その他
2014.07.03
【連載】創刊500号記念特集 第3回ラグビー蹴球部・藤田慶和
7月1日に『早稲田スポーツ』創刊500号を発行した早稲田スポーツ新聞会。500号の『五』にちなみ、2020年の東京五輪で活躍が期待される二人の選手を特集しています。今回は、すでに日本代表として活躍しているラグビー蹴球部の藤田慶和選手(スポ3=東福岡)に伺ったお話で、紙面に載せ切れなかった部分も含めて特集します。
※この取材は2月17日に行われたものです。
代表への思い
早スポの取材に答える藤田
――7人制の日本代表の練習に呼ばれたとお聞きしたのですが、本当でしょうか(※1)
そうですね。まだメンバーではないのですが、候補という形でメンバーに召集されました。ここから合宿を数回重ねて、そこから(メンバーを)絞っていくようなのですが、しっかりと残れるように頑張っていきたいと思っています。
――候補メンバーに選ばれたときの気持ちを教えてください
選ばれることは前々から知っていたので、いまは試合に向けての準備をしています。
――15人制でプレーしながら7人制もプレーすることになると思うのですが、一番の違いはどのようなところに感じていますか
一緒のラグビーですが、全く別の競技だと思っています。本当に全然違うので、同時に2つやるのは難しいことですが、7人制は足の速さなどを強化できて、15人制につながってくるところもあると思います。そういう点をプラスに捉え、いろいろなところを伸ばしていきたいなと考えています。
――2016年のリオ五輪から7人制ラグビーも採用されますが、そこへの憧れなどはありますか
すごくそこを重要視しています。五輪でラグビーをいろいろな人に、特に日本の人たちに広めたいと思っています。また、そこで日本のチームが活躍できればハッピーです。
――2020年の東京五輪のとき、どのような選手になっていたいですか
いまは日本代表の中でも若手ですが、2019年のワールドカップや2020年の東京五輪ではもっと核の選手になって、チームを引っ張ることができるような選手になりたいなと思います。
――昨年の9月、東京五輪・パラリンピックの開催が決まりましたが、その時の気持ちを教えてください
すごくうれしかったですし、東京に五輪を招致するために大学の友達も頑張ってくれていました。そのようなことも知っていたので、東京に決まって本当にうれしかったです。また、自分のモチベーションとして「東京五輪を目指そう」という気持ちになりました。
――以前、7人制ラグビーが五輪の種目に採用された時のお気持ちはいかがでしたか
小さいころからラグビーをやってきて、五輪に出られる権利がないと思っていました(笑)。でもその知らせを聞いた瞬間に、ラグビーをしている全ての人が五輪に出られる権利を持ったので、そういう面でチャンスができたなと感じました。
――五輪やワールドカップで日の丸を背負うことの意義とはどのようなものでしょうか
日本のラグビーの一番上で戦うことになるので、日本代表らしいプレーをしないといけないです。また代表に選ばれて満足するのではなく、日本代表としていろいろな国と戦って、結果を残していくということがいまの日本代表としての使命ではないかなと思います。
――国を背負って戦うときに、緊張感と楽しさではどちらの方が大きいですか
僕は背負っているという感覚を試合のときは持たず、いつも楽しもうと思いながらプレーをしています。
――藤田選手にとって五輪とはどのような舞台でしょうか
夢とまではいかないですけど、目指しているところですし、そこでプレーしたいという気持ちはすごく強いです。
――ソチ五輪はご覧になりましたか
はい、見ていました(笑)。
――同年代の羽生結弦選手(人通=宮城・東北)が金メダルを獲得しましたが、刺激などになりましたか
あのように活躍している人を見ると自分ももっと頑張ろうと思いました。しかも彼が同年代なので、すごく刺激を受けて、自分もあのようになりたいなという気持ちが出てきました。毎日テレビや新聞で見ていて本当にそう思いました。
幾多もの経験を糧に
すでに日本代表歴代5位のトライ数を誇る藤田(※3)
――数ある大学の中で早大に進学した理由は何でしょうか
小さい頃からいろいろな大学の試合を見てきたのですが、早大のラグビースタイルが一番自分に合っているのではないかと思って決めました。
――そのスタイルとはどのようなものですか
早大は展開をするスタイルで、自分もランナーなのでそこが合っていると思いました。
――実際に進学してみて良かったと思うことは何ですか
バックスリーを強みとしてゲームプランを組み立ててくれるので、すごい自分も生きてきますしいいのではないかと思います。
――昨季早大の一員として戦った感想を教えてください
一緒にやっていて楽しかったですし、どんどん成長していく過程が(関東大学対抗戦の)慶大戦から日本選手権の試合まで見られたのでいろいろ勉強になったこともあったと思っています。
――チームに合流したときの印象はいかがだったのでしょうか
そんなに悪いというわけではないですが改善するところがあると思いましたし、もっともっと強くなるのではないかと合流した直後は思っていました。
――昨季は全国大学選手権優勝まであと一歩という結果となりましたが優勝のために必要なものとは何でしょうか
帝京大にフィジカルで負けていたので、もっともっと帝京大に勝るぐらいのフィジカルと、早大ラグビー部員全員がラグビーIQを高めるというか、ラグビーをもっと知るということが優勝の秘訣ではないかなと思っています。
――ラグビーIQとはプレー選択において大事になりますか
そうですね。プレー選択、適切な状況判断ができるとか、フィジカルで負けて疲れていてもその時のベストの選択ができるかということとか、コミュニケーション能力もあると思います。
――藤田選手が合流してからチームに変化はありましたか
一つ大きく変わったかなと自分で思うのは、合流する前まではBKラインが横に流れていてバックスリーの強みを生かせていませんでした。なので、合流してから流れないようにしていこうというということを伝えたら、流れなくなってよりバックスリーが生きたのではないかと思います。
――海外でもプレーされていたと思いますがいかがでしたか
いろいろなところでラグビーをして、有名なコーチとかもいますしそういう人たちのさまざまな考え方をもらって成長できました。それを早大に帰ってきて伝えることもできましたし、いい経験になったのではないかと思います。
――ニュージーランド留学を振り返ってどうでしたか
一緒にプレーしていた選手もオールブラックス(ニュージーランド代表)としてワールドカップで優勝したりしていて、そういう選手たちとやれていい経験になりましたし、コーチもいいコーチなのですごく勉強になりました。
――日本代表としても活躍されていましたが、世界に通用したことは何でしょうか
けがから復帰して日本代表でたくさん経験を積ましてもらって、最後の方はだいぶアタックが良くなってきたのではないかと思います。逆に通用しなかったところとしてディフェンスが自分の中で課題なのでもっと激しくできるように練習していきたいなと思っています。
――フィジカルの面ではいかがでしたか
体も大きくなってきてフィジカル面も少しは対等に戦えているのではないかなと思いますけど、トンガとかアイランダー系のチーム相手には優れていないと思うので、そういうチームにも勝てるようなフィジカルをつけたいと思います。
――代表ではニュージーランドやウェールズなどの強国とも対戦していましたがいかがでしたか
ウェールズに勝った試合は日本も成長しているなと感じましたし、エディー・ジョーンズヘッドコーチを信じてハードワークしていけば2015年や2019年のワールドカップで楽しみなチームになるのではと思いました。ニュージーランドとの対戦は代表の歴史の中でも一番点差が縮まったのですが、ポジティブに考えると成長しているのではないかと言えると思います。でもまだ50点近く差があるのでどう縮められるかチームとして考えなければいけないと思いますし、個人としても何が違うのかというのを把握しているのですが、しっかり理解したうえでトレーニングを積んで2015年、2019年のワールドカップに向けて準備しなければいけないなと思いました。
――その違いというのはどのようなところにあるのでしょうか
フィジカルの面もそうですし、やはりラグビーIQもスキルも全てにおいてオールブラックスは1枚も2枚も上だったので、そこを一つ一つ埋めていけるように。次対戦したときに「ここは差が詰まった」というのを実感できるように準備をしっかりしておきたいなと思っています。
――この先も海外でプレーしますか
まだ分からないのですがとりあえず7人制では試合する可能性があるので一番近い国際試合をしっかり戦い抜けるように最高の準備をして最高のコンディションで出られるように頑張っていきます。
――その先には15人制のワールドカップ予選もあると思うのですがやはり目指すところでしょうか(※2)
セブンズでしっかりとトレーニングを積めば15人制にもプラスになると思いますし、しっかりワールドカップの出場権を獲得したいです。その後のIRBパシフィックネーションズカップで全勝できるようなチームになるように、春からチームにコンバインドしてチームのレギュラーを争いたいなと思います。
――日本代表ではWTB、早大ではFBですがそれぞれの変化は感じていますか
大きな変化はないですし、ずっとFBをやってきたので。日本代表でも本当はFBをやりたいのですが、エディーさんがWTBの視点からワールドクラスのラグビーを見て学んでほしいと言われたので、それをいまはWTBでプレーしていますし、与えられたポジションを全うするのがすごく楽しいです。
――代表のFBには五郎丸歩選手(平20スポ卒=現ヤマハ発動機)がいると思うのですが日本選手権でマッチアップしていかがでしたか
走るコースとかうまかったですし、冷静にプレーしていたのでそういうところは見習いたいと思いました。
――他に意識している選手はいらっしゃいますか
同じポジションの人は特にチームの中で意識します。レギュラー争いがあるので。そういう意識している選手が活躍すると僕もやっぱり頑張らなければならないなと思います。
――筑波大の福岡堅樹選手は学年の上では同じですがやはり意識しますか
そうですね、堅樹さんも意識する選手の一人に入ると思います。
――2019年には日本でワールドカップが開催されると思います。そこも目指すところですか
目指していきたいなと思います。エディージャパンが始まってから4年間やってきたことに加えてまた新しく積み上げてきたものも2019年で生かせるようにしたいです。そうするといいチームができて世界のトップ10、ワールドカップのベスト8まで狙えるチームになっていくのではないかと楽しみです。
「日本を強くできるように」
早稲田スポーツ創刊500号の第4、5項
――7月に創刊500号を迎える早稲田スポーツ新聞会にメッセージをお願いします
いつもいろいろな所に取材に来ていただいて、僕らの活躍を早大生などたくさんの人に伝えていただいてくれるのは本当にうれしいことですし、感謝しています。いまは500号ですが、もっと(新聞を発行して)いけるように頑張っていってほしいですし、僕らが頑張らないと記事も書けないと思うので、早大も強くなって、お互いがいい関係でいられるように、これからも頑張っていきましょう。
――世界を相手に戦う藤田選手から、同年代の早大生の方へメッセージをお願いします
全員がスポーツをしているわけではないのですが、僕はこうやってラグビーというスポーツの面で頑張っています。同年代の早大生の人にも夢というものがあると思うので、その夢に向かって、お互い全力を尽くして頑張っていきましょう。
――藤田選手の夢を教えてください
僕の夢は前と変わらず、スーパーラグビーで活躍するプレーヤーになるということです。その夢を果たし、2015年、2019年のワールドカップと、2016年、2020年の五輪で、日本を強くできるような選手になることが僕の夢です。
――スーパーラグビーには今季3人の日本人選手が挑戦しますが、それも刺激になっていますか
すごく大きな刺激になっていますし、少し前は「俺も早く行かなアカン」という焦りもありました(笑)。でもまだ年齢も年齢ですし、通用していない部分があるからスーパーラグビーに行けていないのだと割り切っています。その通用しない部分が何かということを確認し、努力をして今シーズン臨んでいきたいと思います。
――本日はありがとうございました!
(取材・編集 菅原拓人、鈴木泰介)
◆藤田慶和(ふじた・よしかず)
1993(平5)年9月8日生まれ。東福岡高出身。スポーツ科学部3年。日本代表の練習後に必ずアイスバスと呼ばれる、氷がしきつめられたお風呂に入る。藤田は冷たいものが大の苦手で、毎回震えながら入浴しているそう。周りから氷の増量をされることもあるようで、「本当にやめてほしいです」と笑顔で一言
関連記事
※1藤田が東京セブンズに出場。トライを挙げる活躍!/東京セブンズ2014