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2017.03.12

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第50回 武田健 /ウエイトリフティング

『悔しさ』と『感謝』を力に

 2016年11月に創部から60年を迎えた早大ウエイトリフティング部。長い歴史と伝統は時に重圧を生み出す。そのプレッシャーをはねのけ、誰よりも真摯に競技に向かった男がいる。その名は主将・武田健(スポ=宮城・石巻)だ。

 武田がウエイトリフティングと出会ったのは高校1年生の時。小学生、中学生と野球を続けてきたが、何か新しいことを始めたいと考えていた。当初は別の競技を考えていたのだが、顧問の人柄に引かれ、試合を見に行ったことがきっかけで魅力に目覚める。徐々に頭角を現していった武田だが、2011年に地元の石巻で被災。練習できない日が続いた。1カ月後に練習が再開するが十分な環境は整わず、思うように練習ができなかった。そのような状況にも負けず、努力を続けた武田は全国で知られる選手へと成長した。

感謝の思いを力に変えてバーベルを上げる武田

 その後、熱心な誘いに心を動かされた武田はワセダでウエイトリフティングを続けることを決意。着実に実力を付けていき、1年生で挑んだ全日本学生新人選手権105キロ級では2位に入賞した。一方でチームは伸び悩んだ。特に1部に残留がかかった正念場、全日本大学対抗選手権は武田にとって忘れられない試合となった。ケ
ガをしていた先輩の吉田智貴(平27スポ卒=香川中央)に代わって武田が出場予定だったが、直前で変更。吉田が出場することになった。「1年生ということもあって、まだ信頼されてないと感じた」という。今になってみればその選択は間違ってなかったと思っているが、当時の悔しさは計り知れなかった。

 その悔しさをバネにして練習に励んだ武田。ストイックに練習を続けた結果、チームの要となり、主将に任命されるまで成長した。目指したリーダー像は周りを支え、押し上げていく主将。そのためにも誰よりも声を出し、チームの意識を高めてきた。実際、自分のことよりも他人のことを考えるようになり、チーム全体の成長が自身の目標となった。

 4年間の全試合を顧みて「完全に満足できたものはなかった」と武田は言う。どの試合もどこかで悔しい思いがあった。そんな武田が唯一納得している試合。それは大学生活最後の試合である全日本大学対抗選手権だ。「報われたと思う」と振り返るこの大会は個人、男子団体共に5位という結果を収めた。試合後チームの方向を向き、深くお辞儀をすることで共に歩んできた仲間への感謝の気持ちを伝えた。チームのことを第一に考え、チームを支えてきた心優しき主将は原点である石巻で新しいステージに踏み出す。武田の思いは後輩たちに引き継がれていくだろう。

(記事 大久保美佳、写真 田原遼)