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2014.03.26

【連載】『平成25年度卒業記念特集』 第64回 金正奎/ラグビー

夢に向かって

 無情にも冬空に響く、ノーサイドを告げるホイッスル。全国大学選手権決勝、国立競技場(国立)の電光掲示板のスコアは34―41。垣永組、あと一歩のところで『荒ぶる』の夢が途絶えた瞬間だ。そんな中、ピッチ上には人目をはばからず大粒の涙を流す金正奎(教=大阪・常翔啓光学園)の姿があった。副将として、部員を声でも背中でも引っ張ってきたこの1年。「やっぱり悔しい」。試合後には率直な思いも口にした。それでも引退時に自身の4年間についてすがすがしい表情でこう振り返った。「後悔はないです」。

 高校時代、花園優勝や高校日本代表のキャプテンなど十分な実績を残してきた金。「特別な格好良さがあった」ことから早大を選ぶと、1年目から主力として活躍。関東大学対抗戦の開幕戦から赤黒に袖を通すと、以後全ての公式戦で出場を果たすこととなる。また2年時にはU20日本代表にも選出され、一見すると順調な競技人生を送っていた。だが金にとって全てが満足できるものではなかった。なぜなら2年目のシーズン、スタメンに定着するものの途中交代させられることがしばしばあったからだ。しかし、この悔しさをバネに金はさらに成長を遂げる。3年生になると豊富な運動量を武器に躍動。フル出場が増えただけでなく、FWリーダーを任され、チームになくてはならない選手となっていった。

金は攻守にわたって抜群の存在感を発揮した

 そして迎えたラストシーズン。相棒と称する垣永真之介主将(スポ=東福岡)と共に、日本一奪還を果たすべく早大をけん引。努力を重ね続け、昨季負けた相手に勝てた。実力は確実に向上した。それでもあと一歩届かなかった頂点。だが、「学生でやりきれることはやり切った」という言葉が表すように、金の歩んできた4年間に後悔という2文字は見当たらない。

 卒業後、金はNTTコミュニケーションズに戦いの場を移す。強豪ひしめくトップリーグの中では下位に位置するクラブだ。高校も大学も常に優勝争いする環境にあった金があえてそれとは違う進路を選んだのは「トップじゃないチームで力を付けていく」ため。そしてそこで地力を付けたうえで「日本代表になる」ためだ。2019年、金が27歳のときにラグビーワールドカップが日本で開催される。「そこを目標にやっている」と公言するように、金がいま目指しているものは母国で行われる夢舞台でのメンバー入りだ。

 あの日悔し涙を流した国立は改修工事のために取り壊されてしまう。だが、5年後新たに生まれ変わった国立には、日本代表のユニフォームを身にまとった、新たな金正奎の姿があるに違いない。そのときは必ず、喜びの涙とともに――。

(記事 菅原拓人、写真 森健悟)

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