漕艇部

2017.04.15

【連載】早慶レガッタ直前特集『起死回生』 【最終回】内田大介監督

 早慶レガッタ直前特集。最終回に登場するのはチームを率いる内田大介監督(昭54教卒=長野・岡谷南)だ。一昨年の全日本大学選手権(インカレ)における輝かしい成績に代表されるように、内田監督は就任以来、さまざまなチーム改革を行い、成果をあげてきた。しかし、その中でいまだ手にしていないのが早慶レガッタでの完全優勝だ。5連敗中の対校エイトをはじめ、各艇をいかにして勝利に導くのか、その手腕に注目が集まる。

※この取材は3月2日に行われたものです。

「いいスタートを切って夏につなげたい」

1問ずつ丁寧に答える内田監督

――ことしの早慶戦の位置づけはどのようにお考えですか

内田 去年の4年生は力量から言えば高い学年だったし、下級生も含めて去年のレギュラークラスは非常にパフォーマンスが高かったと思います。そういう意味で、早慶戦からいい流れをつくって、全日本大学選手権(インカレ)2連覇を狙っていきたかったんだけど、想定外のコンディションで早慶戦が不本意な成績でした。それだけじゃないけど、チーム全体も焦りというか、最初の目標がクリアできなかったということで、追い込まれていきました。それは私も同様だったんですけど、それがやるべきことを全て果たせなかった要因かなと。気持ちばっかりはやっていって、「こんなはずじゃない」というところが、緻密に積み上げられなかったと思います。その結果としてやはり、インカレ、全日本選手権(全日本)も、力量がありながら実力が十分発揮できなかったというところがありますね。

――それを踏まえてことしはいい流れをつくりたいと

内田 そうですね。(対校エイトの)5連敗ということもあり、それはもちろん止めなきゃいけないんですけど、ことし一年の流れの中では、5連敗だけじゃなくて、いいスタートを切って夏につなげたいということが、いま一番感じていることですね。

――いまの時期の練習の狙いは

内田 去年の全日本が終わってから、クロアチアで国際交流に行ったんですね。そこで現地交流の一環として、オリンピックのメダリストとナショナルコーチからご指導を受けました。その中で去年上手くいかなかったことが見えてきてはいるかなというところですね。この時期ですと、例年はロングディスタンスのトレーニングをやるわけなんですけど、ことしも同様にしています。例年と若干違うのは、クロアチアで得た成果をできるだけ技術改善に生かそうとして、丁寧に反復しているところが多いので、ややペースからいくとハイピッチで漕ぐところにはまだ移行できていないということがあります。ただそれは低いレートのロングディスタンスで詰めれば、レースレートでやってもそんなにぶれないだろうと思いますね。

――クルーはすでに確定していますか

内田 いや、まだ確定はしていません。(男子は)一応対校とセカンドの仮クルーはつくってありますが、ことしサードクラスまで(部員が)いるんですけど、非常にボトムアップできていますので、誰がどこに乗ってもおかしくないくらいの僅差になっていますので、これからもまだ入れ替えがあると思います。昨年までは同じシステムで仮の対校とセカンドはつくっていたんだけども、結局実力の差は顕著で、仮とつけてもほぼほぼ変わらないという集団でした。ことしの場合は努力しなければ自分のポジションが変わっていくかもしれないなという競い合いができるところまできているので、それを原動力としながらこれからのクルーをつくっていきたいと思います。

――昨年と比べてことしの新チームはいかがですか

内田 基礎漕力からいくと、若干去年より落ちてはいるんですけど、技術的には上がってきていると思います。力の足りない部分をどうやって技術でカバーしていくか、というのは今後の課題ではありますね。

「ボトムアップが著しい」

――各クルーの強みは

内田 男子の対校に関しては、ユニホーミティというか、ブレードワークが、例年になく整いつつはあると思いますね。ただやっぱりパワーが足りない。そこはこれからスピード系のトレーニングに入ってどうなるかというところですね。第二エイトについては、先程言ったようにボトムアップしていて、対校エイトに匹敵するくらいの漕力を得ているので、セカンドのレベルは間違いなく去年よりは上がっていると思います。そこでこれから入れ替え戦があるかと思います。女子エイトに関しては、ちょっとケガなんかがあっていまぎりぎりで組んでいるのにプラスして、U23の方へ米川志保(スポ3=愛知・旭丘)が引っ張られていくので、今回は人数が厳しいんですけど、米川をナショナルチームに出して、それ以外のメンバーで組む予定ではいます。女子は人数が若干少ないんですけど、力量的には例年よりはるかに高いと思います。

――内田達大主将(スポ4=山梨・吉田)をストロークサイドに転向させたことにより空いたバウサイドには対校エイト初参戦の選手が抜てきされました

内田 何人かの選手を競争させて、彼らが勝ち抜いたということなんですけど、さっきも言ったようにセカンドクルー以下が非常に育ってきているので、特にバウサイドに関しては今後も漕力の評価が必要かなという風には感じていますね。

――副将の東(駿佑、政経4=東京・早大学院)選手と石田(良知、スポ4=滋賀・彦根東)選手に期待する役割は

内田 副将というのはエイトだけじゃなくチーム全体の副将ですから、ボトムアップしてきている下級生を引っ張り上げてもらいたいと思います。それは技術とか体力だけじゃなくて、特にメンタル的に上昇志向を育ててほしいということを東と石田には期待したいですね。

――第二エイトには、新2年生が多く名乗りを上げていますが、それについてはいかがですか

内田 新2年生のボトムアップが著しいということですね。いいことだと思います。部全体で競争意識を持って競り合っていくということをずっと目指してきたので、チーム全体がそういう雰囲気にはなっているかなと。その結果として新2年生がセカンドクルーに乗っているというのはいいことだと思います。

――昨年は初めての早慶戦出場でも、早大学院出身の選手のように隅田川の経験がある選手がいましたが、ことしが全くの初経験という選手もいます。それについてはいかがですか

内田 そこも不安ではあるんですけども、第二エイトは午前中の時間帯ではあるので、そんなに大荒れの中でという確率は低いので、カーブや水面での技術をしっかり出してもらいたいなと思いますね。

――対校エイトも第二エイトも、昨年の大会後から評価を挙げた選手が多いように思われますが

内田 そうですね。部員数が増えて層が厚くなっていることにプラスして、右肩上がりに成長してることが要因だと思います。

――女子エイトについては米川選手が不在の中でどのように力を上げていこうとお考えですか

内田 チームの総合力としては米川を抜いても例年以上のものがあると思います。プラス米川となればもうワンランク上がるんでしょうけども、仮に米川が日本代表チームに出ていったとしても、チーム全体としては例年を上回っていると思います。

――ことしのケイオーの印象いかがですかは

内田 ケイオーはニュージーランドの長期の合宿にもいらっしゃったようだし、昨年のインカレで好成績を残したメンバーがかなり残っていますから、侮れないし非常にいいクルーだと思います。もともとのベースがいいクルーに加えて、ニュージーランドでの合宿を張ってきているということで、相当高いレベルかなと感じます。

――ケイオーの方も部員数が増え、底上げという面でレベルが高くなっているように感じますがそれについては

内田 年末に行われたエルゴ大会の結果があるんです。ワセダが出たカテゴリーとケイオーが出たカテゴリーは、使っている機械が違うので単純に比較はできないんですけども、基礎漕力からすると互角くらいじゃないですかね。ただそこから水上での技術の差が出てくるのですが、そういう面では非常に警戒していますね。

――男子部の3750メートルというレースの距離は、ワセダにとってはプラスになりますか

内田 長い距離を漕ぐということ自体は悪いことじゃないと思いますね。特にこの春先の長距離のレースをやるということは非常にいいことだと思います。年間のトレーニングの流れを見ても、インカレや全日本に向けては、長距離をやることは決して無駄ではないと思います。ただ、隅田川がよくテムズ川(※1)と比較されるのですが、テムズ川はオックスブリッジのレースの時間帯は完全に貸し切り状態で、他の船が入れないようにしてレースの状態を保っているんですね。なんですけど、隅田川はレースの時間帯に他の船舶を止められず、彼らの波が常に川の中に残っています。なおかつ、護岸がコンクリートで固められていて波が消えない。かつ4月のあの時期というのは気圧配置が不安定でラフになりやすいので、できることならば両校の選手が実力を出し切れるように、長い距離の中でもできるだけいいコンディションの中でレースをできる距離でやってもらいたいなというのが私の本心ですね。ですから、3750メートルについては色々議論がありますが、距離のことはともかく、両校の選手が思う存分漕げるコンディションでやることが大事だと思いますね。

――各クルーのレースのキーマンは

内田 対校だと、やっぱりミドルフォア(3番から6番の選手)ですかね。第二エイトについては、井踏(直隆、文構3=東京・早大学院)と有田(雄太郎、法4=東京・早大学院)のストロークペアですね。井踏はストロークとしての技量を上げてきているので、彼のリズムメークに期待するところは大きいです。第二エイトは下級生が多いので、井踏と有田に引っ張っていって欲しいです。女子については、まんべんなく実力がある選手たちなので、誰にということはないのですが、強いて言えばストロークの田口がスイープの選手としては実績を持っているので、田口の長いしなやかなストローク、プラス隅田川でしっかり水をとらえられるキャッチがリズムをつくってくれれば、いいクルーになると思います。

――井踏選手についてはストロークで起用することが多いですが、将来的に対校のストロークで起用するということもお考えですか

内田 そうですね、それも一つの選択肢にはなっていますね。なかなかインカレで優勝したときのような長田(敦元主将、平28スポ卒=現日本紙パルプ商事)のような逸材はいないので、ストロークの経験を積ませて育てていくという意味では、井踏は育てたい選手の一人ですね。

――過去2年、不測の事態で対校エイトは優勝を逃しています。それを踏まえてことしはいかがですか

内田 決してケイオーが実力的に侮れない状況なので、ことしは本当に分からない状況なので、チャレンジャーとしていかなければならないと思います。去年のインカレの順位はケイオーの方が良いわけで、そういう面では全く侮れない。本当に挑戦するのみという感じですね。

――完全優勝へのポイントは

内田 やっぱり対校エイトでしょうね。実力通り、あるいはいまの劣勢を跳ね返せるような努力とスピードを勝ち取ってもらいたいなと思っていますね。

――最後に早慶戦への意気込みをひとことお願いします

内田 『勝つ』ということですね。『勝ちたい』や『勝たなければいけない』という受動的な気持ちではなくて、本当に『勝つ』、『勝ちに行く』ということです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 喜田村廉人)

(※1)オックスフォード大学とケンブリッジ大学の競漕大会(The Boat Race)の会場となる川

◆内田大介(うちだ・だいすけ)

1956年(昭31)6月19日生まれ。長野・岡谷南高出身。早稲田大学教育学部卒。内田監督の就任以来、チームカラーは大きく変わり、マネジャーやトレーナーの育成、付属校との結びつきの強化など、チームスローガンの『One WASEDA』を着実に遂行しています。今季はさらなる成果が出せるか、期待が集まっています!