ア式蹴球部

2014.03.01

【連載】Jリーガー特集!J2湘南ベルマーレ・三竿雄斗

 昨季副将としてア式蹴球部(ア式)を引っ張ったDF三竿雄斗(スポ4=東京ヴェルディユース)。新天地に選んだのは、かつての代表選手でもある中田英寿などが所属した名門・湘南ベルマーレである。新たな舞台で経験するプロのレベルの高さ、ア式での4年間、そして間もなく開幕するリーグ戦への想いなどをざっくばらんに語ってもらった。

※この取材は2月27日に行われたものです。

「改めてプロとしての自覚を持たなくては」

笑顔でインタビューに答える三竿

――プロ入りして数カ月経ちましたがもう慣れましたか

今まで実家で暮らしていたので初めての一人暮らしは不安だったのですが、食事や睡眠の面も特に問題なくやれています。今は調子も悪くないですし、だいぶ慣れたと思います。まだこの辺りの店は詳しく分からないですがこれから探していきたいと思います。

――練習場の近くに住んでいらっしゃるのですか

寮が無いので大卒はみんな一人暮らしをしています。

――一人暮らしで苦労することはありますか

提携している旅館で食事を取ることができるので食べ物にも困りませんし、特に無いですね。

――プロでの練習はどのようなことを行っているのでしょうか

今はオフシーズンということで、この一カ月はフィジカル中心のトレーニングをやっていました。トルコでのキャンプを含め、ここ数週間は戦術的なことや、試合中のコミュニケーションに関しても練習しました。Jリーグの中でも湘南ベルマーレの練習は厳しい方だと思いますが、ワセダでも厳しいトレーニングを積んできたので特に問題無くやれています。

――ワセダでの練習との違いもあると思いますがいかがでしょうか

やはりプロは一人一人の技術が高いので、練習の質は大学の時よりも高いですし自然と強度も上がっていると思います。逆にワセダの方がフィジカル面での練習はハードだと思うのですが、身体的なストレスと精神的なストレスはプロの方が強いかなと感じました。表面的な強度は大学の方があるかもしれないですけれど、僕はプロの練習の方がきついと思いますね。

――2月の上旬にJリーグの新人研修会がありましたがどのようなことをやったのでしょうか

講義中心だったんですが、他のチームの新人選手と一緒にグループワークもしました。チームの観客動員数を増やす方法やメディア対応について学びました。また、福田(正博)さんや元代表の戸田(和幸)さん、現在大宮アルディージャのアンバサダーをやっている塚本(泰史)さんの話を聞き、改めてプロの自覚を持たなくてはと感じました。そうした面でもとても充実していました。

――その後トルコキャンプが行われましたが、メニューは普段と違ったのでしょうか

2週間弱あった中で、毎日2部練で全体的にハードなトレーニングでした。その分気候は日本と違って暖かく過ごしやすくて、練習には最適な環境でした。

――海外のチームとの練習試合もありましたが手応えはいかかでしたか

自分が戦ったのは韓国やロシア、デンマーク、ノルウェーのチームですね。様々な国のチームと試合をしたのですが、その中でもデンマークのチーム(ヴィボーFF)はUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)の決勝トーナメントに出ているチームでした。結果的には1ー2で負けてしまいましたが、内容だったり自分たちがやろうとしているサッカーをできていた点では勝っていたと思います。ですがフィジカルや一回のチャンスで決めてくる力はとても強いなと感じました。日本人とは少し違ったプレースタイルでしたし、良い経験になったと思います。

――キャンプ中に仲良くなった選手はいますか

同年代、大卒で一緒に入った他の3人とは多くコミュニケーションを取っていたと思います。後は古林将太や菊池大介ですかね。全体的に若いチームなので夜みんなで集まってゲームしたりと、自然と仲良くなりました。

――ちなみに同部屋の選手はどなたでしたか

ワセダの先輩の島村さん(DF島村毅、平19スポ卒=現湘南ベルマーレ)です。島村さんの時のア式の話をしたりしました。ほとんどふざけた話しかしなかったですけどね(笑)。ただプロの契約についてなど、真面目な話も聞かせてもらいました。

――日本へ戻ってきて日本のチームとも練習試合を行っていましたが、海外との違いを感じましたか

海外のチームは結構スペースが空いているので縦のパスが通りやすかったんですが、日本のチームは戦術に対して真面目だし規律正しくやってくるので簡単なパスは出せないです。フィジカルの面ではヨーロッパに劣っているかもしれませんが、そういった面では日本のチームは勝っていると思います。帰ってきた直後はやりづらさも感じましたが、ここ数試合で日本のチームと戦う感覚を取り戻しつつあります。今週開幕ですが、いい準備ができていると思います。

――名門である湘南ベルマーレでプレーすることへの重みは感じますか

今季のチームにはJ1昇格という明確な目標がありますし、周りからの期待もあります。色々なメディアからは湘南ベルマーレがリーグ上位に食い込むのでは、と言われており、僕自身も1年目ということで多少プレッシャーもあります。曺(貴裁、平3卒)監督になってから3年目で、曺さんがやりたいサッカー、湘南サッカーが完成に近づいていると思います。練習試合で結果も出ていますし、みんな自信もあると思います。不安というよりも楽しい気持ちの方が大きいですね。あとは1試合1試合全力を出すだけだと思います。

「ワセダに入っていなかったらプロにはなれなかった」

高い技術と運動量で左サイドを制圧した

――ここからはワセダでの4年間について聞かせていただきます。まずワセダを選んだ経緯を教えてください

高校が一応進学校ということもあって先生からもいい大学に行くように言われてきましたし、周りからのそういった声もありました。自分もいい大学でサッカーをしたいなと考えていたので自分の家からも近いワセダで強いサッカー部があることも分かっていたのでそれが理由です。

――ワセダのサッカーのスタイルはどのように考えていましたか

ユースの時は足元の技術を大切にしていて、サッカーの組み立てにも重点を置いてしっかりつないでいくサッカーをしていました。そういうところには自分にももちろんこだわりがありました。ただ、監督(古賀聡、平4教卒=東京・早実)のサッカーはそういった技術というよりは気持ちの面で相手に迫るようなサッカーをしていました。そういった中でワセダにはユース上がりの選手もたくさんいたので、初めは「なんだよ」とか言う話も出ていました。ただ愚痴っていてもしょうがないので、監督の考えるサッカーを精一杯やることで自分自身成長できるのではと考えるようになりました。2年になってからは割り切ってというか練習からしっかり取り組めるようになりました。

――ワセダに入ってサッカーに対する考え方は変わりましたか

そうですね。ユース時代の自分はサッカーがめちゃめちゃうまいわけでもなく中途半端だったんですが、大学に入ってからはプロに入るために運動量だったり一対一で負けないことだったりを意識するようになりました。古賀さんの下でサッカーができて良かったなと思います。

――プロへの意識は早い段階からあったのですか

小さいころからいつかはなりたいなと考えてきました。ただ自分の中で明確な目標になったのは2年の時ですね。試合に出続けることによって、試合を視察に来ているプロのスカウトの方たちの目に触れることも多くなり、現実的になってからは考え始めました。

――2年生からは試合にも出られるようになり順調に競技生活を送れたのではと思いますが2、3年を振り返っていかがでしょうか

特に大きなケガもなく、すごく練習も毎日ハードにできていて、それによって自分のレベルをどんどん上げることができたので今思うとラッキーだったなと思います。

――4年になってからは副将になり、前期は中田航平主将(スポ4=横浜F・マリノスユース)の代わりにキャプテンマークを巻くことも多かったと思いますが、チームを鼓舞する立場になったことはどのように考えていましたか

正直キャプテンマークに意識はありませんでしたね。巻いていてもいなくても変わらずプレーができていました。

――4年生がDFラインでは一人ということで引っ張っていこうという意識はあったと思いますがいかがでしょうか

まあCBの2人は2年生の拓真(DF金澤、スポ2=横浜F・マリノスユース)政幸(DF奥山、スポ2=名古屋グランパスU-18)の二人でとても能力が高いので信頼していましたし、自分が特に統率するということはありませんでしたね。3バックだったらそういうこともあったかなと思いますけど、4バックの左はそういう鼓舞とかはしにくいですし、わざわざ自分がやらなくてもできる二人なのでそこまで気にすることはなかったです。

――中田選手に先日お話を伺った時にもし三竿さんが主将だったらどうなったかなという話をされていましたが、どうだったと思いますか

ピッチ内だったらなんとかなったとは思いますがピッチ外でのことは航平にしかできないことだと思います。

――中田さんが三竿さんのことを「やんちゃだ」とおっしゃっていましたがどのように感じますか

やんちゃなのかは分からないですね。多少ピッチ内とかでは熱くなってしまうこともありました。ただ自分の中では当たり前の事でした。プロになってからもピッチ内では熱くなってもいいのかなと思いますね。ピッチ外は別ですけど(笑)。

――4年生でJリーグの試合に出たことは大きな経験だったと思いますがいかがでしょうか

5月頃に入団が決まって同時に特別指定選手にしてもらえました。あんなに早く出場のチャンスが与えられるとは思ってもいなかったのですが、清水エスパルスと川崎フロンターレという二つの大きなクラブと対戦できたことは楽しかったですし、いい経験をさせていただけました。そこで得たことを大学に伝えられたかというとそこまでではありませんでしたが、いい経験をさせていただきました。

――そこで中村憲剛(川崎フロンターレ)選手のプレーにとても衝撃を受けたというお話もありましたが、プロに入ってそのようなことはありましたか

まだ、あれほどのことはありませんでしたね。川崎戦は彼らも本気で戦っていましたし、一瞬でも気を抜いたらやられるという厳しい試合でした。あの緊張感は今でもすごかったなと思います。

――3年時にはインカレ(全日本大学選手権)優勝を果たせましたが4年ではできませんでした。やはり自分たちの代で優勝をしたかったという気持ちは残りますか

そうですねシーズン始まってからそれを目標にしてきたので一つもタイトルを取れなかったのは残念です。

――後期リーグ戦(関東大学リーグ戦)の失点が続いたことは今振り返るとどのような経験でしたか

大枠となるところはファーストディフェンダーの決定だったりはできていたのですが、細かいところでの距離感だったりといったところでミスがあったし、おろそかにしてしまっていました。自分自身もったいなかったなと感じますしもっと意識していればとは感じます。

――プロに入って意識の違いは感じますか

そうですね。大学では戦術的なことはやりませんでしたが、守備の時の戦術、ゲームの組み立て方を学びましたし、プロに入ってからはとても頭を使って、一瞬一瞬状況に応じたポジショニングをしなきゃなと考えることも多くあります。別に大学が悪いということではなく、個人ベースでそういったところはビデオなどを見て直したいです。

――インカレ初戦敗退の時を振り返っていかがでしたか

本当に勝ちたかったので、これで終わるのかと思うと半信半疑で。内容が良かっただけに本当に悔しかったです。

――終わった後に古賀監督からは言葉を掛けてもらったりはしましたか

個人的には「これからだな」と言われました。やっぱり下向いている暇はありませんし、古賀監督から学ぶことのできたことは多かったと思いますし、やはりこれからさらに成長しなければという前向きな気持ちにはなれました。

――サッカー選手として古賀監督の存在は大きかったということでしょうか

そうですね。古賀監督がいなかったら今の自分はいなかったと思います。

――後輩の選手たちのシーズンも間もなく始まりますが、三竿選手が活躍を期待する選手を一人教えてください

そうですね…。じゃあMF近藤貴司(教3=三菱養和SCユース)で(笑)。今はケガで満足な時間を送れてないと思うんですけど、あいつが攻撃の核となっていかないとなかなか点も入らないし、チームも勝てないと思うのであいつには頑張ってほしいですね。

――最後にア式蹴球部での4年間はどのような4年間でしたか

1年の時は苦しみましたが、2年からは充実していましたし、周りのスタッフたちのおかげでいいトレーニングを積めていました。ワセダに入っていなかったらプロにはなれなかったと思います。それにピッチ外では大学生らしく遊んだり楽しむこともできたので、一番楽しい4年間でした。

「一日一日の練習を大事にしていきたい」

雨天の中制度の高いクロスを供給する三竿

――ここからは開幕を控えたJリーグの話に移りたいと思います。間もなくJリーグが開幕しますが、チーム内でも緊張感などは出てきてますか

きのうが今週の中で初めての2部練だったんですけど、やっぱり意識高いチームなので試合があろうが無かろうがみんな高い意識を持って練習に取り組んでますし、あんまり変わらないですね。日頃から高い集中力でやれてるので、いい練習ができてるかなとは思います。

――開幕戦はモンテディオ山形との試合ですが、対戦相手に対してどういうイメージを持っていますか

あんまり試合を見たことがないんですけど、能力の高い選手が多いですし単純に守備の意識も高く、いいチームだと思います。相手のMFディエゴだったり力のあるブラジル人選手もいるので、難しいゲームになるのかなと思ってます。

――開幕戦はホームです

やっぱり1試合目をホームでやるのとアウェイでやるのとでは全然違います。たくさんサポーターも来てくれますので。メンバーに入れるか分からないですけど、出たらしっかりいいプレーをしなきゃなとは思います。

――今サポーターの話が出ましたが、湘南ベルマーレのサポーターはどんな印象ですか

チームの規模としてはそんなに大きくなく、すごい大きなスポンサーがあるわけでもないんですけど、その分地域に密着していて練習にもたくさん人が見に来てくれます。グラウンドに向かう途中の道でもサポーターの方が話し掛けてくれてコミュニケーションも取れますし、すごい温かいサポーターが多いなと、心強いバックがいるなと思います。昨年チームがJ2に降格することが決まったときも、普通だったらブーイングとか厳しい言葉が出てくると思うんですけど、それでも温かい言葉というか励ましてくれる言葉が多くて、数は決して多くはないけどいいサポーターだなと感じてます。サポーターの存在なしではサッカーできないんで感謝しています。

――地域密着が根付いていますね

そうですね。まあ浦和レッズとかFC東京のように大きなスポンサーがいるチームよりはサポーターの数は少ないですけど、やっぱり温かいなと感じます。

――サポーターとの交流というのはオフシーズンにありましたか

ありました。自分が行ったのは爆勝祈願っていうイベントです。1月18日にサポーターの方と一緒に江ノ島の神社に行って必勝祈願してくるというイベントで、サポーターの方と交流できて楽しかったです。

――他には参加された選手はいますか

後はGKの阿部さん(伸行)とFWの宮市剛、あと島村さんですね。他の選手は各市町の市役所に行って表敬訪問をしていました。

――J2はJ1よりも試合数も多くタイトな日程になっていますがどう捉えてますか

J1の試合数が全部で34試合でナビスコカップも入れたら大体40試合くらいだと思うんですけど、J2は全部で42試合あってそんな変わんないかなと思うのであんまり意識はしてないですね。ただ逆に言うとリーグ戦しかないので、一試合一試合の緊張感というのがすさまじいと思うので、身体的よりも精神的難しさの方があるんじゃないかなと思います。

――J2のレベルは年々上がってきていて全ての試合が難しいものになっていくと思います

ことしはジュビロ磐田だったり、きょねんだったらガンバ大阪、ヴィッセル神戸が落ちてきて、そういう時代になってきたというか、そういうことも起き得るのでリーグのレベルも高いですし難しいゲームが多いなと思います。ただ昨年J1を連覇したサンフレッチェ広島だって数年前はJ2にいたし、うちも今J2ですけど近いうちにJ1で優勝している可能性もあるので楽しみではありますね。まあJ2の試合を経験したことがないので難しさとかあんまり分かんないですけど(笑)。

――湘南ベルマーレでは厳しいポジション争いが待ってると思いますが、どのようにしてポジションをつかんでいきたいと思っていますか

自分にしかできないプレーだったり強みとかがあるのでそれを発揮できるようにやんなきゃいけないですし、もちろん全試合出れたらいいですけどそううまくいかないときもあると思うので、そうなったときにいかにトレーニングの中で自分のモチベーションの浮き沈みを減らしていけるかが大事だと思います。一日一日の練習を大事にしていきたいですね。

――昨年の湘南ベルマーレは3バックを敷いてましたがその場合はどのポジションでプレーするのでしょうか

まあ3バックの左かあるいは中盤の左サイドのポジションですかね。

――大学時代と違うフォーメーションですが慣れるのに苦労しましたか

きょねんも大学の試合がない時はベルマーレで練習させてもらってたので、3バックのときの戦術練習はそんなに難しく考えてませんでしたね。ことしに入っての練習でもここまでしっかりできているので、そんな難しいとかは感じません。

――具体的にゴールやアシストはどれくらい決めたいですか

アシストだったら5くらいは決めたいと思います。きょねんリーグ戦(関東大学リーグ戦)では1ゴールしか取れてなくて、改めて得点を取るのは難しいなと思ったので、まずは1点取ることから始めたいと思います。

――リーグ戦ではファジアーノ岡山へ進んだFW片山瑛一選手(スポ4=埼玉・川越)、天皇杯ではFW富山貴光選手(平25スポ卒=現J1大宮アルディージャ)との対戦の可能性もありますが、意識などはしていますか

新人研修で久しぶりに瑛ちゃん(片山)と会った時はそんなに話しはしませんでしたね(笑)。「調子どう?」とかくらいしか聞いてなくて。もちろんお互い試合出れたらいいですけど、正直そんな意識してないですね(笑)。

――それでは最後に改めてリーグ戦への意気込みをお願いします

一年目とか関係なしに他の選手と同様の目で見られると思うので勝負の年だと思います。開幕スタメンとそれからのレギュラーをしっかり取って、チーム全員が目標としている『一年で昇格』っていうのを大事にやっていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 辛嶋寛文、高柳龍太郎、増山祐史)

色紙には今季の目標を書いていただいた

◆三竿雄斗(みさお・ゆうと)

1991(平3)年4月16日生まれ。174センチ、69キロ。東京・国学院久我山高出身。前所属・東京ヴェルディユース。スポーツ科学部4年。2月3日に行われた新人研修会の成果でしょうか、インタビュー中もかなり落ち着いた表情でした。Jのピッチでは落ち着きだけでなく、新人らしい躍動したプレーもぜひ見せて下さい!