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2017.02.08

【連載】『平成28年度卒業記念特集』第4回 小堀良太/庭球

理想の主将

 10月に行われた全日本大学対抗王座決定試合(王座)。早大の優勝が決まった瞬間、有明は歓喜の渦に包まれる。その中で、小堀良太(スポ卒=東京・大成)は喜びを爆発させるのではなく、ただただ安堵(あんど)の表情を浮かべていた。この1年間、この日のために、巨大な重圧と戦いチームを率いてきた主将――。その表情には、どのような思いが隠されていたのか。

 「やるんだったら強いところでやりたい」。その率直な思いから、小堀は名門・早大庭球部の門をたたいた。全国から集まった精鋭たちが日々切磋琢磨(せっさたくま)し、チームとして一丸となって戦う。高校時代から一変した練習環境に、初めは戸惑いばかりだったという。その中で、小堀が下級生の頃からこだわってきたことがある。それは、日々の練習にひたむきに臨むことだ。「早大が一番練習している。これだけやってきて、負けるはずがない」という強い思いが小堀を成長させる。1年生からダブルスで団体戦に出場し、王座連覇に貢献。個人戦でも3年生の関東学生選手権(夏関)で初めてのタイトルを獲得するなど、徐々に頭角を現していった。この頃から、下級生の時は先輩に世話をかけることも多かった小堀が、「自分が早大を引っ張っていく」という自覚を持つようになった。そして迎えたラストイヤー。小堀は主将としてチームを率いることとなる。「りんとした、器の大きい、頼れる主将になりたい」。理想の主将像を体現するための1年が、始まった。

闘志をあらわにする小堀。苦しみつつも1年間チームを率い続けた

 小堀は1学年上の主将である今井慎太郎(平27スポ卒=現東通産業)とは違い、エースであるわけではない。しかし、「自分なりにできることでチームを引っ張っていく」と決意する。それが、ダブルスだった。主将になってからも坂井勇仁(スポ2=大阪・清風)とのペアで次々とタイトルを獲得し、チームをけん引。ついには学生ランキング1位にまで登り詰めるなど、目覚ましい活躍を見せた。しかし、全てが順調にいったわけではなかった。全日本学生選手権(インカレ)では惜しくも2位。インカレが終わると1週間後には関東大学リーグ(リーグ)が始まる。「ことしは個人的にも、チームとしても、個人戦から団体戦への切り替えが足りなかった」と振り返るように、苦しい戦いを強いられることになった。何とかリーグ優勝を果たしたものの、監督・コーチ陣からは厳しい言葉がかけられ、チームに危機感が募る。「このままでは王座は勝てない」――。小堀は4年生たちと意見をぶつけ合った。上級生は今まで以上に真剣に練習に取り組む。その姿を見て、下級生も意識を変える。そうすれば、チームは良い方向へ向かっていくだろう。そう信じて、王座までの1カ月間、厳しい練習をこなした。練習を共にする中でチームには一体感が生まれ、『全員で王座へ向かう』という強い思いが浸透していく。先頭に立ってチームを率いる小堀の姿は、まさに『頼れる主将』であった。

 迎えた王座では関大、明大といった強敵相手に、チーム一丸となって向かっていく。決勝ではリーグで苦しめられた明大を下し、王座12連覇を果たした。「苦しいこともあったが、主将としての1年間はこれまでのテニス人生で一番充実していた」。小堀の表情には、王座連覇というプレッシャーからの解放感、理想の主将像を体現できた達成感、そして最高の仲間と栄冠を手に入れた充実感がにじみ出ていたように見えた。

 テニスをやめたいと思ったことはあるかという問いに、小堀は「やめたいと思ったことは一度もなかった。なんだかんだテニスが好きなんです」と少年のような瞳で語ってくれた。今後は社会人として本格的な競技生活からは離れることとなるが、小堀の瞳に映る未来から、早大庭球部という存在、そしてテニスが消えることはないだろう。「テニスだけでなく、人間性の面でも成長させてくれた」と振り返る早大庭球部での四年間。「テニスが好き」という純粋な気持ちで、ひたむきに、がむしゃらに、テニス一筋でやってきた四年間。毎日のように厳しいトレーニング、練習を重ねた。その『頼れる主将』の姿を、後輩たちは目に焼き付けてきた。小堀が四年間貫き通したテニスに対する真剣な姿勢は、次世代に確実に継承されている。こうして、早大の王者の系譜は受け継がれていくのだ。

(記事 松澤勇人、写真 熊木玲佳)

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