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2017.02.13

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第12回 前川晋作/相撲

努力の4年間、迎えた結びの一番

 「相撲をしていない生活は、不思議な感じです。」前川晋作(社=東京・早実)はそう語る。これまで、常に相撲を第一に考えてきた証だ。小柄な体格ながら、磨き上げた技で相手を翻弄し、主将としてもチームを牽引した前川が、自らの相撲人生の結びの一番に臨んだ。

 大相撲を見るのが好きで、小学2年から相撲を始めた前川。高校1年からは、早くも早大相撲部の稽古に参加していた。大学に入学し、正式に相撲部に入部したが、当時の部員は、4人と1人のマネージャーのみ。5人で行われる団体戦では、同好会から助っ人を呼ばざるを得ない状況だった。団体戦では全く結果を出せず、インカレでも1回戦敗退。「これほどの屈辱はない。自分が強くならなければ」そう思っていたという。しかし、2年になると、5人もの新入生が入部し、急激に部の体制が変化する。高校相撲での実績を持つ後輩たちに押され、前川は試合のメンバーから外れるようになった。2年、3年次はレギュラーには入れず、メンバー外からチームを支える生活が続いた。

主将としてチームを支えた前川

 「自分は弱い。」その思いを抱えながらも、3年生の11月、主将に就くことが決まる。他の部で、競技の実績はなくても主将を務め、チームをサポートする例は見ていたが、前川はそうなりたくはなかった。団体戦のメンバーとして活躍したい。まわしを締め、試合に出るメンバーとして、試合前の円陣の中心にいたい。その思いで稽古に励んだ。4年生になると再び団体戦のメンバーに選ばれるようになっていく。主将としてチームをまとめ、リーグ戦1部残留や、インカレでのBクラス優勝という快進撃につなげた。「誰かが負けても誰かが補う」という、目指していたチーム像が実現してきたと、前川は言う。

 「誰よりも努力した自信はある。」積み重ねた努力が、決して大きくはない身体を支える自信の糧にもなった。迎えた集大成の舞台、インカレ団体戦。勝っても負けても、相撲人生の最後と決まっていた一番の相手は、中大の矢後太規だった。体重165kgの堂々たる体躯。今年度のアマチュア横綱に輝いた、実力者中の実力者である。それでも、体重100kgに満たない前川が、気持ちで負けることはなかった。立ち合いですばやく相手の左脚を抱えると、がむしゃらに前に出る。意表を突かれた相手は、為す術なく土俵を割った。決まり手は「足取り」。「稽古で100回やったら100回負けるだろう」という相手を、国技館の土俵で倒したのだった。小柄な体格で、大きな相手をいかに倒すかを考え、磨いてきた技。大相撲や学生相撲など、様々な取り組みを見て、常に研究を欠かさなかった、その成果が発揮された瞬間だった。「自分の力だけでは勝てない。監督やチームのみんな、応援してくれる人たちの力で勝てたと思っている。」前川はそう振り返る。部員不足の時代を乗り越え、成長してきた早大相撲部は、今年創部100周年を迎える。「チームとしての可能性は無限だと思う。あいつらならできる。」悲願のAクラスでの活躍へ、後輩に夢を託す。

 4年間を振り返り、「早稲田で相撲ができてよかった」と語る前川。その言葉には、自分を支えてくれた人たちへの感謝の気持ちが滲み出ていた。100年もの長い歴史を持つワセダの相撲部。人一倍努力を重ね、自らの相撲道を突き進んだ前川主将の足跡もまた、歴史が詰まった土俵に、深く刻まれる。

(記事 元田蒼、写真 本田理奈)

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