないというのは、自分は見ていて一番つらく感じる部分はあるので。今までの経験がある選手が出ても調子がいまいちとか、ケガを持ちながら試合を投げてるというのがあって、自分がベストのコンディションでない中でやっていたとは思うので、それはピッチャー陣の一番の課題というか、春は駄目だったのかなというのはありますね。

――現状ですと、黒岩佑丞選手(スポ4=早稲田佐賀)、復帰した北濱竣介選手(人4=石川・金沢桜丘)、清水陸生選手(人4=宮崎大宮)など4年生の投手に故障者が多いことについて、不可抗力ではあると思うのですが、個人の調整以外にも「ここがもっとこうできたら」というのはありますか

柳澤 いやあ、それはないかな。実戦に関してはピッチングとかも脇が色々決めていますけど、それは個人個人と話して「ここいける」とかいうのはやっているので。ケガに関しては自分のケア不足や体調管理というのができてないからケガにつながっているのかなというのは、自分は見ていて感じます。一回ケガして復帰して、またケガというのは、個人個人が急いでやっているのかもしれないですけど、自分が一番分かっていて、自分たちの責任であるとは思うので、そういった意味ではもう少し自分の身体に意識的になっていろんなケアをやった方がいいのかな、という風には思います。

――柳澤選手は2年時肩をケガされた時期がありましたが

 ずっとケガしてるよね、リーグ戦前もリーグ戦中も。

柳澤 2年生の時はそうですね。

――ケアの部分でどのように気を遣われていますか

柳澤 治療に行くことであったりとか、睡眠や食事に関しては意識しています。一番自分の体を知っているのは自分なので、そういった意味でご飯の量や何を食べたらいいのか、というのは自分で考えながら、というのをケガした以降、3年生から現時点まで意識してやっています。今でもリーグ戦を途中で離脱することなく戦えているというのは、2年生にケガをして、ケアや食事や睡眠の3つを意識して、今も継続して取り組んでいる部分なので、それが今目に見えるかたちとして出てきてくれているのかなとよく感じているので。それを他の人たちにも意識してもらいたい、というか。やってくれればもっと変わるのかな、というのは感じますね。

 これかな、と思うのがあるとしたら、4年生になって、最後っていうのがあるじゃないですか。ちょっとの違和感で今までであればやっていなかったところを、あえてそれでも無理してやっているというのは実際あると思っていて。自分も早川(隆久、スポ1=千葉・木更津総合)とかが「肩おかしいんです」と言ったら、ちょっと抑えよう、ということにはするんですけど、例えば黒岩とか4年生のピッチャーが「違和感ある」って言っても、投げると言ったらそれは止めずに投げさせようと思っていて、投げさせてきたので。そういう面でちょっとずつ悪くなってきたというのはあるんじゃないかな、と思います。

――故障者が多いことやコンディションが上がらない中で、リーグ戦を戦わなくてはなりませんが、投手陣のやりくりは難しいのではありませんか

 そうですね。実際ケガとかは本人にしか分からないところがあるじゃないですか。まず本人ができる、できないというのもそうですし、やってみてできるかできないかというのも違うので、そこは結構難しくて。

――現有戦力で最善を模索していく、という感じでしょうか

 そうですね。でもこれから(開幕に)向かうにあたっては、オープン戦とかは結構状態を見て、間隔を空けてきたのですが、春よりは各選手しっかりつくれているのではないかな、と。リーグ戦を戦っていく中でどう変化していくのかは分からないんですけど。それに加えて、リーグ戦はベンチにピッチャーが7人入っているのですが、その6枚目、7枚目から、8枚目や10枚目あたりの選手が春よりは成長してきていて、もう誰が入っても遜色ないぐらいではあるので、そういう面での準備はできているな、とは思います。

――オープン戦を見ていますと、フレッシュリーグで活躍された1、2年生の投手を積極的に中継ぎや先発で使われていますが、そういう意図があってのことですか

 そうですね。どんどん使って、代えていこうというのはありました。

――お二人から見て、期待できる新戦力はいますか

 僕は今西(拓弥、スポ1=広島・広陵)ですかね。楽しみなのは今西。

柳澤 松本(皓、教2=東京・早実)は自分なりに考えてやって、それがだいぶ試合で結果は出てきているのかな、というのを自分は感じるので、松本はこれからいいピッチャーになるのでは、というのは感じますね。

――6月の頃からピッチャーの課題は失点を抑えるということと、高さに気をつけるということでした。失点を抑えるということに関して実戦では「もし3点を超えたら・・・」という話がありましたが

 紅白戦から、4点以上を取られたら、取られた点数に応じて走るという。この目的は、しっかり3点で抑えるんだというのと、それ以上取られても最小で抑えていくんだというのをあえてプレッシャーをかけてやるためにやりました。

――実際にされてみていかがでしたか

柳澤 自分は高校でもそういう試合をやっていたので、元々慣れているというか。意識的に高校の時やっていたっていうよりは、チーム自体が全員それを認識してやっていたので。今もまたやっていますけど、自分自身は高校の時からやっているっていうのもありますし、そこまで意識的に変わるとか、自分はそういうのはなかったですけど、それは一つの手として、ピッチャー全員が一つにまとまるというか、共有してそれに努めることができているので、いい方向には向かっているように感じますね。

――この春に投手陣の全体練習を増やされたようですが、以前の練習量に夏から戻されて、午前中の全体練習と、午後の自主練という構成になっていますよね。自主練の取り組みというのは、個人に任せているのですか

 はい。

――選手としてはどうですか

柳澤 自分は、全体で一日やるのはチームとしてやっていたので、文句とかはないですけど。自分の意見として、今やっている、午前中に短時間で集中して全体的な練習をして、午後は個人的な課題に取り組むっていうことに関しては、効率も絶対こっちの方がいいと思います。やるのは自分自身なので、そこで差がどんどん出てくれば、おのおのがやっている量や質にも関わってくることなので、それは競争させるという意味ではいいことですし。全体練習を否定するわけではないですけど、今やっている練習の仕方の方が効率もいいですし、個人の意識としても、課題もつぶせて、時間も有効に使えているのではないのかな、というのは感じますね。

――方向転換に至った経緯は何ですか

 元々春に何をやっていたかというと、時間を取って自主練習をやっていたんですよ。

――個人でやることを促していたと

 そういう感じですね。時間をとって、個人でここで取り組んで、という感じだったのですが、みんなそれをしっかり取り組んでいて。これだったら強制的にしなくても、もう任せてもいいんじゃないかな、ということで、やらせてみて。そうしたら実際に、みんなしっかり課題に取り組んでいますし、制限が無くなったことで外部に出ていったりもできているので、より有効になっているな、とは思ってます。そういう経緯です。

――投手練習は走り込みが多くなってくるのでしょうか

 メインではないですけど。流れで言うと、野手のやっている練習で何ができるのか、というのが場所で変わってくるんですけど、基本的には、ピッチャーとしてはキャッチボール、その後にピッチャーの守備練習をするんですよ。そして、その後にピッチングする人はピッチング、しない人はランも含めたトレーニング関係ですね。

――夏場だとランがつらいとは思いますが、量は落とさずにやっていますか

 ここ2週間でやっと落としてきています。それまではずっとやっていて。

――冬と比べるとどうですか

柳澤 全然変わらないですね。

多分強度としては変わらなかったと思います。

――他の大学は避暑地に行ってキャンプをしていますが、早大はここに残って練習していますよね。それについては

 環境はこっちの方が絶対いいと思うので、行く必要がわざわざないかな、という。暑いですけど、リーグ戦はそれ以上暑くなることはないと思うので、その状態でベストにしておけば。暑い中でしっかり投げられれば、涼しくなってからもっと良く投げられると思うので。

――そういう意味合いも多少あると

 わざわざ行く必要がないということで。どうなんですかね(笑)。日程的な問題も多分あると思うんですよ。オール早慶戦(熊本)、オール早慶戦(愛媛)、オールスター・・・。

――監督さんが変わってからですよね

 そうですね。

――走り込みの話から、今度は投げ込みについて伺いたいのですが。冬場は1カ月に1000球などと聞いたのですが、夏場は何かノルマを設けているのですか

 数に関しては、設けていません。そういうケガとかもあったので、各自で調整していくというふうに。

――投げ込みは大事だと思うのですが、柳澤選手の立場としては、故障のリスクを考えつつ、どのようにバランスの目安を付けていますか

柳澤 それに関しては、時期をちゃんと見て、その時期に合った投球数であったりとか、というのを考えながらピッチングをしないと、むやみやたらに投げ込んだりとか、球数を多くすればいいという話でもないので。冬場の投げ込みはそうですけど、フォームを固めるとか、投げる球種の精度を上げるという意味で、キャンプ中にしっかり投げ込みをして、その上で関西遠征にも行きましたし、リーグ戦までに間に合わせるようにやってはいました。その時期と自分の体のコンディションというのを、しっかり自分が分かった上でそれ(投げ込み)をやっていったほうが、より目に見えるかたちとして出てくると思うので。そういった意味では、投げ込みというのは大事ですけど、その中でも時期や自分の体の調子というのを自分で分かった上でやらないと、むやみにやりすぎると逆に悪い方向に行くと思います。そういうのを自分は意識しながら、投げ込みをしてました。

「与えられたポジションで全力を出してやっていくだけ」(柳澤)

「どこでも投げられる」と覚悟を見せた柳澤

――ここまでオープン戦を振り返ってみていかがですか

 勝ち負けではなくて、3点以内なのか、4点以上取られてるのか、というのを重視してきました。特に、オール早慶戦(熊本)で14点取られたじゃないですか。そこで、そこにいた時の社会人の方々にいろんなアドバイスをしてもらったんですよ。それは(負けたけど)逆に生きたかなと思います。道端さんだったり、佐竹さん(功年、平18人卒=現トヨタ自動車)という偉大な先輩方と話して。

――打たれはしましたが、具体的に言われたことは

 お二人とも、同じようなことだったんですけど。佐竹さんが特に言われていたのが、「丸(ボール)と丸(バットのへり)がぶつかることだから、それがたまたまヒットになることもあるし、正面を突いて併殺打になることもある。そこをコントロールしようとするのは無理だから、打たれても気にするな。その代わり、無駄な四球や、アウトコースであればどういう意図で投げるのかというのをちゃんと意思疎通して」ということ。そこに関しては道端さんにも(同様に)言ってもらって。そこがやはり今まで足りなかったな、というのは。

――柳澤選手は先輩から何かアドバイスを受けましたか

柳澤 佐竹さんが、点を取られてピッチャーが代わって、それでも打たれるというのは、ピッチャーのせいというよりは、キャッチャーのリードというのが一番問題にはなっている、ということをおっしゃってて。それは自分もキャッチャー経験しているので、納得する部分はありました。その意図したボールをどういうところに投げるのかというのも、キャッチャーとピッチャーの意思疎通がないと成立しないとは思っているので。それを聞いて、今やっている取り組みとか、キャッチャーに対して、自分の思っていることをコミュニケーションとして言う、というのは大事なことでもありますし。そういうことを春の時点まではやっていなかったというのは、チームとしてそれが問題だったという部分もあるとは思うので。キャッチャーのリードでピッチャーの意思とかいうものをコミュニケーションするということを、春にそれを分かってもっと取り組めていれば、状況も変わっていたと思うし。それを佐竹さんにオール早慶戦のときに聞けたというのは、ピッチャー陣もそうですし、キャッチャーにとってもいいアドバイスをもらえたかな、というのは感じますね。

――ある種、ここでこういう経験ができて良かったと捉えていると

 そうですね。リーグ戦はこれでやらないか、と言われると分からないですけど、でもそうやっては戦っていけるな、とは。

――オープン戦でローテーションを組む基準というのはあるのですか

 先発を5人つくったんですよ。大竹、小島、柳澤、早川、二山(陽平、商4=東京・早実)。でも二山はケガで投げられなくて、早川も状態的にロング(イニング)はきついから、ショートでいこうということで。一度JX-ENEOS戦で先発したんですけど、後はもう後ろで、ということで。まずは先発をそうやって決めて、後はリーグ戦に入ってくるかこないかという選手たちを。例えば10人ぐらいいたとしたら、その日は4人入れます、と。投げた4人のピッチャーは外して、次また投げてない2人と入ってなかった2人。と回していく感じで。

――登板間隔はどのぐらいを意識していましたか

 大体ですけど、先発は10日ぐらいですね。リリーフ系のピッチャーは登板間隔でいうと2試合に1回ぐらいで回ってきているんじゃないかと思います。でも先発がいいピッチングをしたら(先発のイニングが)長くなるし、それが悪ければ短くなるので、変わってくるんですけど。

――投手本人が「この日に投げたい」というようなことがあれば、希望は通すのですか

 はい。大体10日前ぐらいに、次はどのへんでいこうかというのを話して、肩の状態や相手の強さなどを考えて、その週のピッチャーを考えていますね。

――バッテリー間の話で、遠征から帰ってきてから変わった部分は大きかったですか

 行動としては実際にブルペンで「アバウトでいいからストライク取ってくれ」であったり、「ここはボールでいいからもっと厳しく投げていこう」であったり。そのボールがどうであったかで「ナイスボール」、「いやもっと今の低く」とコミュニケーションを取っていくようになったというのは変わったなと思います。柳澤はキャッチャー出身なので、ピッチャー側から見たキャッチャーみたいな面で、「もっとこうやって伝えるといいよ」というのを柳澤がしてくれたので、そういう意味ではキャッチャーも分かりやすかったのではないかなと。

――柳澤選手はキャッチャー経験者として「もっとこうしてくれ」というのは具体的にどう言われましたか

柳澤 構え方もそうですし、構える位置もそうですし。キャッチャーが意図して投げてほしいというのをキャッチャーがちゃんと表現してくれれば、ピッチャーはよりそこに投げやすくなると思いますし。キャッチャーも的じゃないので、構えてるだけではキャッチャーの役割を果たせていないと思います。そういった意味では、脇に「小藤を育ててくれ」と言われているので、ブルペンに入っても意識的に小藤を変えさせるよう自分は言ってるんですけど。小藤もそれは真剣に受け止めて、やるべきことはしっかり取り組んでくれると思うし、コミュニケーションを取るという意味でも、投げてる途中でも自分が「ここはどうなんだ」というのを言えば返答もちゃんと返ってくるので。練習のときから試合の実演を意識したピッチング練習というのは、前よりもはるかにできているとは思います。そういった意味ではいい練習になってきているのかな、というのは感じますね。

――オープン戦で各投手の仕上がりというのは

 大竹は長打がポイントですかね。オール早慶戦も、前半は良かったけど、後半に悪くなって長打が出始めたじゃないですか。やはり浮いてきた球というのを持っていかれるので、しっかりゲームをつくるためにも低めに集められるかというのがカギだと思います。

――柳澤選手はここまでいかがですか

柳澤 調子は悪くはないので。自分のこのいい調子をリーグ戦までキープして、自分のピッチングさえできれば、抑えられるとは思っています。(オープン戦の)残りの4試合もそうですし、リーグ戦までに調整して、もっといい状態にしていきたいなというのはあります。

 小島だったら、体の状態的にはすごく良くなってきているので。あとは思っていることと実際のボールがどれだけミスマッチなくキャッチャーのミットに届くかというところを、後の期間で調整して、それが実際リーグ戦、あとは次のオープン戦でどれだけできるか、というところですね。早川は肩がちょっと心配なんですけど、リーグ戦はたぶん大丈夫ではないのかな、というところです。(春の)リーグ戦の後半、早慶戦ぐらいから打たれたりというのが目立ちましたが、本人もJX-ENEOSとの試合だったり、そういう意味での状態は良くなってきていますね。

――秋のキーマンは

 4年生ですよね。大竹と柳澤と。

――それを聞いて柳澤選手はいかがですか

柳澤 その言葉通りだと思います。自分は、大竹が2年生の時のようなピッチングができれば負けるチームではないと思っているので。大竹の復活というのが、一番のカギになるのかなと思います。仮にそれが間に合わなくても、自分はどこでも投げられるので、そういった意味では春に先発として投げた経験というのは大きいですし、それがこの秋に生かせられる部分ではあるので。自分は任されたところをしっかりその(ベストな)状態で持っていって、そこで投げるというのが一番大事だとは思っています。自分含め、チーム全体としてそれができれば、負けることはないんじゃないかというのは感じますね。

――この夏だけで見てみると、春に比べるとリリーフ登板が多くなってきていますが、ご自身としてはやはり先発へのこだわりは強いものがあるのでしょうか

柳澤 いや、強いというか。自分の投球スタイルに関しては、ストレートで押すとか、力でねじ伏せにいくっていうスタイルではあるので、そういった意味では中継ぎとか抑えというのは合ってるとは思っています。それが社会人やプロに行ったときにどう判断されるのかというのは分からないですけど。自分自身の中では、抑えや中継ぎというのは合ってるとは思っていますが、先発でも長いイニングを投げられないわけではないので。それは試合をつくる、という意味では変化球のコンビネーションとか、自分の思ってる理想の配球というのを考えてやりながらピッチングできれば、先発としてできるとは思いますし。今は春よりも先発にこだわっているというのはないですけど、それは与えられたポジションで全力を出してやっていくだけなので。

――春は先発にこだわっていらっしゃったと

柳澤 それは、まあ。個人の実力を見せたいというのがあったので。個人の意思としてそうしたかった、というだけなので。秋に関しては、プロに行けるかどうかは分からないですけど、そのアピールとしては最後になるとは思うので。そこで、与えられたポジションで自分のベストを投げれば、スカウトの人たちは見てくれてると思いますし。それで結果を出せば、おのずとチームの勝ちにつながると思うので。まずチームが勝つという意味で、自分が与えられた場所で自分のベストを出せればいいな、と。

――「どこでも投げられる」という話で、夏の試合を見ていると、先発時よりも球速が上がっています。終盤に150キロの速球でこられると、打者も困るのでは。速球は自分の強みだと感じられる部分があるのですか

柳澤 出しにいって150キロが出ればいいですね。ここ最近、コンスタントに(球速を)出せるようにはなってきているので。自分のフォームとか、体に合った投げ方ができていうというのが、150キロという数字に表れているとは思います。それは自分の強みでもありますし。その中から緩急を使ってピッチングを。キャッチャーが出すサイン通り、そこに投げられるコントロールがあれば打たれないとは思うので。そこは自分の一つの武器というか。

4季ぶりの優勝へ

――良くも悪くも投手次第なところがあると思います。チームの命運を握っているということについては

 はい。オープン戦を戦っていく中でポイントを分かるようにやったので。あとは代えるところは代えて。

――春は投手陣が振るわなかったと思うのですが、秋はどのような活躍を期待しますか

 一人一人の打者を抑えにいってくれれば。たとえ先発が7回など長いイニングを投げなくてもいいので、そしたらつないで、今投げている打者を打ち取る、ということをやっていってほしいです。

――柳澤選手はどの場所でも投げるということで。秋はどのような活躍を期しますか

柳澤 最後の年ですし、一番自分が投げていて悔いがないように試合では投げたいです。その中でチームを勝たせるために、与えられたポジションで自分がベストで投げられるようにリーグ戦までにはしたいですし、周りのピッチャー陣が調子悪い中でも自分は状態をキープできていれば負けないと自分では思っています。あと2週間ぐらいしかないですけど、それをしっかりと突き詰めて、秋にその状態で挑めればいいかなと思います。

――開幕カードは特に意識があると思いますが、明大の印象や対策などは

 明大というチームはどちらかというと長打が多いというよりは、しっかり当てて転がしてくる、そして足も絡めてくるところだと思うので。まずは各投手が自分のピッチングをして、1つの四球に1つのヒット、エンドランが決まってもそれを気にするのではなく、その場でしっかり抑えていく、というところだと思いますね。

――柳澤選手は春の明大戦で負けが付きましたが、秋にまた投げる際にはどのようにやり返そうと思っていますか

柳澤 自分自身は、パーフェクトに抑えることができれば一番いいとは思います。明大というチーム自体の打線や、選手一人一人というのは、ホームランを打つバッターとか、長打を打てるバッターというよりは打線が一つの線になって攻撃してくる、というのが組織として確立されているチームだと思うので。そこで明大の野球をさせないという意味でも、自分が三振を取りにいくところは三振を取ったりとか。明大の野球をさせないというところが、一番勝ちにつながるポイントになるかなと。そこを意識しながらやっていこうと思います。

――お二人にとっては最後の秋となりますが、どのような心境ですか

 ここまで来てると、出し切るだけですね。

柳澤 自分はケガで2年生のときとか、離脱したり、ふがいないピッチングをしたりした部分などが多々あるので。最後は一番いい質の球を見せられたらいいかなと思います。

――4季ぶりの優勝への思いは強いと思います。リーグ優勝への思いをそれぞれお願いします

 優勝を取りたい、というただその思いだけですね。ただ、それも一つの勝利、一つのアウトから成ると思うので、一つ一つやっていこうと思います。

柳澤 ここまで野球ができているのも、両親や周りの人に支えられているからなので、感謝の気持ちや周りに恩返しをするという意味でも、優勝というのが一番恩返しになるかな、と思っています。その感謝の気持ちや恩返ししたい気持ちを含めて、優勝できれば一番。4年生の最後でもありますし、一番いい結果になると思うので。優勝旗が取れるように。チーム全体でもそうですし、ピッチャー陣の中でも一つになって勝ちにいきたいなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 宇根加菜葉、郡司幸耀、廣田妃蘭)

柳澤は支えてくれる方々への『恩返し』。脇は「目の前の一つ一つに集中してほしい」という投手陣への期待として『一球入魂』

◆柳澤一輝(やなぎさわ・かずき)(※写真左)

1995(平7)年8月3日生まれ。181センチ、93キロ。広島・広陵高出身。スポーツ科学部4年。投手。右投右打。取材時に着ていたTシャツは柳澤選手が高3春のセンバツ出場時に金本知憲氏(阪神タイガース監督)に記念として作っていただいたもの。偉大な先輩の存在や夏の甲子園で準優勝した後輩の活躍を受けて、「本当にこんな学校で野球やってたんですかね(笑)」。自信に満ちあふれたコメントが多い柳澤選手も、このときばかりはタジタジでした。

◆脇健太朗(わき・けんたろう)(※写真右)

1995(平7)年4月21日生まれ。187センチ、87キロ。早稲田佐賀高出身。社会科学部4年。投手コーチ。右投右打。母校の早稲田佐賀高が夏の甲子園に出場し、「初出場だったので、すごくうれしかったです」と顔をほころばせた脇投手コーチ。幸運なことに、母校の中継は4試合目。自分たちの試合が終わった後リアルタイムで見れたそうで、とてもうれしそうでした。

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