ボクシング部
2016.10.16
【特集】早慶主務対談
早慶戦の運営のために欠かせない存在である主務。今回は早慶両校で昨年主務を務めた、早大・秋田悠然(教4=福岡・修猷館)と慶大・岩田慎平(4年)の二人にお話を伺った。早慶戦の舞台裏に迫る。
※この取材は10月13日に行われたものです。
「主務の務めは主将がやりやすい環境をつくること」(秋田)
冗談も交えながら話してくれた秋田
――この企画のことを聞いてどのように思いましたか
岩田 主将はイメージがついたのですが主務は何を話せばいいのだろうと思いました。
秋田 昨年の早慶戦の際に岩田さんにはお世話になりっぱなしだったので、感謝の言葉を伝えに来ました。
一同 (笑)。
――お二方は元々面識や交流はあったのでしょうか
秋田 去年の早慶戦の時に。
岩田 そうですね。昨年の早慶戦を一緒に企画・運営しました。
――お二方のボクシングとの出会いは
岩田 高校の途中まではサッカーをやっていたのですが、サッカーをやめてプロボクシングのジムに通い始めました。そして大学に入ってボクシング部に入部しました。
秋田 高校時代の彼女に「君は男らしくない」と言われて、男らしさを証明する必要ができたので、インターネットで具志堅用高の動画を見ました。あれほど強い男はいないと思い、具志堅さんにできるだけ近づきたくてボクシングを始めました(笑)。
――主務業を務めてきての思いはいかがでしょうか
岩田 毎日部室に来て、練習して、そういう当たり前のことを主務含めスタッフ陣がいてこそ成り立っているのだと実感しました。
秋田 部を強くするのが主将の務めで、主務の務めは部の問題に対して適切に対処し、練習環境を整え、主将がやりやすい環境をつくることだと思います。
――主務になったきっかけは
岩田 大学2年の時にトレーナーに転向しまして、その頃から部のマネージメントに関わるようになりました。
秋田 高校時代はコーラス部で、選手としてはなかなか貢献することができなかったので、部の仕事を率先してやるようになりました。それがきっかけです。
――選手との両立はいかがでしたか
岩田 ことしのリーグ戦は選手と両立して活動していた期間があったのですが、やっぱり忙しいという一言に尽きます。トレーナーとしての活動の傍らだったので、トレーナーとして1年生の指導をしつつ、家に帰ったら主務としての仕事をする。そんな毎日の繰り返しでした。
秋田 3年時のリーグ戦で平成国際大の矢代選手と試合ができて負けてしまったのですが、主務をやりながら選手としてのチャンスも貰えたので楽しかったです。強い選手と戦うことができて良かったです。
――主務がどういう仕事をやっているのか教えて下さい
秋田 OBや大学、連盟などと連絡を取るのが主な仕事です。
岩田 その3つとのパイプ役になりつつ、日々の練習の資金繰り、備品の管理など練習環境の整備などが仕事です。
秋田 財政的なやりくりも仕事の1つですね。
――主務に求められる資質はどういったものでしょうか
岩田 気付ける人が適任かなと思います。1年生、2年生の頃は言われたことをやればいいのですが、主務になれば自分で問題点を発見し、自分で気付いて解決すること重要です。視野を広げて何事にも柔軟に対応できる人間が理想かなと思います。
秋田 選手の気持ちが分かると何事もやりやすくなると思います。練習環境を整えることが主務の仕事なので。選手がやって欲しいことというのは、選手として少しやっていれば分かることなので、そういう意味では選手と主務の両立は大変でしたがやって良かったです。
――主務をやっていてやりがいに感じたこと、逆に辛かったことはどんなことでしょうか
岩田 一番は無事に早慶戦を終えられたことです。大変な時期もありましたが頑張ってきて良かったです。早慶戦前1カ月はかなり忙しく、OB団体含め各企業への広告協賛へのお願いであったり、毎年のことですか試合数をどうするかなどの折り合いをつけたりするのは大変でした。
秋田 早慶戦は岩田主務のおかげもあり無事に終えられて本当に良かったです。OBなどの社会人の方と接するのは大変なこともありましたが、貴重な経験ができて良かったです。
――早慶戦における主務の活動とは具体的にどのようなものだったのでしょうか
岩田 ホストがどちらかで変わってきますが、会場を押さえたり、広告協賛やOBの方へ資金援助のお願いをしたり、早慶戦後に行うレセプションの準備などです。
秋田 去年はパンフレットを作るための広告や写真を集めることもやりました。
――お二方から見て今の主務の活躍ぶりをどう見ていますか
岩田 選手兼主務をやっていて大変そうだなと思います。僕はそこをサポートしていますが、ことしの3年生は運営に携わっている人も多いのでそこは恵まれているなと思います。
秋田 僕に比べて彼女(新村久瑛、教3=東京・戸山)はコミュニケーション能力が高いというか、他大学のボクシング部とのつながりをうまく作っているなと思います。スパーリング相手を持ってくるなど、僕にはあまりできなかったことをやっていると思います。
――お二方から見た自校のボクシング部の魅力、お互いの印象を教えて下さい
岩田 早大はスポーツ推薦などでいい選手が集まり、さらに大学から始めた選手もいるので、色々な選手がいるなという印象です。慶大は実績のある選手は多くないですが、みんなで頑張って強くなっていこうという気持ちは一番強く、チーム全体の勝利に対する気持ちは一番だと思います。
秋田 ワセダの魅力はOBの方が焼肉をご馳走してくれるなど気前が良く、温かい人が多くて、雰囲気がいいところですかね(笑)。
――お互いの大学に対してどのようなイメージを持っていますか
岩田 早大は言葉が悪いですけどスポーツバカみたいなイメージがありますね。
一同 (笑)。
秋田 慶大は元々ボクシングをやっていた人が少なく、やりたくて始めた人が多く、ボクシングに対して真摯(しんし)な姿勢を感じます。慶大に対しては真摯なイメージを持ってます
――お二人はオフの日はどのように過ごしていますか
秋田 みなとみらいや水族館に行ったりします(笑)。
岩田 友達と遊んだりもしますが、何もすることがない時は車が趣味なので、車をいじったりします。あとはカメラが趣味で写真を撮りに行ったりします。
――最近はどこに行かれましたか
岩田 夏にバイクでいろは坂に行きました。夏なので紅葉はありませんでしたが楽しかったです。
――お二人の趣味は
岩田 結構多趣味なので、車とかカメラとか映画鑑賞や日曜大工などです。最近は靴箱を作りました。
秋田 動物園に行くことですかね。あとは変な人に話しかけることです(笑)。というのも、自分にないものを持っている人を尊敬しているので、そういった人に話しかけることが好きですね。
「多くの人が活躍できる場をサポートしたい」(岩田)
誠実に質問に答えてくれた岩田
――今までの早慶戦で印象に残っている試合はありますか
岩田 一昨年の早大の伊藤未来也(平27スポ卒=東京・駿河台)選手と慶大の三浦選手の試合です。それが3度目の試合で、過去2回は伊藤選手に軍配が上がっていました。三浦選手にとって最後の早慶戦で、しかも負けたら慶大の敗北が決まる重要な試合でした。その試合で勝利した姿を見て慶大ボクシング部に入って良かったと思いました。
秋田 伊藤選手はインターハイでも3位に入っていたエリートで、三浦選手は大学から始めた選手で、あれは努力が才能を上回った瞬間で気持ち良かったですね。僕、早大ですけど(笑)。僕が印象に残っているのは昨年の赤井選手(雄介、政経5=兵庫・六甲)の試合です。本来はライト級だったのですが、バンタム級まで階級を下げる壮絶な減量をしていました。慶大側も驚いたのではないかと思います。
岩田 予想外でした。
秋田 強い選手を相手に、勝利をもぎ取り、肉体はカラカラになりながらも、魂だけで立って殴ってという姿はボクサーとしてかっこいいなと印象に残っています。
――昨年の早慶戦は4−3で早大の勝利となりましたがどんな思いで見ていましたか
岩田 ライト級で決着がついて、「もう終わったのか」という感じでした。
秋田 でも慶大はそこで腐らずにライトウエルター級とウエルター級でしっかりと取り返したので、すごいと思いました。
――岩田さんは選手として早慶戦に出場される可能性もありますが、早慶戦への思いはいかがですか
岩田 早大もそうだと思うのですが、4年生にとって引退試合だから出られるという保証はなくて、慶大は学年に関わらず実力があり、慶大の名を背負うにふさわしい者が試合に出ます。自分は出場できるとは決まっていないのでまずはそこに向けて頑張りたいと思います。
――秋田さんはケガをされているとお聞きしましたが出場の可能性は
秋田 ちょっと無理ですね。なので運営の方で頑張りたいと思います。
――早慶戦に出場する仲間たちへの思いは
秋田 慶大は勝つのが難しい強い相手だとは思いますが、特に同期には頑張ってもらいたいです。
――ケガをされてからボクシング部、また、選手たちをどのように見てこられましたか
秋田 試合経験の面で早大の選手は慶大に劣るように感じます。そこをカバーできるように頑張ってもらいたいです。
――岩田さんは早慶戦の展望についてどのように考えられていますか
岩田 やっぱり、最後の早慶戦なので勝って終わりたいです。自分はトレーナーでもあるので、指導している下級生が4年生を追い抜いて出場して、らいねんのリーグ戦に向けて弾みをつけてくれたらなと思います。
――ことしは来場者600人を目標に掲げていますがどのように考えていますか
岩田 今までは内部への発信が多かったのですが、ことしは外部に向けて情報を発信しているなという印象を持っています。
――初めてボクシングを見る方に注目して欲しいポイントは
岩田 早慶戦は両校のOBなどが集まり独特な雰囲気になるので、アマチュアボクシングといえど他にはない魅力があると思います。
秋田 地味な競技ではあるけれども、気持ちの強さを見ることができる競技なので、テクニックやパワーもありますが、根性比べとしてどちらが強いのかが見える競技だと思います。そこを見て欲しいです
――お二人にとって早慶戦とは
岩田 僕はずっと部の運営に携わっていた部分もあるので、早慶戦の舞台を支えることが自分の役目かなと思っています。多くの人が活躍できる場をサポートしたいです。
秋田 60回という伝統があり、早大に入ったからには、慶大に入ったからには、戦いたい舞台であると思います。宿命というか早慶に入ったからにはあるのが当然のようなもので、最高の舞台であると思います。
――最後に早慶戦に向けて意気込みをお願いします
岩田 僕はボクシングでよく使う「血湧き肉躍る」という言葉が好きで、そういった強い気持ちで戦う試合を見せたいです。
秋田 「練習は根性。試合は勇気」という輪島功一元チャンピオンの言葉にあるように、試合になれば勇気を出すしかないので、強い相手にもひるまず、勇気を持って立ち向かう姿を見て欲しいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 新津利征)
最後は二人とも笑顔で
◆秋田悠然(あきた・ゆうぜん)(※写真右)
1993(平5)年9月16日生まれ。170センチ。福岡・修猷館高出身。教育学部4年。昨年主務を務めるなど、早大ボクシング部にとっては欠かせない存在。ケガの影響で選手としての出場はないが、勝利のために全力でチームをサポートする。
◆岩田慎平(いわた・しんぺい)(※写真左)
神奈川・慶應義塾高出身。慶大・経済学部4年。主務、選手、トレーナーと様々な顔を持つ岩田。慶應ボクシング部のキーマンだ。