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2017.03.13

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第51回 金子将之/射撃

静のスポーツに魅せられて

 1年時、初めて出場した大会で金子将之(創理=東京・早実)は衝撃を受けた。練習と全く同じようにいかない。いかに同じことを安定して繰り返すかが試される、射撃というスポーツの難しさを思い知った。この時のなんとも言えぬ悔しさが、金子の4年間を変えることとなる。

 全国大会に出られるような競技をしたいと、高校まで続けてきたサッカーを辞め、射撃の道へ進んだ。しかし、それほど甘い世界ではなかった。銃を持つ資格がなくても使用できるビームライフルを用いた最初の大会では、練習通りのパフォーマンスを発揮できなかった。それでも2年時になると、早々にレギュラー入りを果たし、関東学生新人大会では優勝を勝ち取る。自身も「あまり苦労することなく良い結果が出た」と振り返る1年だった。この原動力は、最初の大会で感じた練習と本番のギャップにある。金子は、「射撃という個人競技は、本番と全く同じシチュエーションで練習することが他のスポーツより容易」と考えた。例えば、これまで打ち込んでいたサッカーは、試合に出場する11人と相手の11人がそろわなければ、本番と全く同じ状況にはならなかったのに対し、射撃は、自分との闘いである分、いくらでも本番を100%想定して練習できるということだ。

スポーツ推薦入学の長島遥(スポ=埼玉・栄北)(右)と金子(中央)。谷川諒(スポ=早稲田渋谷シンガポール)(左)とは身近な存在で支え合った。

 そうして自分のスタイルを確立しつつ、副将として迎えた3年。なかなか練習の成果が出なかった。自身も「初めて苦労した年」と振り返る。主将となった4年時も、全日本学生選手権で前年より良い成績を残すという最大の目標を達成できなかった。「主将として、競技力でも生活面でも引っ張らなければと考えていたので、それで力が入り過ぎちゃったのかな」と苦笑しながら話す。そんな状態で支えになったのは、チームメイトの存在だった。特に、スポーツ推薦で入学した選手からアドバイスをもらうことで、自身のスキルアップにつなげた。さらに、大学から射撃を始め、主将を務める他大学の親友とは、お互いの苦労を分かち合ったり、たわいない会話をすることで、精神的な支えにもなった。そして、引退試合となる早慶戦では、チームとして総合優勝を果たし、主将としての肩の荷を下ろした。射撃という自分の集中力との戦いである個人競技においてでさえも、周りには支えてくれる存在がある。「力を抜くことが力になるんです」。理系のスポーツマンは、どこかあどけない口調でそう口にした。

 射撃という個人競技は、孤独で自分との闘いという面が多い。しかし、結局、一人だけでは成功できないスポーツなのかもしれない。金子は、卒業後も競技を続ける。静のスポーツに魅せられて、これからも自分と闘い、周りに支えられ前に進んでいく。

(記事 吉岡篤史、写真 大庭開)

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