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2017.02.11

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第9回 中村浩太郎/弓道

一矢に込める思い

 「ここで決めるのが主将の仕事だ」。平成29年度東京都学生連盟リーグ戦(リーグ戦)、悲願の1部昇格を決めたのは、中村浩太郎(創理=東京・芝浦工大高)の放った最後の矢だった。部員から絶対的な信頼を寄せられている中村だが、「なぜ後輩たちが自分についてきてくれたかわからない」と主将としての1年を振り返る。しかしそこには、誰よりも弓道部のことを真剣に考える姿があった。決して平たんな道のりではなかった今シーズン。中村はどのような思いで弓道と向き合ってきたのか。

 弓道を始めたのは中学生の時。「かっこいい」、そんな憧れからだった。一途に練習していく中でいつしか弓道は、中村にとって当たり前の存在になっていった。早大への入学は推薦で決まった中村。高校の顧問の紹介で、入学前から弓道部として大会に出場。大学の部活の厳しさと学問との両立に頭を悩ませながらも、1年時からレギュラーを張ると早大の勝利に貢献してきた。この時から「チームを引っ張っていけるような存在になりたい」と中村は語っていた。

大黒柱としてチームをけん引した中村

 主将として戦った今季は波乱の連続だった。主要三大会全てで予選落ちをするという異常な事態。部をまとめることへの戸惑いを覚える。学問の面でも、本格的に始動した研究室生活。不慣れな環境に対応しきれず矢を中てることができなくなった。勝たなければいけないというプレッシャーの中、中村は主将としてできることを模索し続けた。質の高い練習や後輩へのマンツーマン指導など、基礎からの立て直しを徹底的に行った。そんな強い意志は、部員たちの志気を奮い立たせた。1部リーグ昇格という1つの目標に向かって早大弓道部は徐々にまとまりを見せていく。

 そして迎えた中村の現役最後の試合は、1部リーグ昇格をかけた入れ替え戦だった。相手は因縁のライバル、慶大。2部リーグ全勝で勝ち上がってきた早大部員たちは、自信と気迫に満ち溢れていた。両者一歩も譲らない緊迫した戦況で、試合を決めたのは中村の大学生活最後の一矢。その矢は真っ直ぐに、力強く、的へ突き刺さった。主将として一から弓道を見つめ直し、行った努力が実った瞬間だった。「伸びて強い矢を出す、練習で徹していたことが最後にできてよかった」。己を信じ無我夢中でやってきた弓道は、最高の『青春』を中村に送った。

 卒業後は大学院に進学する。自身の選手生活で唯一の心残りは「日本一を取ることができなかったこと」。全国制覇の夢は後輩たちに託し、今後はコーチとして早大弓道部を支える。「成長していく姿がとても楽しみだ」と話す中村の笑顔は弓道部への愛で溢れていた。

(記事・写真 秦絵里香)

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