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2015.03.24

【連載】『平成26年度卒業記念特集』 第60回 九鬼巧/競走

『一体感』

 陸上競技は個人競技とはいえチームとして戦う以上、強い組織力が必要だ。一人一人が自分の役割を理解し、全うすることで生まれる一体感。それが目的意識をより高いものにする――。数々の学生トップ選手が在籍する早大競走部を1年間主将として率いてきた九鬼巧(スポ=和歌山北)。チームを第一に考える中で得たものを糧に、新たなるステージへ歩みを進める。

 ターニングポイントとなった大学2年目。日本選手権で世界選手権B標準を突破しての2位入賞を果たし、ロンドン五輪代表への足掛かりをつくる。不調から脱却し、早大で陸上ができていることを実感する好調の真っただ中にいた。自己ベスト更新や、チームとしてどう結果を残すかに着目したシーズン。決して五輪を意識したわけではないが、ひとつの夢が実現した瞬間。だが現地で補欠宣告を受け、モチベーションを保つのに苦労する。スタジアムや街の雰囲気、選手村など貴重な体験の連続。あくまでも「経験ではなく体験」――。そう表現するのは、出走がかなわなかった屈辱ゆえのこと。世界との壁を痛感した大会となった。一方、その年チームとしてはリレー種目6冠という史上初の快挙を達成。入部当初から主力として活躍していた九鬼もメンバーに名を連ねた。

日本学生対校選手権で悲願の初タイトルを獲得した九鬼主将

 3年次は春先にケガをして全てが遅れる。戦う準備は万全だっただけに悔しさが募った。気持ちを切り替え、夏にしっかり練習を積んだ努力が、日本学生対校選手権(全カレ)100メートル優勝というかたちで実を結ぶ。直前に行われた世界選手権に出場していた飯塚翔太(中大)に、「勝って実力を証明したい」と宣言通り、悲願の初タイトルを獲得した。

 最終学年を迎えた昨年は、競走部創部100周年の重要な一年。節目の年に主将という重役を全うした。両インカレでのトラック優勝を掲げるも、初戦である関東学生対校選手権は惨敗。リレー失格という挫折も味わう。だが立ち止まるわけにはいかない。各ブロック間の連携を深め、夏合宿を充実させるなどチームの立て直しを図った。そして見事、全カレではトラック優勝を成し遂げる。「個人の能力と周りが見られるキャプテン柄、どちらかが欠けては務まらない点において競走部の主将は難しい」という。「自分には後者が欠けていた」。それゆえ意識して周囲の成長に目を配った。円滑にチーム作りが行えた背景には、常にまわりの支えがあったから。個人成績は思わしくなかったがその分、学んだ価値は大きい。

 志の高い仲間と共に過ごした濃密な4年間。「もう少し学生らしいことをすれば良かった」。そう振り返るほど陸上競技が中心の生活だった。自分一人の力で強くなったのではないからこそ、次につなげていかなければならない。今後はリオデジャネイロ五輪に向け、試行錯誤する日々が始まる。「東京五輪までの競技人生は考えていない」と語った九鬼。迫りくるラストチャンスをものにするために一日一日が勝負となる。

(記事 菅真衣子、写真 松田萌花氏)

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