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2017.02.22

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第25回 末廣哲彦/空手

離れられないもの

 高校では日本一を経験し、大学でも主将として早大空手部を12年ぶりの全国ベスト8に導いた末廣哲彦(スポ=東京・世田谷学園)にとって空手とは「ほろ苦くて、なんとなく離れられないもの」だ。5歳から空手を始め、「やめたい、いつやめようか」。そう何度も思った空手人生だった。しかし、早大での四年間を終えた今、末廣は胸を張って空手が好きだと言える。

 親に連れられて見学に行った道場で空手と出会った。幼いながらもかっこいい姿に憧れたのを覚えている。末廣には学年が一つ下の弟・祥彦(スポ3=東京・世田谷学園)がいる。弟も兄に続いて空手を始めると、徐々に頭角を現していった。弟にはセンスがあった。いつしか弟の方が良い成績を挙げるようになり、大会の決勝で弟に負けたこともある。「兄のくせに」。周りの人が何となしに言う言葉は末廣に重くのしかかった。末廣兄弟は大学まで全く同じ道を歩んでいる。空手をしている末廣のそばにはいつも強い弟の姿があった。「なんで弟にできて自分にはできないのか」。弟を認め、自分は自分であると整理がつくまでは時間を要した。

 早大に入学するとこれまでと大きく異なる環境に戸惑いを覚えた。早大空手部では高校の時のような厳しい上下関係やマネジメントはなく、自主性が求められる。慣れない環境での練習、試合に出ても全然勝てない。悪循環から抜け出せなくなっていた。2年生になると試合に出ると圧勝して帰ってくる1年生を見て焦りも加わった。「1、2年生は空手に打ち込めなかった時期だった」と末廣は当時を振り返る。

 そんな末廣に転機が訪れたのは3年生の夏。常にチームのことを考えて動いていた当時の主将に感化されて、積極的に後輩を指導するようになった。昔から人に空手を教えるのが好きで「選手より指導者にむいているんじゃないか」と言われることも多かった末廣。副将として自覚が芽生え、練習への関わり方が変わったことでやっと歯車がかみ合い始めた。

主将としての一年間は要所での勝負強さが際立った

 そして主将となって迎えた最後のシーズン。高校時代に日本一に輝いた実績を持つ末廣は、「人生で一番興奮した」という日本一になった瞬間の喜びを部員全員に味合わせてあげたくて日本一を目標に掲げた。4月の東京六大学大会で優勝し、いい滑り出しができたことで高いモチベーションを一年間保つことができた。厳しいことも言いやすい雰囲気のもと、みんながチームのために動いてくれた。それがかたちとなって一年の集大成となったのが全日本大学選手権。この大会で早大空手部は12年ぶりのベスト8に輝いた。日本一を掲げていただけに悔いは残るが、末廣にとって自身が率いたチームは「自慢のチーム」だ。「早大で主将ができて本当に幸せだった。今では胸を張って空手が好きだと言える」。

 卒業後は働きながら地元の道場に通うつもりだ。「今更やめられないですしね、やっと楽しくなってきましたから」。末廣はこれからも空手をやめない。

(記事 萩原大勝、写真 郡司幸耀)

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