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2017.03.15

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第53回 橋本尚記/アーチェリー

選手を支える

 スポーツに応援はつきものだ。選手を鼓舞し、勇気づけ、盛り上げる。見る者が一体となって選手に声援を送る姿は、試合そのものとは違った魅力を持つ。無論、応援をするのは観客だけではない。試合に出場していない選手やスタッフ陣も、勝利を願い、思い思いの声をかける。アーチェリー部主将、橋本尚記(政経=東京・早大学院)は応援という立場からチームを支えた。「あくまで選手が一番、応援はサポート」。常に選手を見守り、支え続けた男の主将像に迫る。

 高校3年間をアーチェリー部で過ごした橋本。付属の高校に通っていたため、かつての先輩から入部の勧誘を受けた。いざ足を踏み込むと、そこにいたのは高校で日本一に輝くなど、素晴らしい戦績を持つ実力者たちばかり。しかし、「好きなアーチェリーを楽しくできればそれでよかった」と、大学でもアーチェリーを続けることを決めた。そんな橋本に転機が訪れたのは、2年の秋だった。橋本ら2年生も幹部を考える時期に差し掛かったが、当時主力として試合に出場していたのは彼ら以外の代がほとんど。学年全体でもっと実力をつけなければならないという危機感を感じていた。そんな中、ある先輩から「主将をやってみたらどうか」と声をかけられる。選手として試合に出場することが滅多になく、過去にリーダーの役割を務めた経験もなかった橋本は強い抵抗を覚えた。しかし「自分にもなにかできることがあるかもしれない」と、主将の役を引き受けた。

橋本は常に全力でチームを盛り上げた

 迎えた主将としての1年。前年の全日本学生王座決定戦(王座)出場メンバーは4人中3人が卒業し、一からチームをつくりあげなければならなかったが、橋本は「逆にどうすれば点数が出るのかを見つめ直すいい機会」と捉えた。そこで手をつけたのが、応援の改革だった。活気あふれる応援は、大学アーチェリーの特徴の一つである。出場選手の後ろで、それ以外の部員が歌を歌ったり声をかけたりしてチームを盛り上げる。それまでの早大のかたちは応援が率先して大きな声を出し、全員で盛り上がった雰囲気をつくる方針があった。しかし、橋本は考えた。「はたしてそれが本当に一番いいかたちなのだろうか」。周りが盛り上がってくれることでペースをつかむ選手もいれば、静かな状況で淡々と的を狙いたい選手もいる。また、先輩からの心強い言葉を望む選手もいれば、先輩の前では委縮してしまう選手もいる。最も大切なことは、選手にとってやりやすい環境をつくることではないだろうか――。

 そう思った橋本は、各選手の後ろにつける応援の部員に工夫を凝らし、選手がのびのびとプレーできるように心掛けた。改革は徐々に実を結ぶ。練習に比べて試合での得点が伸びないという課題が克服され、ただ盛り上がるだけではない、新たな一体感を生み出した。こうして迎えた集大成となる王座。早大は惜しくも2位という結果に終わったが、35年ぶりの好成績を残した。「入部したときは出場すらできなかった大会。本当にすごいことだと思う。」橋本は見守り続けたチームの姿を振り返り、満足そうにこう語った。

 最後に主将を務めてみてどうだったかと問うと、「自分は競技での結果が出せなかった。周りに支えられてばかりで、理想の主将とはかけ離れていた」という言葉が返ってきた。しかし、部員が橋本を支えていたように、橋本もまた応援というかたちで部員を支えていたことに違いない。「後輩たちにはまだ見ぬ優勝を勝ち取ってほしい」。これからはOBという立場でアーチェリー部を応援し続ける。

(記事 吉田優、写真 山下夢未)

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