ワンダーフォーゲル部

2013.11.11

【特集】山岳部×ワンダーフォーゲル部‐第2部‐

 第1部では山岳部とワンダーフォーゲル(ワンゲル)部の活動内容や目標などをお話いただいた。第2部では山岳部の佐藤貴文主将(文4=東京・早実)、ワンゲル部の佐々木透主将(人3=東京・青陵)、福永孟昭主務(政3=愛知・瑞陵)が部に入ろうと思った理由や部の幹部として感じることなどを伺った。

※この取材は10月16日に行われたものです。

第1部はこちら

互いの印象

雪山で喜びを爆発させるワンゲル部

――お三方のそれぞれの部に入部した理由を教えてください

(ワ)佐々木 僕は中高と野球をやっていて、大学で何か新しいことをやりたいなと思っていました。いろいろサークルや他の体育学部も見ましたが、山ってそれまでは中高年のスポーツのイメージがあったんですよね。でもそうではなくて、大学の体育学部として本気で山を登っている、ということを初めて知りました。

(山)佐藤 山岳部は見なかったんですか?

(ワ)佐々木  いや、山岳部もありましたけど(笑)。その時のイメージが山岳部はガツガツの山登りのイメージがあり、山を何も知らない当時の自分からだと恐怖心がありまして。ワンゲルだと山だけでなく、自転車や山スキーなど幅広く活動しているので、楽しそうだなあというイメージで入部しましたね。その当時は部員も多かったですし。でもいまもう一度考えるとしたら、山をガチガチに登る山岳部に憧れていたというのもありますね(笑)。やはり経験していくうちに(気持ちが)変わっていくというのはありますね。

(ワ)福永 僕はただの笑い話ですが、父親が早大応援部に所属していました。僕は高校時代、柔道部に所属していたのですが、引退試合でケガして、3月中はずっと入院していました。そしたら入院中に父親が勝手に体育会を調べていて、「ワンダーフォーゲル部っていうのがあるぞ」と病室で言われました(笑)。そしてパソコンで調べてみると、ホームページに山スキーの写真が載っていたりして、面白そうだなあと思い入部を決意しました。本当は当時バイオリンをやっていたので、早稲田大学交響楽団に入ろうかなと思っていたんですが(笑)。

(山)佐藤 僕も高校までバスケをやっていました。でも大学では厳しいかと思い、何か一つのことに打ち込みたいなと思った時に、山岳部のブースになぜか行っていました。そこで冬山の写真を見せてもらい、「体力あるし行けるんじゃないか」と思い、入部しました。

――お互いはどういったイメージを持っていますか

(ワ)佐々木  とりあえず滅茶苦茶重い荷物を持ち、基本クライミングをかなりやっているのかなと思っていました。正直、縦走もやっていると聞いたときはかなり驚きました。完全にピークハントだと思っていました。

(ワ)福永  山岳部は登山道にはいないものだと思っていました(笑)。

(山)佐藤 世界の動向はそうなのでしょうね(笑)。僕たちは学生で、技術もないので、一からやっていこうという形です。

――山岳部からみた印象はどういったものですか

(山)佐藤 最初は半端だなあとか、いろいろ手を出して極められるのかなとか思っていたんですが(笑)、話を聞いている内に、一つ一つにこだわりを持っていらっしゃるようなので、僕は山岳部を選びましたが、すべてやってらっしゃることは良いことではないかなと思います。単純に楽しそうだなと思いますね。山は楽しくないときのことのほうが多いので。

――互いに交流などはありますか

(ワ)福永  ことしの4月に合同新歓をやりまして、一人も入部しなくて…

(山)佐藤  いや、入ったんですよ。ことし初めて行いました。3年生の部員がワンゲル部に知り合いがいたらしく、一緒にやろうよということになりました。

(ワ)福永 20、30人くらい来てくれましたが、1と0でしたね(笑)。思ったより収穫がなかったです。

部を率いる重み

幹部としての役割を語る福永主務

――基本的に大学から競技を始める人がほとんどだと思いますが、後輩の育成などで苦労している点など教えてください

(ワ)福永 覚えることなどが多く、ワンゲル部は12月の冬合宿で自分のことはできるようになったら、新人から1年生という扱いにしています。それまでに食事を作ったり、テントを立てたりなどという基礎的なことから、コンパスや天気図の使用方法など装備の使い方から、医療、気象まで様々なことを覚える必要があります。一応、係を設けて分担し、勉強会などを開き、教えていく中でなんとか覚えてもらっています。あとは活動の中で確認します。結構、新人をいかに育てるかというのは重要なことですね。

(山)佐藤 山岳部は2年間ですね。1年生から2年生までしっかりやれば、後輩を山に連れて行くことができます。問題点はやはり大学でから始めるので、意識の違いと身体能力の違いがありますね。意識の違いはモチベーションの違いですね。「これやりましょう」と積極的に言う部員と無難に合宿だけ行く部員とかがいますね。

(ワ)福永 それはワンゲル部も同じで、他の体育会と違う部分ですね。他の体育会だとレギュラー争いが常に待ち受けているので切磋琢磨していくのですが、そういう意味では差はあります。それをいかに埋めていくのは幹部の人間として一番難しいことだと思います。

――主将の役割とはどういったものでしょうか

(ワ)佐々木 全部員で合宿の行くのは少なく、隊に別れるので、それぞれの隊ごとのリーダーが部員を引っ張ります。自分が歴代のキャプテンに言われてきたのは、下級生を安心させること。自分がやりたいことを明確にすることが大事だと教えられました。結局、山岳活動はゴールが見えないんです。自分達は大学生としてのゴールを設定して、その中で出来る限りのことをしてと。なので、この代では何がやりたいのかということを明確にし、下級生に示していくのがキャプテンの仕事だと思います。

(山)佐藤  同じですね。方向付けということです。最初にこういうことをやるんだとしっかりとその部の方向を決定するということですね。その中で、俺だけが頑張ろう頑張ろうとしても意味がないので、後輩が主体的に、自ら部に関わっていけるように仕事を与えたりしています。

――主将をやっていて一番キツかったことは

(山)佐藤 辞めたいという部員が出るんですよね。山が好きならいいじゃんと思うんですが、話すとやっぱり話を聞いてもらいたいんですよね。

――特殊競技の難しさなどはありますか

(ワ)佐々木  やっぱりゴールがないことですね。結局、他の競技スポーツは勝利に向かってこれをやらなければならないとかと説得力があると思いますが。山って、これに行くためにこれをやらなければならないんだと言っても、じゃあ行かなきゃいいじゃないですかと言われてしまうとそれでおしまいなんです。いかに自分たちが決めた最終的なゴールの価値を後輩に伝えるかが難しさだと思います。

山では常に謙虚に

晴天の中、薬師岳に到達する山岳部

――山への思いを教えてください

(ワ)福永 富士山とかを登っている人には分からないかもしれませんが、4、5日とかずっと歩いて、最後に山頂に着いたっていうときにすごく景色がいいなと思うんです。ただそれだけではなくて、後ろを振り返ったときに自分が歩いてきた道筋が山の峰々までずっとつながっていて、ここからずっと歩いてきたんだなあと振り返れる瞬間っていうのは縦走の醍醐味だと思います。苦労した場面なども頭の中でよみがえってきます。

(山)佐藤 僕は誰も行ったことのない山に行きたいなっていうことです。誰も通ったことないルートなどに魅力を感じますね。それを成し遂げるために頑張ってトレーニングをしています。

(ワ)佐々木 山を登ると体力的に限界を迎えます。まあ本当は迎えてはいけないんですけど。そして、頭もかなり使うんですよ。天気の判断や後輩の状態を見極めてのルート設定など考えることは幾らでもあります。体も頭もフル活動してできるスポーツっていうのが面白いとこだと思います。もちろん、中高やっていた野球でも体も頭も使いますが、でも何か違うんです。野球という競技スポーツ与えられたフィールドで与えられた道具を使い、ルールに則ってやるじゃないですか。山はフィールドも自分達で選べますし、競技のルールなんかなくて、自分の行きたいとこに歩き、感じたいものを感じることができます。そういう無限の可能性みたいなとこがあります。

――山で限界に挑むのはいけないんですか

(ワ)福永 山って7、8割の体力を使い、残りの2割はリスクマネージメントの費やすのが基本なんです。山に限界を挑もうとして、限界を超えてしまって動けなくなってしまったら、その時点で遭難なんですよ。遭難はしてはいけない、生きて帰ってこなくてはならない。ちゃんと降りるまでが山登りなので。

(山)佐藤 山で死ぬっていうこともまた一つの価値観ではあるんですけどね。まあ僕たちはやらないですけどね(笑)。

(ワ)佐々木 学生スポーツということと先生たちもいらっしゃるので、限界に挑むのはアウトですね。1年生や新人は限界に常に挑んでもらわないと伸びないので、挑ませるんですけど(笑)。

(ワ)福永 それを上級生がバックアップできれば上手くいきますね。

――一番の思い出を教えてください

(ワ)佐々木 自分が新人のときの2月の山スキーですね。連日猛吹雪で、視界も悪く、5m四方ぐらいしか見えない状況でひたすら歩いていました。でも最終日にやっとパーっと晴れて、景色が広がった瞬間っていうのは、単純に凄いなと思いました。感動とかもありますが、そこに至るまでの過程が本当に過酷だったので。ひたすら前の先輩の足だけを見ながら登る極限の状況下だったので、一番記憶に残っています。

(ワ)福永 同じ合宿にいましたが、そのときはー17℃で風も強く、壮絶な中だったからこそ、感動も強かったです。最終日、晴れたときは圧倒されましたね。自然ってすごいなと。

(山)佐藤 自分はいい思い出ではありませんが、2年次にアコンカグアに挑戦して、頂上まで残り300メートルほどで高山病にかかり、結局登れなかったことがありました。その時の引き返すときの悔しさは今でも憶えています。

――リタイアされた場合は降りることはできるのでしょうか

(山)佐藤 そこは計算してリタイアします。先ほどの話通り、本当に限界を迎えてしまうとヘリを呼ばなければならなくなってしまいます。戻ることができる限界だと思って、リタイアしました。

福永(ワ) そこは一つ、ワンゲル部と山岳部の違いであって、ワンゲル部は全員でやるという意識が強いです。一人でも調子が悪くなったり、怪我をした部員が出てしまうと全員で下山するというのが基本としてあります。

――自然の怖さなども常に付きまといますが

(ワ)佐々木 先ほど紹介した活動の一つの沢登りでは、滑落する怖さもあります。あとは冬に関しては気象ですね。人間が太刀打ちできないような、かなわないなという怖さはあります。

(ワ)福永 あと冬山だと皆さん、雪崩など簡単に想像できるかと思いますが、僕らも穴を掘ってチェックして登ったりはしていますが、いざ起こると防ぎようがないんですね。雪崩は時速100キロメートルぐらいで、起こったと分かっても逃げようがないんです。だから自然には勝てないなというか、自分たちが謙虚になってやるしかないとは非常に強く感じます。

(山)佐藤 太刀打ちできないですね。僕らがいくら装備を充実させ、いくら研究したとしても雪崩にはかなわないですし、ホワイトアウト(濃霧で視界が妨げられる現象)のときとかは本当に怖いですね。

――サークルではなく部活でやっている意義とは何でしょうか

(ワ)佐々木 OBなど縦のつながりが非常に強いことです。節目ごとのOBの集まりなどに顔を出してくださったりします。あとは大学側から金銭的な援助を受けていることもあり、装備を一式そろえることができています。

(ワ)福永 ワセダの体育会部としてやっているんだという意識は常に持っています。そういう意味では、本気というか、ワセダの体育会部としてのプライドは持っています。

(山)佐藤 強制力とかですね。

――今後やっていきたいことを教えてください

(ワ)佐々木 10月から自分たちの代が始まり、今度の金曜日から新しい合宿が始まります。年間方針で立てた『雲外蒼天』という言葉をしっかりと全員が達成できたと思えるような一年にできたらいいなと思います。

(山)佐藤 短期的な目標としては、3月にある春山合宿をしっかりと成功させることと、長期的なものとしては、創部93、4年になるので、創部100周年に向けて何かしらをやっていきたいと思っています。

――山岳部もワンゲル部もいつでも部員を歓迎しているようですが

(ワ)佐々木 大学から誰でも始められるスポーツだと思うので、やる気さえあれば、やる気に応えるだけの用意はこちらにはあります。熱い気持ちを持っている人はいつでも歓迎です!

(山)佐藤 サークルに失望している人、サークルたりい(笑)とか思っていてちょっと頑張ってみたいと思う人がいればぜひ来てほしいですね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石丸諒、井上義之、丸山美帆)