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2015.02.27

【連載】『捲土重来』 第6回 中村信一郎

 今季の中村信一郎(スポ3=香川・高松工芸)の成長には目を見張るものがあった。5000メートル、1万メートルで自己ベストを更新。ハーフマラソンのタイムでも好記録をたたき出し、自慢のスピードに加えて長距離に対応するスタミナも付けた。自身2度目となる東京箱根間往復大学駅伝(箱根)は自ら高速レースが予想された1区を志願。スピードレースを乗り越え、力が付いていることを実感しているという彼の胸中とは――。

※この取材は2月11日に行われたものです。

箱根後は「攻めの走りが出来るようになった」

丁寧に言葉を選び応えた中村信

――箱根が終わってからはどのようにお過ごしですか

都道府県駅伝(全国都道府県対抗男子駅伝)と予定では丸亀ハーフ(丸亀国際ハーフマラソン)に出場する予定でしたが、体調が合わず今は立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)に向けて練習しています。

――現在の体の調子はいかがでしょうか

やはりちょっと疲れていて1カ月くらいしてようやく疲れが取れてきたかなと思います。

――現在の調子としては上向きということでしょうか

はい。テストも終わって自分の時間が多くなってきているので、そういう時間もうまいこと使いながら調整できているので今は良くなってきていると思います。

――都道府県駅伝での走りはいかがでしたか

調子自体は微妙というかあまり良くなかったのですが、その中でまとめることは出来たと思います。村山紘太さん(城西大)や久保田和真(青学大)と走れたことによって良い経験が出来たと思います。

――強い選手と競り合うことによって何か学ぶものはありましたか

箱根からなのですが、今までと違う感覚になりました。その感覚というのは、今までは守っていて箱根の時には怖気づいてしまったのですが、一緒に前を追いたい、挑戦したいという気持ちが付いて、それが都道府県での粘りに表れたかなと思います。攻めの走りが出来るようになったと思います。

――学校のテストなどはいかがでしたか

多分大丈夫だと思います(笑)。自分で興味のある授業を選択して出席もしているので。

「頼るのではなく託す」

――それでは箱根に関して伺います。集中練習を一ヶ月振り返っての総括をお願いします

上尾シティマラソン(上尾ハーフ)の良い調子を集中練習にもつなぐことが出来ました。昨年も完璧に出来たのですがどこかいっぱいいっぱいでした。しかし、今年は余裕を持って練習出来たと思います。集中練習の中で力が付いている事を実感できました。

――チームの雰囲気は振り返っていかがですか

ことしは例年とは違う流れで、第2クールに分けて1クール目と2クール目の間を軽くして休憩という形にして行いました。いつもとは違う感じでやっていたのですが、練習量は増えていたので、ケガ人もポロポロ出てくるというのはありました。雰囲気自体は良かったですが、ケガ人が出てしまったのはチームとしての力が足りないというか良くないとは感じていました。

――中村信選手自身は2回目の集中練習という事で余裕を持って消化出来たという事ですね

はい。比較的練習は強い方なので、その中でも考えながら練習に取り組むことが出来たので、そこが一番大きかったです。

――昨年度から練習では走れているのに試合では走れないという事を課題として挙げていましたが

力が付いてきたという事もあると思いますが、陸上に対する考え方もこの一年で大きく変わって、走り方も9月の夏合宿からつかめて来て、そこから良い具合に練習が消化できるようになりました。自分の力を試合でも出せるようになってきたかなと感じています。

――1区を走るのが決まったのはいつ頃でしょうか

クリスマス頃です。その時に渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)から伝えられて、一週間前から昨年度の1区のビデオをずっと見ていて、イメージは出来ていました。

――1区出走は以前から考えていましたか

集中練習の途中ぐらいから僕が1区に行ってタスキを良い位置でつなげばチームが良い流れに乗れると思っていました。そういう意味で渡辺監督にも自分から1区を走りたいという事を伝えて起用していただきました。

――ご自身の役割としてはどのような事を考えていましたか

区間タイムというよりもトップとの差を30秒以内に抑えたいという事を考えていました。実際は42秒という事で、2区や3区のランナーに負担をかけてしまったと思います。

――昨年度はかなりの高速レースでしたが、どのようなイメージを持ってご覧になられていましたか

去年に限らず1区は近年どんどん速くなっているので、そういう意味で去年は28分40秒切りで通過していて、ことしもそれと同じかちょっと遅いくらいで通過すると考えていたのでイメージだけは出来ていました。

――渡辺監督からの指示はありましたか

具体的な指示はなかったのですが、集中練習の消化具合を見ていてもお前なら大丈夫だと言ってくれて、とても緊張していたのですがウォーミングアップ前もたくさん声を掛けていただいて、アドバイスというよりも精神的に楽にしてくれたかなと思います。

――他大のエントリーメンバーが発表された時の心境を教えてください

緊張はしましたが、行けないとは思いませんでした。ペースがどんなに早くなっても27分台で通過することはないので、28分台で通過することは不可能ではないと思っていました。他の選手を気にしていては緊張してしまうので、自分のコンディションを整えるという事を優先して考えました。

――当日の体のコンディションはいかがでしたか

正直緊張がすごかったのですが、調子自体は良かったので走っているうちに緊張が解けていったという感じでした。

――前夜はゆっくり寝られましたか

就寝と起床が早いという事はあらかじめ分かっていたので、その就寝タイムに合わせてリズムを変えていました。なかなか寝られませんでしたが、朝起きた時はすっきりしていたので、いっぱい寝たのかなと思いました。

――2区に前回大会区間賞の高田康暉選手(スポ3=鹿児島実)がいた事は大きかったですか

今までは僕より前に高田が走るというケースが多かったのですが、スターターも初めてですし、高田に渡すという事で勢いのあるまま渡したいという思いがあって、頼るというよりも託すという気持ちが強かったです。

――それではレース内容について伺っていきます。5キロの通過が14分23秒でした。ここまでの体の動き、気持ちの余裕等教えてください

色々考えてしまったのですが周りを見ると周りも驚きながら走っていたので、そこは僕だけじゃないんだという感じで慌てることはなかったです。

――7キロ過ぎから田口雅也選手(東洋大)がペースを上げ、10キロは28分52秒というラップタイムでしたがいかがでしたか

確かにやや速いペースでしたが、やった、自己ベストだという感じで前向きに捉えて走っていました。

――15キロ過ぎでの久保田選手のスパートに付かなかった理由は何でしょうか

ちょっと早いかなと感じて待機していたら後ろの集団に入ってしまっていました。でも、まだまだ追いつけると思っていたのですが、後から言える事ですがやっぱりあそこでついていけば良かったなという思いが強いです。

――六郷橋でのアップダウンの攻略のイメージは持たれていましたか

少しの上りなら比較的早い方というか、山上りとかはダメなのですが、少しの上りは楽に攻略できました。ですが、下りが苦手で六郷橋の下りを使ってペースを上げる選手が多かったのでそこはきつかったです。

――ラストスパートの自信はありましたか

そうですね。あるつもりだったのですが、いっぱいっぱいというか、もっと前に仕掛けておくべきだったかなと思います。

――ラストの2,3キロは集団もばらけてきつかったと思いますが、そこでは先頭のタイム差は把握していたのでしょうか

全然分からなかったので、ちょっとでも少ないタイム差で渡そうと思って走っていました。走り終えてからタイム差が分かったという感じです。

――区間タイムに関してはいかがですか

タイムだけを見ると自分の力は使い果たせたかなと思いますが、上位4校との差をもう少し無くせれば良かったと強く感じました。

――点数で表すと何点くらいでしょうか

タイムだけだと良いのですが、レース内容であったり怖気づいてしまったという事を考慮して、次の自分に期待したいという意味も込めて70点くらいです。まだまだ行けると思います。渡辺監督にはよくやったと言われましたが、残りの30点は次の自分への期待値という事にしたいと思います。

――箱根は沿道からの声援が途切れませんが力になりましたか

1区は大手町スタートという事もあり、ずっと途切れない声援で、早大の応援も聞こえますし、名前で呼んでくれた人もいましたし、他大学の旗を持った方も応援してくれてずっと声援に後押しされているのは感じました。

――監督車に乗られていた渡辺監督からの指示は聞こえましたか

声援がすごいという事もあって聞こえなくて。でも、近くで見守っていてくれているという事は感じていました。

――タスキリレーの時に何か声を掛けられましたか

もういっぱいいっぱいだったのでほとんど覚えていないのですが、高田が笑顔で待ってくれていたので、僕も笑顔で渡せました。笑顔のタスキリレーが出来たと思います。

――高速レースをまとめ切ったという事でかなり自信が付いたのではないかと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか

まだまだ区間11位という事で周りも成長しているので、まだまだだなと感じますが、それを都道府県駅伝につなげられたと思うので、箱根駅伝で変われたというか怖気づいていた自分がいなくなり、自信を持って走る事が出来るようになりました。

――課題は見つかりましたか

練習ではラストスパートがさく裂するのですが、本番だとラストまでスタミナが持たないというか最後の最後で勝つという事が出来ていません。それは試合やレースで鍛えていくしかないと思うので、その中で培っていきたいと思います。後はもう少し5000メートルや1万メートルのタイムも上げていきたいと思っています。そうすればもっと楽にレースができると思います。

――早大の1区は鬼門だと言われている事に関してはいかがですか

トップとのタイム差と区間順位を考えるとまだ課題なのではないかと思います。

――総合5位という結果に関してはどう受け止めていますか

それぞれが力を出した結果なので、それは受け止めなければならない訳で、新チームは走った選手以外も受け止める事が必要なのではないかと思います。

――青学大の好タイムはどのように考えていますか

トレーナーさんに体幹を教えてもらったり、学校にクロカンを作ったりとやる事はやっているので、勝つためにはやる事は本当にしっかりやっていかなければならない時代になっているという事は2、3年前から感じていました。青学大の事を見習う必要もあるのかなと思います。

最後のシーズンは「4年生で盛り上げたい」

堅実な走りでチームに貢献した

――新たに取り組みたいトレーニングなどはありますか

チームで今やっている事として、動き作りが今まではただやっているだけという状況だったのですが、やはり応用というかもっとペアになってちゃんと見合うという事であったり変化をつけるという事をしています。それが、チームを良い方向に向かせていると思います。その結果が4月から始まるトラックシーズンにつながればと思います。もしそれが表れなかったらもっと変える必要があるという事になると思いますし、今までとは違う事をやっていかなければならないと思います。今は本当に高田を中心に初めて尽くしという中でやっています。

――箱根は4年生と走る最後の駅伝でした。4年生への思いを聞かせて下さい

一個上という事もあり、入寮した頃から一番お世話になっていて、4年生で走ったのは山本さん(修平駅伝主将、スポ4=愛知・時習館)と田口さん(大貴、スポ4=秋田)の二人でしたが、往路と復路をしっかりと締めてくれた事は、5位でしたが良かったです。4年生の気持ちは、あの二人は一浪している事もあるので後輩につながったのではないかと思います。

――理想の4年生像は描いていますか

性格的に大声を出して引っ張っていくタイプではないのですが、やはり最高学年という事でそこは変える必要が自分にもあると思います。競技面だけでなく、自分の気持ちを伝えていきたいと思っていますがやはり難しいです。

――監督もことしから変わりますが、監督が変わるという事に関しては何かありますか

渡辺監督に直接入りたいとお願いして入ってきて4年間教わるつもりだったので、寂しいという気持ちはありますが、渡辺監督のメソッドを相楽コーチと駒野コーチに教えているというか詰め込んでいると言っていたので変わる事に関しての不安はないです。

――この1年間を振り返るとどのようなシーズンでしたか

3年生は一番楽な学年といったらあれですが、1年でもなく最高学年でもなく、伸び伸び出来た事が結果にも表れたかなと思います。ただ、ことしは昨年のようなやり方ではまとまらないと思っているので、昨年とはまた違うアプローチをチームにも自分にもしていきたいと思います。

――トラックシーズンでの目標を教えて下さい

5000メートルが13分45秒、1万メートルが28分30秒は出さないと他のチームのエースとはやっていけないと思いますので、それを目標にやっていきたいと思います。

――シーズン全体の目標を教えて下さい

もちろん大学三大駅伝優勝を目指します。でも、ことしはユニバーシアードのある年でもあるので、来月の学生ハーフでしっかりと走って世界大会も経験したいですし、様々なレースを詰んで成長していきたいと思います。

――来季の駅伝シーズンに関してですが、この区間を走りたい等すでに考えていることはありますか

ことしの箱根を経験して思った事は、1区を走りたいと思うようになった事です。来年度の駅伝も1区で行きたいのですが、僕以外にも1区に適した人がいればその方が良いので、どの区間を任されても大丈夫なように準備はしていきたいと思います。

――もし来季キーマンになりそうな下級生などいらっしゃいましたら教えて下さい

個人的には石田康幸(商1=静岡・浜松日体)は一年間継続して練習が出来ているので二年目からはちょっとずつ来るのではないかなと思います。

――最後に読者へのメッセージをお願いします

高田新キャプテンを中心として僕ら新四年生は最後のシーズンになる訳で、やる事が全て最後になるので、やはり一つ一つを大事にしていきたいと思っていますし、大学の中で一回は勝ちたいと思っています。高田に頼るのではなくて高田を筆頭に四年生で盛り上げていけたらと思っていますので、応援していただけたらと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 和泉智也)

◆中村信一郎(なかむら・しんいちろう)

1993年(平5)4月14日生まれのO型。174センチ、57キロ。香川・高松工芸高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル14分06秒08。1万メートル28分56秒00。ハーフマラソン1時間2分30秒。2014年箱根駅伝10区1時間11分32秒(区間10位)。2015年箱根駅伝1区1時間2分42秒(区間11位)。

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