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2017.02.09

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第6回 小林直道/剣道

理想の主将像

 振り上げた竹刀が相手のメンを真っすぐに捉える。赤旗が一斉に上がり、早大陣営が沸き立った――。4年生の引退試合である早慶対抗試合(早慶戦)で早大の勝利を決めたのは、主将・小林直道(スポ4=東京・高輪)の一振りだった。この一年「今までで一番きつい」(森本翼、社4=京都・龍谷大平安)と言われる厳しい稽古を率い、その先頭で誰よりも真摯(しんし)に剣道に取り組んだ主将は、大学生活最後の試合を「最高の集大成でした」と振り返る。

 「何があっても真っ直ぐに道を進む強さを持った子になってほしい」。そんな思いを込め「直道」と名付けられたという小林は、家族の影響を受け幼稚園児の頃に剣道を始める。それからここまで、ひたむきに剣の道を歩み続けてきた。小学校入学を機に名門道場に通うようになり、輝かしい成績を残す。剣道と勉強に明け暮れた中学生活を経て、強豪・高輪高校へ入学。そんな日々の中で培った精神力や忍耐力、そして基本に忠実な剣道を武器に、早大剣道部の門をたたいた。

早慶戦での雄姿は、後輩たちの目に焼き付けられた

 早大に入学して驚いたのは、剣道に対する価値観も実力もさまざまな部員がいること。これまで剣道一色の生活を送ってきた小林にとって新鮮なことだった。一方でその環境が、自分が最終学年で主将を務めることになると早い段階から自覚させた。そして、1年時の秋に出場した全日本学生優勝大会での経験が、その覚悟を確固たるものにしたと言う。強豪・鹿屋体大との代表戦にもつれる接戦を当時の主将の勝利で制した試合に感動し、「主将はこうあるべきだ」と心に誓った。誰よりも真剣に剣道に向き合い、結果でチームを導く。そんな理想の主将像を胸に、日々の稽古に取り組んだ。

 迎えた最終学年、満を持して主将となる。貫いたモットーは『謙虚』。「強いから、試合に出ているからって何も偉くない。人間として、付いていきたいと思わせる存在でないといけない」と常に心掛けていた。例年に増して厳しい稽古を自らに課し、その一方でレギュラーと試合に出ていないメンバーとの溝をなくすことにも心を砕く。部員全員で同じ目標を目指すチームをつくり上げた。関東学生優勝大会ではそんな努力が花開き、9年ぶりとなる4強入りを達成。しかし、全日本学生優勝大会ではまさかの慶大に敗れ、優勝の夢を断たれた。悔しさを押し殺し、さらに厳しい稽古を積み迎えた早慶戦。小林は大将戦を制してリベンジの立役者となる。三年前に自らが描いた、主将としてあるべき姿を全うした瞬間だった。

 「剣道で強くなるだけでなく、人間的にも成長してほしい」。そのメッセージは、だれよりも真剣に剣道に向き合い、謙虚に部員一人一人と向き合う日々の姿を通して後輩たちに伝わっているだろう。引退後に応援に訪れた関東学生新人戦では、奮闘する後輩の姿に「頼もしい」と目を細める。主将が残したものは、しっかりと次世代へ受け継がれていた。『大学日本一』の夢は後輩に託し、小林はこれからも剣の道を真っすぐに歩み続ける。

(記事 久野映、写真 杉山睦美)

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