ボクシング部
2016.10.10
【特集】早慶主将対談
毎年熱戦が繰広げられる早慶戦。12月3日に慶大日吉記念館で行われることしは60回目という節目を迎えるため、例年以上の盛り上がりが予想される。そこで、早大の淡海昇太主将(教4=神奈川・浅野)と慶大の田中和樹(4年)に早慶戦を控えた今の思いを熱く語ってもらった。
※この取材は10月5日に行われたものです。
「注目してもらえるのは嬉しい」(淡海)
主将として早大を引っ張ってきた淡海
――初めてこのような対談を行うこととなりましたが、この企画のことを聞いて率直にどう思いましたか
淡海 嬉しいなと思いました。ボクシングが早慶戦などでなかなか注目されることはなかったのでこういう風に注目してもらえるのは嬉しいです。
田中 率直に何を聞かれるのかなと緊張して(笑)。こうやって取り上げてもらえるのは凄く嬉しいことで、盛り上がる環境でボクシングをしたいなと思うので今後もやっていきたいです。
――お二人は高校時代からお知り合いとのことですがお互いの当時の印象はどうでしたか
淡海 自分の高校であった練習会で出会いました。その時は田中がボクシングを始めたばかりで、凄く強いヤツが出てきたなと。自分が中学生の頃からボクシングをやっていたので。高校からだよね
田中 そうですね。高校1年生で初めて会って。高校1年の時に試合に出始めた時に淡海はそこそこ名が通っていて強いという感じでした
淡海 田中は空手をやっていたらしいという噂を聞いていたのですが、めちゃくちゃ強いなと。
田中 高校1年で試合はしなくてスパーリングとかをやりました。
淡海 階級は一緒だったよね。
――お互いの印象を一言で言うと
淡海 田中は神奈川のエースという感じでした。インターハイとかに出ていたので。最初は自分の方が経験があったので、強かったのですが、田中が上がっていってどんどん強くなっていたので追いつかなきゃと思っていました。
田中 一言で言うと常に気になる存在です。強くて、同じ神奈川で、階級も似ていてライバル的な感じでした。その時から常に意識する存在であったかなと思います。
――お二人とも対戦したことがありますが、対戦前と後で印象が変わることはありますか
田中 ずっと知っていて、同じようにやってきたので戦った後も変わらずといえば、変わらず。普段はこうして話しますが、試合前に会ったりしても話すことはないです。
淡海 ピリピリしています。
――今回の早慶戦でもし戦うとしたら、意識したいことは
淡海 自分のボクシングをして。という感じです。詳しくは言えないですけど(笑)。
田中 知り尽くしているので対策はバッチリです(笑)。
――早慶の選手でプライベートの交流はあったりするのでしょうか
田中 部員によるかな。仲の良い部員は良かったりとか。
淡海 組織として何かをやるとかは…。
田中 早慶戦の打ち上げ後とかくらいです。
淡海 せっかく主将同士でつながりがあるので、もっと早慶仲良くやっていきたいですね。
田中 階級で探り合うスポーツなのでシビアな感じ(笑)。
淡海 (仲良くしすぎると)探られちゃうかな(笑)。
――今季のここまでの試合を振り返っていかがですか
淡海 リーグ戦に関しては早大は去年3部に下がってしまって、団体戦で戦えず個人でしか戦えないため寂しいものがありました。その中でもチーム一丸となって戦えたかなと思いますね。自分たちの代で2部に復帰しようと決めていたのですが、それが果たせなかったので残念に思っています。
田中 去年2部リーグで4位というここ数年ないような良い成績で終えたので、そのプレッシャーも感じつつも、チームが乗っているなという感じはありました。しかし4連敗もあって最後は必死になり、最終戦は今までで一番緊張した試合でした。最後は勝てたのでホッとしました。
――減量はいつ頃からするのですか
淡海 1ヶ月半前くらいから意識し始めます。
田中 まぁそうですね(笑)。
淡海 お互いどの階級に出るかにもよりますけど。
田中 リーグ戦のときは自分は3階級に出場して60キロ。56キロ、52キロの試合に出て普段は60キロくらいかなという感じです。階級にもよりますけど1ヶ月くらい前から減量を始めます。
――では、もうすぐ減量の時期に入るということでしょうか
淡海 階級にもよりますけど…そろそろ…。探り合いが(笑)。
田中 どの階級で誰が出てくるかという探り合いがすごい重要になります。
――どの階級で出るのか決めてはいるのですか
淡海 早大は選手層が薄くて、チームの状況にもよりますが、最後は田中君とやりたいなという思いもなくはないという感じです。
田中 まぁ受けて立ちますよ
一同 (笑)。
「ボクシングは平等のスポーツ」(田中)
笑顔で語る田中
――お二人とも主将を務められていますが、心がけていることはありますか
淡海 自分の芯みたいなものをしっかりと持ちつつも、就任当初は厳しくしようと自分の価値観を押し付けていたのですが、周りの意見も聞きながら全員でやっていこうと心がけていました。
田中 意識していたのは自分の勝ちたいという思いをどう伝えるかということです。いろいろな部員がいるので難しかったですけど(笑)。
――主将としてお互いの部をどのように見ていますか
淡海 いい部を作っているなと(笑)。慶大はみんな同じ勝利という目標に向かって突っ走っているように感じるのでそういうところは見習っていきたいです。
田中 どちらかというと今までは慶大が気持ちだけで戦うようなスタイルで、早大が技術面では上回っているなというのがあったのですが、去年は慶大に慢心もあったのか気持ちで押し負けたところがあったので、もう一度気持ちで戦うスタイルを思い出して戦いたいなと思います。
――お二人にとって理想の主将像は
淡海 今までの歴代の先輩方が自分の中では理想でして、どんなにプレッシャーがかかってもしっかり試合に勝って、背中で見せるというのを目指してやっていますね。できているかはわからないですけど、最後はそうやって終わりたいですね。
――前年度主将の赤井雄介(政経5=兵庫・六甲)さんからアドバイスなどは
淡海 これからもらいます。
一同 (笑)。
――田中選手はいかがでしょう
田中 背中で見せてくれる。その人が自ら動き、自分でやっていく姿を見せるのが理想かなと思います。そこを目指して1年間やってきたつもりです。
――参考にしている先輩はいますか
田中 2年前の先輩が印象に残っています。主将として一番チームを気にかけてくれて、当時2年生だった僕が練習で調子が上がらない時なども盛り立ててくれたので、そういう主将になりたいと思っていました。
――お二人が思うボクシングの魅力は
田中 大学から始めた選手でも勝てるというか、練習したことが全てで、今泉信三の「練習は不可能を可能にする」という言葉がありますが、本当にこれだなと思います。同じ階級で戦い、高校時代に実績を残した選手が相手でも大学から始めた選手が勝ってしまう、平等のスポーツであることが魅力だと思います。
淡海 田中とほぼ同じですが、努力が報われるスポーツというか、努力すればそれまでの差を引っ繰り返せるスポーツで、だからこそ楽しいのだと思います。
「ワセダというチームが一番輝ける場所」(淡海)
和やかな雰囲気で対談が進んだ
――早慶戦が2ヶ月後に迫っていますが調子はいかがですか
淡海 調子はかなりいいですね。リーグ戦や夏の大会が終わって、あとは最後の早慶戦だけだと思うと、良い意味で緊張がほぐれるというか、最後は楽しもうという気持ちになって、そうすると動きが良くなって絶好調です。
田中 チームとしても最後勝って良い流れが来ていて、個人としても8月の国体の関東ブロック予選で、初めて関東で優勝できたのですが、それもあって心身共に調子が良く、モチベーションが上がっているなと思います。あとは早慶戦でやるだけだという思いです。
――去年の早慶戦でお二人は対戦されましたがどういう心境で臨みましたか
淡海 まさか田中がライト級で来るとは思わなかったですけど、去年は調子が良いというか、早慶戦に向けて頑張って調整したので誰が来ても負けないという気持ちで挑みました。チームとしては勝って嬉しかったですけど、個人としては田中に負けてしまって凄く悔しい思いをしました。その後悩んで、一時期サウスポーに挑戦したり、色々と試行錯誤するほどでした。ですが、そのおかげで今成長できているなと思うのでいい早慶戦でした。
田中 淡海とは逆で個人としては勝てたけど、チームとしては負けてしまって、悔しい気持ちでした。淡海とやるというのは手の内を探られているような、自分のことを知られていてやりづらいなという感じがありました。いざやってみると緊張してうまく戦えなかったなと思いましたがなんとか勝ててよかったです。
――今までの早慶戦で一番印象に残っているシーンは
田中 自分の試合ではないですが2年前の日吉で行われた早慶戦です。3−3で最後の階級に回ってきた時に2学年上の先輩がダウンを奪って倒した瞬間というのは今でも映像として頭の中に残っていて、凄く感動した試合です。あれがあったからこそ早慶戦ってすごいなと思いました。会場全体が総立ちで若き血が歌われて。あのムードでもう1回試合がしたいなと思います。
淡海 自分の試合ではなくて去年の前主将の赤井先輩の試合です。本来はライトウエルター級という64キロの選手なのですが、チーム事情でバンタム級という56キロの階級まで減量して、その姿を見て、主将としてかなり重たいものを背負っていたと思います。コンディションは悪かったと思うのですが気合で勝利をもぎ取る姿がかっこ良くて、その姿を見習いながら主将をやっています。
――初めてボクシングを観に来た観客に注目して欲しいポイントは
淡海 アマチュアボクシングはテクニックがあり、早い展開や駆け引きがあるので、そういう部分を観ていただければいいと思います。
田中 プロと違って3分3ラウンドと短いので凝縮しています。その分展開が早く、1ラウンド目から気持ちと気持ちがぶつかり合う勝負があり、そういう試合をするので、熱さや気持ちのぶつかり合いを観て欲しいです。
――今回の早慶戦の見どころは
淡海 ことしは慶大でやるのですが、今の早大は選手の数は少ないですが、気持ちの面で上回って勝つつもりなので、そこを見て欲しいです。
田中 気持ちのボクシングはみんなすると思うので熱い戦いになると思います。ユニークな選手も多いのでそういったところも気にして見てもらえると面白くなるかなと思います。
――これまでの対戦などを踏まえてチームとして警戒したい選手などはいますか
淡海 田中選手ですかね(笑)。慶大の選手は全員強いですし、気持ちも強いですから全員警戒して、全員に勝つつもりでいきます
田中 もちろん主将である淡海が警戒する選手かなと思います。去年も相手の主将が勝って流れを持って行かれてしまったので。主将は倒しておきたいと思います。
一同 (笑)。
――お二人にとって早慶戦とは
淡海 ワセダというチームが一番輝ける場所だと思います。慶大を相手にするからか、一丸となってチームがまとまるので、そこでことしも勝って輝きたいです。
田中 絶対に負けられないといつも思っています。早慶戦というとリーグ戦でもなく、個人戦でもなく特別な盛り上がりがあります。そこで試合をするのが自分は4回目になりますが、自分自身一番熱い試合ができる場所かなと思います。
――最後に早慶戦に向けて意気込みを一言お願いします
淡海 長いボクシング人生の最後を勝って有終の美を飾ろうと思っています。
田中 60回目という節目の大会で個人的にも高校から試合に出て、ちょうど80戦目になるので最後を勝って引退したいです。僕は1、2年の時に勝って昨年負けて2勝1敗ということで、今回勝つことで勝ち越して終えたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 新津利征)
最後は二人でファイティングポーズ
◆淡海昇太(たんかい・しょうた)(※写真右)
1994年(平6)8月16日生まれ。身長177センチ。神奈川・浅野出身。早稲田大学教育学部4年。関東大学トーナメントで優勝するなど、その『背中』で1年間チームを率いてきた熱き主将。残された使命は、ボクシング人生の集大成となる早慶戦で最高の戦いを見せ、チームを連覇へと導くことだけだ。
◆田中和樹(たなか・かずき)(※写真左)
神奈川・鎌倉学園出身。慶應大学総合政策学部4年。関東屈指の実力を誇る慶大の柱。昨年の早慶戦では淡海を破ったその力は健在だ。ことしも大きな壁となって、2年連続の勝利を目指す早大の前に立ちふさがる。